プログレ のレビュー

STACKRIDGE / Stackridge

1971,UK

フォークがベースのポップなプログレ・バンドSTACKRIDGEの1971年1stアルバム。

ヴァイオリン奏者、フルート奏者を含む6人組で全編フックのあるキャッチーなメロディーが目白押し。演奏やヴォーカル・ハーモニーといったテクニック面が巧みな上、多彩な楽器構成を活かした絶妙のアレンジが施されており、幅広い引き出しを感じさせる雑多な音楽性と相まって飽きがこないアルバム構成となっています。それを象徴するのが、トラッドっぽい神秘的なアコギのアルペジオから始まり、ブギー、メキシカン・ロックと怒涛の展開を見せる#3。
フィドルがリードしハーモニウムも加わって田園ムード全開の#4をはじめ、歌モノは楽しいフォーク主体。
チェロやフルート、アコギが奏でる田舎の室内楽といった趣のプログレッシブなインスト曲#5では、弦による重厚なリフがシリアスでヘヴィな質感をも演出するなど、バンドの別の顔を見せるのがおもしろい。
ラストの#9は叙情的な前半とアバンギャルドな中間部、重厚な後半からなる集大成的な14分超の大作で、バンドとしてのポテンシャルを感じさせます。

Track List

1.Grande Piano
2.Percy the Penguin
3.Three Legged Table
4.Dora the Female Explorer
5.Essence of Porphyry
6.Marigold Conjunction
7.West Mall
8.Marzo Plod
9.Slark

STACKRIDGE / Stackridge のレビューを見る

カテゴリー: STACKRIDGE

タグ: , ,

フォローもよろしくお願いします!

KING CRIMSON / Islands

1971,UK

英国プログレッシブ・ロック・バンド KING CRIMSONの1971年4thアルバム Islands。

ボズ・バレル(Vo/B)、イアン・ウォレス(Dr)の新メンバーにキース・ティペット(Pf)のグループを加えて制作。

ボズ・バレルの繊細な歌声による東洋的なメロディとキース・ティペットのアバンギャルドな中にも美しいピアノが清楚なムードを醸し出す#1。メル・コリンズ(Sax/Fl)がフルートでは叙情的に、サックスではアバンギャルドに活躍してます。
#1のテーマ・メロディを継承したかのようなサックスのリフがリードする#2はサックスやギターのインプロビゼーションが繰り広げられるインストゥルメンタルで、中盤にはメロトロンが不穏なムードを煽り緊迫感あるバンド・アンサンブルに発展します。
繊細で叙情的なボーカル・パートとヘヴィなリフのパートが対比した#3。
ブルーズ・ロックをベースにしながらもジャジーなオブリガードやPOPなボーカル・ハーモニー、メタリックな不条理リフと様々なフックが公然一体となった#4。
室内管弦楽が美しく叙情を紡ぐ#6の序曲#5。静かで清楚な#6ではトランペットの物悲しくもどこか希望も感じさせるメロディが胸を打ちます。うっすらと切れ込んでくるメロトロンも秀逸。

構築されたアンサンブルよりも個人のインプロビゼーションを重視した楽曲構成でありながら、アルバム全体としては端整で静謐なイメージが残る不思議なアルバムです。これを最後に詩人ピート・シンフィールドが脱退します。

Track List

1. Formentera Lady
2. Sailor's Tale
3. Letters
4. Ladies of the Road
5. Prelude: Song of the Gulls
6. Islands

KING CRIMSON / Islands のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

AUDIENCE / The House on the Hill

1971,UK

英国の4人組プログレッシブ・フォーク・ロックバンド AUDIENCEの1971年3rdアルバムThe House on the Hill。

アコギの繊細なアルペジオやコード・カッティングにキース・ゲメル(Sax etc)のテナー・サックス/クラリネット/フルートがアクセントとして加わるバッキングに、ほど良くリラックスした感じの歌メロが乗る独特のサウンド。
オープニングの#1から木管を操るキースのプレイが既に全開。ゆったりした序盤から3連パート、テンポアップしたエキサイティングなソロ・パートと目まぐるしく展開する中で7分超の長尺を感じさせないくらい随所に大活躍しております。
アコギの素晴らしいフィンガー・ピッキングに、ゲストのストリングス・セクションが初めはうっすらと霧のように、終盤は激しく絡むドラマティックな展開を見せる#4。
黒人ブルーズ・シンガー スクリーミング・ジェイ・ホーキンスのカヴァーをアコギやフルート、ヴィブラフォンを使用し寂寥感あるフォーク・ロックに仕上げた#7
。フルートのインプロビゼーション、ドラム・ソロ、テープ・エコーを掛けたサックス・ソロをフィーチャーしジャズ・ロック風に迫る#8。
等々、ほぼ鍵盤無しの限られた編成でいながら、起伏あるアレンジでアルバムをバラエティ豊かに演出しています。
ジャケット・アートはヒプノシス。

Track List

1. Jackdaw
2. You're Not Smiling
3. I Had a Dream
4. Raviole
5. Nancy
6. Eye to Eye
7. I Put a Spell on You
8. House on the Hill
9. Indian Summer

AUDIENCE / The House on the Hill のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

NIRVANA / Local Anaesthetic

1971,UK

キーフによる美しくも不気味なジャケットが有名なNIRVANAの1971年4thアルバムLocal Anaestheticはヴァーティゴから。

アレックス・スパイロポロウスと袂を分かち、パトリック・キャンベル=リオンズの個人プロジェクトとなった本作はアナログ各面1曲という構成。しかし実際は数曲が隙間無く繋がった組曲風でもあります。

#1は前作までのカラフル・サイケ路線とは異質な、ギター中心のブルージーとも言えるロックなテイスト。長尺のインプロビゼーションや会話を挿入するなどヒット狙いとは真逆のアーティスティックな狙いも垣間見られます。
#2は従来のような甘いメロディも若干顔を覗かせますが、オーケストレーションは控えめとなってます。
パトリックは同時期ヴァーティゴとプロデューサー契約もしていたようで、一歩下がって実験的な試みをしたかったんでしょうか。KING CRIMSON のメル・コリンズがSAXで参加。

Track List

1. Modus Operandi [Method of Work]
2. Home:
Salutation
Construction
Destruction
Reconstruction
Fanfare

NIRVANA / Local Anaesthetic のレビューを見る

カテゴリー: NIRVANA

タグ: , ,

フォローもよろしくお願いします!

GENESIS / Nursery Cryme

1971,UK

英国の叙情派プログレGENESISの1971年3rdアルバムNursery Cryme。

このアルバムよりフィル・コリンズ(Dr)、スティーブ・ハケット(G)が加入。ピーター・ガブリエル(Vo)、トニー・バンクス(Key)、マイク・ラザフォード(B)による”クラシック”メンバーが揃いました。
不気味なジャケット・アートが象徴する寓話的世界観の中、演劇的ともいえるドラマティックなフックが計算されつくして配置されており、聴いていて自然にグイグイ引き込まれてしまいます。
ハード・ロック的カッコ良さもある#1、美しいコーラスと終盤のメロトロンが感動のハーモニーを奏でる#4、が好きです。
#3や#5のひねくれたPOP感も英国っぽくって良いです。これらアクの強い名曲達を主張し合ってケンカする事無く、品良く締めている#2と#6の小品が又最高。各曲の出来、曲順、全てが最高の名盤です。

Track List

1. Musical Box
2. For Absent Friends
3. Return of the Giant Hogweed
4. Seven Stones
5. Harold the Barrel
6. Harlequin
7. Fountain of Salmacis

GENESIS / Nursery Cryme のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

BIG SLEEP / Bluebell Wood

1971,UK

英国ビート・ポップ・バンドEYES OF BLUEのメンバーによる変名バンドBLUEBELL WOODの1971年唯一作。

メランコリックなムードのフォークやサイケをベースに一部ヴォーカル・メロディにブルーズの節回しも登場したりと、掴み所の無い良い意味での節操の無さが70年代初頭の英国ロックを体現しているアルバム。気品を感じさせるピアノのサウンドとフレージングが拡散しがちな各曲のイメージをBIG SLEEPという名の下に収束させている感じです。ゲストプレーヤーの演奏による#1のストリングスや#6のフルート、サックス等のカラフルな装飾も効果的で、不気味なジャケットとは正反対の端正で瑞々しい音楽が奏でられています。場末の酒場を彷彿させるホンキートンクなR&Rで唐突にエンディングを迎えるラスト#8の意外性も英国的なヒネリなんでしょうか。

Track List

1.Death Of A Hope
2.Odd Song
3.Free Life
4.Aunty James
5.Saint And Sceptic
6.Bluebell Wood
7.Watching Love Grow
8.When The Sun Was Out

BIG SLEEP / Bluebell Wood のレビューを見る

カテゴリー: BIG SLEEP

タグ:

フォローもよろしくお願いします!

GIGANTI / Terra in Bocca

1971,ITALY

イタリアの4人組プログレッシブ・ロック・バンド I GIGANTIの1971年作Terra in Bocca。

マフィアを題材としたコンセプト・アルバムとなっており、ラジオ局で放送禁止になるほどの大胆な歌詞は実際に獄中の受刑者に取材して得られた素材を元にしたものという気合の入りよう。
場面に応じた複数のシンガーの起用、ナレーションや効果音、各曲が繋がった構成、など後世のロック・バンドが踏襲するコンセプト・アルバムの様式が既に70年代初頭のイタリアで完成していた事に驚きます。

妖しくもジャジーなピアノや叙情的メロディを聴かせるエレキ・ギターによる、壮大な序曲的インストゥルメンタル・チューン#1。
アコギの3フィンガーに乗った哀愁のテーマ・メロディ(後に#5冒頭や#7、#8終盤など各所にムードを換えて登場)が提示される#2。
軽快なアコギに乗ったほのぼのとした明るい地中海風パートから、低音ボーカル・パートを挟み、左右からメロトロンとピアノが押し寄せるドラマティックなサビに発展する#3。
アカペラの多層コーラスを冒頭に配し、左右交互にボーカルがやり取りする演劇的パートや軋んだメロトロンのリードするインスト・パートがスリリングな#4。
穏やかな中に叙情を潜ませたサイケな地中海風ポップスが、突如強烈な電子音で掻き消される#5。
メロウなパートと激しいパートが行き来するキャッチーな#6。
3拍子でクールな序盤、激しく盛り上がるサビ、静かなパートの随所でメロトロンが幽玄な彩を加える#7。
曲間でテープの走行エラーのような効果音で演奏が一瞬途切れ、混沌としたインスト・パートへ展開。ピアノとメロトロンをバックにしてのイタリア語のボーカル・メロディが哀愁を増幅する静かな序盤から、歌い上げるサビに発展する#8。
男女の会話シーンから、ピアノを中心にメロトロンやオルガンを加えたインストゥルメンタルに移行する#9。
モジュレーションを掛けたエレピをバックに浮遊感あるボーカルが乗る小品#10。
#2のアコギをバックにしたテーマがリプライズし、激しく盛り上がるサビを頂点に厳かなオルガンで静かに締めくくる#11。

楽曲それぞれに起伏とドラマが内包されており、先の予測できない展開が聴き手の集中力を持続させます。
しかし、特に難しい事をやっているわけでは無く、#5のサイケなメロディ感覚や#8サビ後に配された軽快なロックン・ロールのパートなどに垣間見られる60年代にビート・ロックを演っていた出自から来るおおらかさと、メロディアスなイタリア語歌唱の存在もあって非常に聴き易いです。

Track List

1. Largo Iniziale
2. Molto Largo
3. Avanti
4. Avanti Tutto-Brutto Momento - Plim Plim
5. Plim Plim Al Parossismo - Delicato Andante
6. Rumori - Fine Incombente
7. Fine Lontana - Allegro Per Niente
8. Tanto Va La Gatta Al Lardo- Su E Giu
9. Larghissimo - Dentro Tutto
10. Alba Di Note - Rimbalzello Triste
11. Rimbalzello Compiacente - Ossessivo Ma Non Troppo - Fine

GIGANTI / Terra in Bocca のレビューを見る

カテゴリー: GIGANTI

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

STRAWBS / From the Witchwood

1971,UK

前身は”ストベリー・ボーイズ”というちょっと恥ずかしい名前のブルーグラス・バンドだったSTRAWBSの1971年4thアルバムFrom the Witchwood。
後にYESに加入するリック・ウェイクマン(Key)が在籍していた事で有名です。基本的には美しいハーモニーとアコギを中心とした素朴でメロディアスな田園フォークながら、そこにラテン、インド、サイケ等々様々なエッセンスを上手くトッピングし独自のカラフルな世界を構築しています。その立役者はリック・ウェイクマン(Key)でしょう。

レズリーが唸るグリッサンドからテンポアップし、クラシカルな格調高いハーモニーで締める#1のオルガン。
転がるように軽快な#4のピアノ。
クラシカルな#5冒頭のチャーチオルガン。
サイケな#6や#7のオルガン。
#8の優しくヴォーカルハーモニーを包み込むメロトロンと煌びやかな響きのオブリガードを奏でるピアノ。
厳かな#9のハープシコード。

場面に合わせて様々なキーボードがアレンジに上手く溶け込みサウンドに彩りを加えてます。バンジョーやシタールも効果的に使用されています。

Track List

1. A Glimpse Of Heaven
2. Witchwood
3. Thirty Days
4. Flight
5. The Hangman And The Paptist
6. Sheep
7. Cannondale
8. The Sheperd's Song
9. In Amongst The Roses
10. I'll Carry On Beside You
11. Keep The Devil Outside

STRAWBS / From the Witchwood のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

RENAISSANCE / Illusion

1971,UK

オリジナルRENAISSANCEの1971年2ndアルバムIllusion。

前作のセールスが振るわなかった為解散を申し出たバンドに対して、レコード会社がバンド名の使用権譲渡を条件に制作させた契約消化作とも言われておりますが、内容はなかなかのもの。#3,#6の作詞にベティ・サッチャー、#4の作曲にマイケル・ダンフォード(G)の名前も見られ、黄金の第2期RENAISSANCEへの布石ともいえるアルバムです。

素朴な中にもクラシカルな気品が見え隠れするフォーク小品#1。
ジョン・ホウクン(Key)のピアノをバックにジェーン・レルフ(Vo)のクリアなスキャットが楽しめる#2。
リリカルなピアノとサビのコーラスが美しい#3。
端整なピアノと美しいボーカルが奇跡の融合を果たしたクラシカル・フォークの名曲#5。
これらはオリジナルRENAISSANCEらしいクラシカル・タッチなフォーク作品ですが、残りの2曲は消滅しつつあるバンドの状態を反映したかのようなイレギュラーな構成となっています。
ジェーンとジョン・ホウクン以外はマイケル・ダンフォードを含む別メンバーでレコーディングされた#4。ここでの厳かなファースト・パートに続くセカンド・パート中のフレーズは、後に第2期RENAISSANCEのアルバムTurn of the Cardsのオープニング・チューンRunning Hardにも登場します。よっぽど気に入ったんでしょう。
又、ラストの長尺曲#6ではドン・シィンなるプレイヤーがエレピでジャジーなインプロビゼーションを聴かせており、音楽性が随分違うナンバーに仕上がっております。

Track List

1. Love Goes On
2. Golden Thread
3. Love Is All
4. Mr. Pine
5. Face of Yesturday
6. Past Orbits of Dust

RENAISSANCE / Illusion のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

VAN DER GRAAF GENERATOR / Pawn Hearts

1971,UK

VAN DER GRAAF GENERATORのサウンドは非常にユニークです。和音楽器は鍵盤(オルガンとピアノ)とほぼコードカッティングのみのアコギ。その他SAX or フルートのみ、というシンプルな構成でいながらにしてのこのシンフォニックさ。サウンドの鍵はオルガン、SAXがピーター・ハミルの歌メロをユニゾンでなぞって行く事による音の層の厚さ。そして、押しと引きのドラマティックな構成美。そこに突如、不条理アバンギャルドなインストパートが絡む事で唯一無二のサウンドが醸成されるんです。この4thアルバムは、そんな独特の個性が大作3曲というフォーマットで遺憾無く発揮された傑作です。アコギとフルートの幽玄な調べが導入部のボーカルを導く#1。一転してSAXの攻撃的なリフにオルガン、続いてボーカルと次々とユニゾンで厚みを帯びる所がゾクゾクしますね。インクルードされた、5分半位からの引き摺るようなSAXが主導する不条理インストパートと清廉なボーカルパートの対比も見事です。#2では、ピアノとオルガンによる伴奏が印象的で英国っぽい端正な序盤から狂気のような中間部アバンギャルド・パートへの流れが、他の追随を許さない独創性に溢れています。この落差が効いて、再び端正なパートに戻る頃には神々しささえ湛えるようになっています。そしてそこに再び切り込んでくるヘヴィなSAX。これほどまでに対照的な要素を1曲の中に共存させるセンスがもうぶっ飛んでます。#3は23分超の組曲形式。シアトリカルなボーカル・パフォーマンスとそれを最大限に際立たせるアレンジ。そして、シンフォニックな美とカオティックな混沌パートのスムーズな融合。これら豊富すぎるアイディアをまとめあげるという困難な作業を、抜群なストーリーテリングぶりで達成した奇跡の大作です。このユニークなサウンドと予測不能な展開、誰にも真似できませんね。

Track List

1. Lemmings (Including Cog)
2. Man-Erg
3. A Plague of Lighthouse Keepers
a)Eyewitness
b)Pictures
c)Lighthouse
d)SHM
e)Presence Of The Night
f)Kosmos Tours
g)(Custard's) Last Stand
h)The Clot Thickens
i)Land's End
j)We Go Now

VAN DER GRAAF GENERATOR / Pawn Hearts のレビューを見る

カテゴリー: VAN DER GRAAF GENERATOR

タグ:

フォローもよろしくお願いします!

GRACIOUS / This is … Gracious!!

1971,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドGRACIOUSの1971年2ndアルバムThis is … Gracious!!。

軋んだメロトロンとオルガンがブルーズ・ロック由来のギター・リフとともにヘヴィなグルーヴを生むb)、メロディアスなフォークに霧のようなメロトロンがかぶさるc)、ボーカル・ハーモニーと静かなオルガンを中心に希望的なムードで美しいクライマックスを迎えるd)といった多彩な表情を見せる21分超の組曲#1。
ファンキーなギターのリフとカッティングにダーティなメロトロン、ホンキー・トンク風ピアノが絡み、キャッチーかつクールに展開するサイケ・ロック#2。
深遠なメロトロンと英国的な翳りを感じさせるセンチメンタルなボーカル・メロディが良い感じの#3。
メロトロンのリフとギターのカッティングがリードするアップテンポのインストゥルメンタル・パートと、ピアノの伴奏に乗ってゆったり進行するボーカル・パートを対比させた#4。
ウエスト・コースト風な軽いムードに深みのあるメロトロンが加わり、ユニークなハード・ポップに仕上がった#5。
と、全編でメロトロンが大活躍。
1stでのクラシカルな要素やヘヴィなタテ乗りに変わり、ベースがランニングするグルーヴィな乗りやメロトロンを効果的に使用した独自のハード・ロックっぽさで、よりオリジナル且つメインストリームなテイストが濃くなってます。ジャケット・アートはロジャー・ディーン。

Track List

1. Super Nova
a)Arrival of The Traveller
b)Blood Red Sun
c)Say Goodbye to Love
d)Prepare to Meet Thy Maker
2. C.B.S
3. What's Come to Be
4. Blue Skies and Alibis
5. Hold Me Down

GRACIOUS / This is … Gracious!! のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

JACKSON HEIGHTS / Ragamuffin’s Fool

1972,UK

元NICEのリー・ジャクソン(B/Vo)が結成したブリティッシュ・ロック・バンドJACKSON HEIGHTSの1972年3rdアルバムRagamuffin’s Fool。

ボーカルとピアノの瑞々しい演奏にメロトロンがうっすらと加わる爽やかな#1。
白玉メロトロンがメランコリックなムードを演出するバラード・タッチの#2。
メジャー・セブンスに乗ったおしゃれな序盤から一転してエレピがジャジーに展開する#3。
澄んだトーンのピアノにアコギのカッティングが絡み、そこにジワジワとが加わるメロトロンがトリ肌の#4。
ジャジーなムードの#5。
ホンキー・トンク風ピアノがリードするリラックスした#6、#8。
メロトロンをバックにエチュードのようなピアノの伴奏がクラシカルで厳かな叙情を呼ぶ#7。
バンジョーとフィドルを使用したカントリー・ナンバー#9。
美しいコーラス・ハーモニーと煌びやかなピアノのオブリガードが印象的な#10。
等々、曲調はバラエティに富んでいながら、サウンドはブライアン・チャットン(Key)の優雅なピアノを中心にしたアレンジにメロディアスな歌メロが乗るスタイルで統一されており、キャッチーなフックを持ちつつもピアノの端整なフレージングがもたらす気品が格調高さすら醸し出す独特のメロディアス・ロックが楽しめます。

Track List

1. Maureen
2. Oh You Beauty
3. As She Starts
4. Be Bop
5. Catch a Thief
6. Ragamuffin's Fool
7. Chorale(Five Bridges Suite)
8. Chips and Chicken
9. Poor Peter
10. Bellyfull of Water

JACKSON HEIGHTS / Ragamuffin’s Fool のレビューを見る

カテゴリー: JACKSON HEIGHTS

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

CAPTAIN BEYOND / Captain Beyond

1972,UK,USA

DEEP PURPLEを脱退したロッド・エヴァンス(Vo)がカリフォルニアに渡り、アメリカのサイケ・バンドIRON BUTTERFLYの元メンバーやジョニー・ウィンターと活動していたボビー・コールドウェル(Dr)らと結成したプログレッシブ・ロック度満点のロック・バンドCAPTAIN BEYONDの1972年1st。

不条理変態リフを中間部に挿入した#1を含むドラマティックな展開のメドレー#1、#2、#3。
7拍子のトリッキーなリフと変幻自在の展開を見せる#4。
複雑な楽曲構成を支えるドラミングが見事な#5。
5拍子のアルペジオにヴィブラフォンが寂寥感を重ねる#6からのメドレー#6、#7、#8。
ハード・ロックなテーマのサビとヴィブラフォンやロッドのマイルドな歌唱がもたらすムーディな展開との対比で起伏を持たせたメドレー#9、#10、#11、#12、#13。
等々、変拍子リフや唐突な場面転換といったプログレ的要素を多分に含みつつ、コーラス・ワークがサイケっぽかったり、手数の多いヘヴィなドラミングがハード・ロックしていたりと、フック満載のバラエティ豊かな楽曲が数曲単位のメドレー形式で繋がり、夢中で追いかけているうちに1枚通して聴けてしまいます。
ロッドの歌唱は所々パワフルな部分も見せますが、一番の魅力はキャッチーなサビでのマイルドな質感。それだけにハードな方向性を目指したDEEP PURPLEには合わなかったんでしょうが、このアルバムではジャスト・フィットしてます。

Track List

1. Dancing Madly Backwards (On a Sea of Air)
2. Armworth
3. Myopic Void
4. Mesmerization Eclipse
5. Raging River of Fear
6. Thousand Days of Yesterdays (Intro)
7. Frozen Over
8. Thousand Days of Yesterdays (Time Since Come and Gone)
9. I Can't Feel Nothin', Pt. 1
10. As the Moon Speaks (To the Waves of the Sea)
11. Astral Lady
12. As the Moon Speaks (Return)
13. I Can't Feel Nothin', Pt. 2

CAPTAIN BEYOND / Captain Beyond のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

YES / Fragile

1972,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドYESの1972年4thアルバムFragile。

本作から加入したリック・ウェイクマン(Key)のオルガンが印象的な超有名曲#1から各メンバーの全開プレイが楽しめます。
大作主義的な#1,#4,#6,#9以外は各メンバーの個性を前面に出したソロのような作風でコンパクトに仕上げられています。このように大作と小品がバランス良く配置されたアルバム構成に対して、考え過ぎた当時のファンが勝手にこの作品をコンセプトアルバムだと誤解しました。
ただ、あくまでもロック的なアンサンブルの中でのメンバー同士の激突がこのバンドの魅力だと思うんで、ちょっと物足りない感じもしますね。

Track List

1. Roundabout
2. Cans and Brahms
3. We Have Heaven
4. South Side of the Sky
5. Five Per Cent of Nothing
6. Long Distance Runaround
7. Fish (Schindleria Praematurus)
8. Mood for a Day

YES / Fragile のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

YES / Close to the Edge

1972,UK

YESの1972年5thアルバムClose to the Edge。

時に小説単位で行われたレコーディングの断片をテープの切り・貼りによって再構築したという#1がもう最高。川のせせらぎと鳥のさえずりのSEを導入部に仕込むことで牧歌的なイメージを与えておきながら、バンド演奏が始まるとともに突然のフリージャズ寸前の展開に当時の全リスナーが腰を抜かしたであろう衝撃のオープニングでつかみはOK。そして忍耐強く聴き続けた者だけに訪れる緊張からの爽やかな開放感。まさに「アメ」と「ムチ」。この曲は基本的にこのパターンを繰り返しながらオーラスの大団円に向かって徐々に感動の度合いが高まるように構成されています。後世の多くのバンドがこうした手法を模倣しながら未だにこのオリジナルの完成度を越える事ができていない、という事実がいかにこの30年以上前の作品が凄いものであるかを証明しています。
リック・ウェイクマン(Key)が多彩なトーンでチーム・プレーに徹しつつ幻想的雰囲気を醸し出す#2、
各パートの演奏が有機的に絡み合った#3も素晴らしいです。

スリリングでドラマティック、メロディアスでインテレクチュアルなロック史に燦然と輝く名盤。偏執狂的制作スタイルに疲れたビル・ブラッフォード(Dr)はレコーディング後脱退、KING CRIMSONに加入します。

Track List

1. Close To The Edge
(i)The Solid Time Of Change
(ii)Total Mass Retain
(iii)I Get Up, I Get Down
(iv)Seasons Of A Man
2. And You And I
(i)Cord Of Life
(ii)Eclipse
(iii)The Preacher, The Teacher
(iv)Apocalypse
3. Siberian Khatru

YES / Close to the Edge のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

CARAVAN / Waterloo Lily

1972,UK

カンタベリーの名バンドCARAVANの1972年4thアルバムWaterloo Lily。

脱退したデイヴ・シンクレアの後任に、ピアノが得意なスティーヴ・ミラー(P/Org)が加入。#5後半のソロをはじめ、随所にエレピによる洒落たプレイを聴かせています。
そのスティーブ・ミラーが前任者を彷彿させるファズ・オルガンのソロを披露する、リチャード・シンクレア(B/Vo)がボーカルを取る#1。
グルーヴィなインプロビゼーション主体の前後半パートに挿入された、中間部のピアノによるジャジーなプレイがアクセントとなったインストゥルメント・ナンバー#2。
お得意の牧歌的とも言えるボーカル・メロディが仄かにジャジーなインスト部と融合したCARAVANならではのナンバー#3。
リチャード・シンクレアのメロディアスなベースが印象的なキャッチーなボーカル・ナンバー#4。
この#3、#4ではパイ・ヘイスティングス(G/Vo)のジェントルなボーカルがPOPな曲調をより引き立てています。
ストリング・セクションを取り入れた組曲#5の美しい叙情ナンバーThe Love In Your Eyeではオーボエの物悲しい響きが胸を打ちます。続くインプロビゼーション・パートのTo Catch Me A Brotherでは、ゲストのジミー・ヘイスティングスによるフルートのメロディアスかつテンションの高いソロが圧巻です。
ラストの#6もヘイスティングスの優しいボーカルが映えるキャッチーなナンバー。

次作でまたもやメンバー・チェンジが起こる為結果的に今作のみの編成で制作されたアルバムですが、従来のCARAVANらしさを継承しつつも、#5の実験的な試みに前進する意欲も感じさせる作品となっています。

Track List

1. Waterloo Lily
2. Nothing At All / It's Coming Soon / Nothing At All
3. Songs & Signs
4. Aristocracy
5. The Love In Your Eye / To Catch Me A Brother / Subsultus / Debouchement / Tilbury Kecks
6. The World Is Yours

CARAVAN / Waterloo Lily のレビューを見る

カテゴリー: CARAVAN

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

JONESY / No Alternative

1972,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドJONESYの1stアルバムNo Alternative。

メロトロンを使用した叙情プログレでお馴染みのJONESYですが、特にこのデビュー・アルバムではメロトロンが大活躍。といいますか、ほとんど常時鳴っています。

上品で儚げな白玉ストリングスを聴かせる英国らしい叙情チューン#2や、メロディアスなボーカル・パートを丁寧なバッキングでサポートする#5など典型的な泣きのメロトロンは当然として、このJONESYが凄いのは繊細なメロトロンを普通のキーボード同然にタフに使ってしまっているところ。

#1におけるスリリングな単音3連フレーズによるギターとのユニゾンやハーモニー。
リフを主体としたヘヴィなブルーズ・ロックで、ギターと対等にダーティなオルガンによるパワー・コードのバッキングをこなす#3。
性急なリズムをバックに#1同様にギターとの単音ユニゾン/ハーモニーで迫りつつ、バッキングではダーティなコード・ワークで咆哮するヘヴィなジャズ・ロック#4。
ファンキーなグルーヴにメロトロン・ストリングスが映えるメロディアスな佳曲#6。

2ndでは一部の曲でインプロビゼーションに挑戦し、若干痛い事になってしまっている彼らですが、この1stでは得意技の叙情とブルーズ・ロックをベースにしたヘヴィネスを等身大でプレイ。メロトロンを惜しみなく使うチャレンジ精神や、微妙なミスタッチやズレが、逆にデチューン効果でサウンドの幅と味わいを醸し出している#1など、若さ故の怖いもの知らず的な部分等、微笑ましくも憎めない中途半端な所が英国らしくて好きですね。

Track List

1. No Alternative
2. Heaven
3. Mind of the Century
4. 1958
5. Pollution
6. Ricochet

JONESY / No Alternative のレビューを見る

カテゴリー: JONESY

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

MATCHING MOLE / Matching Mole

1972,UK

SOFT MACHINEを脱退したロバート・ワイアット(Dr/Vo)が元CARAVANのデイヴ・シンクレア(Org/P)、元DELIVERYのフィル・ミラー(G)、元QUIET SUNのビル・マコーミック(B)と結成したバンドの1972年1stアルバム。

メロトロンがリードする素朴で美しすぎるバラード#1から冒頭の3曲では構築された美を提示。
一転してテーマ・メロディだけ設定して後はやりたい放題の#4、#3の続きのようなスキャットから始まりデイヴ・シンクレアのファズ・オルガンが唸る#5、SEのような導入部から怒涛のソロ・パートに突入する#6では、インプロビゼーションを盛り込んだスリリングなジャズ・ロックを展開。
終盤は各楽器のノイズをSEのようにコラージュした(フリー・インプロビゼーション?)#7や、その流れのままメロトロンによる白玉即興で美しくも不穏かつスペイシーなムードを醸成する#8で実験的な試みも見せた野心作です。

Track List

1. O Caroline
2. Instant Pussy
3. Signed Curtain
4. Part of the Dance
5. Instant Kitten
6. Dedicated to Hugh, But You Weren't Listening
7. Beer as in Braindeer
8. Immediate Curtain

MATCHING MOLE / Matching Mole のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

PARLOUR BAND / Is a Friend?

1972,UK

英国のロック・バンドTHE PARLOUR BANDの1972年唯一作。

基本フォーク・ロックで、マイルドなリードボーカルと美しいハーモニーを中心にオルガンや時にハード・エッジなギターも絡め、アメリカンほど爽やかには抜け切らない英国らしく少々くぐもった独特な優しいサウンドを展開してます。ほとんどが3~5分台のコンパクトな楽曲で、一部に女性コーラスを使用したりとメジャー志向も感じられますが、冒頭の寂寥感たっぷりなエレピから紡がれる7分超の大作#10にみられる場面転換や哀愁のサビなどは時代を反映したアーティスティックな路線でバンドの力量を思い知らされます。

Track List

1. Forgotten Dreams
2. Pretty Haired Girl
3. Spring's Sweet Comfort
4. Early Morning Eyes
5. Follow Me
6. Evening
7. Don't Be Sad
8. Little Goldie
9. To Happiness
10. Home

PARLOUR BAND / Is a Friend? のレビューを見る

カテゴリー: PARLOUR BAND

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

PREMIATA FORNERIA MARCONI / Storia Di Un Minuto

1972,ITALY

イタリアの5人組プログレッシブ・ロック・バンド PREMIATA FORNERIA MARCONIの1972年1stアルバムStoria Di Un Minuto。

イントロの#1のムードを引き継ぎ静かな叙情を湛えて始まる#2。静かなボーカル・パートと交互に訪れるインスト・パートでは一転して静から動へ変化、メロトロンの白玉をバックにズ太いシンセのリフレインがドラマティックに鳴り響きます。
#3は、後の世界デビューとなったマンティコア盤にも収録された洗練されたバージョンと違い、もっと勢いと迫力を感じさせる生々しい演奏が聴き所。賑やかなロック・パートと繊細なパートの落差が魅力です。
アコギとフルートによるバッキングに語りかけるようなジェントルなボーカルが乗る、どこか郷愁を誘う静かな叙情チューン#4。時折登場するチェンバロの厳かなオブリガードが典雅な彩を加えています。
#4のテーマをオルガンとヴァイオリンで優雅に引き継ぐインストゥメンタル・チューン#5は、間髪置かずにピアノを中心とした3連アップテンポの怒涛のアンサンブルへ、さらにメロトロンにヴァイオリンを交えてのシンフォニックなパートを経て、ジャジーなパートへと目まぐるしく展開。終盤のインプロビゼーション・パートでは、フルートを中心に#3のメロディがエレピで挿入されたりと即興での非凡な力量を見せ付けます。
ヘヴィなリフを序盤と終盤に配し、中間部には叙情的なボーカル・パートとアコギ・ソロを挿入した#6。クラシカルかつフォークなメロディを、圧倒的なテクニックと表現力で奏でるフランコ・ムッシーダ(G/Vo)のプレイが圧巻。
フォーキーで静かなボーカル・パートと、ブラス・セクションを中心に迫力あるインスト・パートからなる#7。

デビュー作にして、ロック/フォーク/ジャズ/クラシックを消化した幅広い音楽性と確かなテクニック、静と動を活かしたドラマティックな構成力、等既にワールド・クラスの実力を感じさせる驚異のアルバムです。

Track List

1. Introduzione
2. Impressioni Di Settembre
3. È Festa
4. Dove... Quando... Parte 1
5. Dove... Quando... Parte 2
6. La Carrozza Di Hans
7. Grazie Davvero

PREMIATA FORNERIA MARCONI / Storia Di Un Minuto のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

Search

Twitter

Facebook

TOP