プログレ のレビュー

PREMIATA FORNERIA MARCONI / Per Un Amico

1972,ITALY

イタリアン・プログレッシブ・ロックの至宝PREMIATA FORNERIA MARCONIの1972年2ndアルバムPer Un Amico。

感動のメロディを奏でるシンセとそれを支えるメロトロンの幽玄なトーンでお馴染みの、ファンタジックな代表曲#1。静かなボーカルから徐々に盛り上がるパートの叙情が胸を締め付けます。
ドライヴするギター、ハイハットのカウント、アヴァンギャルドなピアノ、そして舞い踊るヴァイオリン、と各パートがクールに絡み合うジャズ・ロックのインストゥルメンタル#2。中間部の牧歌的なマーチで見せるユーモラスな表情も魅力です。
フルートを中心に叙情を漂わせるイントロから、なんとなく英国のCARAVANあたりを思わせる洒落ていてメロディアスなボーカル・パートに移行する#3。インスト・パートはヴァイオリンのインプロビゼーションから爽快なアコギのコード・カッティングを経て、シンセのファンファーレへとシンフォニックに展開。
アコギをバックに清涼感あるボーカルが乗るキャッチーなフォーク#4。シンセがリードする神秘的なムードのインスト・パートでは、ハープのシャワーが心地良いです。フラヴィオ・プレモーリ(Key)の独演会と化す、シンセのシンフォニック・パート~ピアノ・ソロの豪快さと繊細さの対比も素晴らしいアクセントになっています。
明るいムードの中に神秘性を帯びたボーカル・パートと、ヘヴィで屈折気味のインスト・パートが融合した#5。

後にELPのレーベル マンティコアからリリースされる世界デビュー盤の元ネタではありますが、素朴なプロデュースとイタリア語の響きが彼らの魅力をより忠実に表現していると思います。

Track List

1. Appena Un Po
2. Generale
3. Per Un Amico
4. Il Banchetto
5. Geranio

PREMIATA FORNERIA MARCONI / Per Un Amico のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

CURVED AIR / Phantasmagoria

1972,UK

CURVED AIRの3rdアルバムPhantasmagoria。

メロトロンの使用や3拍子にチェンジする中間部など劇的な進行を見せる#1。メロウな中にもロックな激しさを内包し、タイトルの人物のドラマティックな生涯を表現。
フルートとヴァイオリンのハーモニーが美しい、ソーニャ・クリスティーナ(Vo)作のメランコリックなフォーク#2。出自を物語るシリアスなトラッドっぽさが光る。
ブラスセクションとランニングするベースラインが洒落たムードを醸し出す#3。少々ウィスパー気味にも聴こえるソーニャ・クリスティーナの歌唱パート、シンセとスキャットのユニゾン、クラシカルなエンディングなど、CURVED AIRならではの個性が随所に。
ダリル・ウェイ(Vln)によるスピーディなヴァイオリンの独壇場となったインストゥルメンタル#4。
クラシカルなシンセのアルペジオがリフレインし、パンニングやピッチ・チェンジのエフェクトを付加した実験的インストゥルメンタル#5。
ロックなグリッサンドと端正なオブリガードが融合したオルガンがリードする歌モノ#6。
奇妙なサウンドスケープに、EMS Synthi 100で加工したソーニャ・クリスティーナによるファンタスマゴリア(ルイス・キャロル作)の朗読を挿入したファンタジー実験作#7。
ヴァイオリンとブラス・セクションに歯切れ良いシロフォン、幽玄なヴィブラフォン。ジャジィなコード進行やクラシカルなフレーズなどアイディアを詰め込んだフランシス・モンクマン(Key/G)作のプログレッシブ・チューン。
ブラスセクションや軽快なパーカッション、クールなヴィブラフォンをフィーチュアした陽気なムードの#9。

#1,#3,#6など妖艶かつコケティッシュなソーニャ・クリスティーナの個性を活かしたバンドとしての佳曲がある一方、ダリル・ウェイやフランシス・モンクマンがそれぞれ勝手な事をやりまくった#4,#5,#7といった実験的作品も混在。
バンドとしての完成度とピークを極めた結果としての綻びが渦巻く最高傑作にして問題作。

Track List

1. Marie Antoinette
2. Melinda (More Or Less)
3. Not Quite The Same
4. Cheetah
5. Ultra-Vivaldi
6. Phantasmagoria
7. Whose Shoulder Are You Looking Over Anyway
8. Over And Above
9. Once Always A Ghost

CURVED AIR / Phantasmagoria のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

KHAN / Space Shanty

1972,UK

スティーヴ・ヒレッジ(G/Vo)を中心とした企画バンドKHANの1972年唯一作。

ブルーズ・ロック、ジャズ・ロック、サイケ・ポップが渾然一体となったサウンドは一聴すると掴み所無いですが、実はきちんとアレンジされた計算ずくのカッコ良いアート・ロック。
主役は勿論ヒレッジですが、ゲスト参加のURIEL~ARZACHEL時代の盟友デイヴ・スチュワート(Key)がオルガンやエレピで後のHATFIELDやNATIONAL HEALTHの片鱗を伺わせるユーモアがありつつも神経質なくらい細かいフレーズで楽曲を彩る独特のセンスを発揮しています。
随所にギターとオルガンのハモリや同じフレーズを追いかけっこのように奏でる完全にコンポーズされたスリリングなパートが配され、ヒレッジのベタとも言えるロック・ギターの常套句を連発させるアドリブのソロ・プレイとの対比もおもしろいですね。
ボーカル・パートのサビで見せる叙情性や、変拍子を自然に聴かせるセンスにCARAVANみたいな雰囲気も。どの楽曲も一筋縄では行かない内容の濃さ。これで当時20歳かそこらだったというから驚きと共に嫉妬すら感じてしまう脅威の1枚。

Track List

1. Space Shanty
2. Stranded
3. Mixed Up Man of the Mountains
4. Driving to Amsterdam
5. Stargazers
6. Hollow Stone

KHAN / Space Shanty のレビューを見る

カテゴリー: KHAN

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

GENESIS / Foxtrot

1972,UK

GENESISの1972年4thアルバムFoxtrot。

KING CRIMSONから譲られたメロトロンが鳴り響く#1。
キャッチーな中にも英国的な捻りを効かせた#2。
叙情性とスリルを併せ持つ演劇的な展開の#3。
中間部のオルガンとメロトロンによる叙情的なリフ、オルガンの分散和音フレーズによるソロなどトニー・バンクス(Key)節が爆発した#4。
スティーヴ・ハケット(G)のアコギがクラシカルな叙情を湛えた小品#5。
そして、7部からなる組曲構成の#6では緩急・静動を巧みなアレンジとボーカル・パフォーマンスで表現し22分超のドラマを紡いでいます。

内省的でこぢんまりとしたスケール感の中にも豊富なアイディアとピーター・ゲイブリエル(Vo)の圧倒的な存在感により独特のムードを醸成している、ゲイブリエル期GENESISの代表作です。

Track List

1. Watcher of the Skies
2. Time Table
3. Get 'Em out by Friday
4. Can-Utility and the Coastliners
5. Horizon's
6. Supper's Ready

GENESIS / Foxtrot のレビューを見る

カテゴリー: GENESIS

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

BEGGARS OPERA / Pathfinder

1972,UK

英国のプログレッシブロック・バンドBEGGARS OPERAの1972年3rdアルバムPathfinder。

適度なギターの歪みとオルガンの端整なプレイ、ヴォーカル・ハーモニーが格調すら感じさせる全編フック満載のキャッチーな歌メロとアレンジで彩られた楽曲が並んでます。
英国の俳優兼歌手リチャード・ハリス(「ワイルド・ギース」や「ハリー・ポッター」のダンブルドア先生役)が歌った68年のヒット曲のカヴァー#2では印象的なハープシコードを中心にオルガン、ピアノ、メロトロン など鍵盤が大活躍、テンポの緩急による場面転換や音密度の濃淡、朗々と歌い上げるヴォーカルと相まってスケールの大きなエピック・チューンに仕上がってます。
他の楽曲もクラシカル風味な#1やエッジの立ったギターにオルガンが絡むハード・ロック風味な#3、メロディアスなインストゥルメンタル#6等バラエティ豊かなサウンドで飽きさせません。

Track List

1.Hobo
2.Macarthur Park
3.Witch
4.Pathfinder
5.From Shark to Haggies
6.Stretcher
7.Madame Doubtfire

BEGGARS OPERA / Pathfinder のレビューを見る

カテゴリー: BEGGARS OPERA

タグ:

フォローもよろしくお願いします!

GENTLE GIANT / Three Friends

1972,UK

英国の超絶変態プログレ・バンドGENTLE GIANTの1972年3rdアルバムThree Friends。

3人の友人が大人になって別々の道を歩む・・・というストーリーのコンセプト作品。
印象的なリフレインが各種楽器で目まぐるしく奏でられる重厚でスリリングなインストパートと、ソフトなヴォーカルや完璧なコーラスからなる歌パートのコントラストにハッとする#1から、早くも微細にメロディが編みこまれた独自の世界が展開されてます。
#2では、やまびこのような左右ヴォーカルとハイを抑えたエレピが弾むように、それでいて淡々と進行する静かな前半から打って変わってメロトロン&ピアノによるミステリアスな後半が、流転する3人の人生を予見するような雰囲気を感じさせます。
そして、ヴァイオリンがアクセントとなっている#4は後半のギター、オルガン、ブラス等によるヘヴィなユニゾン・リフからインテンスな弾きまくりギター・ソロへの怒涛の展開がこれまた熱いです。
続く#5はパーカッシブなオルガンと軽快なヴァイオリンがリード。ユーモラスなメロディによるアンサンブルも挿入されていますが、実はメロディと音色が複雑に絡み合う多層構造なんですね。
そしてメドレー的に#6になだれ込み、突如シンフォニックにオルガンが鳴り響き大団円を迎えます。

Track List

1. Prologue
2. Schooldays
3. Working All Day
4. Peel the Paint
5. Mister Class and Quality?
6. Three Friends

GENTLE GIANT / Three Friends のレビューを見る

カテゴリー: GENTLE GIANT

タグ:

フォローもよろしくお願いします!

GENTLE GIANT / Octopus

1972,UK

ロジャー・ディーンによる幻想的なジャケットが美しいGENTLE GIANTの1972年4thアルバムOctopus。

多彩なアイディアをヴァイオリンや菅、ヴィブラフォンまで加えた様々な楽器音による演奏で緻密に紡いだ唯一無二のサウンドが、時代を超えて常に新鮮な驚きを与える名盤です。メインのメロディやリフを中心に組み立てられた”普通の”ロックとは対極に位置するそのスタンスこそが、まさにプログレッシブ。そんな複雑な音楽性でありながら、サクッと各曲4分程度で収めつつ、意外にキャッチーなコーラスとタイトな演奏で一気に聴かせてしまうハイセンスな30数分。
掴み所が無さそうで、食べてみたらプリプリした食感にハマってしまうタイトル通りタコのようなアルバムです。

Track List

1. Advent of Panurge
2. Raconteur, Troubadour
3. Cry for Everyone
4. Knots
5. Boys in the Band
6. Dog's Life
7. Think of Me with Kindness
8. River

GENTLE GIANT / Octopus のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

STRAWBS / Grave New World

1972,UK

STRAWBSの1972年5thアルバムGrave New World。
キーボードがYESに加入したリック・ウェイクマンからブルー・ウィーバーにチェンジ。様々な音色とフレーズで個性を楽曲に反映させていた前任者と比べると、一歩下がって俯瞰するかのようなスタンスで目立ちはしないが楽曲に必要不可欠のパートを堅実に演奏しています。

爽やかなアコギにオルガンやメロトロンの装飾とエレクトリック・ダルシマーと思しきソロまで登場するボリューム感満点のポジティブ・ナンバー#1で幕を開け、#5は大仰なイントロとメロトロンの白玉がプログレッシャーの心を鷲づかみに。
美しいコーラス・ハーモニーで始まる#7では、ハーモニウム(足踏みオルガン)にメロトロンやオルガン、そして叙情パートで単音メロディーを奏でるクラヴィオラインとウィーバー大活躍。

美しいメロディに本物のヴィンテージ・キーボードしか出し得ないオーガニックなサウンドが溶け合った至福のひとときが味わえます。

Track List

1.Benedictus
2.Hey, Little Man.... Thursday's Child
3.Queen of Dreams
4.Heavy Disguise
5.New World
6.Hey, Little Man.... Thursday's Child
7.Flower and the Young Man
8.Tomorrow
9.On Growing Older
10.Ah Me, Ah My
11.Is It Today, Lord?
12.Journey's End

STRAWBS / Grave New World のレビューを見る

カテゴリー: STRAWBS

タグ: , ,

フォローもよろしくお願いします!

GNIDROLOG / In Spite of Harry’s Toe-nail

1972,UK

GNIDROLOGの1972年1stアルバムIn Spite of Harry’s Toe-nail。

エキセントリックなヴォーカルとそれを軸にした、時に不条理的展開を見せる硬質なインスト部隊の演奏。まるでVAN DER GRAAF GENERATORのようだが、VDGGにおけるフリーキーなサックス・ソロのような突き抜けたアバンギャルド性はそれ程でも無く、もっとクールに統制されてます。
#1の後半”Skull”冒頭のフルートの繊細なフレージングを活かした素直な叙情性や#2での弦を交えた端正な暗黒叙情に、周到に計算された理性を感じさせます。
一方計算された混沌で異彩を放つのがアルバム中盤戦。静かに奏でられる不穏なモチーフがやがてバンドとして増幅され、神経を逆撫でするかのようなリフレインに発展し、それにビザールなヴォーカル・ラインが絡みつく#3。
アコギと管弦楽をバックにした田園フォークからハード・ロックに発展し、さらにねじれた不条理パートへと予測不可能な展開をみせる#4。
この辺りには既に孤高の香りすら漂いますね。
奇妙なフォーク・ナンバー小品#5を挟んでの組曲形式のラスト#6では、ブルーズ・ロック由来のインプロビゼーションを繰り広げ、意外とストレートに締めてます。

Track List

1.Long Live Man Dead: Long Live Man Dead/Skull
2.Peter
3.Snails
4.Time And Space
5.Who Spoke
6.In Spite Of Harry's Toenail: Goodbye-Farewell-Adieu/Harry'sToenail

GNIDROLOG / In Spite of Harry’s Toe-nail のレビューを見る

カテゴリー: GNIDROLOG

タグ:

フォローもよろしくお願いします!

RENAISSANCE / Prologue

1972,UK

英国プログレッシブ・ロックの華RENAISSANCEの1972年3rdアルバムRENAISSANCE。

ジェーン・レルフの歌唱をフィーチャーしたオリジナルRENAISSANCEからメンバーが全とっかえ。
アニー・ハズラム(Vo)、ジョン・タウト(Key)、ジョン・キャンプ(B)、テレンス・サリヴァン(Dr)、ロブ・ヘンドリー(G)の5人編成となりました。
ソング・ライティングにメインのマイケル・ダンフォード&ベティ・サッチャーに加え、#2と#5にオリジナル・メンバーのジム・マッカーティが絡んでいる所に過渡期な様子が伺えます。

ショパンの革命を引用したインストゥルメンタル#1で早くもアニーの美しすぎるスキャットが登場。
ジョン・タウトの華麗なピアノがリードしジョン・キャンプがボーカルを取る#2は、オリジナル期を彷彿させる翳りを持ったナンバーでアニーはコーラスのみ参加。
#3でようやくアニーがボーカルを披露。ピアノの端整な演奏をバックに美声を聴かせます。サビのハイトーンが完璧。
アコギとピアノを中心にコーラス・ハーモニーが美しいフォーク・ロック#4。
これまたピアノが美しいボーカル・ナンバー#5。
エキゾチックなムードの中、アニーのクリスタル・ヴォイスによるスキャットが映える#6。

オリジナル期を引き継ぎ、クラシックやフォークの要素を取り入れた歌物中心の端整な楽曲が並んでいます。
ジム・マッカーティによるオリジナル期のムード、エレキ・ギターの存在など、過渡期ならではのレアな味わいの中、Scheherazadeを思わせる#6に黄金期RENAISSANCEの要素の萌芽も垣間見れます。

Track List

1. Prologue
2. Kiev
3. Sounds of the Sea
4. Spare Some Love
5. Bound for Infinity
6. Rajah Khan

RENAISSANCE / Prologue のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

GNIDROLOG / Lady Lake

1972,UK

GNIDROLOGの1972年2ndアルバムLady Lake。

個性的なヴォーカル・メロディを中心に紡がれる暗鬱シンフォ路線はそのままに、整理されたアレンジを施すことによってドラマ性が大いに向上。インストパートにメリハリが付けられ、歌パートと合わせて楽曲としての完成度をアップさせています。

#1のサビはロックの持つカタルシスを感じさせるほどだし、叙情的な#2ではサックスのバッキングがヴォーカルと絶妙のマッチングを見せています。
美しくも寂寥感漂うフォーク・チューンの#3に続くタイトル曲#4では冒頭から3分が不条理系インストパート。その後のヴォーカルパートも不穏なムードで進み、サックスによるダークでヘヴィなリフレインで幕を下ろします。
#5では再びピアノの端正なバッキングに乗せたメロディアスな楽曲を配し、ラストの#6は一転してお待ちかね屈折路線。サックスがリードする不条理イントロとバッキングに、ヴォーカルやベース、ギター、オーボエが有機的に絡み、執拗に繰り返すリフレインが幻惑感をもたらします。
そして狂気のようなラスト・・・ジャケットのインパクトともども完璧なアルバムです。

Track List

1.I Could Never Be A Soldier
2.Ship
3.Dog With No Collar
4.Lady Lake
5.Same Dreams
6.Social Embarrassment

GNIDROLOG / Lady Lake のレビューを見る

カテゴリー: GNIDROLOG

タグ:

フォローもよろしくお願いします!

LATTE E MIELE / Passio Secundum Mattheum

1972,ITALY

イタリアの3人組プログレッシブ・ロック・バンドLATTE E MIELEの1stアルバムPassio Secundum Mattheum(受難劇)。

バッハの「マタイ受難曲」からインスピレーションを得、叙情的なメイン・メロディをベースにクラシックをはじめロックやジャズの要素を巧みに織り交ぜて編み上げたコンセプト・アルバム。
テーマがテーマだけに、ローマ法王御前演奏を行ったと言う伝説もあながちウソでも無さそう。
それにしてもそれが本当だとしたら、さすが音楽の歴史ではヨーロッパでも屈指のイタリアらしく懐が深いというか、よくこんなうるさいのが許されたものです。驚きです。

#4におけるロックなドラミングをバックにしてのチェンバロの厳かなアルペジオ、#5での混声合唱団のコーラスから自然に移行するアナログ・シンセのメロディ、ジャジィなピアノがリードする#6、スラッシュ・メタルの元祖かのようなシュレッドなギター・リフに、場末のジャズ・ピアノ、メロトロンが絡み壮大でスペイシーなシンセのメロディで絶頂を迎える#9と、当時若干16,17歳のメンバーが居た若いバンドとは思えない音楽的キャパシティの広さと老練な構成力に驚愕。
アコギとピアノを従えたハイトーンの歌唱が美しい#8、チャーチ・オルガンの荘厳なインストゥルメンタル#10、合唱団と語りで淡々と物語を紡ぐ#11、アルバム冒頭の合唱団を交えたテーマ・メロディを控えめに繰り返し余韻を残す#12、といったあたりのクラシカルなタッチの楽曲では確かな音楽的素養も感じさせます。

重いテーマをものともしない躍動感溢れる演奏と、多ジャンルの音楽的要素を力技で融合してしまうチャレンジ精神が眩しすぎます。

Track List

1. Introduzione
2. Giorno DeGli Azzimi
3. Ultima Cena
4. Getzemani
5. Processo
6. I Testimoni, Pt. 1
7. I Testimoni, Pt. 2
8. Pianto
9. Giuda
10. Re Dei Giudei
11. Calvario
12. Dono DeLla Vita
13. Mese di Maggio

LATTE E MIELE / Passio Secundum Mattheum のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

OSANNA / Milano Calibro 9

1972,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドOSANNAの2ndアルバムMilano Calibro 9。

映画のサウンドトラックで、作曲家ルイス・エンリケ・バカロフによる美しくドラマティックなストリングス・セクションにバンドのロック・サウンドが融合。
バンドが主導する小曲集の#3~#9では、暴虐のサックスとギターのユニゾンが痺れるヘヴィなジャズ・ロック、牧歌的フォーク、エキゾチックなラテン風味、ハード・ロックなど幅広い音楽性を高度なアンサンブルと爆発的なパッションで一気に聴かせる。
ギターやドラムからなるハード・ロック的音像を中心に、ある時は静謐で又ある時は吹き散らすフルート、幽玄なヴィブラフォン、スペイシーなモーグといった個性豊かな楽器を適所にフィーチュアするさじ加減も見事。
美麗なストリングスをバックに歌い上げるラストのカンツォーネは感動の一言。

Track List

1. Preludio
2. Tema
3. Variazione I
4. Variazione II
5. Variazione III
6. Variazione IV
7. Variazione V
8. Variazione VI
9. Variazione VII
10. Canzona

OSANNA / Milano Calibro 9 のレビューを見る

カテゴリー: OSANNA

タグ:

フォローもよろしくお願いします!

IL BALLETTO DI BRONZO / YS

1972,ITALY

イタリアの4人組プログレッシブ・ロック・バンドIL BALLETTO DI BRONZOの2ndアルバムYS。

1stではサイケ風味なポップス寄りプログレを演っていたようですが、ジャンニ・レオーネ(Key/Vo)が参加した本作では、オルガン、ピアノ、メロトロン、モーグ、スピネット、チェレスタといった鍵盤群が縦横無尽に暴れる暗黒プログレを展開。

ゲストの女性コーラスによる不穏なハーモニーをフィーチュアした異教のミサのような妖しいムードの#1。モジュレーションを掛けた痺れギター、スピネット(小型ハープシコード)の厳かな音色による変拍子不条理アルペジオ、などなど、これでもかと畳み掛ける中間部での熱にうなされたかのような怒涛のインプロビゼーションが圧巻。
#1のムードを引き継ぎ、ラストはスピネットの妖しくも典雅なインストゥルメンタルで締めくくる#2。
メロトロンの白玉がもたらす叙情を帯びた静寂を突き破り、不条理リフが性急な3連リズムでのたうつ#3。
オルガンを中止とした攻撃的で緊張感あるアンサンブルの#4。
モジュレーションを掛けたギターとベースの不気味なユニゾン・リフをバックに、アバンギャルドなピアノと女性コーラスが断末魔の叫びを上げるヘヴィな#5。

初期KING CRIMSONを病的に屈折させた感じのインストパートが、とにかくインパクト絶大です。

Track List

1. Introduzione
2. Primo Incontro
3. Secondo Incontro
4. Terzo Incontro
5. Epilogo

IL BALLETTO DI BRONZO / YS のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

JACKSON HEIGHTS / Bump ‘n’ Grind

1973,UK

元NICEのリー・ジャクソン(B/Vo)が結成したブリティッシュ・ロック・バンドJACKSON HEIGHTSの1973年4thアルバムBump ‘n’ Grind。

ブライアン・チャットン(Key)の優雅なピアノを中心にしたアレンジは従来通りながら、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス総勢21名のストリング・セクションを導入し、シンフォニックな要素も大幅増量しております。

シンフォニックなストリングスに爽やかなボーカル・メロディが乗った#1。
アコギとピアノがリードしバンジョーやオルガンの隠し味も効いた#2。
ヴァイオリン・ソロが英国的なペーソス感を醸し出す#3。
スリリングなピアノとハープシコードのユニゾン・ソロに加え、キース・エマーソンから借りたモーグのソロまで飛び出すミステリアスなムードのアップテンポな#4。
ストリングスがドラマティックに盛り上げるタイトル・チューン#5。
クラビネットのグルーヴィーなリフに乗った#6。
ハープシコードの端整な響きとくぐもったオルガンをバックに、神々しいコーラスとピアノ・ソロが映える#7。
軽く歪んだピアネットのまろやかなサウンドと半音階を使ったヒネリあるアレンジが印象的な#8。
ホンキートンク風ピアノがリードするロックン・ロール#9。

基本は爽やかでキャッチーなメロディに彩られたポップ・ミュージックなんですが、気品すら漂う真面目で端整なテイストに独特の翳りを少々加えたサウンドが非常に英国らしいムードを発散しています。
効果的に使用された各種鍵盤やマイケル・ジャイルズ(Dr)、イアン・ウォーレス(Dr)の参加といった要素も見逃せません。

Track List

1. I Could Be Your Orchestra
2. Spaghetti Sunshine
3. Long Necked Lady
4. Public Romance
5. Bump and Grind
6. Cumberland County
7. It's a Shame
8. Ladies in the Chorus
9. Whatever Happened to the Conversation

JACKSON HEIGHTS / Bump ‘n’ Grind のレビューを見る

カテゴリー: JACKSON HEIGHTS

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

EMERSON LAKE & PALMER / Brain Salad Surgery

1973,UK

荘厳なオルガンで幕を開ける#1のイントロからノック・アウト必至なELPの1973年5th。

キース・エマーソンのオルガンはもとよりグレッグ・レイクの歌声が気品に満ちています、オルガンがグイグイ引っ張るミステリアス&ヘヴィな#2でもムーグの味付けがスペイシーかつアバンギャルドでナイス。狂気のような前曲から打って変わって#3は優しいグレッグ・レイクのボーカルが癒してくれます。アコギのアルペジオも良いですね。#4はお約束のホンキートンク・ナンバー。チューニング甘めなピアノによる楽しい曲もELPの、っていうかキース・エマーソンの魅力ですね。そして#5。30分にも及ぶ長尺ながらELPのエッセンスが凝縮されており、どこを切ってもELP風フックの嵐。オルガン、ピアノ、ムーグは勿論大活躍。でも一番好きなのは、グレッグ・レイクによる(と思われる)エレキ・ギターによるスリリングにして荘厳なテーマ・メロディ。毎回、身震いするほどの感動と興奮を与えてくれます。

Track List

1. Jerusalem
2. Toccata
3. Still...You Turn Me On
4. Benny the Bouncer
5. Karn Evil 9: 1st Impression, Pt. 1
6. Karn Evil 9: 1st Impression, Pt. 2
7. Karn Evil 9: 2nd Impression
8. Karn Evil 9: 3rd Impression

EMERSON LAKE & PALMER / Brain Salad Surgery のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

YES / Tales From Topographic Oceans

1973,UK

ドラムがビル・ブラッフォードからアラン・ホワイトにチェンジしてのYESの1973年6thアルバムTales From Topographic Oceans。

ジョン・アンダーソン(Vo)の呪文のようなボーカルから始まり、寄せては引き引いては返す波のように緩急が程よく繰り返されるシンフォニックな#1。雄大な場面をメロトロン、鋭いオブリガードをピアノ、ソロではモーグ、とリック・ウェイクマン(Key)が場面に応じてカラフルにプレイし長尺の緊張感を保ってます。
桃源郷のような緩いムードが大半を支配する中、7拍子に乗ったアグレッシヴ・パートのテンションが心地良い#2。
小刻みなパーカッションをバックにしたアバンギャルドなスライド・ギター、スパニッシュ風なアコギのプレイ等スティーヴ・ハウ(G)がテクニックとアイディアを見せ付けた#3。
スティーヴ・ハウのシタールやアラン・ホワイトの叩き出すプリミティブな感じのビートがエスニックなムードを醸し出す#4。

アナログ時代はLP2枚各面毎に20分クラスの1曲を収録した合計4曲という超大作です。壮大なYES流シンフォニーに浸れます。

Track List

1. The Revealing Science Of God
/Dance Of The Dawn
2. The Remembering
/High The Memory
3. The Ancient
/Giants Under The Sun
4. Ritual
/Nous Sommes Du Soleil

YES / Tales From Topographic Oceans のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

CARAVAN / For Girls Who Grow Plump in the Night

1973,UK

CARAVANの1973年5thアルバムFor Girls Who Grow Plump in the Night。

デイヴ・シンクレア(Key)が復帰したものの、作曲・歌唱の一翼を担っていたリチャード・シンクレア(B/Vo)が脱退し、ほぼ全曲を書き上げたパイ・ヘイスティングス(G/Vo)のまさに独壇場。前作のジャズ・テイストはかなり後退し、クールでキャッチーなポップ・テイストが爆発しております。
しかし、単に軽いだけのポップに陥らないのがCARAVANの凄い所。従来のオルガンに加え、当時最先端のARPやDAVOLI等シンセサイザーが随所に導入されフックとなりながらも、一方では新加入したピーター・ジェフリー・リチャードソン(Viola)のヴィオラがオーガニックな気品をプラスしバランスを取ってる感じです。

ギター・リフがリードするソリッドなポップ・ロックに管楽器隊をバックにしたフルートの叙情パートが融合した前半と、サビの一瞬の叙情が堪らないシャッフル・ナンバーによる組曲#1。
7拍子をセンス良く料理した、ギターのハギレ良いカッティングによるポップ・チューン#2。
くすんだエレピとリチャード・コフラン(Dr)の軽快なフィルが印象的で爽やかに仕上がった#3。
ミステリアスなリフに乗った#4。
シンセとヴィオラが巧く溶け合って、優しいムードを醸し出すメロディアスな#5。
エレクトリック・チェロのリフがリードする前半とコンガに乗ったムーディな後半からなる組曲#6。
そして前作でも試みられたオーケストラの導入をより進めた#7では、英国ロックではお馴染みのマーティン・フォード指揮のオーケストラとバンドが融合し、シンフォニックでドラマティックなサウンドを完成させております。

Track List

1. Memory Lain, Hugh / Headloss
2. Hoedown
3. Surprise, Surprise
4. C'thlu Tmu
5. The Dog, The Dog, He's At It Again
6. Be Alright/Chance of A Lifetime
7. L'Auberge Du Sanglier / A Hunting We Shall Go / Pengola / Backwards / A Hunting We Shall Go(Reprise)

CARAVAN / For Girls Who Grow Plump in the Night のレビューを見る

カテゴリー: CARAVAN

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

JONESY / Keeping Up

1973,UK

英国のジャズ風味プログレ・バンドJONESYの1973年2ndアルバムKeeping Up。

メロトロンと時にクサいまでのベタな泣きメロが特徴。3~4の緊迫した展開や哀愁とメロトロンたっぷりの#7が素晴らしいです。9分に及ぶラストの#8は独自の静謐かつスリリングな世界を大活躍のメロトロンを中心にトレモロを効かせたGやナイスなアクセントを加える菅により表現する傑作。

Track List

Track List

1. Masquerade
2. Sunset And Evening Star
3. Preview
4. Questions And Answers
5. Critique
6. Duet
7. Song
8. Children

JONESY / Keeping Up のレビューを見る

カテゴリー: JONESY

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

MIKE OLDFIELD / Tubular Bells

1973,UK

マイク・オールドフィールドが、ほとんどの楽器を1人で演奏しテープMTRでダビングを繰り返し完成させたミニマル・ミュージックの超大作Tubular Bells。
制作当時何と19歳。オカルト映画の名作エクソシストで一部のフレーズが使用されました。

Track List

1. Tubular Bells Part One
2. Tubular Bells Part Two

MIKE OLDFIELD / Tubular Bells のレビューを見る

カテゴリー: MIKE OLDFIELD

タグ:

フォローもよろしくお願いします!

Search

Twitter

Facebook

TOP