プログレ のレビュー

LONELY ROBOT / Under Stars

2019,UK

ジョン・ミッチェル(G/Vo)によるソロ・プロジェクトLONELY ROBOTのPlease Come Home(2015)、The Big Dream(2017)と合わせて3部作との位置づけとなる3rdアルバム。
ドラムをクレイグ・ブランデル(Dr)が叩いているほか、一部でSteve Vantsisがベースをプレイしている以外の全てを本人がプレイ。

ジャケット・アートのイメージ通りの序曲#1。
7拍子リフのメロディをモチーフに展開する#2。
爽やかさとメランコリーが融合したサビが印象的な#3。
エモーショナルなギター・ソロと歌唱が胸を打つバラード#4。
イントロのテーマ・メロを軸にしたメロディアス・シンフォ#5。
重層的なシンセのオーケストレーションでスペイシーな浮遊感を醸し出す#6。
マイルドなシンセ音による5拍子アルペジオがリードする#7。
ヘヴィな5拍子リフとシンフォニックなサビの落差が耳を惹く#8。
思索的ムードの壮大なバラード#9。
スペイシーなインストゥルメンタル#10。
3部作の終幕となる優しいメロディの#11。

絶妙な空間処理による透明感ある音像がキャッチーなメロディの魅力を増幅。特徴的なリフやテーマを繰り返すことでで楽曲を強く印象付ける手法も常套手段ながら巧み。だからこそ#8のような変化球も活きてくる。
本人によれば、本プロジェクトの今後はどうなるかわからない、とのことだが。。

Track List

1. Terminal Earth (1:55)
2. Ancient Ascendant (5:47)
3. Icarus (5:20)
4. Under Stars (5:16)
5. Authorship of Our Lives (5:39)
6. The Signal (3:19)
7. The Only Time I Don't Belong is Now (5:15)
8. When Gravity Fails (5:03)
9. How Bright is the Sun? (6:03)
10. Inside this Machine (3:28)
11. An Ending (2:39)

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OPIUM CARTEL / Valor

2020,NORWAY/SWEDEN

WHITE WILLOWのヤコブ・ホルム・ルポ(G/Key/Vo)を中心としたプロジェクトOPIUM CARTELの3rdアルバムValor。

ゆったりとした7拍子に乗るドリーミー・フォーク#1。
優しい歌唱の温かみと枯れた味わいのギターによる寂寥感が不思議なムードを醸し出す#2。
ミュンミュンしたポルタメントたっぷりのシンセがリードする浮遊インストゥルメンタル#3。
快活なエレクトロ・ポップ・チューン#4。
シンセやギターによる霧のようなサウンドスケープに時折ダークな色彩も挿入したミステリアスな#5。
80年代風が逆に新鮮なポップ・チューンの前半から後半は思索系インストへと展開する#6。
生のストリングスとシンセやエフェクトが融合し、神々しさも漂うシンフォニック・フォーク#7。
AIRBAGのBjørn Riis(G)の哀愁ギターにメロトロンが絡むメランコリックなインストゥルメンタル#8。
どこかで聴いたサビだと思ったらLAメタル・バンドRATTの4thアルバム収録の楽曲カヴァーだった#9。RATTとしては駄曲だったが、ニューロマンティック風にアレンジした本作はなかなか良くできている。

Silje Huleboer (#1,#2,#5,#6)の可憐な歌唱を中心に、明るくてもどこか陰りを感じさせる北欧感とレトロ感に満ちたドリーム・ポップ。

Track List

1. In the Streets
2. Slow Run
3. A Question of Re-entry
4. Nightwings
5. Fairground Sunday
6. Under Thunder
7. The Curfew Bell
8. A Maelstrom of Stars
9. What’s It Gonna Be

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MAGENTA / Masters of Illusion

2020,UK

MAGENTAの8thアルバムMasters of Illusion。『魔人ドラキュラ』主演俳優の#1をはじめ、50~60年代ホラー映画の名優達を題材にしたコンセプト作。

凝ったリズムがボーカル・メロディにガッチリ噛み合ってポップな耳馴染みの良さを感じさせる。ロブ・リード(Key)らしいドラマティックなオーケストレーションやコーラスのアレンジとクリスティーナ・ブース(Vo)の美声で一気にMAGENTAワールドに引き込まれる#1。
モーダルな歌メロが浮遊し、アコギと柔らかな管楽器による穏やかで気品あるアレンジがRENAISSANCEを彷彿させる#2。
ポジティブで高揚感ある展開の中間部を持つ、サビメロが温かく優しさに満ちたバラード・チューン#3。
コンテンポラリーなムードとシンフォニックな要素をコンパクトにまとめたプログレ・ポップ・チューン#4。
感傷的な序盤からボーカルを引き立てるシンフォニックなパート、客演のピート・ジョーンズ(Sax)をフィーチュアしたシンセとの掛け合いを含む器楽パート、と場面転換しながら終盤はトロイ・ドノックリーのイリアン・パイプが仄かな郷愁を残す#5。
抒情的なテーマを奏でるマイルドなエレキ、YESを彷彿させるチャカチャカしたワウ・ギター、アコギなど各種ギターにオルガンやアナログ・シンセの鍵盤群など、バンド・サウンドを中心に長尺を紡ぐ16分超えのエピック・チューン#6。

全編を覆う端正な英国感と穏やかな温かみが心地よい秀作。

Track List

1. Bela
2. A Gift From God
3. Reach For The Moon
4. Snow
5. The Rose
6. Masters Of Illusion

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PAIN OF SALVATION / Panther

2020,SWEDEN

ダニエル・ギルデンロウ(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAIN OF SALVATIONの10thアルバムPanther。

シンプルだが印象的なシンセのモチーフと小刻みなビートが絡み合いスリリングに展開。ダニエル・ギルデンロウの絞り出すような歌唱が冷徹なSEと融合し独自のグルーヴを生む#1。
ドロ臭い音使いのリフだが、ダウン・チューニング(7弦ギター?)でスタイリッシュなヘヴィネスに仕上げた#2。
静寂の寂寥感とそれを打ち破る暴虐が対比する#3。
流れるようなピアノのリフレインをベースにメロウな歌メロで展開。サビではそれまでの張り詰めた緊張感が炭火のような温かさで溶かされる美しい#4。
シンセのシークエンス・フレーズにアコギやバンドが絡み大きなうねりを生む#5。
おそらくマンドリン等のアコースティック楽器によるインストゥルメンタル小品#6。
エレクトロニカのパターンにラップが乗る#7。
モーダルなトラッド風味が意表を突く#8。
郷愁をそそる歌メロを中心に、エモーショナルなギター・ソロや不穏なヘヴィ・パートを織り交ぜた13分超えのエピック・チューン#9。

歌唱やギター、ドラムスなどの有機的な熱情、シンセやエレクトロニカによる冷たい無情、これらが緻密な変拍子に乗って明暗や静動を描く。ギターのパワー・コードは、もはやサウンドスケープの一要素となり、主役はほぼほぼエレクトロニカだが不思議とヘヴィな質感があり唯一無二のPAIN OF SALVATIONサウンドになっている。
各曲ともテーマ・メロディや歌メロは意外と普遍的で、独創的な楽曲展開と斬新なアレンジの中に埋もれることなく全体としてはスタイリッシュかつキャッチーな印象を残す。

Track List

1. Accelerator
2. Unfuture
3. Restless Boy
4. Wait
5. Keen to a Fault
6. Fur
7. Panther
8. Species
9. Icon

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THE FLOWER KINGS / Islands

2020,SWEDEN

前作Waiting For Miracles同様、ザック・カミンス(Key)、ミルコ・ディマイオ(Dr)を含むラインナップでの2作目。カヴァー・アートはついにロジャー・ディーンが担当。

躍動感とロイネ・ストルト(G/Vo)の渋い歌唱で期待が高まるオープニング・チューン#1。
リラックスした7拍子でカラフルな桃源郷感を醸し出す#2。
ペーソス溢れるメイン・メロディを中心にQUEEN風ハーモナイズ・ギターも登場するシアトリカルな#3。
ロイネ・ストルトのジェントルな歌唱が味わえるほのぼの爽やかチューン#4。
ポジティブなムードに包まれたノリノリの5拍子プログレ・ポップ#5。
メランコリックなシンフォニック・バラード小品#6。
カッコ良いジャズ・ロック・インストゥルメンタル小品#7。
グルーヴィなシンフォニック・フュージョン#8。
中間部にプログレ然としたアナログ・シンセ・ソロやファンタジックなインスト・パートを配しつつも、クールネスと哀愁を兼ね備えた歌唱パートで聴かせる#9。
ロイネの粘る歌唱とギターをフィーチュアした穏やかなナンバー#10。
ワウ・ギターが歌いまくるインストゥルメンタル#11。

ヨナス・レインゴールド(B)のメロディアスなベース・ライン、ハッセ・フロベリ(Vo)の溌溂とした歌唱がリード。感傷的なサビを持つ#12。
ザック・カミンスのオルガンがELPのタルカスばりにグイグイ迫り、ミステリアスなムードで進行するインストゥルメンタル#13。
メロトロンを薄っすらと使用するセンスが洒落たプログレ・AOR・チューン#14。
スリリングなプログレ・ジャズ・ロック・インスト#15。
ゲストのロブ・タウンゼント(Sax)のソプラノ・サックスをフィーチュアした#16。
ロイネ・ストルトのコシのある・ギター・トーンとメランコリックなフレージングが楽しめる#17。
ギター・ソロのロングトーンがむせび泣くメランコリックな#18。
ベースがグルーヴをリードするAORチューン#19。
シンフォニックにデコレートされたポップ・チューン#20。
スライド・ギターが幻想的ムードを醸し出す#21。

ジャケット・カヴァーのファンタジックな印象から往年のYESのような超大作をイメージするも、内容は短尺歌モノ中心で随所に印象的なフックを配しながらじっくり聴かせるタイプの落ち着いた楽曲集。DISC1は特にロイネ色が強く、往年のテイストが感じられる。
各種鍵盤を操るザック・カミンスはインスト曲などで時折スゴ腕を見せるものの、全般的にアンサンブルに合わせた堅実な仕事。もっと暴れてもらって長尺曲で緊張と緩和のドラマを作ってくれても大歓迎なんですが。

Track List

DISC 1
1. Racing with Blinders On (4:33)
2. From the Ground (4:11)
3. Black Swan (5:58)
4. Morning News (4:06)
5. Broken (6:48)
6. Goodbye Outrage (2:25)
7. Journeyman (1:49)
8. Tangerine (4:13)
9. Solaris (9:32)
10. Heart of the Valley (4:42)
11. Man in a Two Piece Suit (3:29)

DISC 2
12. All I Need Is Love (5:54)
13. A New Species (5:56)
14. Northern Lights (5:45)
15. Hidden Angles (0:52)
16. Serpentine (3:53)
17. Looking for Answers (4:45)
18. Telescope (4:52)
19. Fool's Gold (3:18)
20. Between Hope & Fear (4:42)
21. Islands (4:15)

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JOHN PETRUCCI / Terminal Velocity

2020,USA

DREAM THEATERのギタリスト ジョン・ペトルーシ(G)の2ndソロ・アルバム。
2020年に全世界を襲った新型コロナ・ウィルスCOVID-19の影響はDREAM THEATERにも例外なく及び、アルバムDisance Over Timeのツアーが5月の日本を含む各地で中止に。ロックダウン(都市封鎖)等で空いた時間で新たに作曲したり過去のマテリアル等をまとめて制作。かつての盟友マイク・ポートノイ(Dr)、ジョンとはG3ツアーで共演しておりマイクともFLYING COLORSでバンド・メイトであるデイヴ・ラルー(B)をレコーディングに招いている。

神秘的なSEから北米プログレ・ハードの香り漂うリフに突入。快活なアップテンポと伸びやかなギターが心地よいオープニング・チューン#1。
ジョン曰くイタリアン・マフィア風のオープニングからタテ乗りでスリリングに展開する#2。リズム隊とシンクロする場面はDREAM THEATERを彷彿させるタイトさ。
タイトル通りポジティブなムードに溢れたハード・ロック。軽やかなロールや微妙なハイハットで彩を加えるドラミングもやはり相性の良さは抜群。メジャー・コードでここまで弾きまくって爽快感を与えるのも本家DREAM THEATERではあまり無いので新鮮。
いきなり強烈なシュレッドで幕を開け、雄大なソロ・パートやアル・ディ・メオラ風スタッカートを聴かせるアコギ・ソロを中間部に配し、緊張感あるモチーフを軸に展開する#4。
レイドバックしたブルーズで意外な表情を見せつつ終盤はシュレッドで爆発する#5。
DREAM THEATER風ダークでメタリックなリフにミステリアスなメロディが乗るプログ・メタル#6。
RUSHのようなスケールの大きなイントロを配し、テーマ・メロディの滑らかなトーン・コントロールが見事な#7。
スタジアムでのオーディエンスとの一体感を想起させるビッグなリフでリードするアメリカン・アリーナ・ロック#8。
7弦ギターを使用したヘヴィなリフでゴリゴリと進行、2本のギターによるハーモニーから激情ソロへの転換に鳥肌が立つ#9。

全編ギターだらけのインストゥルメンタルだが、メカニカルなプログ・リフ、エモーショナルなトーン・コントロール、整然としつつも速さが尋常でないシュレッドなど、様々な表情を見せつつも全てがジョン・ペトルーシ印という驚異の個性とキャッチーなメロディでリスナーの耳を釘付けにする。

Track List

1.Terminal Velocity
2.The Oddfather
3.Happy Song
4.Gemini
5.Out of the Blue
6.Glassy-Eyed Zombies
7.The Way Things Fall
8.Snake in My Boot
9.Temple of Circadia

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FROST / Others

2020,UK

当初ダブル・アルバムを想定していたFalling Satellites時に書かれた作品をまとめたEP。

畳みかけるリフに深遠なストリングス系をはじめ様々なデジタル・サウンドで埋め尽くした鮮烈なオープニング・チューン#1。
感傷的なバラード・パートや躍動するサビなどをデジタル・シーケンスで構築した#2。
冒頭にエキゾチックなSEを配し、デジタル・ビートで押し捲る#3。
メロディアスなボーカル・ラインをフィーチュアした#4。
サンプリング・ヴォイスによるシーケンスで基本部分を構築した異色の#5。
アンビエントな音像によるサウンドスケープ#6。

ギターをはじめとするロック・バンド的な要素が少なく、全編ジェム・ゴドフリー(Key/Vo)のシンセが活躍。
それでも#1の分厚いリフ、#3の攻撃的なシンセ・ソロ、#5の荘厳なサウンドスケープなどにはFROSTらしさが十分に感じられ、つまりジェム・ゴドフリーこそがFROSTなのだと再認識。

Track List

1.Fathers
2.Clouda
3.Exhibit A
4.Fathom
5.Eat
6.Drown

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カテゴリー: FROST

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WOBBLER / Dwellers of the Deep

2020,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンド WOBBLERの5thアルバム。

オルガンを中心にメロトロンやピアノでリードする鍵盤を軸に、オルガンのリフに絡みつくようなギターをはじめバンド全体がタイトに進行する#1。
厳かなオルガンとコーラスで幕を開け、躍動する歌唱パート、オルガンとギターのスリリングなハーモニーなど、疾走感がカッコよい#2。
穏やかなアコギに妖しいメロトロンの白玉がアクセントで効いたまどろみフォーク#3。
エキゾチックなミステリアスさを湛えたメロディを緩急交えたアンサンブルで支え、不穏なムードを演出する大曲#4。

縦横無尽なアナログ楽器の薫りと緻密な演奏アンサンブルから硬質な印象を受けるが、#1後半にみられる北欧フォークロア風メロディや垢抜けない歌唱で中和してWOBBLER独特のヴィンテージ・サウンドを展開している。

Track List

1. By the Banks (13:49)
2. Five Rooms (8:28)
3. Naiad Dreams (4:24)
4. Merry Macabre (19:00)

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LUNATIC SOUL / Through Shaded Woods

2020,POLAND

RIVERSIDEのヴォーカリスト マリウス・デューダのサイド・プロジェクトLUNATIC SOULの7thアルバム。

モーダルな展開からのコード・チェンジでそれまでのくすんだ色彩からパッと変化する#1。
様々なリフがダークな抒情から一筋の光明やドラマティックなサビ等の起伏を演出。静かなのにヘヴィな#2。
トラッドなモチーフに呪術的な詠唱ヴォイスが溶け込む神秘的な#3。
トラッドな装いのバッキングに現代的普遍性を持つメロディを融合した#4。
静かなアコギのアルペジオとジェントルな歌唱が寂寥感を生むヴァースから躍動するサビに移行する#5。
ピアノやアコギのアルペジオによる瑞々しいサウンド。透明感の中に仄かな暗さを帯びた#6。
4つ打ちビートにモーダルなアコギ・リフが乗るフォークロア・ダンス・チューン#7。
ヘヴィなリフが変化しながら展開する#8。
厳粛な儀式を思わせる歌唱というか詠唱的パート、躍動するダンス・パート、チェレスタが印象的な幻想パート、シンセによるサウンドスケープ等で構成された27分超えの#9。

シンプルな反復リズムをバックにアコギを中心にモチーフを延々と繰り返し一種のトリップ感を生む。そのプリミティブなビートに深遠なシンセや宗教儀式かのようなヴォイスが加わりシャーマニズム、スラブ、バイキング、70年代暗黒フォークのムードを醸し出す。
北欧やスラブの寒くダークな印象の中に時折オーガニックな温かみも感じさせる、ゆったりと浸り心を浄化してくれる洗練されたCOMUSみたいな音楽。

Track List

DISC1
1.Navvie (04:03)
2.The Passage (08:57)
3.Through Shaded Woods (05:51)
4.Oblivion (05:03)
5.Summoning Dance (09:52)
6.The Fountain (06:04)
DISC2
7.Vyraj (05:32)
8.Hylophobia (03:20)
9.Transition II (27:45)

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カテゴリー: LUNATIC SOUL

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STEVEN WILSON / The Future Bites

2021,UK

STEVEN WILSONの6thアルバム。

ダークな内省的アンビエント小品の#1。
キャッチーな女性コーラスを配したエレクトロニカをベースとしたグルーヴィ・チューン#2。
シンセのアルペジオと幽玄なスキャットが印象的な#3。
ディミニッシュ・コードの箇所でSUPERTRAMPのようなペーソスを想起させる、端正でメロディアスなポップ・チューン#4。
ニック・ベッグス(B)によるズ太いスティックのリフが牽引するR&Bナンバー#5。
マシンによる静かで無機質なビートが寂寥感を増幅。ゆったりとしたサウンドスケープにジェントルな歌唱が乗った#6。
サビは一転して英国伝統の抒情メロディで強烈な印象を残す、ダークなリフレインがトリップ感を生む#7。
SNSに翻弄される現代社会の風刺を80年代のニューロマンティック風サウンドで送る#8。
持ち味の静謐な美しさで余韻を残す#9。

近作で勢いを増すメイン・ストリームへの接近。今回はプログラミングを駆使したエレクトロニカでソウルやR&Bを再構築することで提示。もはや何を演ってもスティーヴン・ウィルソンであることをその音楽的懐の深さで改めて証明。
ストレートな#2、#5に加え、持ち味のポップ・センスと新味を融合させた#7、バンド形式による#4、#8などバラエティにも富み、全41分を感じさせない程充実した音楽の旅を満喫させてくれるアルバム。

Track List

1. Unself
2. Self
3. King Ghost
4. 12 Things I Forgot
5. Eminent Sleaze
6. Man of the People
7. Personal Shopper
8. Follower
9. Count of Unease

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カテゴリー: STEVEN WILSON

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TRANSATLANTIC / Abusolute Universe

2021,USA,UK,SWEDEN

TRANSATLANTICの5thアルバムAbusolute Universe。

アルバム各所に織り込まれたモチーフを織り込んだ序曲#1。
軽快なイントロからあまりお上手とは言えない歌唱が飛び出す#2。サビでのニール・モーズ(Key/Vo)による歌唱が力強くさすがの上手さだけに落差が残念。
ロイネ・ストルト(G/Vo)の味わい深い歌唱とシンフォニックなオブリガード、サビのコーラスが印象的な#3。
エキゾチックなテーマ・メロディや全体のムードがロイネ主導と思われるFLOWER KINGS風桃源郷シンフォ#4。
変拍子とコード・チェンジで展開する熟練のインスト・パートを内包。#3のモチーフをメジャーに変換したメロディに導かれる開放的フォーク#5。
3連のリズムに乗せた英国風ロカビリー#6。
BEATLESやGENESISを彷彿させる端正で甘酸っぱいポップ・チューンにアルバムのテーマ・メロディを巧みに挿入した#7。
ハードボイルドなベース・ラインがリードする#8。
掻き鳴らしギター・ロック風イントロ、変幻自在なドラムがリードするインスト・パート、メロディアスな歌唱パート等からなる9分超の大作#9。
#2の別バージョンのような躍動感ある#10。
アコースティックな小品#11。
ミステリアスなムードとスリリングな切り替えしにロイネ色が濃い#12。
感傷的なバラードから入り、テーマ・メロディを交えて壮大に展開する#13。
#2のテーマの変奏で織り込まれた#14。
#16のイントロ的歌モノ小品#15。
よりスポンティニアスなインスト・パートで再構成した#8のリプライズ#16。
オルガンが躍動するトリッキーな変拍子パート、GENTLE GIANT風コーラス・パートを配し、アルバムのテーマをおさらいのように奏でる#17。
アルバムのメイン・テーマを雄大かつ壮大に聴かせて幕を閉じる#18。

ギターとシンセのフレージングが微妙にズレて各人の個性を演出しニヤリとさせるユニゾン・パート、ポップ・バンドのようなキャッチーなコーラス・ワークなどTRANSATLANTICらしい余裕と、一部で素人臭い歌唱が音楽の旅からリスナーを現実世界に引き戻す民主・平等路線の弊害が共存するお馴染みの作風。
ではありながら、要約版(モーズ、トレワヴァスが賛成)、拡張版(ストルト、ポートノイが賛成)、究極版と、収録楽曲及び全体の尺や歌唱者などが異なる3つのバージョンでリリースしてしまうところに絶対的リーダーが居ない不安も感じさせるが、この緩さもまた彼ららしさなのかもしれない。
いくつかのテーマが各楽曲を往来しながら最終的に大団円を迎える、というコンセプト・アルバムの典型パターンではあるが、弱いテーマ・メロディの繰り返しによるくどさ、この手法に対するリスナーの慣れもあってか爽快感はそれほどでもない。

Track List

1. Overture
2. Heart Like a Whirlwind
3. Higher Than the Morning
4. The Darkness in the Light
5. Swing High, Swing Low
6. Bully
7. Rainbow Sky
8. Looking for the Light
9. The World We Used to Know
10. The Sun Comes Up Today
11. Love Made a Way (Prelude)
12. Owl Howl
13. Solitude
14. Belong
15. Lonesome Rebel
16. Looking for the Light (Reprise)
17. The Greatest Story Never Ends
18.Love Made a Way

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DREAM THEATER / A View From The Top Of The World

2021,USA

DREAM THEATERの15thアルバム A View From The Top Of The World。

ミステリアスかつヘヴィなリフ、メロウなパート、ギターとシンセによる超絶バトル等、DREAM THEATERのエッセンスを凝縮した#1。
ヘヴィながらメロディアスな歌唱パートとギターとシンセのスリリングなハーモニーをフィーチュアしたインスト・パートを持つ#2。
キャッチーな抒情メロディを軸に快活なパートや構築度の高いギターソロなどを交えドラマティックに聴かせる#3。
メカニカルなモチーフで緊張感を高めていき、メロウなサビで落差を演出する#4。ダーティなオルガン、幽玄なストリングス系など場面を彩る鍵盤群が効果的。
明朗なリフに近年のDREAM THEATERというかジョン・ペトルーシ(G)ではお馴染みのケルト風味を漂わせた北米プログレ・ハードの系譜に連なる#5。
8弦ギター導入が話題の#6。ことさらヘヴィネスを強調せずメロウネスとのバランス感覚が秀逸。
様々なパートを力技で繋ぎ合わせた感が逆に新鮮な20分超えの長尺チューン#7。

前作にともなう日本公演が中止になるなどCOVID-19の世界的影響で活動もままならない中でも彼らの創作意欲は衰え知らず・・、ではあるのだが、各曲が短尺傾向にあった前作では各楽曲の個性が際立っていたが、今作では長尺にシフトしたためか各楽曲内での展開がバラエティに富んでいる分、楽曲毎のフックが多少弱まった印象。
しかしながら、丸みを帯びたトーンにエモーショナル面での円熟味を感じさせつつ、8弦ギター導入や#1に見られる指板上をメカニカルに移動する構築されたフレーズなどに未だ研究熱心さを伺わせるジョン・ペトルーシの現役ギター・ヒーローぶりが眩しいし、充実したインストパートではギターもシンセも弾きまくってます。

Track List

1. The Alien
2. Answering the Call
3. Invisible Monster
4. Sleeping Giant
5. Transcending Time
6. Awaken the Master
7. A View from the Top of the World

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FROST / Day And Age

2021,UK

ジェム・ゴドフリー(Key/Vo)による英国のプログレ・プロジェクトFROSTの4thスタジオ・フル・アルバムDay And Age。

スペイシーかつメロディアスに疾走する爽快なオープニング・チューン#1。
思索パートとFROSTらしいヘヴィなリフが絡み合う#2。
流れるようなピアノのアルペジオ、音像を包み込むサウンドスケープが心地よい#3。
ドラム・パターンやギターのカッティングなどのモチーフがシンセのリフを軸に有機的に一体化していくトランス感覚のプログ・ポップ#4。
典型的ポップ・ソングのフォーマットに中間部のエキゾチックなムードを纏ったシンセで捻りを加えた#5。
シンセの深遠なオーケストレーションがリスナーを没入させる#6。
メランコリックな歌唱パート、ズ太いリフ、#1のリフレイン挿入など様々な表情を見せる#7。
#7から継承したテーマ・メロディを展開させていく#8。

中心人物ジェム・ゴドフリー、ジョン・ミッチェル(G/Vo)に加え、ネイサン・キング(B)、ドラマーはパット・マステロットなど3名が参加。
全編に通底するスタイリッシュで冷ややかな質感と爽快感がFROSTらしく、予想不能な楽曲進行がスリリング。型にハマった懐古型プログとは別次元の現在進行形プログにどっぷり浸れます。

Track List

1. Day And Age
2. Terrestrial
3. Waiting For The Lie
4. The Boy Who Stood Still
5. Island Life
6. Skywards
7. Kill The Orchestra
8. Repeat To Fade

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カテゴリー: FROST

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GATHERING / Beautiful Distortion

2022,NETHERLANDS

歴代シンガーが集結した2014年の25周年ライブ以降、しばらく目立った活動の無かったGATHERINGの11thアルバム。

シリェ・ヴェルヘラント(Vo)のウィスパー歌唱、レネ・ルッテン(G)のアンニュイなギター。突然分厚い音像に変化する展開も含めて明らかにGATHERING以外の何物でもないテイストでほっとさせる#1。
開幕の無機質な打ち込みビートと古臭い(※注 褒めてます)メロトロン風白玉の対比がおもしろい。澄んだ歌声がメロウなメロディを紡ぐ#2。
サビの歌唱スタイルや歌メロに前任ボーカリスト アネク・ヴァン・ガースバーゲンの影響を感じさせる#3。
ゴシック・メタル期を彷彿させるややヘヴィなギターに、これまたポスト・ロック期のアネク風歌唱を組み合わせた#4。
フォーク風アコギから広がりのあるオーケストレーションまで起伏有るアレンジでメロウな中にポジティブな光射す#5。
中音域の抑えた歌唱で切々とした表情を見せる#6。
GATHERINGでは珍しいタイプのポップなリズム・パターンにディストーション・ギターと深遠な鍵盤群が絡む#7。
浮遊感あるシンセとシンプルなドラム・ビートに歌声がたゆたう#8。

寂寥感を帯びたギター、適材適所に空間を埋める鍵盤、時に実験的なエレクトロ要素を軸に優美なボーカルをフィーチュアしたアレンジはここ数作の路線を踏襲。しかしながらメロディは、屈折したメランコリックな要素が減り概ねよりストレートかつポジティブ方向にシフトしている印象。
ヘヴィな要素や往年のアネク風味など、バンドのレガシーも巧く織り交ぜてアップデートを続ける快作。

Track List

1. In Colour
2. When We Fall
3. Grounded
4. We Rise
5. Black is Magnified
6. Weightless
7. Pulse of Life
8. On Delay

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PORCUPINE TREE / Closure/Continuation

2022,UK

13年ぶりのリリースとなったPORCUPINE TREEの11thアルバム。

ベースのリフに導かれた硬質なムードを切り裂くヘヴィなギターが爽快な#1。
スティーヴン・ウィルソン(G/Vo/B)のソロに近い感触のメロディアスな歌唱パートと金属的な器楽パートが交互に展開する#2。
ドラムとシンクロしたヘヴィな不条理リフと妖艶なスキャットが印象的な#3。
英国っぽいメロディアスな歌ものを軸に、浮遊感ある深遠なサウンドスケープなどを交え感動を増幅させる#4。
様々な歌唱表現と変拍子に乗せた緻密なアレンジで静と動を聴かせる#5。
ミステリアスかつスペイシーな#6。
アコギがメランコリックなムードを醸成する前半から、軋む様なヘヴィ・ギターがアンサンブルをリードする後半へ移行する#7。

ベーシストが不在。スティーヴン・ウィルソン、リチャード・バルビエリ(Key)、ギャヴィン・ハリソン(Dr)によって制作。
アルバム・タイトルClosure/Continuationは閉鎖か継続か、どう転ぶかわからないバンドの将来に含みを持たせたものらしい。
スティーヴン・ウィルソンのソロではバラエティに富んだポップ寄りな作風でメインストリート感が眩しかったが、バンドPORCUPINE TREEではよりダークで深遠な世界を醸成。

Track List

1. Harridan
2. Of the New Day
3. Rats Return
4. Dignity
5. Herd Culling
6. Walk the Plank
7. Chimera's Wreck

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カテゴリー: PORCUPINE TREE

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THE TANGENT / The Slow Rust of Forgotten Machinery

UK,2017

アンディ・ティリソン(Key/Dr/Vo)率いるTHE TANGENTの9thアルバムThe Slow Rust of Forgotten Machinery。

ミニマルなオルガンのフレーズや女性コーラスがカンタベリーなテイストを漂わせる#1。ここぞで登場する突き抜けたシンセが爽快感抜群。アンディ・ティリソンの素朴な歌唱、スリリングなインスト・パート、抒情を帯びたメロディとTHE TANGENTらしいシンフォニック・ナンバーとなっている。
各パートが緻密に絡み合うアンサンブルと滑らかなインプロヴァイズで聴かせるジャズ・ロック#2。アームを巧みに駆使した官能的なフレージングから超絶シュレッドまで弾きまくるルーク・マシン(G)をフィーチュアしつつ、クールに抑えたプレイで支えるテオ・トラヴィス(Sax/Fl)の職人技も光る。
随所に印象的なフックを配して静と動、陰と陽の起伏を付けて進行する歌唱パート、シンフォニックなインスト・パートの2軸が交差する22分超の大作#3。
ヨナス・レインゴールド(B)のベース・ソロやアンディ・ティリソンによる40秒程のドラム・ソロを含むソロ・パートがテクニカルでスリリングな#4。
心地よいグルーヴと仄かな抒情を交えたAOR風ジャズ・ロック#5。ホルストの木星からの引用は色んな所で手垢が付き過ぎて今更感も。
4つ打ちのバスドラとハンドクラップで一瞬ダンス系?と驚くも柔らかな音色で舞うシンセのメロウネスにほっとするエンディング・ナンバー#6。

ヨナス・レインゴールド、テオ・トラヴィス、ルーク・マシンといったお馴染みのメンバーに、ルーク・マシンとはMASCHINEでのバンドメイトであるマリー・イヴ ド・ゴルティエ(Key/Vo)が参加。4thアルバムNot As Good As The Book以来の女性ボーカルが、NATIONAL HEALTHHATFIELD AND THE NORTHの可憐な女性コーラスを彷彿させ、シンフォニックなカンタベリー風ジャズ・ロックという独自路線の確立に貢献。
場面に応じて適材適所のプレイを披露するルーク・マシンはプロデュースも担当。多彩な技巧に加えエモーショナルな表現力も増し、バンド内での存在感を強めている。

Track List

1. Two Rope Swings 06:32
2. Dr. Livingstone (I Presume) 11:58
3. Slow Rust 22:31
4. The Sad Story Of Lead and Astatine 16:00
5. A Few Steps Down The Wrong Road 17:31

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