OPETH



スウェーデンのプログレッシヴ・メタル・バンドOPETH。
初期のテクニカルなデスメタルから、次第に中心人物ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)の70年代ロック趣味を反映したプログレ要素を増量。
デス・ヴォイスと轟音不条理リフに、深遠なアコギやメロトロンなども絡めた独特の耽美でゴシカルな音楽性を確立。
フォロワーをも生み出すが、2011年のアルバムHeritageでは突如というか当然というかより70年代ロックに傾倒した音楽性を見せるなど他者の追随を許さない孤高の存在感を放っている。

管理人は、OPETH単独初来日時に大阪心斎橋のクアトロでのライブ前に下階の楽器店でミカエルに偶然会い咄嗟に2ショット写真撮影を申し入れたが気さくに応じてくれた。
ライブもシリアスな音楽性に反して軽妙なMCで場を和ませるなど、根は単なる音楽好きの良き父親というミカエルの人の良さが伺える。

OPETH のレビュー

OPETH / Orchid

1995,SWEDEN

スウェーデンが生んだ異才ミカエル・オーカーフェルト率いるプログレッシブ・デス・ゴシック・メタル・バンドOPETHの1stアルバムOrchid。

ミカエルは1974年生まれだというから、この頃はまだ若干21歳。叙情的なツイン・リード・ギターが80年代NWOBHMの薫りをそこはかとなく感じさせつつも、端正にまとめられた長尺曲の展開には年齢を感じさせない落ち着きをも感じさせる脅威のデビュー作。デス声やサウンドの迫力不足といった点では後の充実した作品群に比べるべくも無いが、既に幽玄なアコギを絡めた深みのあるアレンジを聴かせているところがニクイ。全体に漂う冷ややかなムードも抜群。こうした既に完成した基本パーツと共に、後と比べるとまだまだ未熟な歌唱表現や味わいの薄いギター・ソロが同居している不思議なムードに覆われたアルバム。一歩間違うと、”イモ”なんだけど何かこう心に迫るものもあるという・・・

Track List

1.In The Mist She Was Standing
2.Under The Weeping Moon
3.Silhouette
4.Forest Of October
5.The Twilight Is My Robe
6.Requiem
7.The Apostle In Triumph

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OPETH / Morningrise

1997,SWEDEN

OPETHの1997年2ndアルバムMorningrise。

20分超の#4を含む全5曲が10分以上。全曲がヘヴィなリフのパートと静寂アコギパートを同居させたドラマティックな作りになっている。必ず印象的なフックが用意されており、単に長いだけではないソングライティングの妙は彼らならではものです。 北欧民謡のフレーバーを幽かにちりばめたツインギターによる計算されたハーモニーの絡みに加え、テンション・ノートを効果的に使用したコードワークも徐々に増えて来た。この辺りに少々青臭い部分もあった1stからの進歩が見える。
又、得意のフォークも絶品。 #5では2本のアコギとベースが絶妙のハーモニーを奏でるアンサンブルを披露。 特にオリジナル・メンバーであるヨハン・デファルファーラのメロディアスなベースが美しい。

Track List

1. Advent
2. Night and the Silent Water
3. Nectar
4. Black Rose Immortal
5. To Bid You Farewell
6. Eternal Soul Torture

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OPETH / My Arms Your Hearse

1998,SWEDEN

マーティン・メンデス(B)とマーティン・ロペス(Dr)が加入し、OPETH中期の黄金ラインナップが揃った3rdアルバムMy Arms Your Hearse。

メロディック・デス・メタル界の名プロデューサーフレドリック・ノルドストロームをプロデューサーに迎え、サウンド、ソングライティング、ムード全てが大幅にレヴェル・アップ。ヘヴィネスと静謐が複雑に入り組みながらも、全体としての調和がイマイチだった前作までとは打って変わり、清濁・緩急が有機的に結びつき、サウンド面の向上も相まってOPETHのスタイルがここに完璧に完成。威厳あふれるミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)のデス・ヴォイスや格調高くも冷え冷えとした妖しいコーラスが、初期の単音からコードワーク中心へと変遷してきたブ厚いプログレッシブ・ヘヴィ・リフと完全に一体化。驚異的な音の壁が轟然と攻め込んでくるかのような迫力が漲っています。
前作までが散発のゲリラ戦法だとしたら、まさに今作は陸海空の三軍共同戦線による怒涛の進軍という感じ。
#6なんて極限まで禍々しいリフの曲なのに、妖しいアコギパートと終盤のメロディアスなフォーク調のパートの存在によって一種の神々しささえ湛えた楽曲にまで高められている。
そして#8の1分過ぎ、クリーンなコーラスからの展開がもうトリ肌。これぞOPETHな恍惚の場面転換。
これがねー、病みつきになるんですよ。#7のようなムーディなフォーク曲も単なるクールダウン以上のクオリティで、ミカエルのクリーン・ヴォイスが堪能できます。

Track List

1. Prologue
2. April Ethereal
3. When
4. Madrigal
5. Amen Corner
6. Demon of the Fall
7. Credence
8. Karma
9. Epilogue

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OPETH / Still Life

1999,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・デス・ゴシック・メタルバンドOPETHの1999年4thアルバムStill Life。

バンドのブレイン ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)はもう天才と言っていいでしょう。パワフルかつ無慈悲なデス・ヴォイスと70年代英国ロック風なクリーン・ヴォイスの使い分け、リリカルでいて時に不気味で奇妙な旋律を奏でるアコギ、確かなテクニックに支えられたツボを得たメロディアスなギター・ソロと独自の個性的なディストーション・リフを吐き出すエレキ・ギター。これら清濁/静動の対比が複雑な曲展開と相まって自在に配されており、唯一無二の個性を完成させています。
各曲に必ず必殺の叙情テーマ・メロディが用意されており、時には歌唱、時にはギターでと表現手段を変えながら長尺曲の随所に完璧に配置され緊張感を持続させると共に、楽曲のアイデンティティを明確にする効果ももたらしています。基本はデス・メタルかもしれませんが、アコギ主体のフォーク #3での神秘的な叙情性をはじめ、楽曲の構築性など全体に流れるムードは70年代っぽいんです。素敵なジャケは勿論トラヴィス・スミスによるもの。

Track List

1. Moor
2. Godhead's Lament
3. Benighted
4. Moonlapse Vertigo
5. Face of Melinda
6. Serenity Painted Death
7. White Cluster

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OPETH / Black Water Park

2001,SWEDEN

OPETHの2001年5thアルバムBlack Water Park。

前作Still Lifeを非常に気に入ったという英国のプログレ・マニア PORCUPINE TREEのスティーブン・ウィルソンがプロデュースしてます。
不条理変態リフと叙情アコギ、そして#2のコーラス部に代表される英国的な雰囲気すら漂わせる歌メロ。全てが計算されつくされつつ複雑に構築されているので何回聴いても飽きないし、その都度新たな発見があります。
メロディの扇情度は歴代OPETH作品の中で一番かも。
2008年の初単独来日公演ではアンコールでプレイされた名曲#4のイントロは美しさとトリップ感を併せ持つ新感覚メロディだし。
12分の叙事詩的大作であるタイトル曲#8も長尺を感じさせない巧みな構成がカッコ良くて最高。
禍々しいリフ、清廉なアコギ等OPETHの魅力がバランス良く満載された名盤です。

Track List

1. Leper Affinity
2. Bleak
3. Harvest
4. Drapery Falls
5. Dirge for November
6. Funeral Portrait
7. Patterns in the Ivy
8. Blackwater Park

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OPETH / Deliverance

2002,SWEDEN

ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・デス・メタル・バンドOPETHの6thアルバムDeliverance。
前作Blackwater Parkに続き、PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンがプロデュース。

ディストーション・ギターの轟音で奏でられるメロディの深遠なメロウネスが新鮮な#1。
ツーバス連打の激烈リフ、グロウル・ヴォイス、ノーマル・ヴォイスによる7拍子のメロウなパート、など、次々に展開していく#2。
アコースティカルな装いの鬱で静かな叙情と、ヘヴィなパートでのクールにたぎる激情が共存した#3。
アコギとマイルドなエレキで綴った寂寥感漂うインストゥルメンタル#4。
威厳すら感じさせる禍々しいリフがリードする暗黒ヘヴィネスに、リズムのトリックや複雑な音使いの不条理リフを経たフォーキーな安息を挿入した#5。
デス・ヴォイスが咆哮をあげるエクストリームなパートとアコギの深遠なパートが対比する#6。歌心を感じさせるスムーズなギターのフレージングも見逃せません。

静動・美醜・硬軟、といった様々な要素を具現化した音楽的アイディアが散りばめられた作風は相変わらずですが、それら高品位な各パーツがますますカッコ良く、あるいはミステリアス/叙情的な魅力を増しています。
さらにOPETHが驚異なのは、並のバンドなら1曲できそうなそういった魅力的アイディアが、惜しげも無く1曲の中にいくつも贅沢にブチ込まれているところ。割とやりっ放しで、伏線を張ってテーマに戻るといった構築性に乏しいところもありますが、それこそが個性と言わんばかりにアイディアを泉のごとく放出するミカエル・オーカーフェルトの才能に畏怖すら覚えます。

Track List

1. Wreath
2. Deliverance
3. A Fair Judgement
4. For Absent Friends
5. Master's Apprentices
6. By The Pain I See In Others

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OPETH / Damnation

2003,SWEDEN

ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・デス・メタル・バンドOPETHの7thアルバムDamnation。

グロウル/デス・ヴォイス、ディストーション・ギター、ツーバス連打、といったヘヴィ・メタリックな要素を一切排し、OPETHの楽曲のそこかしこに散在するメロウな要素にフォーカス。いつも通りでヘヴィな前作Deliveranceと対になった作品。PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンが、引き続きプロデュース及びピアノ/エレピ/メロトロンといった鍵盤関係とバッキング・ボーカルでも貢献しております。

6/8拍子から4/4拍子への自然な変化で緩急を無理無く表現した#1。ミカエル曰く「色々とパクった(笑)」という中期KING CRIMSON風暗黒不条理リフレインから一転しての、むせび泣くギター・ソロへの展開が秀逸です。
イコライジングを施したようなダークで無機的な序盤から、メロトロンの洪水と共にエモーショナルにクサメロを歌い上げるサビに展開する#2。
ミステリアスなムードの#3。
奇妙な音使いのアコギによるカッティングとエレキによる単音リフ、パーカッションをバックに繰り広げられるエキゾチックかつ悪夢のようなパートがLED ZEPPELINのFriendsを想起させる#4。
不安感を煽りつつも何故か心地良い#4終盤の悪夢パートが急に途切れてクリーンなアルペジオが登場するメロウな#5、とドラマティックなアルバム構成にもぬかり無し。
メロトロンの幽玄な響きにミカエルのクリーン・ヴォイスが溶け込む暗鬱メロウ・チューン#6。
どことなく演歌っぽい(?)泣きメロを、マイルドなトーンのエレキで奏でるインストゥルメンタル#7。
スティーヴン・ウィルソンからの薫陶が明らかな、モジュレーションを掛けたエレピがミステリアスでトリップ感を誘う静謐な#8。

ある種の制約の中でどこまでOPETHらしい起伏ある楽曲展開が表現できるか、という凡人の杞憂を軽く吹き飛ばすがごとくミカエルの才能とセンスが爆発。いつもながら感心してしまう、ミカエルのクリーン・ヴォイスによる素晴らしい歌唱と歌心溢れるギター・ソロも大いに堪能できます。
素敵なジャケット・アートは勿論トラヴィス・スミス。

Track List

1. Windowpane
2. In My Time of Need
3. Death Whispered a Lullaby
4. Closure
5. Hope Leaves
6. To Rid the Disease
7. Ending Credits
8. Weakness

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OPETH / Ghost Reveries

2005,SWEDEN

OPETHの2005年8thアルバムGhost Reveries。

前作・前々作は自らの可能性の限界に挑戦するという実験的意味合いもあったのだろう。わざと制約を設ける中で持ち味のブルータルなアグレッションやメロウ・サイドの各々にさらに磨きをかけることに成功した彼らがそれらを全て混ぜ合わせて再構築することによって、既に完成の域にあった音楽性のさらなるステップ・アップを実現させている。
新たに正式参加したSPIRITUAL BEGGARSでお馴染みペル・ヴィヴァリ(Key)によるハモンド/エレピ/メロトロンが彩りを加え、もはや他者の追随を許さない孤高の域に達した感がある。

#1は21世紀最高のプログレッシブ・メタル楽曲だと言い切ってしまいくらい完成度が高い、OPETHの魅力が最高レベルで発揮された名曲。

Track List

1. Ghost of perdition
2. The baying of the hounds
3. Beneath the mire
4. Atonement
5. Reverie/Harlequin forest
6. Hours of wealth
7. The grand conjuration
8. Isolation years

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OPETH / The Roundhouse Tapes

2007,SWEDEN

OPETHの2006年11月9日ロンドン公演を収録したライヴThe Roundhouse Tapes、2007年リリース。

当日の模様がMCも含め忠実に再現されており臨場感抜群。Mikaelのクリーンとグロウルを見事に使い分けたヴォーカル・パフォーマンスが静と動を見事に表現し、Peterのナイスなギター・ワークが彼らの楽曲の複雑なアレンジをライヴでも破綻無く再現。
Perはディストーション・オルガンを中心としたKeyによるサポートとバッキングVoでもサウンドに厚みを持たせる事に多大に貢献している。
素晴らしくタイトな演奏はメンバーのミュージシャン・シップの高さとバンドの充実ぶりを伺わせる。しかし残念ながらPeterは既に脱退。この事が2008年春にリリースが予定されている新作にどう影響するか注目です。

Track List

Disc 1
1. When
2. Ghost of Perdition
3. Under the Weeping Moon
4. Bleak
5. Face of Melinda
6. The Night and the Silent Water

Disc 2
1. Windowpane
2. Blackwater Park
3. Demon of the Fall

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OPETH / Watershed

2008,SWEDEN

OPETHの2008年9thアルバムWatershed。

彼らの魅力は何と言ってもギャップ。
不条理暴虐リフと70年代サイケ&プログレッシブ風味の奇跡的な共存。デス声とクリーンなプログレ声。そして予測不能な曲展開とふいに見せる叙情性。これらに加え、KeyのPerによるメロトロン・ハモンド・エレピ・アコピによるセピアな彩りが、OPETHの孤高性をフォロワー達の追随を許さぬレヴェルにまで高めています。
実際、#3,#4,#5あたりでのキーボードの使用法は際立って個性的で、これらの曲を唯一無二の存在に。勿論、Mikaelのソング・ライティングもキレキレです。
OPETH風フォークな#1が意表を突きながらも、次に来る怒涛の展開を逆に予想させ聴き手を身構えさせる絶好のウォームアップとなっている所が憎いですねー。
そして変態アグレッション&プログレな#3。これは誰にもマネできませんね。
続く暗黒叙情フォーク?の#4の奇妙なコード進行はALL ABOUT EVEあたりを彷彿させます。サウンドやバンドの格といった部分での広がりと奥行きを感じさせるアルバムです。

Track List

1. Coil
2. Heir Apparent
3. Lotus Eater
4. Burden
5. Porcelain Heart
6. Hessian Peel
7. Hex Omega

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OPETH / Heritage

2011,SWEDEN

OPETHの10thアルバムHeritage。

リリース前の試聴会からの噂が、グロウル・ヴォイスやブルータルなリフが無いアルバムという事で密かに期待していたが、やってくれましたよミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)。
ミカエルが70年代ロックのコレクターであることは有名で、これまでのアルバムでも幽玄なアコギ・パートなどにヴィンテージ・ロックの薫りを漂わせてはいましたが、それをアルバム単位でやってしまったという感じ。
この路線、メロウかつ暗鬱なアルバムDamnationと似てはいますが、もっとバラエティに富んでいて躍動感もあるしロックしてもいる。何というか70年代ロック風なゴッタ煮感が良い。

メロウなピアノのソロ#1で静かに幕を開け、ガツーンと来るだろうなという予想通りの#2ではありますが、以前のような無慈悲で怜悧なリフでは無く、歪んだオルガンを絡めたオールド・スクールなテイスト。ギター・リフも相変わらず不条理系の奇妙な音使いですが、サウンドも今風なディストーションというよりはもっとウォームな感じ。幽玄パートやサイケ風なパートも絡めての起伏に富んだアレンジはさすがOPETH。
メロトロンの白玉とアコギをバックにミカエルの艶やかな美声が乗るメロウな序盤から、ヘヴィなパートを交えつつ神秘的なムードで展開する#3。
DEEP PURPLE風な#4は(多分)シングル・コイルの単音バッキングがまんまリッチー・ブラックモアな疾走チューン。OPETHらしい音使いのリフがアクセントになり、オールド・スクールな曲調に見事に融合しています。アコギ・パートに突入してそのままフェード・アウトする意外な展開はBLACK SABBATHのようでもあります。
マーティン・アクセンロット(Dr)のゴースト・ノートを活かしたグルーヴィなドラミング、ペル・ヴィヴァリ(Key)によるエレピのリフ、エキサイティングなフレドリック・オーケソン(G)のソロなど、ジャム的な要素をフィーチュアした不思議な浮遊感を持った#5。
静謐でメランコリックな序盤からメロトロンとアコギをバックに7拍子の歌唱パートに移行するプログレッシブ・フォーク#6。間を有効活用した枯れたギター・ソロも又絶品。現存するバンドでこのサウンドを出せるのはOPETHだけでしょう。
静かな序盤から独特の音使いによるリフを境にバンド・インする#7。妖しいパーカッションや吹き散らすフルートが70年代風暗黒ムードたっぷり。
マーティン・メンデス(B)のベースがリードする#8。メロトロンにフェンダー・ローズなどヴィンテージ・キーボード、テルミン風SEを要所に散りばめたコンパクトながら起伏あるナンバー。
OPETH風暗黒エレクトリック・フォークから、メロウなアコギ・パートを経て、抑えた泣きのギター・ソロで締める#9。
アコギのアルペジオをバックにしたマイルドなツイン・リードのハーモニーが美しい#10。

はっきり言って70年代風テイストはOPETHのオリジナルでは無いし、新鮮なアイディアというわけでも無い。
それでもこのアルバムが素晴らしいのは、そういった先人達のアイディアを吸収し我が物とした上でしっかりとOPETHの持ち味に融合させてしまっているところ。
特に、何でも詰め込み過ぎの昨今の音楽シーンにあって、「無音」を活かした音作りが巧み。
このあたりはミックスを担当したスティ-ヴン・ウィルソンからの影響かも。

ジャケット・アートはお馴染みのトラヴィス・スミス。サイケな色調が珍しいですね。右下の落ちかかった顔は本アルバムがラストとなるペル・ヴィヴァリでしょうか。ここ数作で良い仕事をしていただけに残念です。

Track List

1. Heritage
2. The Devil's Orchard
3. I Feel The Dark
4. Slither
5. Nepenthe
6. Häxprocess
7. Famine
8. The Lines In My Hand
9. Folklore
10. Marrow Of The Earth

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OPETH / Pale Communion

2014,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・メタル・バンドOPETHの11thアルバムPale Communion。

単音リフやダーティな音色のバッキングを奏でるオルガン、静かなピアノ、エンディングを神々しく飾るメロトロンなど、キーボードが場面転換をリードするOPETHではこれまでに無いテイストのオープニング・ナンバー#1。
ペダルポイント風単音リフに無国籍エスニックなメロディのサビが印象的な#2。
ミステリアスなパート、幽玄アコギ・パートなど様々に展開、後半はOPETHらしい邪悪な音使いのリフと叙情メロディのサビを巧みに融合した10分超の#3。
冷気漂うメロトロンの白玉にゾクゾクするダークなフォーク・チューン#4。
パーカッシブなエレピやオルガンなどキーボードが活躍するグルーヴィなインストゥルメンタル#5。
爽やかなフォークから始まり、2人のギタリストのバトル~メロディアスなツインリード、ヘヴィなリフにメロトロンと要素が盛りだくさんの#6。
ミステリアスなストリングスのリフがリードする深遠パートとヘヴィなリフのパートの対比で聴かせる#7。
KING CRIMSONのStarlessを想起させる、悲哀感たっぷりのストリングスをバックにミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)のエモーショナルな歌唱が乗るドラマティックな叙情ナンバー#8。

デス・ヴォイスを一切排除して70年代王道ロックのテイストに接近した前作Heritageの路線を推し進め、より耽美でマニアックな領域に。
不条理・無慈悲なアグレッションから静謐・神秘的な側面までがこれまでのOPETHの幅広い音楽性だとすると、Pale Communionではレンジの幅はそのままに軸足をより静謐・神秘方面に傾けさらにそこに70年代ヴァーティゴ系のくすんだオルガン・ロック風味を加味した作風。また、これまでも曲中で経過的には使用されていたメジャー・コードを楽曲の印象を決めるラストで使用するなど、斬新とも言える変化が見て取れる。アルバムの基準を測る上で重要なオープニング・チューン#1のボーカル第一声がメロウなコーラスというのも意表を突いており、ミカエル・オーカーフェルトからすると「してやったり」というところだろう。
ペル・ヴィバリの頃よりも歪み度を幾分下げたヨアキム・スヴァルベリ(Key)のオルガンは、グリッサンドを多用するロックでダイナミックな前任者よりもむしろCRESSIDA寄りと言っても良いくらい堅実かつ多彩なプレイ・スタイルで音楽性の変化に対応。
ミックスはかつてのOPETH作品でも制作に関わった、ユニットSTORM CORROSIONでのミカエルの僚友スティーヴン・ウィルソンが担当。KING CRIMSONやYESなどのリミックス・ワークを通じてプログレ界レジェンド達の奥儀に触れたスティーヴンの起用も今作の方向性にマッチしている。
ジャケット・アートは勿論トラヴィス・スミス。

Track List

1. Eternal Rains Will Come
2. Cusp of Eternity
3. Moon Above, Sun Below
4. Elysian Woes
5. Goblin
6. River
7. Voice of Treason
8. Faith in Others

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OPETH / Sorceress

2016,SWEDEN

OPETHの12thアルバムSorceress。

アコギにメロトロンやハープが絡む、ギリシャ神話に登場するゼウスの娘ペルセフォネをタイトルに戴く抒情インストゥルメンタル#1。
跳ねるリズムでオルガンが躍動する70年代風ヘヴィ・ロック#2。屈折したメロディのリフと終盤の静寂パートからの展開にOPETHの真骨頂を見せるも全体的には凡庸。
フレドリック・オーケソン(G)の弾きまくりソロをフィーチュアしたヘヴィなナンバー#3。中間部からはクリーンなパートで神秘性を演出。
ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)の表現力豊かな歌唱が際立つ、アコギの空気感が美しい絶品のフォーク・チューン#4。
インスト・パートにギターとオルガンのバトルを挿入した、スペイシーなシンセがアクセントとなった古典的ハード・ロック#5。中盤以降はメロウなパートに移行してガラっとムードを変化させるお得意の手法。
抒情的なアコギのアルペジオに対するモーダルな歌メロにセンスを感じさせるフォーク#6。
呪術的なパーカッションと中近東的エキゾチックなヒネリを交えたメロディがLED ZEPPELINのFriendsを彷彿させる暗黒フォークの前半から静謐フォークに劇的転換する#7。
従来のOPETHが持つエッセンスを70年代ロックの手法で再構築した、ムーディなメロウネスと屈折ヘヴィネスが融合した#8。
どこか郷愁を誘うアコギのメロディが印象的なイントロから薄明り射すサビに至る構成が見事なメロディアス・ナンバー#9。
アンビエントなピアノが#9を継承し寂寥感を漂わせるイントロから一転、アップテンポのハード・ロックに移行する#10。
再びアンビエントなピアノと女性のモノローグで締める#11。

バンドの70年代テイスト化を推し進めるミカエル・オーカーフェルトの試みは今作も継続。
特にアコースティック系楽曲において顕著で、良い意味で70年代のカビ臭い本格的なムードを感じる。
一方で、ハードな楽曲では以前は存在したエッジがますます減退。
OPETHならではの奇妙ではあるが冷たく深遠な暗黒ムードはもはや消滅。展開しまくりの奔放で豪快な楽曲構成が魅力の一つでもあったが、今作の各楽曲は尺がコンパクトになったのもあるが、方法論の70年代化とともに全体的に意外性に欠ける予定調和的な展開が目立つ。
結果的にメロウな部分での本格化と引き換えに、デス・ヴォイスをはじめ奇想天外なメロディや豪放な楽曲展開などOPETHの軸ともいえる特長が薄くなってしまった。
それでも本作が駄作かというとそうでも無く、#1、#4、#6、#7、#9など佳曲も多く、趣味を実益に反映させたミカエル・オーカーフェルトの手腕で統一感のある作品に仕上がってはいる。

音楽的な深化・進化は認める。認めるがしかし、幽玄かつ暗黒なメタル度の後退は少々寂しいものがある。。

Track List

1. Persephone
2. Sorceress
3. The Wilde Flowers
4. Will O the Wisp
5. Chrysalis
6. Sorceress 2
7. The Seventh Sojourn
8. Strange Brew
9. A Fleeting Glance
10. Era
11. Persephone (Slight Return)

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OPETH / In Cauda Venenum

2019,SWEDEN

OPETHの13thアルバムIn Cauda Venenum。

メロトロンのクワイヤによる思わせぶりなイントロ#1。
いきなりの荘厳なコーラスが不条理リフに乗る衝撃の#2。静寂のメロウ・パートの質感は70年代そのもの。ハードなパートの歌メロはいつになくシンフォニックに洗練されており直後の不穏なメロディとのギャップを印象付けている。
ダイナミックなリズムの70年代風ハード・ロックにOPETHらしい捻ったメロディが乗る#3。キャッチーな中にも深遠さがあり、フレドリック・オーケソン(G)が弾きまくるギター・ソロもカッコ良い。
オルガンやアコギによる静とバンドによる動が対比する#4。ストリングスの荘厳かつエキゾチックなメロディが耳を引くアレンジも秀逸。
メランコリックな美バラード#5。切り返しからギター・ソロに突入する場面転換が見事。
性急なギター・リフにオルガンの奇妙なミニマル・リフなど典型的なOPETH要素てんこ盛りのヘヴィな#6。
えっOPETHと耳を疑う爽やかなストリングスや70年代風フォークの幻想的要素を盛り込んだ#7。
イントロでは何とリュートを使用、以降はジャジーなムードにミカエルのスキャットまで登場する暗黒ワルツ#8。
印象的なドラムとアコギがリードしスケールの大きなバンド・パートへと展開する#9。
アコギがたゆたうアンビエントな序盤からヘヴィなパートを経て、シンプルだが殺傷力抜群の大サビのメロディでリスナーを昇天に導くエピック・チューン#10。

シンフォニックなオケのアレンジはアルバムPale Communion時同様にHATFIELD AND THE NORTHBILL BRUFORDに在籍したデイヴ・スチュワートが行っており万全。デイヴ・スチュワートがOPETHの音楽についてどのように感じているか興味があるところだが。。
ミカエル・オーカーフェルトの70代ロック/フォーク好きは有名だが、Heritage以降の模索を経てようやくそれら懐古趣味にOPETHが従来持つ幽玄さや郷愁を誘う北欧フォークロア風味が融合。全編でメロディが耳に残り、クセになる不条理リフと合わせて何度も聴きたくなるアルバムだ。

Track List

1. Garden of Earthly Delights
2. Dignity
3. Heart in Hand
4. Next of Kin
5. Lovelorn Crime
6. Charlatan
7. "Universal Truth
8. The Garroter
9. Continuum
10. All Things Will Pass

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