MAGENTA のレビュー

MAGENTA / Revolutions

2001,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドMAGENTAの2001年デビュー作Revolutions。

いきなり2枚組で、20分クラスの組曲を4つ含む7曲という構成ながら通して一気に聴けてしまう。それは曲作りが巧みだから。
サビの盛り上がりを連想させるキャッチーなオープニングでハートを鷲づかみにした後は、手を変え品を変えてのシンフォニックで痒いところに手が行き届いたアレンジで集中力を持続させます。
アコギ、シンセ、ローズ、オルガン等楽器の音色もカラフルでいながらケバケバしくならない上品なセレクトで楽曲の各パートに必然性を持って登場するので飽きない。そしてなんといってもクリスティーナ嬢の気品ある歌唱が英国産である事を高らかに主張。”動”の場面ではパワフルに”静”の場面ではしっとりと、表現力バッチリに聴かせます。

Track List

1. Children Of The Sun
2. Opus 1
3. The White Witch
4. Man The Machine
5. Opus 2
6. Genetesis
7. The Warning

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MAGENTA / Seven

2004,UK

女性ボーカルをフィーチュアした英国シンフォ・バンドMAGENTAの2ndアルバムSeven。

YESやRENAISSANCEが引き合いに出されるようだが、どうなんでしょう?
確かにコーラスはYESっぽいけど、それほどテクニカルで複雑でもないし、RENAISSANCE云々に至っては女性ボーカルだけが唯一の共通点って感じも。
それより、そんな形容が不要なほどMAGENTAとしてのスタイルが確立されていると思います。
細かいヴィブラートが独特で澄み切ったクリスティーナ嬢の歌声、英国らしい落ち着いた雰囲気と叙情性、現代のバンドらしいデジタル・シンセのクリアなサウンド。
「七つの大罪」をタイトルに戴く楽曲は、そのほとんどが10分クラスの長尺でじっくり、しっとり聴かせます。
シンセ等と生の弦が織り成すオーケストレーションが、凛とした空気感と適度なウェット感の絶妙なバランスで独特の音場を醸成。しっとりした#2や#5は女性ボーカル・ファンなら必聴です。

Track List

1. Gluttony
2. Envy
3. Lust
4. Greed
5. Anger
6. Pride
7. Sloth

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MAGENTA / Home

2006,UK

MAGENTAの2006年3rdアルバムHome。

自分のHOME=心の拠り所を求めてアメリカを旅する、英国女性の心象風景が描かれたコンセプト・アルバム。
場面転換を促す小曲によって軸となる4~7分の各曲が有機的に繋がり、物語が進行していく。前作の名盤「Seven」程レンジの広いドラマ性は無く、強弱の振幅が狭く絞り込まれている印象。しかし、その分静かに語られるストーリーがより心に染み渡る効果をもたらしている。
アレンジ面も派手なオーケストレーションや変拍子は控えめで、エレピやオルガンにアコギといった素材の良さが活かされている。クリスティーナ嬢の歌唱も又しかりで、切々と歌われるメロディに気品あるしっとりした歌声が絶妙なマッチングを見せている。

Track List

1. This Life
2. Hurt
3. Moving On
4. My Home Town (Far Away)
5. Brave New Land
6. The Journey
7. Towers of Hope
8. Demons
9. Morning Sunlight
10. Joe
11. A Dream
12. The Visionary
13. Journey’s End
14. The Travellers Lament
15. Home

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MAGENTA / Metamorphosis

2008,UK

英国の女性ボーカル・シンフォ・プログレ MAGENTAの5thアルバムMetamorphosis。

20分クラスの長尺曲#1と#3を擁する全4曲という、1st”Revolutions”や2nd”Seven”といった初期の名作を思い起こさせる”らしい”構成で、否が応でも期待は高まるというものです。
内容も期待に違わず濃厚。
クリスティーナ(Vo)の若干鼻にかかったナチュラル・ヴィブラート・ヴォイスや荘厳なシンセによるアレンジ、印象的なメロディによるコーラス・パートは健在。
要所要所で生のストリングス・セクションやこの筋では引っ張りだこのゲスト トロイ・ドノックリーによるイリアン・パイプスのスパイスを効かせ、彼ら独特のしっとりとした世界を醸成している点も初期の姿そのもの。
さらに今作では、アルバム・カヴァーのインパクトを体現したかのようなヘヴィなギター・リフも増量。
そのヘヴィさに最初はたじろぎましたが、#1は第一次世界大戦に赴く兵士の物語だし、#3に至っては精神分裂症者による連続殺人の話、ということで徐々に曲のテーマを表現する為の必然であることに気付きます。
といっても、ヘヴィ・メタルのように表層的な激しさによる表現ではなく、もっと繊細なタッチで心象風景を描くような芸風なので、構えずに奥行きのあるサウンドに身を任していればいいんですよね。
#3ラストのスライド・ギターがかぶさるリフレインや”Seven”の繊細なしっとり感を想起させる#4。
この辺りの豊かな叙情性は、うっとり没入してずっと聴いていたくなる程です。

Track List

1. Ballad of Samuel Layne
2. Prekestolen
3. Metamorphosis
4. Blind Faith

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MAGENTA / Chameleon

2011,UK

ロブ・リード(G/Key)率いるウェールズの女性ボーカル シンフォ・バンドMAGENTAの6thアルバム Chameleon。

シンセのリフからスタートしスケールの大きな展開の中、クリスティーナ・ブース(Vo)の柔らかい声質の歌唱が響く#1。
イントロでしっとりシンフォニックなストリングス・セクションにシンセ・ストリングスが絡み、流行の(?)オート・チューンを掛けたボーカルで意表を突く#2。歌唱パートはコンテンポラリーなテイストでメロディック&キャッチーに進行。ストリングスのオブリガードやクリス・フライ(G)による叙情的なアコギの間奏が強力なフックとなっています。
アコギのアルペジオをバックにした叙情パートとハード・エッジなギターがリードするヘヴィなパートを劇的に対比させた#3。サビにおけるピアノのアルペジオが初期ゴシック・メタル風でもあります。
クリスティーナの美声をフィーチュアしたバラード#4。中間部の静謐なシンセ・ソロからバンド・インし壮大に盛り上がります。
6拍子+4拍子パターンのリズムの仕掛けが耳を惹く#5。ピアノやクワイヤによる荘厳な中間部が、全体に漂う叙情ムードを増強。
Sevenの名バラードAngerを彷彿させる、クリス・フライのアコギ1本による叙情的なインスト・ナンバー#6。
エッジの効いたギターがリードするダークなテイストの#7。
しっとりした中にも爽やかさを感じさせる、コンテンポラリーな質感の#8。

雄大な演奏をバックにクリスティーナの伸びやかな歌唱とスライド・ギターが映える#9。クワイヤにチャイムを絡めたエンディングに向けてのリフレインが感動的。

20分クラスの大作2曲を含む4曲構成に加えヘヴィなエッジとダークな色彩で重苦しさすら感じられた2008年の前作Metamorphosisから一転し、幾分コンパクトにまとめた9曲構成となった新作。
コンパクトな中にキャチーさとプログレッシブな要素を巧く凝縮し、各曲の起承転結がはっきりとまとめられています。
名盤Sevenと同等の出来じゃないですか、これは。

Track List

1. Glitterball
2. Guernica
3. Breathe
4. Turn the Tide
5. Book of Dreams
6. Reflections
7. Raw
8. The Beginning of the End
9. Red

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MAGENTA / The Twenty Seven Club

2013,UK

MAGENTAの6thアルバムTwenty Seven Club。

ケルティック・シンフォの傑作KOMPENDIUMでも手腕を発揮したロブ・リードの才能はまだまだ尽きる事の無いようで、本家MAGENTAの新作においてもドラマティックなシンフォニック・ロックを展開している。
アルバム・タイトルは27歳で他界したミュージシャン達の総称で、収録された各曲もそれぞれが故人をテーマにしたものになっており、あまりにもストレートな楽曲タイトルや#2でのクライベイビー、#6でのアコギのスライドギターなど故人のプレイのオマージュにもニヤリとさせられる。

ミステリアスな中近東ムードで幕を開ける#1(ジム・モリソン)。曲調が様々な表情を見せて変貌していき、軽やかな雰囲気のパートを盛り込みながら叙情的に盛り上げる展開の妙が楽しめる。タイトルは爬虫類に関心があったジム・モリソンにちなんで2013年に命名された4000万年前に生息していた巨大トカゲに由来している。
ワウを掛けたギターが主導し、ストリングス・セクションも絡め躍動感あるパートからダークなパートなどを経て大団円を迎える#2。(ジミ・ヘンドリックス)
悲しくくぐもったエレピがリードするバラード#3(ジャニス・ジョプリン)。
シンセが全編で活躍、静動の起伏を付けながら展開し、終盤の切ない叙情が胸に突き刺さる#4。(ブライアン・ジョーンズ)
ゆったりとしたテンポでスケール感あるアレンジで聴かせる#5。(カート・コバーン)後半はスライド・ギターの泣きにストリングス・セクションを絡め怒涛の叙情で畳み掛ける。
転調による場面転換で進行、オマージュとしてアコギのスライドがあしらわれたパートを持つ#6(ロバート・ジョンソン)。

テーマがテーマなだけにハッピーな感じは無いものの、故人の生前の活躍を髣髴させる躍動感あるパートや、魂を鎮めるような叙情パートなど才人ロブ・リードのストーリー・テラー振りにまたしてもやられたという感じ。

Track List

1. The Lizard King
2. Ladyland Blues
3. Pearl
4. Stoned
5. The Gift
6. The Devil at the Crossroads

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MAGENTA / We Are Legend

2017,UK

MAGENTAの7thアルバムWe Are Legend。

シンセによるまろやかなサウンドスケープを切り裂いて不安を煽るかのようなスリリングなテーマ・メロディに移行する#1。
パーカッシブなブリッジを経てのボーカル・パートはクリスティーナ・ブース(Vo)のフェミニンな歌唱を活かした抒情テイストでフックとしても充分。その後もベテランらしいスケール感やメロディアスなパートを織り重ねて展開。それぞれのパートのクオリティはさすがのロブ・リード(G/Key)印ながら、各ピースを繋ぎ合わせて長尺26分超の大曲として昇華させるだけの大団円の魅力に乏しく結果的に散漫な印象。
コンテンポラリーでクールな感覚とドラマティックなサビのギャップでリスナーの心を掴む#2。
枯れたギターやくすんだオルガンによるインスト・パートが英国ロックのクラシックに則った手法でクリスティーナのエモーショナルな歌唱とも相性良好。#1とは逆に世界観やムードが一貫しており、楽曲が紡ぐストーリーに引き込まれる。
ギターによる少々ベタな抒情テーマ・メロディや静謐パートが名作Sevenを彷彿させる#3。
シンセの無機的なシーケンス・フレーズと繊細なタッチのピアノがドラマティックな対比を生んでいる。

長尺3曲収録ながら全体の尺は50分を切っており、非常に聴きやすい構成になっている。
特に#2と#3は、展開が巧みで10分超であることを感じさせない充実度。病気からの復帰作としては先にソロThe Lightをリリースしていたクリスチーナもブランクを感じさせない歌唱を聴かせている。

Track List

1. Trojan (26:09)
2. Colours (10:47)
3. Legend (11:32)

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MAGENTA / Masters of Illusion

2020,UK

MAGENTAの8thアルバムMasters of Illusion。『魔人ドラキュラ』主演俳優の#1をはじめ、50~60年代ホラー映画の名優達を題材にしたコンセプト作。

凝ったリズムがボーカル・メロディにガッチリ噛み合ってポップな耳馴染みの良さを感じさせる。ロブ・リード(Key)らしいドラマティックなオーケストレーションやコーラスのアレンジとクリスティーナ・ブース(Vo)の美声で一気にMAGENTAワールドに引き込まれる#1。
モーダルな歌メロが浮遊し、アコギと柔らかな管楽器による穏やかで気品あるアレンジがRENAISSANCEを彷彿させる#2。
ポジティブで高揚感ある展開の中間部を持つ、サビメロが温かく優しさに満ちたバラード・チューン#3。
コンテンポラリーなムードとシンフォニックな要素をコンパクトにまとめたプログレ・ポップ・チューン#4。
感傷的な序盤からボーカルを引き立てるシンフォニックなパート、客演のピート・ジョーンズ(Sax)をフィーチュアしたシンセとの掛け合いを含む器楽パート、と場面転換しながら終盤はトロイ・ドノックリーのイリアン・パイプが仄かな郷愁を残す#5。
抒情的なテーマを奏でるマイルドなエレキ、YESを彷彿させるチャカチャカしたワウ・ギター、アコギなど各種ギターにオルガンやアナログ・シンセの鍵盤群など、バンド・サウンドを中心に長尺を紡ぐ16分超えのエピック・チューン#6。

全編を覆う端正な英国感と穏やかな温かみが心地よい秀作。

Track List

1. Bela
2. A Gift From God
3. Reach For The Moon
4. Snow
5. The Rose
6. Masters Of Illusion

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