ヒプノシス のレビュー

YES / Going for the One

1977,UK

YESの1977年8thアルバムGoing for the One。

前作Relayer1枚のみでYESを去ったパトリック・モラーツの穴を埋めるべく何とリック・ウェイクマン(Key)が復帰。1973年の超大作Tales from Topographic Oceans(海洋地形学の物語)と同じメンツながら時代はパンクの嵐吹き荒れる1977年ということもあってか、難解な長尺曲は姿を消しコンパクトな楽曲中心に構成されたキャッチーなアルバムとなりました。

冒頭のスティーヴ・ハウ(G)によるラップ・スティールのフレーズが一瞬サーフ・ロックか?と耳を疑うが、良く聴けば絡み付くようなギターとキーボードで紡がれたアレンジにジョン・アンダーソン(Vo)の無垢なボーカルが乗るYESらしいナンバーとなった#1。
トーン、フレージング共に素晴らしいアコギと美しいピアノの調べにオートハープの装飾音が加わりファンタジックに盛り上がる#2。
重厚なチャーチ・オルガンのリフに乗ってクリス・スクワイア(B)のベースが唸るスクワイア作のPOPな#3。
瑞々しい美しさに溢れたヒット・ナンバー#4。
緊張感と桃源郷的ファンタジーが絶妙のバランスで融合した、往年の大作を彷彿させる15分超のシンフォニックな#5。

ジャケット・アートもこれまでのロジャー・ディーンによる有機的ファンタジック路線からヒプノシスによる無機的、幾何学的なものになり、バンドの前進しようとする意欲を感じさせます。

Track List

1. Going for the One
2. Turn of the Century
3. Parallels
4. Wonderous Stories
5. Awaken

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PINK FLOYD / Animals

1977,UK

英国のプログレッシッブ・ロック・バンドPINK FLOYDの1977年作品Animals。
楽曲のタイトルに動物を冠し、豚=資本家、犬=ビジネスマン、羊=労働者といった比喩で社会を風刺したコンセプト・アルバム。

それまでのアルバム中に必ず存在していた牧歌的な曲調の楽曲が姿を消し、シリアスでダークな印象が全編を覆っている。
そんな中でもボーカル・パートは比較的キャチーで普遍的なロックとして充分楽しめる上、#2のスペイシーなシンセ・パート、ヴォコーダーを使用した#4のインスト・パートやドラマティックなギター・ソロなど、PINK FLOYDらしい持ち味を巧みに配して10分超の#2,#3,#4といった長尺曲を構成。
さらに、何かが起きそうな期待を抱かせる#2の冒頭、各曲に挿入された動物の鳴き声SE、トーキング・モジュレーターを使用した豚の鳴き声風ギター、3連に乗った躍動感あるギターのカッティングが気持ち良い#4など、強烈に印象に残るフックでの楽曲キャラ作りも相俟って、よく言えばバラエティに富み悪く言えば散漫な感じだったこれまでのアルバムとは一線を画すトータル性の高いアルバムとなった。

アルバムのトータル・コンセプトの重要な一部でもあるジャケット・アートは、イギリスのバターシー発電所の上空に豚の風船を飛ばして撮影したというヒプノシス作。

Track List

1. Pigs On The Wing 1
2. Dogs
3. Pigs (Three Different Ones)
4. Sheep
5. Pigs On The Wing 2

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カテゴリー: PINK FLOYD

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UFO / Lights Out

1977,UK

英国のハード・ロック・バンドUFOの1977年作。

ポール・レイモンド(Key/G)が加入。全体的によりハード・ロックっぽくなりドラマティックな構成力も増強。美しい#3ではマイケル・シェンカー(G)ならではのメロディアスなソロが聴けます。最大の聴き所はハモンドのグリッサンドが印象的なドライブ感満点のカッコ良いハード・ロック・チューン#4やプログレッシブかつドラマティックな#8でしょう。ポールのもたらした要素がバンドを数段レベル・アップさせると共にマイケルを大いに刺激、神レベルの魂全開激情プレイが炸裂しております。

Track List

1. Too Hot to Handle
2. Just Another Suicide
3. Try Me
4. Lights Out
5. Gettin' Ready
6. Alone Again Or
7. Electric Phase
8. Love to Love

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GENESIS / Wind & Wuthering

1977,UK

GENESISの1977年9thアルバムWind & Wuthering。

意地を見せ付けた前作に感じられた硬さが抜け、本来の英国叙情をアップデートさせた形でキーボード大増量のシンフォニック・サウンドによって具現化。

シンセのテーマ・メロディから始まり、フィル・コリンズ(Dr)のドラム中心にドラマティックかつダイナミックに展開する#1。
歌メロ部分は翳りを伴った叙情を漂わせながら、インストパートではトニー・バンクス(Key)が鍵盤群を駆使した怒涛のシンフォニック攻撃で壮大に迫る#2。
キャッチーなバラード#3。
トニー・バンクス得意のシンセによる反復フレーズも聴かれるスペイシーで爽快なインストゥルメンタル小曲#4。
ちょっとした変拍子を交え、3連中心に緩急と静動でダイナミズムを生み出す#5。
イントロ部でのスティーヴ・ハケット(G)が奏でるクラシック・ギターの美しい詩情に続き、霧のように敷き詰められたストリングスがリスナーを英国叙情に耽溺させる#6。
そして#7~#9のメドレーが終盤のハイライト。静かな#7に続きバンドが一体となってタイトかつシンフォニックに迫るインストゥルメンタル#8。アルバム冒頭でも登場したメイン・テーマを盛り込み、スケールの大きい圧巻のシンセ・ソロが高揚感をもたらしています。
そしてフィナーレに相応しく壮大に締めるバラード#10。

とにかく全編トニー・バンクスの見せ場。
スタインウェイ、アープ、ハモンド・オルガン、メロトロン、ローランド・シンセ、フェンダー・ローズと鍵盤大集合で使い放題使っております。
機材の発達をいち早く応用し、楽曲や場面に応じて音色を使い分けるセンスも素晴らしいです。音色のバリエーションは豊かなんですが、トーンやムードは統一されているんですよね。

Track List

1. Eleventh Earl of Mar
2. One for the Vine
3. Your Own Special Way
4. Wot Gorilla?
5. All in a Mouse's Night
6. Blood on the Rooftops
7. Unquiet Slumbers for the Sleepers...
8. ...In That Quiet Earth
9. Afterglow

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YES / Tormato

1978,UK

YESのスタジオ9thアルバムTormato。

出戻りのリック・ウェイクマン(Key)を含めた前作と同じラインナップで、ジャケット・アートも引き続きヒプノシスが担当。

シンフォニックなアンサンブルとポップなボーカル・パートが同居した#1。
何とクジラをテーマにしたキャッチーな#2。
ハープシコードの典雅な響きを基調に、スティーブ・ハウ(G)のクラシカルなアコギやコーラスが繊細な美しさを醸し出す小品#3。
アラン・ホワイト(Dr)のドラム・ソロ(オーディエンス・ノイズ入り)をフィーチュアした、スリリングなYES流ロックン・ロールの#4。アレンジ面で面白い部分はあるものの、性急で軽いリズムと薄っぺらいシンセ・サウンドが難点。
未知との遭遇などSF映画からの影響なのか、UFOがテーマの#5。これも厚みの無いシンセが曲の印象を何とも安っぽいものにしてしまっているのが残念。
独特のオブリガードのギターとメロディアスなベースラインがボーカルと絡み、素朴で明るいムードから叙情パートに展開する#6。
オーケストラとスティーブ・ハウのミュートしたギターによるミニマル・リフをバックに、希望的な優しいボーカル・メロディが乗ったバラード#7。
ベース・リフにガチャガチャしたギターが絡む即興風な序盤から、軽快なリズムのボーカル・パートに移行する#8。

現実的なテーマを取り入れた#2、コンパクトな楽曲や軽いサウンドなどに、従来の壮大なプログレを奏でたバンドの面影は無い。
独自の創造性で時代を切り開いてきたバンドがいつしかマンネリに陥り、時代に迎合することでチグハグな印象になってしまった惜しい作品。

Track List

1. (i)Future Times
(ii)Rejoice
2. Don't Kill The Whale
3. Madrigal
4. Release, Release
5. Arriving UFO
6. Circus Of Heaven
7. Onward
8. On The Silent Wings Of Freedom

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カテゴリー: YES

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UFO / Obsession

1978,UK

英国のハード・ロック・バンドUFOの8th。

控え目でメロディアスなポール・レイモンド(Key/G)のオルガンが効いた、軽快なロックン・ロールにドラマティックなマイケル・シェンカー(G)のギター・ソロを配した#1、ソリッドなハード・ロック#2、素朴なリコーダーにヨーロッパの叙情が薫るマイケル作のインストゥルメンタル小品#3(後にソロ・デビュー作で歌入りのTales of Misteryとしてリメイク)、ハード・ロック然としたリフが牽引する#6、とマイケルがソング・ライティングに絡んだ楽曲では従来のUFOらしいテイストが。
その反面、ストリング・セクションを贅沢に配したドラマティックな#5や、ストリングス、チェンバロ、ハープを加えたポジティブなムードの中にクラシカルなテイストをまぶした#11といったバラードで新機軸を打ち出したり、フィル・モグ(Vo)、ピート・ウェイ(B)による楽曲に冴えが感じられなかったりと、アメリカ市場を意識し過ぎたのかスリリングさや叙情性が大きく後退し、どうも迷いのようなものが感じられる作品に。リリース後数ヶ月するとマイケルはバンドを脱退します。

意味不明なジャケット・アートは勿論ヒプノシス。芸術性よりもインパクト重視で、自己のパロディに陥り始めた頃の作品ですね。

Track List

1. Only You Can Rock Me
2. Pack It Up (And Go)
3. Arbory Hill
4. Ain't No Baby
5. Lookin' Out For No 1
6. Hot 'N' Ready
7. Cherry
8. You Don't Fool Me
9. Lookin' Out For No. 1 (Reprise)
10. One More For The Rodeo
11. Born To Lose

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STYX / Pieces of Eight

1978,USA

アメリカン・プログレッシブ・ハードSTYXの1978年8th。

躍進のきっかけとなったトミー・ショウ(G/Vo)加入から数えて3作目。ジェイムズ・ヤング(G/Vo)の豪快なボーカルとオーディエンス・ノイズが印象的なアリーナ・ロックの#1。作品を出す毎に着実にチャートを上げてきた事による自信に溢れた様子が伺えます。キャッチーな中にもチャーチ・オルガンによる荘厳なパートがもたらす気品が感じられる、デニス・デ・ヤング(Key/Vo)が歌う#2。シンセが活躍するプログレッシブなタッチのフォーク曲#3。トミー・ショウのマイルドな歌唱と若干ラテン風なメロディが不思議な調和を見せています。デニス・デ・ヤングがシンセのオーバーダブで作り上げたインストゥメンタル#4。#4に続きシンセがバッキングをリードする#5は、シンセを中心としたオーケストレーションがコンパクトながらも壮大なエピック・チューン。歪んだオルガンとハード・エッジなギターがリードする、メロディアスでカッコ良いハード・ロック・チューンの#6。ライブでも定番です。デニスの伸びやかなハイトーンが映えるハード・ロック#7。ファンキーなグルーヴのリフを持つ#8。感動的なコーラス・パートを持つ#9。アルバムの余韻を残す、エキゾチックなメロディのアウトロ的なインストゥルメンタル#10。楽曲提供を二分するデニスとトミー。ボーカルを分け合うデニス、トミー、ジェイムズ。ギター・ソロを分け合うトミー、ジェイムズ。と、フロント3人が個性を発揮しつつもSTYXというバンドとして融合、バラエティに富んだ作風ながら芯の通った所を感じさせます。モアイ像のピアスを付けた中年女性、という意味不明なジャケット・アートは勿論ヒプノシス。インパクト勝負で、段々自らのパロディに陥って行き出した頃の作品ですね。

Track List

1. Great White Hope
2. I'm O.K.
3. Sing for the Day
4. The Message
5. Lords of the Ring
6. Blue Collar Man
7. Queen of Spades
8. Renegade
9. Pieces of Eight
10. Aku-Aku

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RENAISSANCE / A Song for All Seasons

1978,UK

RENAISSANCEのスタジオ1978年8thアルバムA Song for All Seasons。

オーケストラが醸し出すムードが前作に近いしっとりとした感じの#1。
#1のモチーフを引き継ぎながらオーケストラとバンドの演奏が一体となって溌剌としたプログレッシブ・ロックを展開する#2。サビでの高揚感とアニー・ハズラム(Vo)の素晴らしいクリスタル・ヴォイスが堪能できます。中間部の7拍子に乗ったジョン・タウト(Key)のシンセ・ソロも聴き所。6分過ぎからのアニーのボーカル・パートは、いつ聴いても感動する美しさです。
アニーの優しい歌唱がマイケル・ダンフォード(G)のアコギによるカッティングに乗るフォーク小品#3。ジョン・キャンプ(B)のフレットレス・ベースでの滑らかなオブリガードも効いてます。
切ないイントロに続き、ジョン・キャンプがマイルドな歌声で切々と歌う哀愁のフォーク#4。これもサビでの美しいメロディとコーラスに感動必至。
TVドラマの主題歌にもなったポップな#5。
ジョン・キャンプがオーケストラをバックに歌う#6は、本来ならアニーの出番であろう所をあえて男性ボーカルに、という試みが面白いですね。
アニーの美声をフィーチャーした爽やかなムードの#7。アコギのカッティング、エレキのアルペジオ、シンセのオブリガード、ソリーナのストリングスが透明感に溢れたサウンドを醸成しています。
オーケストラとバンドが一体となってのインストゥルメンタル・パートを序盤に配し、後半はアニーの歌唱をフィーチャーしたシンフォニックな大作#8。

前作Novellaでの重厚な中にもしっとりとした神秘性から、ファンタジックながらも、よりキャッチーでコンテンポラリーな作風に変化。RENAISSANCEのアルバムはどれも素晴らしいですが、聴き易さはこれが一番かも。Prologueでロブ・ヘンドリーが弾いて以来かと思えるエレキ・ギターや使用頻度が目立ってきたシンセのもたらすブライトな感触の効果も大きいです。オーケストラ・アレンジはELOや後のOZZY OSBOURNEとの仕事でもお馴染みのルイス・クラーク。カラフルでポップなジャケット・アートなヒプノシス。

Track List

1. Opening Out
2. Day of the Dreamer
3. Closer Than Yesterday
4. Kindness (At the End)
5. Back Home Once Again
6. She Is Love
7. Northern Lights
8. Song for All Seasons

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UK / Danger Money

1979,UK

UKの1979年2nd。

前作からアラン・ホールズワース(G)が脱退し、ドラムスもがテリー・ボジオに交代。トリオ編成となり、音楽性はよりロックでキャッチーに変化。しかもカッコ良い。ポルタメントたっぷりなブ厚いシンセの冒頭#1からプログレ節全開。ギターが居なくなったのでエディ・ジョブソン(Key/Vln)がシンセ・オルガン・エレピにヴァイオリンと大忙しで大活躍。ジャケ裏写真のクリスタル・エレクトリック・ヴァイオリンを抱える姿も凛々し過ぎます。ジョン・ウェットン(B/Vo)のメロウ・サイドも#2や#5で堪能できます。プログレ受難の1970年代末に良くこんなの作ったな、と思います。いや、商品として世に出したレコード会社も偉いですね。オルガンがリードするテクニカルでソリッドなプログレ・チューン#3がメチャカッコ良いです。

Track List

1. Danger Money
2. Rendezvous
3. Only Thing She Needs
4. Caesar's Palace Blues
5. Nothing to Lose
6. Carrying No Cross

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カテゴリー: UK

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LED ZEPPELIN / In Through the Out Door

1979,UK

LED ZEPPELINの8thアルバムIn Through The Out Door。
1977年のツアー中にロバート・プラント(Vo)が息子を失ったことから、バンドは活動を休止。その為、久々のニューアルバムとなったこと、外袋に入れられて中身が見えない6種類のデザイン違いジャケットなどが話題となった。

エキゾチックなイントロを持つ王者の威厳を感じさせるハード・ロック#1。
ピアノがリードするブギ#2。
テンポアップしてのサンバ・パートを内包する、ゆったりとスウィングする#3。
ジミー・ペイジ(G)の拙いピッキングに衰えを感じるカントリー調の#4。
分厚いシンセのリフがリードする2部構成のテクノ調ハード・ロック#5。
ロバート・プラントの亡き息子に捧げられた、シンセ・ソロが印象的な美しいバラード#6。
ロバート・プラントのソウルフルな歌唱が感動的なブルーズ#7。

ジミー・ペイジとジョン・ポール・ジョーンズ(B/Key)の作曲関与が5:6と、ヤマハのポリフォニック・シンセGX-1を操るジョン・ポール・ジョーンズが主導権を握ったアルバム。
従来にない多様な音楽性の楽曲群に、パンク後の80年代を迎えるにあたってバンドが音楽的方向性を試行錯誤していた様子が伺える。
しかし、1980年9月25日にジョン・ボーナム(Dr)が急逝。ドラマー補充によるバンド継続を望まないメンバーの意向によりLED ZEPPELINは終焉を迎える。
デザインはヒプノシス。

Track List

1. In the Evening
2. South Bound Saurez
3. Fool in the Rain
4. Hot Dog
5. Carouselambra
6. All My Love
7. I'm Gonna Crawl

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MSG / The Michael Schenker Group

1980,GERMANY

英国のハード・ロック・バンドUFOから失踪したドイツ人ギタリスト マイケル・シェンカー(G)の1stソロ。

バックを固めるメンツは後々腐れ縁のような付き合いとなるゲイリー・バーデン(Vo)を筆頭に、ドン・エイリー(Key)、モ・フォスター(B)、サイモン・フィリップス(Dr)というかなりセッション的性格の濃い、しかし腕は確かな面々。
主役のマイケルの攻撃的で奔放、そして時に構築的で官能的な素晴らしいギター・ワークが味わえるギター・アルバムの逸品。
でありながら、トイ・ピアノのような音色で奏でられる冒頭のメロディからマイナー・キーのメロディアス・ハード・ロックに展開する#2や、長らくスポーツ番組等でのBGMの定番となった勇壮かつクラシカルな泣きのメロディが凝縮されたインストゥルメンタル#6、ドラマティックなエピック・チューン#9など、ストレートなハード・ロック以外にもバラエティに富んだ名曲が楽しめるHR/HM史に残る名盤でもあります。

UFO時代よりさらにストイックなハード・ロック色を強めた#1やその曲中のバッキング・パターンがメインリフに昇格した#3など、メタリックなイメージの楽曲がNWOBHMブームの影響もあってメタル・ファンの支持を集めると共に、クラシカルな欧州叙情を醸し出すインストゥルメンタル#4、当時みんな弾いたギターキッズのアンセム#6、アコギと繊細なエレキのボトルネック奏法で哀愁のメロディを奏でる#8など、無条件に心を打つ美しいメロディの存在がそれまでHR/HMとは無関係の一般人をも巻き込んだ一種の”現象”を起こしました。フライングⅤやワウ・ペダル=クライ・ベイビーもバカ売れ。購入したワウのポットに噛み合わせるギザギザの位置をずらして(すんません、説明かなり端折ってます)マイケル風トーンの研究に勤しんだりもしましたね。
精神的に問題有りといわれていたマイケルが治療を受けるかのような暗喩に満ちたジャケット・アートはヒプノシス。

Track List

1. Armed and Ready
2. Cry For The Nations
3. Victim Of Illusion
4. Bijou Pleasurette
5. Feels Like A Good Thing
6. Into The Arena
7. Looking Out From Nowhere
8. Tales of Mystery
9. Lost Horizons

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RAINBOW / Difficult to Cure

1981,UK

RAINBOWの5thアルバムDifficult to Cure。

脱退したコージー・パウエルの後任にボブ・ロンディネリ(Dr)が加入。後年の関係者インタビューによると、レコーディング中には一時新ボーカリスト ジョー・リン・ターナー(Vo)と前任のグラハム・ボネット(Vo)が同時に在籍するという異常な状況にもなっていたようですが、グラハムがバンドを離れたことで事態は収拾。ジョー、ボブの新加入組とリッチー・ブラックモア(G)、ロジャー・グローバー(B)、ドン・エイリー(Key)の既存メンバーによって制作されました。

前作に続いて元ARGENTのラス・バラード作曲の#1やブライアン・モーラン作曲の#4など、外部ライターのポップな楽曲を採用してますますアメリカ市場進出を狙った本作において、#2のような様式美ハード・ロックからブルージーな#8まで、甘い声質でいながら幅広く歌えるジョーの起用が大当たり。又、#1や#4にしても単に甘ったるいポップスに陥るのでは無く、リッチーの個性を活かしたクラシカルな気品やヨーロッパ的叙情が微かに従来のRAINBOWサウンドとの繋がりを感じさせ、作品としては非常にバラエティに富んだ印象的なアルバムに仕上がってます。
中でもハイライトは名曲ハード・ロック#2。
リフ主体の心地良いドライブ感、クラシカルなフレーズを繰り返すインスト部というRAINBOWの王道様式美にキャッチーな歌メロが加わった時点で既に満足なのに、そこにさらに当時最新鋭のシンセサイザー ヤマハCS-80のリボンコントローラーとポルタメントを駆使したドンによるスリリングなソロが最高のスパイスとして効いています。個人的にはロック界のシンセ・ソロ ベスト3に入ってますね。
ドンによるシンフォニックでクラシカルなアレンジをベースに、美しいボトルネック奏法やエモーショナルなソロでリッチーの独壇場と化した素晴らしい叙情チューン#5、ベートーベンの第九をアレンジした楽しい#9などインストゥルメンタル曲も充実。

Track List

1. I Surrender
2. Spotlight Kid
3. No Release
4. Magic
5. Maybe Next Time
6. Can't Happen Here
7. Freedom Fighter
8. Midtown Tunnel Vision
9. Difficult To Cure (Beethoven's Ninth)

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DEF LEPPARD / High ‘n’ Dry

1981,UK

DEF LEPPARDの1981年の2nd。AC/DCで有名な名プロデューサー ジョン・マット・ラングと組み出したアルバム。質感がAC/DCっぽくソリッドになって、後年の音に似てきた。名曲#4やライブではジョー・エリオット(Vo)もギターを弾くインストの#5が好きです。既にこの頃から、良い意味でのキャッチーさとハード・ロックなカッコ良さのバランスが絶妙。

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DREAM THEATER / Falling Into Infinity

1997,USA

DREAM THEATERの4thアルバムFalling Into Infinity。
ミニ・アルバムA Change of Seasonsより加わったデレク・シェリニアン(Key)が引き続き参加。

無機的なテーマ・リフを様々に変奏・発展させて構成したクールなプログレッシブ・チューン#1。
デズモンド・チャイルドが作曲に関わったキャッチーな#2。
ダークなAORといったテイストの序盤からヘヴィに発展する#3。
ジョン・ペトルーシ(G)の繊細なアコギが味わい深いSTING風なAORチューン#4。
ジョン・ミュング(B)の弾き出すダークなベース・ラインに歪みオルガンのバッキング、シンセ・ソロとデレク・シェリニアンの見せ場が多いアルバム随一のヘヴィ・チューン#5。
豊かなメロディとマイルドなサウンドにより、5拍子や7拍子が入り組んだ複雑さを感じさせないインストゥルメンタル#6。
サビのバッキングがTOTOのGirl Goodbyeみたいな12分超のハード・ロック#7。
ジェイムス・ラブリエ(Vo)の伸びやかな歌唱をフィーチュアしたAORチューン#8。
シンセとギターのテクニカルなソロ・パートを待つDREAM THEATER流ロックン・ロール#9。
ドラマティックで美しいバラード#10。
フュージョン風なコード進行でジョン・ペトルーシが弾き捲くるインスト部を挿入した3部構成の組曲#11。

デレク・シェリニアンがメインで弾くオルガンのトーン、複雑で変態的なハッとする切り返しの少ないアレンジ、#4,#8,#10等大人しい楽曲の多さと随所に漂うAOR風味、といったところから、プログレッシブ・メタルはおろか最早メタル的なカタルシスにも乏しく、随分オーソドックスなハード・ロックになったなぁ、という印象が濃いアルバム。
KISSやBON JOVIとの仕事で有名なヒット・メーカー デズモンド・チャイルドの起用、KING’S Xのダグ・ピニックが#7でゲスト・ボーカルで参加、ヒプノシスのストーム・トーガソンによる意味深でいて実は単にインパクト勝負なだけのジャケット・アート、という様々な違和感も含め、ヒットと話題性を求めるレコード会社からの圧力がかなりあったようです。#10なんかもゴリゴリに変態な楽曲群の中に存在した方が、よりその素晴らしさが映えると思うんですが・・・

Track List

1. New Millennium
2. You Not Me
3. Peruvian Skies
4. Hollow Years
5. Burning My Soul
6. Hell's Kitchen
7. Lines In The Sand
8. Take Away My Pain
9. Just Let Me Breathe
10. Anna Lee
11. Trial Of Tears:
i) It's Raining
ii) Deep In Heaven
iii) The Wasteland

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