PAIN OF SALVATION のレビュー

PAIN OF SALVATION / Entropia

1997,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・メタル・バンドPAIN OF SALVATIONのデビュー・アルバムEntropia。戦争によって分裂する家族をテーマにした、デビュー作でいきなりのコンセプト・アルバム。

ヘヴィで壮大なリフがリード、静と動を巧みに織り交ぜたハッとするアレンジで物語にグイグイ引き込む#1。
SEとサンプリングしたビートからなる第一章のイントロ#2。
#2のビートで提示されたテンポを引き継いだヘヴィなリフから、クリーンなギターのバッキングによるボーカル・パートへ移行するミディアム・スローな#3。中間部のミステリアスなパートとコーラスのリフレインが印象的。
自然に挿入された変拍子とリズムチェンジによる場面転換による3部構成の組曲#4。ダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)の慟哭のようなボーカルと泣きのギター・ソロが非常にエモーショナルで胸に突き刺さります。
クリーンなギターのアルペジオに抑揚を付けた歌唱が乗るメランコリックな#5。
マーチのリズムから一転、リディアン・モードによる新鮮な響きのメロディと2拍3連のアクセントによるリフが強烈に耳に残る#6。入り組んだアレンジのインスト・パートとキャッチーとも言えるボーカル・パートがシームレスに融合した個性的なプログレッシブ・チューン。
アグレッシグなリフがリードするスリリングな#7。時折挿入されたメロディック・パートが、ヘヴィなパートとの落差を生み出す老獪なアレンジが光ります。
エモーショナルなギター・ソロから3連リズムのエッジが立ったリフに移行するインスト#8。
メロディアスなテーマ・メロディを中心に配しながら、ラップ調の歌唱パートにジャジーなインスト・パートなどを交え、一筋縄では行かない変態的アレンジの#9。
ベースによるリフレインから叙情的なボーカル・パートに移行する小曲#10。
チョッパー・ベースがファンキーに迫るパートやギターが弾き捲くる疾走パートと、サビでシンフォニックに盛り上がるボーカル・パートが癒合した#11。
#2での波音のSEを冒頭に配し、叙情的に盛り上がる#12。終盤は突如ブルータルなリフが登場、苦悩と混沌の様相を見せる。
アコギをバックにダニエル・ギルデンロウの生々しくも祈るような歌唱をフィーチュアしたエピローグとなる#13。

様々な音楽的影響を消化したトリッキーなインスト・パートを印象的に使いながらも、主役はあくまでもエモーショナルな歌唱とメロディ。
既にPAIN OF SALVATIONとしての個性が確立されている脅威のデビュー・アルバムです。

Track List

1. ! (Foreword)
2. Welcome to Entropia
3. Winning a War
4. People Passing By
5. Oblivion Ocean
6. Stress
7. Revival
8. Void of Her
9. To the End
10. Circles
11. Nightmist
12. Plains of Dawn
13. Leaving Entropia (Epilogue)

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PAIN OF SALVATION / The Perfect Element, part I

2000,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・メタル・バンド PAIN OF SALVATIONの2000年3rdアルバム The Perfect Element, part I 。
児童虐待や青年時代の葛藤などをテーマとしたコンセプト・アルバム。

ヘヴィでダーク、怒りを感じさせるヴァースから、突然超メロディアス&メロウなサビに展開する#1。時にソウルフルなシャウトを交え、明暗を描く#2。終盤、印象的なボーカル・メロディがピアノでリフレインされ、聴き手の心に深く染み渡ります。
#2のラストからクロスフェードする悲しみに満ちたアルペジオのリフをベースに、苦悩を映した慟哭のサビに展開する#3。
ハンマーノイズの要素を強調することで寂寥感を表現したエレピによるリフが印象的な#4。
ストリング・セクションがバンド・サウンドに溶け込んだ後半がメロディアスで美しい。タッピングによるメカニカルな変拍子リフと、メロウなボーカル・パートでのオーガニックな情感を対比させた#5。疾走パターンに変化したリズム隊をバックに#3のサビがリプライズで登場し、テーマの関連性を示唆します。
時折ヘヴィな装飾を盛り込んだ、ピアノをバックにした繊細なバラードの前半から、5拍子でのエキゾチックなリフでリズム・コンシャスな後半に展開する#6。終盤にはストリングスとクワイヤで感動的なメロディがリフレインされます。
アコギやフレットレス・ベース、ピアノによる伴奏に清廉なボーカルが乗るメロウな#7。
チョーキングでシタールのような効果を出すギターが奏でるエスニックなメロディが深遠なムードと相まって、神秘性とトリップ感を生むヘヴィな叙事詩的ナンバー#8。
#4のリフ(今回はギターでプレイ)とサビがリプライズ、キャッチーとも言えるメロディアスなプログレッシブ・メタルに仕上った#9。
7拍子のクリーンなアルペジオによる静かな前半から、#6終盤で提示されたメロディがリプライズし盛り上がりを見せる後半に移行する#10。
パッド系シンセの白玉をバックに、ギターがルバートで切ないメロディを奏でるインスト小品#11。
7拍子のリフから始まり、重層的に様々なパートが織り込まれて壮大なフィナーレを飾る#12。

アルバム全体を覆うダークな色彩、ダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)による様々に声を使い分けてのボーカル、意表を突いた楽曲展開によって重いテーマを見事に表現。数種の印象的なテーマ・メロディを楽曲間でリプライズさせるアルバム構成の妙、必然性ある自然な変拍子、楽曲展開やインストゥルメンタル・パートにおけるコード進行などにインテリジェンスを感じさせます。

Track List

1. Used
2. In the Flesh
3. Ashes
4. Morning on Earth
5. Idioglossia
6. Her Voices
7. Dedication
8. King of Loss
9. Reconciliation
10. Song for the Innocent
11. Falling
12. The Perfect Element

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PAIN OF SALVATION / Remedy Lane

2002,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・メタル・バンド PAIN OF SALVATIONの2002年4thアルバムRemedy Lane。

パッド系シンセの静かな序盤から苦悩を感じさせるヘヴィなパートに移行する、アルバムのイントロダクション的なナンバー#1。
ダークでヘヴィな音像をバックに、ダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)がエモーショナルに歌い、弾く印象的なメロディが耳から離れない#2。
ギターとピアノがユニゾンで奏でる5拍子の精神分裂気味メロディのリフを軸に展開する#3。突如メロディアスになるサビにおけるピアノやギターのミュート・フレーズも5拍子の周到さ。
様々な表情を見せる歌唱が演出する叙情パートや爽快なパートを内包しつつ、キャッチーなサビ以外は基本的に7拍子で進行する#4。
クリーンなアルペジオをバックにしたマイルドな前半から、後半は激しさも加えた歌唱に展開する#5。
枯れたトーンのギターによって提示された悲痛なテーマ・メロディを徐々に力強く発展させていく#6。
16分音符の2拍目にアクセントを持ってくる特異なリフで耳を釘付けにし、その後リズムもキーも全く違うブリッジ・パートを挿入し意外な展開を見せるプログレッシブ・チューン#7。
エスニックなフレーバーをまぶしたフォークロア風ナンバー#8。
クリーンなエレキによるクラシック・ギターのようなフレージングが叙情を運ぶ前半、アルペジオがウラ打ちのリズム・トリックを使用している後半とギターがメインのインストゥルメンタル#9。
#1の右チャンネルにかすかに聴こえていたシンセのシーケンス・フレーズを発展させたようなインストゥルメンタル#10。
心地良い3拍子に乗せて歌唱パート中心に進行する、キャッチーな中にも深遠なムードの#11。ギター・ソロがエモーショナル。
抑えた歌唱が胸を打つ、メロディアスな感動の叙情バラード#12。
変拍子も交えて淡々と時にプリミティブな激情も迸らせるヴァースと、メランコリックなサビを対比させながら壮大に紡がれた10分近くの大曲#13。

ダークなムードや時折見せるアグレッションはヘヴィ・メタルのそれでありながら、実の所はディストーション・ギターも控え目だし、充分にテクニカルでありながらサーカスのようなこれ見よがしの超絶アンサンブルに頼る事も無い。
所々に仕掛けたリズムのトリックや予想不可能な意外な展開などで音楽的深みとインテリジェンスを醸し出す、どちらかというと王道プログレッシブ・ロックに近づいた作風。
そんな事もあって、同郷の現代プログレの旗手FLOWER KINGSのロイネ・ストルトとダニエル・ギルデンロウの交流も進んで行ったんでしょうか。
ダニエル・ギルデンロウは作詞作曲、アートワーク、個人的なものに基づいた重いコンセプト、ミックスにプロデュース、と全てにその才能を発揮しております。

Track List

1. Of Two Beginnings
2. Ending Theme
3. Fandango
4. Trace of Blood
5. This Heart of Mine (I Pledge)
6. Undertow
7. Rope Ends
8. Chain Sling
9. Dryad of the Woods
10. Remedy Lane
11. Waking every God
12. Second Love
13. Beyond the Pale

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PAIN OF SALVATION / Be

2004,SWEDEN

ダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・メタル・バンドPAIN OF SALVATIONの5thアルバムBe。

現代の天地創造の物語とダニエルが言うコンセプト・アルバムとなっており、男女による何やら哲学的な問答の#1から緊張感あるインストゥルメンタルに乗って年代と総人口数と思しき数が淡々とアナウンスされる#2に至るオープニングの段階で既に引き込まれていきます。
続く#3はパーカッションを活かしたトライバルなムードを漂わせたダークなフォークロア風チューン。リズムのトリッキーな仕掛けが耳から離れません。
雨のSEに続きピアノの美しくも沈鬱なソロにストリングが絡み、シンフォニックに発展していくインストゥルメンタル#4。
フレットレス・ベースが深遠なうねりを醸成する思索的な序盤から、タテ乗りのハードなパートに展開する#5。
再びフォークロア風な#6。
そしてアルバムのハイライトでもある、3部構成のプログレッシブ・チューン#7へ。
ミュージカルのような芝居がかったダニエルの歌唱、QUEENのようなコーラスに管弦楽を交えた国籍不明のシンフォニックなオーケストレーションでドラマティックに展開。
ファンから電話録音で公募した神に対するメッセージをピアノやアコギ、フルート等によるヒーリング・ミュージックに乗せた#8。
一転して、前半のリフと苦悩するボーカルによるヘヴィネスから、オーケストレーションによる神秘的パートの後半に移行する#9。
ストリングスも交えてヘヴィに進行するミディアム・テンポのパートに、#2のスリリングなパートを交えたプログレッシブ・チューン#10。
クリーンなギターのアルペジオを中心にピアノや管弦が絡み、やがて劇的に盛り上がるインスト#11。
荘厳なチャーチ・オルガンをバックに祈りにも似た歌唱が切迫感をつのらせる#12。
雫が滴るようなピアノと管弦によるバックにダニエル渾身の歌唱が乗るヘヴィなバラード#13。本アルバム中ほとんど唯一のギター・ソロがエモーショナル。
トライバルなリズムとフォークロアがリプライズする#14。
エンディングと隠しトラックが用意された#15。

曲中や曲間に何がしかの仕掛けが施されており、1曲だけサクッと聴くという行為を許さないトータル・アルバム。
#6や#8など、もはや楽曲とは言えないようなセリフ・パートを効果的に配し劇的に場面転換していく為、常に知的好奇心を刺激され一気に聴けます。
ブックレットに掲載された謎めいた写真を眺めながら、イマジネーションを働かせて聴いてみてください。

Track List

1. Animae Partus
2. Deus Nova
3. Imago
4. Pluvius Aestivus
5. Lilium Cruentus
6. Nauticus
7. Dea Pecuniae
I) Mr. Money
II) Permanere
III) I Raise My Glass
8. Vocari Dei
9. Diffidentia
10. Nihil Morari
11. Latericius Valete
12. Omni
13. Iter Impius
14. Martius/Nauticus II
15. Animae Partus II

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PAIN OF SALVATION / Scarsick

2007,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・メタル・バンドPAIN OF SALVATIONの6thアルバムScarsick。

3rdアルバムにしてプログレ・メタルの名盤The Perfect Element PartIの続編、待望のPartIIということらしいです。また、クリストファー・ギルデンロウが脱退、ベースはダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)が兼任しています。

といいつつ何ですが、ダニエルの才能の赴くまま自由にプログレッシブな作品を連発する彼らに、もはやプログレ・メタルなどという狭隘なレッテルは失礼かも。
演劇のようですらあった前作Beの衝撃は凄まじく、本アルバムも全ての音や展開に何か意味があると思い慎重に聴き入っていると、冒頭2曲もヘヴィなエッジが復活したギターやここのところの彼らの引き出しの一つでもあるフォークロア風味に耳が行って、問題のラップ調ボーカルもすんなり入ってくるから不思議です。並みのメタル・バンドなら違和感を感じるところなんでしょうが。
そしてダニエルの子供さんの声を使用した#3。愛らしい赤ん坊の声と物悲しいピアノのメロディの対比がドラマを感じさせます。
続いてポップな#4、ディスコ・ビートを取り入れた#5と、誰も予想しなかった展開で度肝を抜かれます。
にしても、バンジョー(それとも又もやマンドーラ?)の響きが新鮮なスパイスとなった#4や7拍子のダークなプログレ・パートを盛り込んだ#5など、単純に見せかけて実は丹念に作り込まれた所にインテリジェンスが滲み出ています。そんな裏読み無しでも#5のソウルフルな歌唱とか、ダニエルって本当に音楽が好きなんだなと思わせる本気度が素晴らしい。
とここまでが、Side1とのクレジット。勿論CDなのですが、音楽的コンセプトに基づいたものとのこと。こういった細部への拘りも彼ら・・・というかダニエルらしいですね。
確かにSIDE2冒頭となる#6はこれまでの破天荒路線から、一転してシリアスな思索路線。劇的に盛り上がる部分からの叙情的な展開が美しいです。
エフェクトを掛けたギターのリフにヴォコーダーから始まるクールな#7は、静から動へ幅広いレンジで聴かせるダニエルのボーカルが印象的なナンバー。
左右で微妙にフレーズのタイミングを変えたギター・リフがトリップ感を誘い、ミステリアスなヴァースと中間部のメロディアスなフォークロア風歌メロが対になった#8。
1コードに乗った熱病にうなされているかのような序盤から、サビでようやく開放感を味わえる緊張感に満ちた#9。
そしていよいよオーラスの#10は10分超のエピカルなナンバー。ムーディな序盤から壮大なサビまで丹念に描かれています。

Track List

1. Scarsick
2. Spitfall
3. Cribcaged
4. America
5. Disco queen
6. Kingdom of loss
7. Mrs modern mother mary
8. Idiocracy
9. Flame to the moth
10. Enter rain

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PAIN OF SALVATION / Road Salt One

2010,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAIN OF SALVATIONの7thアルバムRoad Salt One。

ブルーズ・ロック風な#1,#2、ドラマティックで悲痛なバラード#3、シンプルなオルガンの白玉をバックにトライバルなムードのボーカルとコーラスで構成された#4、アコースティック・ブルーズ・チューン#5、音楽的な懐の深さを感じさせる、レトロでヨーロピアンな風情漂う哀愁のワルツ#6。と、ダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)の情感豊かなボーカルをフィーチュアした楽曲が続く前半戦。
ここで一旦アナログ・レコード・プレイヤーの針が上がる音が入るので、ここまでが”A面”ということなのだろう。

従来からのファンを試すかのような前半戦に対して、後半は幾分プログレッシブ。
静動の起伏を持ったミステリアスなサウンドに屈折した歌唱が乗る#7。
くすんだエレピが主導する中間パートを持つ、ジャムから発展したようなハード・ロック#8。
アルバム中随一のキャッチーなハード・ロック#9。
軽く歪んだエレピによる沈み込んだパートと埃っぽいギターのリフを対比させた#10。深遠なコーラスとツインリードのハーモニーが加わり独特なプログレッシブ風味を醸し出しています。
またもや古いエレピの音色が印象的なバラード#11。メロトロンっぽいクワイヤとストリングスがレトロなムードを増強。
ペダル・トーンにモーダルなメロディを被せ、エスニックで混沌としたなムードに仕上げたPAIN OF SALVATIONらしいプログレッシブ・チューン#12。

これまでの緻密に作りこまれた先進的なサウンドから一転して、70年代風ロックやブルーズ・ロックを下敷きにしたような生々しい作風が衝撃。メンバーのポートレイトを使用したジャケット・アートワーク、アナログ盤のトラッキング・ノイズの挿入、空間系エフェクトのフィーリング、レトロなエレピ/ドラム/ギターなど楽器音、等々、細部にも”70年代風”が貫かれており、作品としての統一性を醸成。
人生における様々な”道”をテーマにした2部作の1枚目ということで、2枚目のRoad Salt TwoはOneの前半路線なのか後半路線なのか、それとも予想もつかない新機軸を提示してくるのか。

Track List

1. No Way
2. She Likes to Hide
3. Sisters
4. Of Dust
5. Tell Me You Don't Know
6. Sleeping Under the Stars
7. Darkness of Mine
8. Linoleum
9. Curiosity
10. Where it Hurts
11. Road Salt
12. Innocence

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PAIN OF SALVATION / Road Salt Two

2011,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAIN OF SALVATIONの8thアルバムRoad Salt Two。

リフ中心のオールド・スクールなブルーズ・ロック/ハード・ロックのスタイルを取り入れた#2,#3,#11、マンドーラなど民族楽器を導入したフォーキーな#4,#5,#9、意表を突くレトロ風味のワルツ#6、そこにダークでドラマティックな要素を持った#10や7拍子のリフがリードする#13などのプログレッシブ・チューンが絡む構成は、#8の最後と#9の最初に挿入されたアナログ・レコード風スクラッチ・ノイズのエフェクトと合わせて、前作Road Salt One同様のスタイルでシリーズ通じての統一感を醸成。
ただ、ハード・ロックにエスニックな要素をLED ZEPPELIN並みのセンスで融合した#2の練りこみ具合、オリエンタルなムードのアルバム・テーマ#1とエンディング・チューン#14を配した構成などを見ると、単なる続編というよりはより完成度を高めた単独作と捉えても良さそう。
このあたりは2作の制作において方向性を突き詰める中で、ダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)の豊富なアイディアが整理された結果と言えるんではないでしょうか。
初期の頃のプログレ・メタル然としたテクニカルなインスト・パートやアグレッションは影を潜めましたが、雄大なフォークロア#5、ブレイク・ビーツとフォークが溶け合った#8などの郷愁を誘うメロディは絶品だし、様々なスタイルの楽曲を巧みに繋げたアルバム構成で約60分の音楽の旅に浸れる所が素晴らしい。
多分この路線は今回で終了し、次作ではより音楽性を広げた新しいPAIN OF SALVATIONを見せてくれるだろう。

Track List

1. Road Salt Theme
2. Softly She Cries
3. Conditioned
4. Healing Now
5. To the Shoreline
6. Break Darling Break
7. Eleven
8. 1979
9. Of Salt
10. The Deeper Cut
11. Mortar Grind
12. Through the Distance
13. The Physics of Gridlock
14. End Credits

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PAIN OF SALVATION / In The Passing Light of Day

2017,SWEDEN

連鎖球菌感染症から復帰したダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAIN OF SALVATIONの9thアルバム。

ギターによる奇数音シークエンスがメインのリズムとシンクロしたりズレたりするポリリズム展開が気持ち悪くも心地よい#1。10分超えの長尺だが、メロトロンやオーボエを使用した静謐パートから怒涛のヘヴィ・パートへのドラマティックな移行、メロディアスなサビと魂を振り絞るような熱いダニエルの歌唱など、スリリングかつ感動的に聴かせる。
寂寥感溢れるピアノ・バラードから一転してヘヴィなリフがのたうち回る#2。
屈折したムードのヴァースとメロディアスなサビが対比、重低音リフとスクリームが強烈な印象のパワー・バラード#3。
くぐもったピアノと生々しいダニエルの歌唱で綴るメロウなバラード#4。
ポリリズムをフックにした静と動の起伏ある展開とキャッチーなコーラスが融合、初期のサウンドを彷彿させるプログレッシブ・メタル・チューン#5。
メロディアスなコーラス、重低音リフ、メロウ・パートなど様々な要素が絡み合う唯一無二のサウンドを持つ#6。
メロウネスにリズムのトリックを交えた序盤~中盤とエモーショナルなギター・ソロが舞う後半からなる#7。
エレピをバックに淡々としたヴァースからジワジワと盛り上げ、サビで一気にヘヴィに変化する#8。
オートハープがフォークな彩を加える郷愁を誘うバラード#9。
#9のムードを引継いだ温かみのあるプログレッシブ・フォークの前半からスケールの大きなロック・パートに移行する#10。

尺の長短を問わずしっかりと楽曲にドラマ性を持たせ、一筋縄ではいかないポリリズムでリスナーの好奇心を煽る。プログレッシブな感触ではあるが、初期の表層的なものとはまた次元の違う深みに到達した感がある。
生々しいサウンドは前2作の傾向を継承しながも、ダニエルの感性から自然と湧き出てきたものにSFや土着フォークロアなどキャリアを通じて得たエッセンスをそこかしこに滲ませた素晴らしい復活作。

Track List

1. On a Tuesday
2. Tongue of God
3. Meaningless
4. Silent Gold
5. Full Throttle Tribe
6. Reasons
7. Angels of Broken Things
8. The Taming of a Beast
9. If This Is the End
10. The Passing Light of Day

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PAIN OF SALVATION / Panther

2020,SWEDEN

ダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAIN OF SALVATIONの10thアルバムPanther。

シンプルだが印象的なシンセのモチーフと小刻みなビートが絡み合いスリリングに展開。ダニエル・ギルデンロウの絞り出すような歌唱が冷徹なSEと融合し独自のグルーヴを生む#1。
ドロ臭い音使いのリフだが、ダウン・チューニング(7弦ギター?)でスタイリッシュなヘヴィネスに仕上げた#2。
静寂の寂寥感とそれを打ち破る暴虐が対比する#3。
流れるようなピアノのリフレインをベースにメロウな歌メロで展開。サビではそれまでの張り詰めた緊張感が炭火のような温かさで溶かされる美しい#4。
シンセのシークエンス・フレーズにアコギやバンドが絡み大きなうねりを生む#5。
おそらくマンドリン等のアコースティック楽器によるインストゥルメンタル小品#6。
エレクトロニカのパターンにラップが乗る#7。
モーダルなトラッド風味が意表を突く#8。
郷愁をそそる歌メロを中心に、エモーショナルなギター・ソロや不穏なヘヴィ・パートを織り交ぜた13分超えのエピック・チューン#9。

歌唱やギター、ドラムスなどの有機的な熱情、シンセやエレクトロニカによる冷たい無情、これらが緻密な変拍子に乗って明暗や静動を描く。ギターのパワー・コードは、もはやサウンドスケープの一要素となり、主役はほぼほぼエレクトロニカだが不思議とヘヴィな質感があり唯一無二のPAIN OF SALVATIONサウンドになっている。
各曲ともテーマ・メロディや歌メロは意外と普遍的で、独創的な楽曲展開と斬新なアレンジの中に埋もれることなく全体としてはスタイリッシュかつキャッチーな印象を残す。

Track List

1. Accelerator
2. Unfuture
3. Restless Boy
4. Wait
5. Keen to a Fault
6. Fur
7. Panther
8. Species
9. Icon

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