SPIRITUAL BEGGARS のレビュー

SPIRITUAL BEGGARS / Spiritual Beggars

1994,SWEDEN

デスメタル・バンドCARCASSを脱退したスウェーデン人ギタリスト マイケル・アモット(G)、少々ダミ声で王道ハード・ロック的歌唱のスパイス(Vo/B)、3ピースならではのサウンドの隙間を活かしたグルーヴィなリズムを刻むルディック・ヴィット(Dr)の3人組HR/HMバンドSPIRITUAL BEGGARSの1stミニ・アルバム。

ジミヘンを重厚でメタリックにしたかのようなリフでグイグイ押しつつ、終盤は3拍子の変態ジャジーなジャムでフェイド・アウト、と意外なヒネリを加えた#1。邪悪なブギーでグルーヴィに展開、サビのバッキングが何となくTHIN LIZZYっぽいムードの#2。またもやジミヘン風リフのヘヴィ・ロック#3。ミディアム・スローなテンポの#4。ズ太い単音ユニゾン・リフが牽引する#5。軽めのディストーション・サウンドによるファンキーなリフからサビでは邪悪でヘヴィ・メタリックなサウンドに発展する#6。歪み+トレモロをかけたギター・サウンドも良い感じです。

3ピースというバンド構成最小単位の利点であるタイトなアンサンブルと音の密度の濃淡を活かしたダイナミクス表現が巧み。リフで構成されたオールド・スクールな70年代風ハード・ロックがモデルですが、ブルーズ臭さは皆無でむしろサイケな感じ。ダウン・チューニングによる重低音や現代的なディストーション・サウンドでこういった音楽を演るのが新鮮でした。

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SPIRITUAL BEGGARS / Ad Astra

2000,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いる70年代ロックのグルーヴとフレイヴァーを持ったスウェーデンのバンドSPIRITUAL BEGGARSの2000年4th。

本作よりペル・ヴィバリ(Key)がメンバーとして正式にクレジットされており、オールド・スクールなオルガン・サウンドを中心にフェンダー・ローズ、メロトロンなども駆使し、リフ、バッキング、ソロと全編で活躍しております。ギターとオルガンによるグルーヴィなリフで早くも独特の音世界に引きずり込む#1。現代的ブルーズ・ロックをベースに、ギター・ソロではマイケルの官能的なフレーズを聴かせる#2。性急なリフから一転し、ユニークなコードを使ったバッキングが新鮮な#3。轟音リフとメロウなアルペジオ&コーラス・パートのコントラストにハッとする#4。ヘヴィなリフとクラシックHRのテイストが融合した#5。空間を活かしたリフからのメロディアスな展開が秀逸な#6。グルーヴィなシャッフルをベースにTHIN LIZZY風なギターのオブリガードがニヤリとさせる#7。ディレイを使用したSEによるトリップ感と広がりのあるサビでスケールの大きさを感じさせるミディアム・テンポの#8。BLACK SABBATH風なうねるリフを持ちながらも、カラフルかつキャッチーに展開する#9。ルディック・ヴィット(Dr)の叩き出す様々なビートがリードする#10。サビのハンド・クラップも良い感じです。バンドが一体となって音塊をぶつけ、ハード・ロックの醍醐味を体現した#11。トレモロを効かせたローズでメロウに進行しオルガンやメロトロンで陰影を加えた前半から、ブ厚いリフの登場と共にギター・ソロとオルガン・ソロをフィーチャーしドラマティックな盛り上がりを見せる#12。ギターのエッジが立った現代的なサウンドで、クラシック・ロックのテイストを巧く消化した独自のハード・ロックが楽しめます。

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SPIRITUAL BEGGARS / On Fire

2002,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いるスウェーデンのハード・ロック・バンドSPIRITUAL BEGGARSの2002年5th。

脱退したスパイス(Vo/B)の後任にGRAND MAGUSのJB(Vo)とTHE QUILLのロジャー・ニルソン(B)が加入。又、本作よりペル・ヴィバリ(Key)がメンバーとして正式にクレジットされており、オールド・スクールなオルガン・サウンドを中心にフェンダー・ローズ、メロトロンなども駆使し、リフ、バッキング、ソロと全編で活躍しております。不穏なサイレンのSEからダーティなオルガンが唸りを上げる爆裂ハード・ロックン・ロールに突入する#1。早くもJBのパワフルな歌唱がバンド・サウンドに完璧にフィットしております。超ヘヴィ・リフによるドゥームなイントロから、ザクザクした刻みのギターとオルガンがバックを固めるブルーズ・ベースのヘヴィ・ロックに展開する#2。ギターとオルガンによるキャッチーなリフを持つオールド・スクールなメロディアス・ハード・ロック#3。サウンドのスキ間を活かしたルディック・ヴィット(Dr)のドラミングが印象的です。ミディアム・テンポの中に様々なリズム・パターンを織り交ぜ、サビではメランコリックな表情を見せる#4。JBのディープでセクシーな歌唱がデイヴィッド・カヴァデールを彷彿させます。冒頭にモーグのスペイシーなソロを配したエピック・チューン#5。スケールの大きなリフは、ライブではオーディエンスによる「Oh~Ohhh~」で再現されるパターンですね、これは。間髪置かずに始まるBLACK SABBATH風のソリッドでコンパクトなリフがカッコ良い#6。SEとメロトロン、クリーンなギターが織り成すムーディなインストゥルメンタル小品#7。シンコペーションの単音リフがRAINBOWっぽい#8。ビッグな縦ノリのリフに思わずヘッド・バンギングしたくなる#9。ギターとオルガンの熱いバトルも聴き所です。アコギとパーカッションをバックにマイルドなシンセが浮遊するイントロの70年代っぽさと、ヘヴィなリフに雪崩れ込んでからのクールな展開が痺れる#10。マイケルのタメにタメたブルージーなフレージング、絶妙なトーン・コントロールによる感情表現が見事なソロ。そしてそれに続くペルのオルガン・ソロがまた良い感じのフィーリング。JBの歌唱を活かした哀愁のサビを持つハード・ロック#11。ワウを絡めて泣きまくるマイケルのソロがナイスです。随所でニヤリとさせる70年代クラシック・ロックのテイストを、現代的ヘヴィネスとの融合でアップデートしたハード・ロックの名盤です。

Track List

1. Street Fighting Saviours
2. Young Man, Old Soul
3. Killing Time
4. Fools Gold
5. Black Feathers
6. Beneath the Skin
7. Fejee Mermaid
8. Dance of the Dragon King
9. Tall Tales
10. The Lunatic Fringe
11. Look Back

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SPIRITUAL BEGGARS / Demons

2004,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いるスウェーデンのハード・ロック・バンドSPIRITUAL BEGGARSの2004年6th。

脱退したロジャー・ニルソン(B)に代わりARCH ENEMYでマイケルと同僚のシャーリー・ダンジェロ(B)が加入。しかし既に、マイケルのリフ・センスと泣きのギター、ルディック・ヴィット(Dr)の”メロディアス”なドラム、JB(Vo)の猛々しくも巧いボーカル、ペル・ヴィバリ(Key)のヴィンテージ・キーボードが醸成するバンドとしてのフレーヴァーは確立されており、本アルバムで打ち出された強力な楽曲群のベクトルにはいささかのブレもありません。重厚なオープニング#1に続き、スローな叙情パートを織り交ぜアップテンポで飛ばす#2。豪快なリフを軸とワウを絡めたメロディアスなソロを聴かせる#3。歯切れ良いキャッチーなギター・リフと底辺を支えるベースのラインが融合して独特なグルーヴを生み出す#4。JBの深みある歌唱がダーティなオルガンに乗るブルージーな序盤から3連のグルーヴがTHIN LIZZYを彷彿させる後半へと展開する#5。シンプルなブルーズ・ベースのヘヴィ・ロックにメランコリックなムードを加えた#6。ワウとコード・ヴォイシングがジミヘン風なリフがリードしつつサビがメロディアスで印象的な#7。緊張感あるリフをアクセントにボーカル・パートではブルージーに展開する#8。#8のテーマ・メロディを軸にピアノやメロトロンで清廉かつ静かに、何となくアジアン・テイストなムードでリプライズした#9。B♭の重低音キーでアルバム随一のヘヴィで邪悪なリフがのたうつ#10。ユニークなリフと試走するボーカル・パートの起伏が面白い#11。歪んだエレピのソロをフィーチュアした、躍動するパートとメロウに聴かせるパートを持つ3連リズムの#12。厳かな中にもダーティに歪んだオルガンの白玉をバックに、JBのマイルドで深みのある歌唱がドラマティックなメロディを紡ぐ#13。70年代ハード・ロック・バンド達のリフやフレーズそのものを拝借するのでは無く、あくまでもオリジナルでいながら上手に先達が漂わせていたムードとかグルーヴを滲み出させるセンスが素晴らしいです。

Track List

1. Inner Strength
2. Throwing Your Life Away
3. Salt in Your Wounds
4. One Man Army
5. Through the Halls
6. Treading Water
7. Dying Every Day
8. Born to Die
9. Born to Die (Reprise)
10. In My Blood
11. Elusive
12. Sleeping with One Eye Open
13. No One Heard

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SPIRITUAL BEGGARS / Return to Zero

2010,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いるスウェーデンのハード・ロック・バンドSPIRITUAL BEGGARSの2010年7th。

脱退したJBに代わり元FIREWIND、TIME REQUIEMのアポロ・パパサナシオ(Vo)が加入。前任者に負けず劣らずパワフルな歌唱からディープ・ヴォイスまで幅広くこなす実力者で、SPIRITUAL BEGGARSのオールド・スクールなタイプの音楽性にもぴったり。ペル・ヴィバリ(Key)の物悲しいモーグ風シンセをフィーチュアした静かなオープニング小品#1から、重くブルータルなリフの#2へ。定番の展開でありながらも、やはり心躍るものがありますね。ゆったりした流れに堂々としたアポロの歌唱が響き、中間部の厳かなペルのオルガンからワウを掛けた官能的トーンのギター・ソロに至る流れも感動的。アポロのプレゼンとしては申し分ない楽曲に仕上がってます。キャッチーなリフにリズムのフックを取り入れた#3。9thコードがクール。前作制作時から暖めていたアイディアに、マイケルの妻アンジェラ・ゴソウが作詞で協力して完成したという#4。ドゥーミーな単音リフがのたうつ超ヘヴィな前半、アップテンポにギアチェンジしカッコ良くドライヴする後半と、2度楽しめます。オーディエンス・ノイズを被せたライヴ向きのシンプルなシャッフル・ナンバー#5。トライバルなパーカッションとクリーンなギターをバックに、アポロの表現力の広い歌唱が郷愁を誘う異色のインディアン風ナンバー#6。UFOのDoctor Doctorを想起させる3連グルーヴの#7と、リフのネタ元がMSGのDesert Songであることが明白な#8。この辺はマイケル・シェンカー・タイム!終盤のギター・ソロではMSGのLet Sleeping Dogs Lie風フレーズまで登場。ワウ掛けてこのテンポで良い気分で浸って弾いていると勝手に出てきちゃうんでしょう。もう指が覚えてて。ジミヘン風グルーヴを持つメロディアスなナンバー#9。バッキングとソロでオルガンが効いてます、レズリーの回転数切り替えもバッチリ。デイヴィッド・カヴァーデールを彷彿させるアポロの歌唱に、サビのコード進行やメロディ、ペルが弾くジョン・ロードっぽいピアノやオルガンが70年代WHITESNAKEのヴァイブを感じさせる#10。ブルージーな#11、ピアノとメロトロンをフィーチュアしたバラード#12、とアルバム終盤はメランコリックに締めてます。70年代ハード・ロックの旨味を自分達流に消化する手法は相変わらず巧くて、もう感心してしまいますね。今回はいつにも増してモロなマイケル・シェンカー風もありますが、楽しんで作った結果として滲み出たものだと思うので微笑ましいです。ARCH ENEMYが売れて、SPIRITUAL BEGGARSの活動に割く時間がなかなか取れないようですが、次も期待しちゃいますね、これは。

Track List

1. Return to Zero
2. Lost in Yesterday"
3. Star Born
4. The Chaos of Rebirth
5. We are Free
6. Spirit of the Wind
7. Coming Home"
8. Concrete Horizon
9. A New Dawn Rising
10. Believe in Me
11. Dead Weight
12. The Road Less Travelled
13. Time to Live

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SPIRITUAL BEGGARS / Sunrise To Sundown

2016,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いるスウェーデンのクラシック・スタイルなHM/HRバンドSPIRITUAL BEGGARSの9thアルバムSunrise To Sundown。アポロ・パパサナシオ(Vo)加入後3作目。

オールド・スクールなリフにアポロ・パパサナシオのパワフルな歌唱が乗るハード・ロック#1。ワウを効かせた叙情ギター・ソロや躍動感あるペル・ヴィバリ(Key)のオルガンも良い。
ジョン・ロード風オルガンをイントロに配した、ソウルのテイストを導入した第三期DEEP PURPLE風チューン#2。
ダークなイントロから調性の曖昧な埃っぽいIRON MAIDEN風リフを経てアップテンポなハード・ロックを展開する#3。インスト・パートは、ジョン・ロード風のクラシカルなオルガン・パートとトニー・カレイやドン・エイリーを彷彿させるスリリングなシンセ・ソロを聴かせるペル・ヴィバリが活躍。全体的な疾走感やメロディアスさはRAINBOW風なカッコ良いナンバー。
シンプルなリフに被さるマイケル・アモットによる叙情オブリガードが印象的な#4。
ルディック・ヴィット(Dr)の叩き出すビートをベースに進行するブルーズ・ロック・タイプの#5。
シズル感溢れるルディック・ヴィットのハイハット・ワークが光るミディアム・スローのドッシリした#6。中間部にはエフェクトを掛けたボーカルやメロトロンが登場するサイケなパートを挿入し、意外性のある展開を見せる。
ルディック・ヴィットによるメロディックかつヘヴィなドラム・シークエンスをフィーチュアした#7。歌メロはメランコリックなバラードだが、このドラムにより強烈に楽曲のキャラが立っている。
ワイルドなカッティングと鋭く切り込むオブリガード、単音リフがカッコ良いギター・オリエンテッドなモダン・ハード・ロック#8。
メロウなハード・ロックにメロトロンの白玉が加わることで70年代英国ロックが薫り立つ#9。シャーリー・ダンジェロ(B)のメロディアスなランニング・ベースが楽曲に深みを与えている。
エネルギッシュなタテ乗りハード・ロック#10。
アポロ・パパサナシオのエモーショナルな歌唱をフィーチュアした渋いブルーズ・ロック#11。

取り立ててスーパー・プレイヤーが存在するわけではないし、やってることはかつてのレジェンドを彷彿させるオーソドックスなハード・ロック。だが、心に残るギターを聴かせるアイケル・アモットをはじめとした各メンバーの個性豊かなプレイとツボを心得たアレンジでSPIRITUAL BEGGARSならではの世界観が表現されている。

Track List

1. Sunrise to Sundown
2. Diamond Under Pressure
3. What Doesn't Kill You
4. Hard Road
5. Still Hunter
6. No Man's Land
7. I Turn to Stone
8. Dark Light Child
9. Lonely Freedom
10. You've Been Fooled
11. Southern Star

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