ヒプノシス のレビュー

PINK FLOYD / Atom Heart Mother

1970,UK

PINK FLOYDの5thアルバムAtom Heart Mother。

バンドのオルガンやスライド・ギターが、管楽器を中心とするオケや混声コーラスに溶け込み、あるいは場面ごとに交互に見せ場を担当することで23分超を紡ぎあげた#1。オーケストラといっても各パートがフルに演奏している訳ではなくシンプルにアレンジされた結果、あくまでもロック・ミュージックとしてのPINK FLOYDの音楽として成立。ブルージーなバンド主体の演奏が次第にシンフォニックに移行していく様子やSEを織り交ぜた前衛的なパートなど、ロックとオーケストラの単純な融合に止まらない意欲と冒険に満ちている。オケのアレンジを担当したという現代音楽家ロン・ギーシンのバンドの意図を汲んだ仕事ぶりが光る。
ロジャー・ウォーターズ(B)による牧歌的なムードに内包された内省的な弾き語りフォーク#2。
サイケの薫り漂う緩めのフォークに、ブラス・セクションで印象的なフックを付加したリック・ライト(Key)作の#3。
デイヴ・ギルモア(G)作のレイドバックしたラブソング#4。
朝食の風景のSEにピアノやアコギの端正な演奏を軸にした音楽を挿入した#5は、実験的でいながらポップな親しみやすさも併せ持っている。

ヒプノシスが担当したジャケット・アートや邦題「原始心母」のインパクトとも相まって、プログレの代表作として永遠に語り継がれるであろう作品。

Track List

1. Atom Heart Mother
I. Father's Shout
II. Breast Milky
III. Mother Fore
IV. Funky Dung
V. Mind Your Throats Please
VI. Remergence
2. If
3. Summer '68
4. Fat Old Sun
5. Alan's Psychedelic Breakfast

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PRETTY THINGS / Parachute

1970,UK

ヒプノシスによるジャケットが美しい英国サイケデリック・ポップバンドPRETTY THINGSの5thアルバムParachute。

ブリティッシュ・ビートをベースに、メロトロンや美しいコーラス・ハーモニーを効果的に使って幅広い曲想をカバーしてます。ドラマティックに紡がれるメドレー形式の#4~#6、ギターとベースのユニゾン・リフにサビのメロディがカッコ良い#7、黒っぽいグルーヴにファズ・ギターのリフがクールな#8、哀愁を感じさせるムーディな#9、シャープナインスのリフがこれまたクールな#10、サビがキャッチーな#11、アルバムを締めくくるカラフルなバラード#13等々全曲穴無し。

Track List

1. Scene One
2. Good Mr. Square
3. She Was Tall, She Was High
4. In the Square
5. Letter
6. Rain
7. Miss Fay Regrets
8. Cries from the Midnight Circus
9. Grass
10. Sickle Clowns
11. She's a Lover
12. What's the Use
13. Parachute

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QUATERMASS / Quatermass

1970,UK

DEEP PURPLEを脱退したリッチー・ブラックモアがRAINBOWのデビュー・アルバムで#2をカヴァーした事でおなじみ、オルガンを中心にした英国の3ピース・バンドQUATERMASSの1970年唯一作。

クリーンからヘヴィなディストーションまで変幻自在のハモンドが縦横無尽に暴れまくるジャズ・ロック風味のハード・ロックを展開。例えば、有名なBlack Sheep of the Familyはブルドーザーのようなオルガンがグイグイ引っ張る、RAINBOWバージョンよりも数段ヘヴィなハード・ロックだったりする。10分超の#8ではストリングスもまじえたプログレッシヴでスリリングな展開も見せる。何でもありだった時代の濃密な空気が味わえる1枚です。

Track List

1. Entropy
2. Black Sheep of the Family
3. Post War Saturday Echo
4. Good Lord Knows
5. Up on the Ground
6. Gemini
7. Make up Your Mind
8. Laughin Tackle
9. Entropy

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TREES / On the Shore

1970,UK

女性ボーカルを含む英国の5人組フォーク・ロック・バンドTREESの2nd。

#1、#6では芯のしっかりした歌声、#2、#7などでは繊細で可憐な歌声を聴かせるセリア・ハンフリーズ(Vo)のボーカルをフィーチャーしたトラッドの独自解釈によるエレクトリック・アレンジ曲とカヴァー曲が大半を占めるアルバム構成となっています。#1、#3、#7、#9、#10と半数を占めるトラッドは、キャッチーなロック・アレンジを施した#9のように非常に聴き易く、TREESの色に染まっているのでアルバム全体のカラーが統一されています。ただ、やはりオリジナル曲の方が制約無くやれるからか、#8ではストリングス・セクションやハープを交えた優雅な歌唱パートにエレキ・ギターがアドリブを弾きまくるロックなパートを挿入した斬新なアレンジでプログレ的展開も見せています。カヴァー・アートはヒプノシス。

Track List

1. Soldiers Three
2. Murdoch
3. Polly on the Shore
4. Adam's Toon
5. Sally Free and Easy
6. Fool
7. Geordie
8. While the Iron Is Hot
9. Little Sadie
10. Streets of Derry

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PINK FLOYD / Meddle

1971,UK

PINK FLOYDの1971年6thアルバムMeddle。

70年代の人気プロレスラー アブドラ・ザ・ブッチャーのテーマ・ソングになった邦題「吹けよ風、呼べよ嵐」の#1は、オルガンやスライド・ギターをSE的にうまく使った勇壮なインスト。
英国的な翳りを帯びたアコースティックな#2、
サイケ感覚漂うリフが軽いトリップを誘うフォーク#3、
デヴィッド・ギルモア(G)の洒落たギター・ワークとリチャード・ライト(Key)のリラックスしたピアノ・ソロがPOPな小品#4、
犬の鳴き声とブルージーなアコギによる不思議なコラボ#5ときて、アナログ時代はB面を占めた#6は23分超の大作。
サイケやブルーズ色を仄かに残したムーディなアンサンブルをバックに、うっすらとハーモニーを付けたボーカル・ラインが淡々とした叙情を紡いで行きます。軽く歪んだオルガンの反復コード・カッティングに乗る奔放なギター・ソロに続く中間部では、曲タイトル通りの幽玄かつ壮大なSEが登場。スタジオワークに凝り、実験色を強めて行く過程を象徴してます。

Track List

1. One of These Days
2. Pillow of Winds
3. Fearless
4. San Tropez
5. Seamus
6. Echoes

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AUDIENCE / The House on the Hill

1971,UK

英国の4人組プログレッシブ・フォーク・ロックバンド AUDIENCEの1971年3rdアルバムThe House on the Hill。

アコギの繊細なアルペジオやコード・カッティングにキース・ゲメル(Sax etc)のテナー・サックス/クラリネット/フルートがアクセントとして加わるバッキングに、ほど良くリラックスした感じの歌メロが乗る独特のサウンド。
オープニングの#1から木管を操るキースのプレイが既に全開。ゆったりした序盤から3連パート、テンポアップしたエキサイティングなソロ・パートと目まぐるしく展開する中で7分超の長尺を感じさせないくらい随所に大活躍しております。
アコギの素晴らしいフィンガー・ピッキングに、ゲストのストリングス・セクションが初めはうっすらと霧のように、終盤は激しく絡むドラマティックな展開を見せる#4。
黒人ブルーズ・シンガー スクリーミング・ジェイ・ホーキンスのカヴァーをアコギやフルート、ヴィブラフォンを使用し寂寥感あるフォーク・ロックに仕上げた#7
。フルートのインプロビゼーション、ドラム・ソロ、テープ・エコーを掛けたサックス・ソロをフィーチャーしジャズ・ロック風に迫る#8。
等々、ほぼ鍵盤無しの限られた編成でいながら、起伏あるアレンジでアルバムをバラエティ豊かに演出しています。
ジャケット・アートはヒプノシス。

Track List

1. Jackdaw
2. You're Not Smiling
3. I Had a Dream
4. Raviole
5. Nancy
6. Eye to Eye
7. I Put a Spell on You
8. House on the Hill
9. Indian Summer

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RENAISSANCE / Prologue

1972,UK

英国プログレッシブ・ロックの華RENAISSANCEの1972年3rdアルバムRENAISSANCE。

ジェーン・レルフの歌唱をフィーチャーしたオリジナルRENAISSANCEからメンバーが全とっかえ。
アニー・ハズラム(Vo)、ジョン・タウト(Key)、ジョン・キャンプ(B)、テレンス・サリヴァン(Dr)、ロブ・ヘンドリー(G)の5人編成となりました。
ソング・ライティングにメインのマイケル・ダンフォード&ベティ・サッチャーに加え、#2と#5にオリジナル・メンバーのジム・マッカーティが絡んでいる所に過渡期な様子が伺えます。

ショパンの革命を引用したインストゥルメンタル#1で早くもアニーの美しすぎるスキャットが登場。
ジョン・タウトの華麗なピアノがリードしジョン・キャンプがボーカルを取る#2は、オリジナル期を彷彿させる翳りを持ったナンバーでアニーはコーラスのみ参加。
#3でようやくアニーがボーカルを披露。ピアノの端整な演奏をバックに美声を聴かせます。サビのハイトーンが完璧。
アコギとピアノを中心にコーラス・ハーモニーが美しいフォーク・ロック#4。
これまたピアノが美しいボーカル・ナンバー#5。
エキゾチックなムードの中、アニーのクリスタル・ヴォイスによるスキャットが映える#6。

オリジナル期を引き継ぎ、クラシックやフォークの要素を取り入れた歌物中心の端整な楽曲が並んでいます。
ジム・マッカーティによるオリジナル期のムード、エレキ・ギターの存在など、過渡期ならではのレアな味わいの中、Scheherazadeを思わせる#6に黄金期RENAISSANCEの要素の萌芽も垣間見れます。

Track List

1. Prologue
2. Kiev
3. Sounds of the Sea
4. Spare Some Love
5. Bound for Infinity
6. Rajah Khan

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WISHBONE ASH / Argus

1972,UK

英国のロック・バンドWISHBONE ASHの3rd。

メロディアスなボーカル・ハーモニーとテッド・ターナー(G)・アンディ・パウエル(G)によるツイン・ギターにアメリカ志向も垣間見れますが、#5に代表されるフォークなテイストと叙情味はまさしく英国のもの。時折見せるハード・エッジなキメなどから、ツイン・リードギターを擁するハード・ロックの先駆者として紹介されることも。2人が同時に違うフレーズを奏でるツイン・リードギターが斬新な#7でRENAISSANCEのジョン・タウトがバッキングのオルガンをプレイしています。その返礼としてアンディ・パウエルは、RENAISSANCEのアルバム「Ashes Are Burning」のタイトル曲で素晴らしい泣きのギター・ソロを客演しています。ジャケット・アートはヒプノシス。

Track List

1. Time Was
2. Sometime World
3. Blowin' Free
4. The King Will Come
5. Leaf & Stream
6. Warrior
7. Throw Down The Sword
8. No Easy Road

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PINK FLOYD / The Dark Side of the Moon

1973,UK

邦題「狂気」が言い得て妙なPINK FLOYDの1973年8th。

鼓動のSEがオープニングとエンディングに配され、各曲が微妙にクロスフェードしながら繋がったアルバム構成、大胆にベル音をあしらった#4、サンプラーが無い時代にレジの音を録音したテープの切り貼りで組み立てた#5のリズム、といった部分の実験的な要素と、ゲスト女性ボーカルによるソウルフルなゴスペル風スキャットやコーラス、キャッチーなボーカル・メロディがもたらすポピュラー音楽としての分かり易さが高次元で融合。それでいて、リラックスしたムードのヒット・シングル#7やスペイシーな#8などのゆったりとしたテイストがリスナーのイマジネーションを刺激するプログレッシブな精神性も。シド・バレットの暗喩とされた「月の暗い面」を日常の狂気という より普遍的なテーマに昇華させ、耳障りの良いポップスの意匠をまとった楽曲を実験的なSEで繋ぎトータル・コンセプト・アルバムとして完成させた、音楽性・商業性を両立した20世紀のロック史に刻まれた金字塔です。

Track List

1. Speak to Me
2. Breathe
3. On the Run
4. Time
5. The Great Gig in the Sky
6. Money
7. Us and Them
8. Any Colour You Like
9. Brain Damage
10. Eclipse

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RENAISSANCE / Ashes are Burning

1973,UK

RENAISSANCEの1973年4thアルバムAshes are Burning。

前作でギターを弾いていたロブ・ヘンドリーに代わりマイケル・ダンフォード(G)がアコギをプレイ。ゲスト扱いとはいえこれで黄金メンバーが揃い、新生RENAISSANCEの真の第一歩ともいえるアルバムに仕上がりました。

#1のオープニングからしてドラマティックにスケール・アップしたのが一目瞭然。そしてアコギにアニー・ハズラム(Vo)の美声、トラッド・フォークを思わせるエキゾチックな要素とオーケストラの導入。第2期RENAISSANCEの黄金パターンが既に完成しています。
一転して落ち着いたボーカル・ナンバー#2、ジム・マッカーティ作の起伏を持たせたフォーク#3、程良いオーケストラの装飾とジョン・タウト(Key)のハープシコードが気品を湛えた、アニーがお気に入りのキャッチーな#4、叙情的な#5でもアニーの美声が味わえます。
11分を超えるラストの#6はライブでも定番なフォーク&クラシカル&ドラマティックな名曲。アニー不在のインスト・パートもジョン・タウトがオルガン、ピアノと大活躍で聴き応えたっぷり。エンディングのギター・ソロはWISHBONE ASHのアンディ・パウエルが彼らのアルバムArgusでジョン・タウトが参加した返礼としてゲストでプレイしています。

Track List

1. Can You Understand
2. Let It Grow
3. On the Frontier
4. Carpet of the Sun
5. At the Harbour
6. Ashes Are Burning

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LED ZEPPELIN / Houses of the Holy

1973,UK

LED ZEPPELINの5thアルバムHouses of the Holy。

前作で極めたからか、ケルト/トラッド風味は薄めでカラっとしたサウンド。でも各曲のキャラが立っている。

元は#2の序曲として作られたという爽やかな疾走感が気持ち良い#1。
メロトロンが静かな詩情を表現した#2。
アコギ/エレキのアンサンブルが見事な#3。
ノルにノレない変態ファンクが快感の#4。
ZEPならではの変テコHRな#5。
リラックスしたイイ感じのZEP風レゲエ#6(でもドラムはビッグなサウンドでロックしてます)。
一転してジョン・ポール・ジョーンズ(B/Key)のトレモロをかけたエレピがスペーシーな、暗黒プログレ沼へのトリップを誘う#7。
変拍子変態リフと終盤のお祭り騒ぎが楽しい#8。

全曲穴無し。ジョンジー度高いのが良い。ヒプノシスによるジャケもキレイで大好きです。

Track List

1. Song Remains the Same
2. Rain Song
3. Over the Hills and Far Away
4. Crunge
5. Dancing Days
6. D'Yer Mak'er
7. No Quarter
8. Ocean

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CAPABILITY BROWN / Voice

1974,UK

英国の6人組アート・ロック・バンドCAPBILITY BROWNの1974年2nd。

コーラス・ハーモニーとファンキーなアレンジでデコレイトしたAFFINITYもやっていた#1。
アコギのリッチな響きとブ厚いコーラス・ハーモニー、甘酸っぱい歌メロが堪らない叙情フォーク・ポップ#2。
キャッチーなSTEELY DANの#3。
シャッフルに乗ったブルーズ・ロックがベースの#4。
リュートやバラライカ等の古楽器にメロトロン、ARP等当時の最新電子楽器を取り入れたアンサンブルで4部構成の組曲に仕上げた20分超の#5。

ツボを心得たアレンジとタイトな演奏、全員が歌えるところが強みの素晴らしいコーラス・ハーモニーによって、バラエティに富んだアルバム構成ながら一本芯の通った所を感じさせるハイ・クオリティなアルバムです。
ヒプノシスによる不気味なアルバム・カヴァーで有名ですが、内容は時代を超えたポピュラリティを有しています。

Track List

1. I am and so are You
2. Sad am I
3. MIdnight Cruiser
4. Keep Death Off the Road
5. Circumstances(In Love,Past,Present,Future Meet)

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UFO / Phenomenon

1974,UK

英国のハード・ロックバンドUFOの1974年3rd。

失踪したオリジナル・メンバーのミック・ボルトンに代わり、今作からギターがドイツ人のマイケル・シェンカー(ex.SCORPIONS)に。フォーキーな味わいの#2、#7やオーソドックスなロック・チューン#6、ブルーズのカヴァー#8と雑多な楽曲群が混在している所に試行錯誤の後も見られますが、フィル・モグ(Vo)のヴィブラートや歌いまわし、マイケルの艶のあるギター・サウンドは既に独特の個性を感じさせます。端整なインストゥルメンタル#9にはマイケル独特のヨーロッパ的翳りのあるマイナー・メロディも。そんな中異彩を放つのが、後々UFO及びマイケル自身の代表曲となる名曲#3,#5。これらの曲で見せた叙情性とハード・ロック的様式美が、UFOを他とは一線を画す存在たらしめます。独特な構図が印象的なジャケット・アートはヒプノシス。

Track List

1. Too Young to Know
2. Crystal Light
3. Doctor Doctor
4. Space Child
5. Rock Bottom
6. Oh My
7. Time on My Hand
8. Built for Comfort
9. Lipstick Traces
10. Queen of the Deep

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GENESIS / The Lamb Lies Down on Broadway

1974,UK

GENESISの7thアルバムThe Lamb Lies Down on Broadway。

前作で見せた各メンバーによる演奏技術の向上はフロントマン ピーター・ゲイブリエル(Vo)の焦りを招き、彼主導のコンセプト・アルバム制作のきっかけとなった。しかしその結果、ストーリーを描き切る事でさらにプレイ面の充実を証明することになってしまうのだから皮肉なものです。

物語はゲイブリエル作による奇妙な現代的ファンタジー。古典寓話の色合いが強かったこれまでとは違う題材への取組みが、クールな質感の音像となって表現されています。
クライマックスは印象的なオルガンのリフがフェードインしてくるDISC 1 #5と3部構成のDISC 2 #7。どちらもポルタメントが気持ち良いトニー・バンクスのシンセ・ソロでは前作でも見せた規則性ある反復フレージングに表情が加わり、さらに味わい深いものになっています。
又、DISC 1 #5終盤のバンド全体の息の合ったアッチェレランドが主人公の追い詰められた心象を表現しきっています。
トニー・バンクスの見せ場DISC 2 #10の弾きまくりもナイス。同じモチーフの明暗バージョンとしてDISC 1 #1とDISC 2 #9を鏡のように配するアルバム構成も素晴らしい。
勿論、DISC 1 #8,#10,#11、DISC 2 #3,#5のように叙情性も適度に配置されてます。

Track List

DISC 1
1. Lamb Lies Down on Broadway
2. Fly on a Windshield
3. Broadway Melody of 1974
4. Cuckoo Cocoon
5. In the Cage
6. Grand Parade of Lifeless Packaging
7. Back in N.Y.C.
8. Hairless Heart
9. Counting out Time
10. Carpet Crawlers
11. Chamber of 32 Doors

DISC 2
1. Lilywhite Lilith
2. Waiting Room
3. Anyway
4. Supernatural Anaesthetist
5. Lamia
6. Silent Sorrow in Empty Boats
7. Colony of Slippermen: The Arrival/A Visit to the Doktor/The Raven
8. Ravine
9. Light Dies Down on Broadway
10. Riding the Scree
11. In the Rapids
12. It

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RENAISSANCE / Turn of the Cards

1974,UK

英国プログレッシブ・ロックの華RENAISSANCEの1974年5thアルバムTurn of the Cards。

詩人ベティ・サッチャーとの黄金コンビで全曲を作曲したマイケル・ダンフォード(G)が正式メンバーとしてクレジットされ、ここに黄金期RENAISSANCEのメンバー構成が完成。音楽性もアコースティック楽器によるバンド演奏にオーケストラを導入したスケールの大きなシンフォニック・ロック、というスタイルが確立されました。

ジョン・タウト(Key)のクラシカルなピアノ・ソロをオープニングに配した本アルバム最長9分34秒の#1から早くもクライマックス。オリジナルRENAISSANCEの2ndアルバムIllusionに収録されたMr. Pineのエキゾチックなパートがシンフォニックな装いで挿入されるなど、オーケストラを活用し壮大なスケールに仕上がってます。
ハープシコードが隠し味的に効いたバラード風の#2ではアニー・ハズラム(Vo)のまろやかな美声が堪能できます。
ジャジーなテイストとミステリアスなムードの序盤、アニーのクリスタル・ヴォイスによるスキャットがフィーチャーされた中盤、そして美しいボーカル・ハーモニーでポジティブなメロディを紡ぐ終盤と全てバンドのみの演奏で9分の長尺を描き切った#3。
アコギのアルペジオによる静かなオープニングから、ハープシコードが厳かな美を湛えるサビでドラマティックに盛り上がる#4。
チャーチオルガンをバックにアニーが切々とアダージョのメロディを歌い上げる#5。
オーケストラを使用した美しく壮大な#6は、エキゾチックなメロディとアニーの渾身の歌唱が感動を呼ぶ9分超の大作。またもやアニーのクリスタル・ヴォイスによるスキャットが華を添えております。

大作と小品をバランス良く配したアルバム構成も素晴らしいです。

Track List

1. Running Hard
2. I Think of You
3. Things I Don't Understand
4. Black Flame
5. Cold Is Being
6. Mother Russia

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PINK FLOYD / Wish You Were Here

1975,UK

PINK FLOYDの1975年作Wish You Were Here。

ドラッグ中毒でバンドを去ったオリジナル・メンバーのシド・バレットに捧げたという#1、#5は同時に前作の大成功に戸惑う自分達の心情を吐露したものなのかデイブ・ギルモアのブルージーなギターが冴える退廃的雰囲気のムーディな名曲。むせび泣くダブル・チョーキング、アナログ・シンセのまろやかな音色、バッキング・コーラス・・・。ずっと聴いていたい感じです。
シンセやオルガンを効果的に使用した#2、ロイ・ハーパーがゲストVoのブルージーな#3、アコギもうまい#4など穴が無い名盤。

Track List

1. Shine on You Crazy Diamond, Pts. 1-5
2. Welcome to the Machine
3. Have a Cigar
4. Wish You Were Here
5. Shine on You Crazy Diamond, Pts. 6-9

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RENAISSANCE / Scheherazade and Other Stories

1975,UK

英国70年代プログレッシブ・ロックの華 RENAISSANCEの6thアルバムScheherazade and Other Stories。

リディアン・モードの印象的な旋律を歌うアニー・ハズラム(Vo)のクリスタル・ヴォイス、ジョン・タウト(Key)のチェレステや足踏みオルガンが醸し出すお伽噺のような幻想的なムード、ソロパートではピアノによる転がるように軽快なフレーズも連発!そして5拍子のキメといったおいしすぎるプログレッシブなネタが盛りだくさんの#1は私のフェイバリット・ソング。
伸びやかな美声が堪能できるアップテンポな#2。
まどろむようなオーケストラとアニーの美しすぎる歌唱が美を極めた叙情ナンバー#3。
そして、アラビアン・ナイトでお馴染み「千一夜物語」の語り部=賢くて美しい少女シェヘラザードが王妃の裏切りで凶悪になったスルタンに見出されて王宮に招かれ、窮地を凌ぐために毎夜毎夜、不思議なエピソードを物語る内にスルタンも元に戻り、シェヘラザードと幸せになるという様を描いたフルオーケストラ参加のシンフォニック大作#4。

RENAISSANCEの代表作にして最高傑作との呼び声高い名作です。

Track List

1.Trip To The Fair
2.The Vultures Fly High
3.Ocean Gypsy
4.Song Of Scheherazade
a) Fanfare
b) The Betrayal
c) The Sultan
d) Love Theme
e) The Young Price And Princess as Told By Scheherazade
f) Festival Preparations
g) Fugue For The Sultan
h) The Festival / Finale

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GENESIS / A Trick of the Tail

1976,UK

フロントマン ピーター・ゲイブリエル脱退の穴をフィル・コリンズ(Dr/Vo)が見事に埋めた新生GENESISの1976年8thアルバムA Trick of the Tail。

全体的にゲイブリエルのアクが抜けて洗練された雰囲気の好盤に仕上がってます。
ゲイブリエル在籍最後の作品となった前作The Lamb Lies Down On Broadwayにおいて、ゲイブリエル着想による難解なストーリーを音像化してきた実績を経てバンドの演奏はよりタイト且つスケールも大きくなっています。

タイトル通り火山のように熱い7拍子の鬼気迫る展開とシンフォニックなメインリフの対比がクールな#1やドッシリしたリズムが印象的な#3等の新機軸に加え、スティーブ・ハケット(G)の繊細なアルペジオが美しい#2やピアノとメロトロンが醸しだす#4の叙情性等、従来の魅力も継続。
#5の歌パートのアレンジや#6のサビ、#7全体にPOPな要素の萌芽も感じられ、後にメガヒット・バンドへと化ける過程が垣間見れます。

Track List

1. Dance on a Volcano
2. Entangled
3. Squonk
4. Mad Man Moon
5. Robbery, Assault and Battery
6. Ripples...
7. Trick of the Tail
8. Los Endos

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BLACK SABBATH / Technical Ecstasy

1976,UK

BLACK SABBTHの7thアルバムTechnical Ecstasy。

適度な疾走感とキャッチーさを持った、SABBATH流ロックンロール・ナンバー#1。
オルガンやピアノが絶妙なサジ加減で彩を加えた、ヘヴィな中にも叙情性が宿るドラマティックな#2。
ビル・ワード(Dr)が歌う異色の#3。バラードというほど湿っぽくならず、どこかほのぼのとしたムードが漂う英国ロックらしい裏名曲。
メジャーな調性で広がりあるサウンドを聴かせるロックンロール・タイプの#4。中間部でマイナーになる部分では叙情性も。
リフがリードするブルーズ・ロック#5。
ホンキートンク・ピアノも交えた典型的なロックン・ロールの#6。それでもオジーの独特の声とのっぺりした歌唱、トニー・アイオミ(G)のコリコリしたピッキング・ノイズのギター・ソロがあれば、やっぱりSABBATH以外の何者でもない。
ストリングス・セクションとアコギの物悲しいアルペジオによるメランコリックなバラード#7。
ヘヴィなメイン・リフをはじめ様々なリフが目まぐるしく登場し、ヘヴィネスから叙情へ場面転換していく初期タイプの名曲#8。

オカルティックなおどろおどろしさや全く違う要素を無理やりくっ付けたかのようなプログレッシブで変態的な曲展開といった初期の特徴はもはや無く、よりストレートで構築性のある楽曲にスタイルが変化。その結果、BLACK SABBATHらしさという点では少々物足りなさもありますが、キャッチーな#1や#8の後半で垣間見せるメジャーなキャッチーさは、後のオジー・オズボーン(Vo)のソロ期にも通ずるテイストで興味深いものがあります。

Track List

1. Back Street Kids
2. You Won't Change Me
3. It's Allright
4. Gypsy
5. All Moving Parts (Stand Still)
6. Rock'n'Roll Doctor
7. She's Gone
8. Dirty Women

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LED ZEPPELIN / Presence

1976,UK

LED ZEPPELINの1976年7thアルバムPresence。

創作面での煮詰まり、ロバート・プラントの交通事故などが影響したのか突如キ-ボードを一切排除。数週間でレコーディングされたという、ソリッドな質感が全体を貫くギター・アルバム。
ギターのオーバー・ダビングによるオーケストレーションの極致にして叙事詩的な#1はドラマティックなZEP節満載。だが他の曲はギター・オリエンテッドで確かにカッコ良いが地味な印象。
#2,#8ではストラトによるアーミングも聴かれる他、ジャキジャキしたカッティングの曲が多いのもソリッドな質感の理由かも。
長大な泣きのブルーズ#7がジミー時代の終焉を告げているかのように聴こえる。

Track List

1. Achilles Last Stand
2. For Your Life
3. Royal Orleans
4. Nobody's Fault but Mine
5. Candy Store Rock
6. Hots on for Nowhere
7. Tea for One

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