BAROCK PROJECT のレビュー

BAROCK PROJECT / Coffee In Neukolln

2012,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの3rdアルバムCoffee In Neukolln。

地中海風でもありフォークロア風でもあるエキゾチックなメロディをテーマにした#1。軽やかさと重厚さの間をダイナミックに行き来する。
沈痛なバラードと思いきやそれで終わるはずも無く、クラシカルなストリングス、ボーカルがシャウトするプログレ・メタル風パート、柔らかなアナログ・シンセがテーマを奏でるパートと様々な要素を織り交ぜながら、フレージングが抜群のセンスのピアノが全てを融合させ楽曲の統一感を持たせた#2。
チャーチ・オルガンとクワイヤによる#4の荘厳なイントロとなる#3。
一転して静かで端正なオーケストラにオペラのようなボーカルが絡む前半とバンドが入りヘヴィネスも加わる後半から成る#4。BAROCK PROJECTを象徴するキャッチーかつクラシカルなテーマ・メロディが素晴らしい。
前曲のクラシカルなタッチから打って変わって無機的でコンテンポラリーなメロディのイントロで幕を開ける#5。清楚なタッチとアグレッシブな吹き散らしスタイルを使い分けるフルートをフィーチュア。
ハッとする転調も織り交ぜながら7拍子パターンに乗せて軽快に進行するキャッチーなプログレ・チューン#6。
RUSHSTYXなど北米プログレッシブ・ハードのテイスト漂うキャッチーで爽やかなパート1と、思索系パートからジャジーな展開を経てアルバム随一の叙情リフレインを満を持して繰り出すパート2から成る#7と#8の組曲。
繊細な序盤からクラシカルでスケールの大きな後半へ劇的に転換、おおらかなメロディに芸術の国の出自を感じさせるエンディング・チューン#9。

単なる意匠の流用では無い本気のクラシカル度にアカデミックな薫りを漂わせつつ、ロックのフィールドにシームレスに落とし込む手腕は驚異的。
クラシックの優美・壮麗とロックの激しさ・スリルの融合という、ポップ・ミュージック史上幾多のアーティストが挑んできたアイディアに新鮮な感性と抜群のテクニックでチャレンジし、音楽的完成度の高さで先人達の成し遂げた偉業と同等の高みへと軽やかに到達。BAROQUE+ROCKの造語BAROCKをバンド名に冠するBAROCK PROJECTの名に恥じない傑作。

Track List

1. Back to You
2. Coffee in Neukolln
3. Kyrie
4. Fool's Epilogue
5. Streets of Berlin
6. Starfull Jack
7. Inside My Dreamer's Eyes 1
8. Inside My Dreamer's Eyes 2
9. The Lives of Others

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BAROCK PROJECT / Skyline

2015,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの4thアルバムSkyline。

爽やかな多声コーラスで幕を開ける#1。5拍子をベースにメロディアスな歌メロを乗せ、ブラスやストリングスを要所で効果的に使用し明朗かつ希望的に展開するFLOWER KINGS風シンフォニック・ロック。
オルガン中心でELPを彷彿とさせつつ、シンセが入る部分ではELPはELPでもEMERSON LAKE & POWELLのようなポップ性も伺わせながら弾むようなリズムで爽快に進行。非常にテクニカルでありながらそうとは感じさせないメロディとアレンジの妙が際立つクラシカルなインストゥルメンタル・チューン#2。
乾いたウェスタン風フォークを軸に、端正なクラシカル・パートやヘヴィなパート、シンフォニックなインスト・パートを内包する10分超の大作#3。NEW TROLLSのヴィットリオ・デ・スカルツィ(Vo/Fl)をゲストに招き、ヘヴィネスとクラシカルが融合したアレンジをバックにフルートのソロをフィーチュア。
ミステリアスなムードを演出するシンセの小技が効いたドラマティックな#4。
クールなフォーク・パートとクラシカルなパートが表裏一体となった#5。清涼感あるコンテンポラリーなパートからクラシカルな叙情への展開が意外性を伴いハッとさせられる。
語りかけるようなジェントルなボーカルをピアノ、アコギ、ストリングス・セクションが支える気品あるバラード小品#6。
洒落たジャジーなコード進行がフックとなった、ファンキーな中に少々ペーソスを効かせた#7。
STYXのような産業ロック的キャッチーさを持った歌メロやスリリングなプログレ・ハード風インスト・パートを内包。ストリングスによるクラシカルなデコレーションを施したスケールの大きな#8。
クラシカルでメランコリックなバラード#9。
中期GENESISや初期FLOWER KINGSのような突き抜ける爽快感を持ったイントロが印象的なシンフォニック・ロック#10。晩夏を思わせる寂寥感が心地良い余韻となっている。

全編に良質な歌メロが散りばめられており、テクニカルで壮麗な器楽要素が満載でありながら散漫にならずに芯の通った作品となっている。その歌メロもイタリア的な甘いものからクラシカル、コンテンポラリーなどバラエティに富んでおり、中心人物ルカ・ザッビーニ(Key/B)の音楽的素養の高さが伺える。
アルバム・タイトルから連想したと思しきシュールなジャケット・アートは、GENESISの作品でお馴染みのポール・ホワイトヘッドによるものでちょっと古臭いタッチが微妙。洗練された音楽性からはヒュー・サイムとかの芸風が合っている気がする。

Track List

1. Gold
2. Overture
3. Skyline
4. Roadkill
5. The Silence of Our Wake
6. The Sound of Dreams
7. Spinning Away
8. Tired
9. A Winter's Night
10. The Longest Sigh

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BAROCK PROJECT / Detachment

2017,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの5thアルバムDetachment。

ピアノによる軽やかで抒情を湛えたイントロ#1。
#1からシームレスに繋がり、シンフォニックなシンセ、優雅なストリングス、ズ太いアナログ・シンセ、ダーティなオルガンなど多彩な鍵盤群をはじめ、躍動するバンド各パートの見せ場も用意し、さながらインスト隊のプレゼンの趣。ポップなヴァースから抒情をまぶしたメロディアスなサビへという楽曲展開とも相まってアルバムへの期待感が膨らむ#2。
ベタなラテン系抒情と気品漂うクラシカルなメロディが高度に融合、3連系リズムにチェンジしてのフォークロア・パートをも擁し、PFMの系譜を継ぐ傑作シンフォニック・ロックの#3。
エンジニアリングも担当するバンドの頭脳ルカ・ザッビーニ(Key/Vo/G)の爪弾く美麗でもの悲しいアコギに導かれる#4。ラテンの陰陽が表裏一体となりクラシカルなフレーバーを纏ったシンフォニック・チューン。
モダンなフォークロアから爽快なサビに発展する#5。
ゲストのピーター・ジョーンズが歌う#6。情感あふれる歌唱が場面転嫁しながら徐々に盛り上がる楽曲に絶妙にマッチ、まるでミュージカルを見ているかのような高揚感をもたらし9分超の長尺を感じさせない。
スパニッシュ風味のアコギがフックとなったミステリアスな小品#7。
再びピーター・ジョーンズ歌唱によるアーバン・テイストなピアノ・バラード#8。
コンテンポラリーなムードに変拍子が自然に溶け込むポップ・チューン#9
アコギのアルペジオにピアノやストリングスが絡む美しいフォーク調の前半からスケールの大きなシンフォニック・ロックに移行する#10。
打ち込みっぽいシンセやリズムのシーケンスを印象的に配置したキャッチーな#11。
おおらかなムードのフォークにダイナミックなロック・パートが融合した北米プログレ・ハード風ナンバー#12。
ゆったりとした中にスリリングなパートを包含した#13。

抒情やフォークロアにPFMのような地中海テイストを感じさせながら、クラシカルな装いで纏め上げるのがBAROCK PROJECT流。しかしながら今回は、クラシカルなテクニックで圧倒する若々しさは影を潜め、高い音楽性に裏打ちされた引き出しの中から微妙な陰影を描き出す方向にシフト。
尺の長尺を問わずメロディアスでいながら意外性もある楽曲展開でリスナーをグイグイ引き込む豊富なアイディアが秀逸。
2017年6月にBAROCK PROJECTとのカップリングで来日公演を行うSWEDENのMOON SAFARIが青春の甘酸っぱさとすれば、BAROCK PROJECTは甘さの中にもビターな大人の味わいといったところ。

Track List

1. Driving Rain 1:03
2. Promises 5:05
3. Happy to see you 7:37
4. One day 7:23
5. Secret therapy 5:37
6. Broken (ft. Peter Jones) 9:10
7. Old Ghosts 4:07
8. Alone (ft. Peter Jones) 3:14
9. Rescue Me 4:55
10. Twenty years 6:06
11. Waiting 5:43
12. A New tomorrow 7:39
13. Spies 7:23

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BAROCK PROJECT / Seven Seas

2019,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの6thアルバムSeven Seas。

ストリング・セクションを絡めて静と動を行き来するスケールの大きなシンフォニック・ロック・チューン#1。
ジャキジャキした7拍子のギター・リフがリードするキャッチーな北米プログレ・ハード風ナンバー#2。
一転してロマンティックなピアノが主導するヨーロピアン・テイストの#3。抒情的かつ印象的なモチーフを彩りを変えながら巧みに展開。シンセやオルガンによるスリリングな・インスト・パートを内包した構成力も見事。
徐々に盛り上がるドラマティックな構成にロックのダイナミズムとクラシックの端正さを融合したエピック・チューン#4。
バロック調のアコギとストリングスが端正な彩を加え、感傷的な中にも炭火のような温かさを持つ歌メロをフィーチュアした小品#5。
瑞々しいサウンドスケープから内省的な歌唱パートやアナログ風シンセが唸るインスト・パートを経て美しく感動的にエンディングへと展開する11分超の#6。
アコギをバックにしたジェントルな弾き語りからロック・パートに移行、スペイシーなシンセを交えて空間的な広がりを見せたかと思うとギター/シンセ/ベースのユニゾンで早いパッセージを聴かせる超絶パートで度肝を抜く#7。
イタリアらしい歌心ある美メロをアコギやピアノ、ストリングスがドラマティックに支えるバラード#8。
地中海的な明るさを持つポップ・チューン#9。
シンセを中心にエレクトリック楽器がリードするコンテンポラリーなロック・チューン#10。
アルバムのラストを飾る感動的なバラード#11。

冒頭の2曲を聴いた段階でだいぶ作風が変わったか?と思わせるも、#3以降からお馴染みのBAROCK PROJECT節が炸裂。トータルで見た場合、音楽性やスケールがさらに拡張していることに唸らされる。
クラシックの端正さや構築美に豪放なロックをモダンなセンスで融合し独自のプログレを推進。一人でピアノ・リサイタルもやっちゃう位の本物の音楽家ルカ・ザッビーニの才能に驚きっ放し。

– Luca Zabbini / keyboards, acoustic guitar, vocals
– Francesco Caliendo / bass
– Marco Mazzuoccolo / electric guitars
– Eric Ombelli / drums, percussion
– Alex Mari / lead vocals, acoustic guitar

Track List

1. Seven Seas
2. I Call Your Name
3. Ashes
4. Cold Fog
5. A Mirror Trick
6. Hamburg
7. Brain Damage
8. Chemnitz Girl
9. I Should Have Learned To
10. Moving On
11. The Ones

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