プログレ のレビュー

TEMPEST / Tempest

1973,UK

元COLOSSEUMのジョン・ハイズマン(Dr)が結成したTEMPESTの1973年1st。

ディストーション・ギターによるパワー・コードやブルーズ・ロック風な音使いのリフ、男臭くて暑苦しいヴォーカル、ヘヴィでラウドなドラムと、楽曲の構成パーツは基本ハード・ロック。しかし最大の聴きモノはスリリングなアンサンブルに加えて、ソロ・パートでのジャズ風味と超絶インプロビゼーション。特に当時27歳のアラン・ホールズワース(G/Vln)が後年の左手によるフィンガリング中心のレガートな変態フレーズはまだ控え目で、ピッキングによるオーソドックスな早弾きをメインに弾きまくっております。時折常人ギタリストには理解不能な変態的な音使いでヌルヌルッとハンマリングやスライドを使ったキメのフレーズも飛び出す所が超個性的。この時代のロック界でこのテクニックは異常ですね。ブッ飛んでます。シャープなカッティングもカッコ良すぎです。ホールズワースはヴァイオリンも披露しております。

Track List

1. Gorgon
2. Foyers of Fun
3. Dark House
4. Brothers
5. Up And On
6. Grey And Black
7. Strangerher
8. Upon Tomorrow

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RICK WAKEMAN / The Six Wives of Henry VIII

1973,UK

YES在籍時に発表したリック・ウェイクマン(Key)の1973年1stソロ・アルバムThe Six Wives of Henry VIII。

16世紀英国チューダー朝のヘンリー8世が娶った6人の王妃を描いたコンセプト作。王室が舞台だけに、華麗なオルガンや厳かなチェンバロなどクラシカルなムードをメインにしつつ、6人各様の性格やエピソードを表現するべく#2のソロではブルーノートにモード、ラテンの名曲エル・クンバンチェロの一節を挿入したり、#3ではカントリー調のフレーズを聴かせたりと幅広い音楽的な素養も感じさせます。
それを可能にしたのは、自身の豊富なセッション経験は元より、ドラマティックな運命を辿った6人の王妃という刺激的な題材、プラス音色の異なる様々な機材(ピアノ、エレピ、ハープシコード、ムーグ、メロトロン等)から得られたインスピレーションではないでしょうか。

全曲インストゥルメンタルながら、メロディを奏でる楽器が雄弁に印象的なメロディで時に大仰に時にスリリングに迫って来ますので一気に聴けます。(総尺37分弱)バックを固めるメンツもYES、STRAWBS人脈の豪華さ。

Track List

1. Catherine of Aragon
2. Anne of Cleves
3. Catherine Howard
4. Jane Seymour
5. Anne Boleyn/The Day Thou Gavest Lord Hath Ended
6. Catherine Parr

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ROBERT WYATT / Rock Bottom

1974,UK

飲酒しての落下事故による脊髄損傷で下半身不随となってしまったロバート・ワイアット(Vo/Key/G)の1974年2ndソロ・アルバムRock Bottom。

リチャード・シンクレア(B)、ヒュー・ホッパー(B)、フレッド・フリス(Viola)など、カンタベリー系ミュージシャンの協力を得て制作されております。繊細な歌声が静謐な叙情を醸し出すボーカル・ナンバー#1、#2。トランペットを中心としたサウンドスケープにメロディアスなボーカル・メロディが乗る、アヴァンギャルドでいながらキャッチーでもある#3。彼を支えた愛妻アルフィーに捧げた#4、#5。フレッド・フリスのヴィオラが印象的なアヴァンギャルドでシンフォニックな#6。ドラマーとしてユーモア感覚のあるジャズ・ロックを目指したSOFT MACHINEやMATCHING MOLEとは異なり、ボーカリストとして、よりトータル的な音楽表現を始めた転機となったアルバムです。

Track List

1. Sea Song
2. A Last Straw
3. Little Red Riding Hood Hit the Road
4. Alifib
5. Alifie
6. Little Red Robin Hood Hit the Road

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CAPABILITY BROWN / Voice

1974,UK

英国の6人組アート・ロック・バンドCAPBILITY BROWNの1974年2nd。

コーラス・ハーモニーとファンキーなアレンジでデコレイトしたAFFINITYもやっていた#1。
アコギのリッチな響きとブ厚いコーラス・ハーモニー、甘酸っぱい歌メロが堪らない叙情フォーク・ポップ#2。
キャッチーなSTEELY DANの#3。
シャッフルに乗ったブルーズ・ロックがベースの#4。
リュートやバラライカ等の古楽器にメロトロン、ARP等当時の最新電子楽器を取り入れたアンサンブルで4部構成の組曲に仕上げた20分超の#5。

ツボを心得たアレンジとタイトな演奏、全員が歌えるところが強みの素晴らしいコーラス・ハーモニーによって、バラエティに富んだアルバム構成ながら一本芯の通った所を感じさせるハイ・クオリティなアルバムです。
ヒプノシスによる不気味なアルバム・カヴァーで有名ですが、内容は時代を超えたポピュラリティを有しています。

Track List

1. I am and so are You
2. Sad am I
3. MIdnight Cruiser
4. Keep Death Off the Road
5. Circumstances(In Love,Past,Present,Future Meet)

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YES / Relayer

1974,UK

YESのスタジオ1974年7thアルバムRelayer。
1973年の前作「Tales From Topographic Oceans」を最後にリック・ウェイクマン(Key)が脱退、1974年の今作からスイス人のパトリック・モラーツ(Key)が加入。

22分にも及ぶ大作#1では、早速モラーツのカラフルなキーボード群によるジャズの素養を感じさせるクールなフレージングが聴き所となっています。8分過ぎからのインスト・パートでは分厚いシンセ・サウンドと独特の攻撃的なフレージングでスティーヴ・ハウ(G)を挑発、手に汗握る緊迫したバトルを展開しています。
ギターとベースによる速いパッセージのユニゾンがスリリングな#2。
ハイテンションな前2曲とは打って変わってゆったりした#3では、良く聴くと各々のパートが絶えず紡ぎだすフレーズが絶妙な融合を見せている事に気づきます。
YESに新鮮な風を送り込んだパトリック・モラーツでしたが、自身のソロ作の成功もあり、この1枚で脱退してしまいます。

Track List

1. The Gates of Delirium
2. Sound Chaser
3. To Be Over

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PREMIATA FORNERIA MARCONI / L’Isola di Niente

1974,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドPREMIATA FORNERIA MARCONIの4thアルバムL’Isola di Niente(邦題 甦る世界)。

混声合唱団の厳かなクワイヤをイントロに配し、フランコ・ムッシーダ(G)によるメタリックなエッジのギター・リフを前面に押し出してヘヴィに迫る#1。中間部では優しくのどかな情景をシンフォニックに挿入し、ヘヴィなパートとの対比で互いの印象を強くしています。
フォーク・タッチの静とマウロ・パガーニ(Vln/Fl)のフルートやフラヴィオ・プレモーリ(Key)のアコーディオンによるジャジーなソロ・パートの動による起伏を軸に展開する開放的なシンフォ#2。
シンセの印象的なリフレイン~フルート・ソロ~ギターとピアノの複雑なパッセージのユニゾンなど、明るいムードのキャッチーなシンフォニック・ロックに技巧を織り交ぜた#3。
アコギのアルペジオと繊細なボーカルを中心にした牧歌的なフォーク#4。まろやかな音色のシンセやメロトロン、フルートの優美なデコレーションが素敵です。
エレピやフルートのソロをフィーチュアしたクールなジャズ・ロックから、穏やかなシンフォニック・ロックに展開するインストゥルメンタル#5。

フロント3人を中心としたテクニカルなアンサンブルがもたらすカタルシスと、優しいメロディ志向が高度に共存。楽曲中及びアルバム通してのダイナミズムが見事な名盤です。

Track List

1. L'isola di niente
2. Is My Face On Straight
3. La Luna Nuova
4. Dolcissima Maria
5. Via Lumiere

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ARGENT / Nexus

1974,UK

ブリティッシュ・ビートバンドZOMBIESのリーダーだったロッド・アージェント(Key/Vo)が結成したARGENTの1974年5th。このアルバムを最後にRAINBOW等への楽曲提供でお馴染みのラス・バラード(G/Key/Vo)が脱退します。コホーテク彗星をテーマにした冒頭のインストゥルメンタル3部作や長尺の#5等プログレッシブな曲展開を好むアージェント。メロトロンが美しい#4や#6等のキャッチーでコンパクトな楽曲を提供するバラード。と、対照的な2人のカラーをはっきり主張していながらも、ARGENTというバンドの個性として昇華され、魅力的なアルバムに仕上がっています。ピアノ、ハモンド、モーグ、メロトロン、クラビネット、チャーチオルガン等キーボード群を駆使し、豊富なアイディアと類い稀な個性をメロディアスなハード・ロックという解りやすいフォーマットで提示した名盤です。

Track List

1.Coming of Kohoutek
2.Once Around the Sun
3.Infinite Wanderer
4.Love
5.Music from the Spheres
6.Thunder and Lightning
7.Keeper of the Flame
8.Man for All Reasons
9.Gonna Meet My Maker

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ARTI E MESTIERI / Tilt

1974,ITALY

イタリアの6人組ジャズ・ロック・バンドARTI E MESTIERIの1974年1stアルバムTilt。

フリオ・キリコ(Dr)の繰り出す手数の多いドラミングを中心に鍵盤とギターがバックを固め、ヴァイオリンとサックスがメインのメロディをクールに奏でるスタイルで統一されています。が、しかし、そのオーガニックな響きゆえに温かみをも同時に醸し出した独特のサウンドになっているのがポイント。そしてそのクールなインストゥルメンタル・パートと対比を成すのが、ボーカルが入った時の静かな叙情。特に#2の囁くようなボーカルとジワジワ染み入るメロトロンによる、もう反則っていうくらいの叙情味は印象に強く残ります。又、普段はバッキングに徹しているギターも、#4では突如スリリングな早弾きソロで前面に出てきます。そんなロック的熱さも魅力。クールなジャズ・ロックと優しい叙情を交差させた13分超の#7のドラマティックさは圧巻。

バンド名通り、芸術家の感性と職人の技術が高次元で融合。全9曲中インストゥルメンタル・ナンバーが7曲という構成でいながら、親しみ易く歌心を感じさせるアルバムです。

Track List

1. Gravità 9,81
2. Strips
3. Corrosione
4. Positivo / Negativo
5. In Cammino
6. Scacco Matto
7. Farenheit
8. Articolazioni
9. Tilt

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QUELLA VECCHIA LOCANDA / Il Tempo Della Gioia

1974,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドQUELLA VECCHIA LOCANDAの2ndアルバムIl Tempo Della Gioia。

マッシモ・ロセリ(Key)のピアノとレイモンド・マリア・コッコ(G/Fl)のアコギが織り成す端整なムードに切れ込んでくるクラウディオ・フィリーチェ(Vln)のヴァイオリンで幕を開け、叙情的なパートの繊細さとボーカルが歌い上げるサビに続くクラシカルなストリングス・パートでの力強さとの対比がドラマティックな#1。
フルートとヴァイオリンに典雅なハープシコード、さらにクワイヤが加わり、マイナーなメロディでクラシカルに盛り上がるインストゥルメンタル#2。
イタリアらしい叙情メロディの序盤からクールなジャズ・ロック・パートを経て、シンセ、ヴァイオリン、フルート、ギターがそれぞれの見せ場を用意しながらスリリングなアンサンブルを聴かせる器楽パートに至るプログレッシブ・チューン#3。ベースがなかなかのグルーヴで底辺を支えています。
メロディ、バッキング、ソロと、ヴァイオリンが前面に出たクラシカルな序盤から、ブルージーなバッキングに乗ったクラリネットやピアノのソロ・パートを経て、叙情と熱情が交錯するボーカル・パートに発展する9分超の組曲的な大作#4。
異教の混声クワイヤのような妖しいムードのイントロ、枯れたアコギのアルペジオとフルートがもたらす何とも言えない寂寥感、不安感を煽るミステリアスなメロディのボーカル・パート等で構成されたプログレッシブ・ジャズ・ロック#5。

クラシカルな端整さと破天荒なジャズ・ロック的アンサンブル、静寂の中の叙情とラテンの血が騒ぐ情熱パート。全編一貫したトーンで様々な表情を見せる、確かなテクニックに裏打ちされた抜群のアンサンブルが素晴らしいです。

Track List

1. Villa Doria Pamphili
2. A Forma Di
3. Il Tempo Della Gioia
4. Un Giorno Un Amico
5. E Accaduto Una Notte

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STACKRIDGE / Extravaganza

1974,UK

前作から大幅にメンバー・チェンジした田舎のBEATLESことSTACKRIDGEの4thアルバムExtravaganza。

レトロなムードのホンキートンク・ピアノのフレーズで幕を開けるポップで楽しい#1。クラリネットのオブリガードが印象的。
ほのぼのムードの中、田舎のダンスパーティ風フィドルのソロを盛り込んだ#3。
イナたくも甘酸っぱいメロディが素敵な#4。
捻りのある展開が耳に残る#5。
アップテンポと朴訥なボーカルの意外性が絶妙にマッチした#6。
グルーヴィなリズムに乗せた70年代クロスオーバー風のインスト#7。リズムのキメでのタイトなアンサンブル、フォークロア風メロディを取り入れての起伏などアレンジも凝っていてカッコ良い。
一時期バンドに在籍していたゴードン・ハスケル作の#8。ブルーズ・ロックをベースにした英国的翳りのあるセンチメンタルなナンバー。サビメロのどこか東洋的なエキゾチックさも非常に印象に残ります。
クールかつ牧歌的なインストゥルメンタル・ナンバー#9。
サックスと木琴によるユニゾンのメイン・メロディ、女性ボーカルのスキャット、スリリングで複雑な展開など、キャッチーかつテクニカルなインスト#10。

#1~#6のアナログA面でのポップで楽しい歌モノと、#7以降のインスト中心のクールでカッコ良い楽曲群の両極端が共存した雑食のSTACKRIDGEらしいアルバム。本作のみ参加のロッド・ボウケット(Key)がインスト曲の作曲から洒落たピアノ演奏まで良い仕事をしています。

Track List

1. Spin Round the Room
2. Grease Paint Smiles
3. The Volunteer
4. Highbury Incident (Rainy July Morning)
5. Benjamin's Giant Onion
6. Happy in the Lord
7. Rufus T. Firefly
8. No One's More Important Than the Earthworm
9. Pocket Billiards
10. Who's That Up There With Bill Stokes?

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カテゴリー: STACKRIDGE

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KING CRIMSON / Starless and Bible Black

1974,UK

KING CRIMSONのスタジオ6thアルバム Starless and Bible Black。

ドライブ感満点の疾走パートと変態リズムのボーカル・パートを併せ持つ#1。
ジョン・ウェットン(B)のジェントルな歌唱にメロトロンの叙情が重なる序盤、ジェイミー譲りのパーカッションを聴かせるビル・ブラッフォード(Dr)、ロバート・フリップのメタリックな質感のギターがせめぎ合う#2。
お互いに手の内を探り合うようなインプロビゼーションが途中でブツ切れとなる#3。
ライブ部分のイントロにスタジオ録音のパートが巧く溶け合い、この時期ならではのクールなヨーロピアン叙情を醸し出す#4。
デヴィッド・クロス(Vln)のヴァイオリン、ロバート・フリップのメロトロン、ジョン・ウェットンのベースによる、東洋的なムードを感じさせるメロディの典雅なインスト#5。
妖しくも美しいメロトロン、ファンキーな薫り漂うベース、美しいハーモニーのボーカルというバラバラな要素が混沌の中から徐々に絡み合い出し、ようやくイイ感じになってきたところで突然ブツ切れとなる#6。
リズム・セクションがリードする中、ノイジーなギターと不協和音を奏でるメロトロンにより暗黒風味に着地した#7。
ギターによるメカニカルかつミニマルなリフが執拗に反復されながら、やがてヘヴィに発展する#8。

前作のツアー中にジェイミー・ミューアが失踪し脱退、4人編成に。
完成度の高いスタジオ録音部分である#1と#2及び#4のボーカルイン以降を除いてライブ・レコーディングされた本作は、実験的なインプロビゼーションによるライブ・バンドとしてのミュージシャンシップの高さを見せ付ける衝撃的な内容。

Track List

1. The Great Deceiver
2. Lament
3. We'll Let You Know
4. The Night Watch
5. Trio
6. The Mincer
7. Starless And Bible Black
8. Fracture

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KING CRIMSON / Red

1974,UK

KING CRIMSONのスタジオ7thアルバム Red。

ジョン・ウェットン(B/Vo)中心に他のメンバーがどんどん音量を上げるステージで居場所を失ったデヴィッド・クロスが脱退、残った正式メンバー3人に加え、デヴィッド・クロスを含めイアン・マクドナルドやメル・コリンズなどかつてのメンバーのゲスト参加を仰ぎ制作された70年代KING CRIMSONのラスト・アルバム。

重金属を思わせるギターの上昇フレーズがうねるヘヴィなインスト#1。
ジョン・ウェットンのボーカルをフィーチュアした叙情チューン#2。ゲスト陣のサックスやオーボエが陰影を帯びて良い感じに仕上がってます。
#1のテイストをベースに、キャッチーとも言えるボーカル・パートやサックス・ソロをフィーチュアしたインスト・パートを織り交ぜた#3。
と、アナログA面のここまでをロバート・フリップ(G)はメタル・サイドと表現。

デヴィッド・クロスの軋んだヴァイオリンとサウンドスケープを中心に混沌としたインプロビゼーションを展開する#4。雰囲気モノに終始するギターやヴァイオリンと比べ、よりはっきりとしたフレーズでアンサンブルを牽引するジョン・ウェットンの存在感(と音量)が凄まじい。
そして70年代CRIMSONのラストを飾る#5。メロトロンの寂寥感、叙情的なボーカル・メロディ、哀愁のサックス、屈折した暗黒インスト・パート、暴虐のヘヴィネス・パートと様々なテイストを盛り込んだバンドの最後を飾るにふさわしい集大成的名曲です。

アルバムの発売直前にロバート・フリップが突如解散を宣言。
プログレッシブ・ロックの黎明期から常にシーンをリードしてきたバンドの歴史にひとまず終止符を打つ事に。

Track List

1. Red
2. Fallen Angel
3. One More Red Nightmare
4. Providence
5. Starless

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GENESIS / The Lamb Lies Down on Broadway

1974,UK

GENESISの7thアルバムThe Lamb Lies Down on Broadway。

前作で見せた各メンバーによる演奏技術の向上はフロントマン ピーター・ゲイブリエル(Vo)の焦りを招き、彼主導のコンセプト・アルバム制作のきっかけとなった。しかしその結果、ストーリーを描き切る事でさらにプレイ面の充実を証明することになってしまうのだから皮肉なものです。

物語はゲイブリエル作による奇妙な現代的ファンタジー。古典寓話の色合いが強かったこれまでとは違う題材への取組みが、クールな質感の音像となって表現されています。
クライマックスは印象的なオルガンのリフがフェードインしてくるDISC 1 #5と3部構成のDISC 2 #7。どちらもポルタメントが気持ち良いトニー・バンクスのシンセ・ソロでは前作でも見せた規則性ある反復フレージングに表情が加わり、さらに味わい深いものになっています。
又、DISC 1 #5終盤のバンド全体の息の合ったアッチェレランドが主人公の追い詰められた心象を表現しきっています。
トニー・バンクスの見せ場DISC 2 #10の弾きまくりもナイス。同じモチーフの明暗バージョンとしてDISC 1 #1とDISC 2 #9を鏡のように配するアルバム構成も素晴らしい。
勿論、DISC 1 #8,#10,#11、DISC 2 #3,#5のように叙情性も適度に配置されてます。

Track List

DISC 1
1. Lamb Lies Down on Broadway
2. Fly on a Windshield
3. Broadway Melody of 1974
4. Cuckoo Cocoon
5. In the Cage
6. Grand Parade of Lifeless Packaging
7. Back in N.Y.C.
8. Hairless Heart
9. Counting out Time
10. Carpet Crawlers
11. Chamber of 32 Doors

DISC 2
1. Lilywhite Lilith
2. Waiting Room
3. Anyway
4. Supernatural Anaesthetist
5. Lamia
6. Silent Sorrow in Empty Boats
7. Colony of Slippermen: The Arrival/A Visit to the Doktor/The Raven
8. Ravine
9. Light Dies Down on Broadway
10. Riding the Scree
11. In the Rapids
12. It

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STRAWBS / Hero and Heroine

1974,UK

プログレ度がますます上昇したSTRAWBSの1974年7thアルバムHero and Heroine。

前作を発表後のツアーを最後にデイヴ・カズンズ(Vo/G)、デイヴ・ランバート(Vo/G)以外のメンバーが脱退。リズム隊と鍵盤奏者を新たに加入させるわけなんですが、キーボードは何と元オリジナルRENAISSANCEのジョン・ホウクン(Key)。
曲調や場面に応じてアコースティック・ピアノ、エレピ、オルガン、メロトロン、シンセ、と言った具合に持ち前の上品なトーンとフレージングで大活躍しております。(ちなみに脱退した鍵盤のブルー・ウィーバーは、様々なセッションをこなした後に何とBEE GEESに加入し大成功!)

メロトロン大洪水の序盤、端整なピアノの中盤、教会風クワイヤの終盤とのっけからドラマティックに迫る組曲#1。
程良くくすんだエレピの伴奏に乗ったAOR風なボーカル・パートから、突如クラシカルなオルガン・ソロで感動的に盛り上げる#2。
キャッチーなロックン・ロールに叙情シンフォニックなメロトロン・パートが挿入された#3。
コーラス・ハーモニーの美を気品あるピアノとメロトロンでさらに増幅する#4。
メロトロンによる大仰でシンフォニックなメイン・リフに埃っぽいフォークのボーカル・パートが融合したプログレ・チューン#5。
#5からメドレーで繋がった叙情フォーク#6。
ピアノのオブリガードが印象的な優しいフォーク・バラード#7。
シンセのリフあしらったアメリカン・ハード・ロックな#7。
#9のギターとピアノによる重厚なリフレインが引き継がれ、クワイヤで感動的にフィナーレを飾る#10。

トータル・コンセプト作らしいドラマティックなアルバム構成の充実作。
#3や#5のような本来相容れない要素を巧みに(無理やり?)ドッキンングしてしまうセンスはSTRAWBSならでは。くっつけたは良いが、素材がそのままで融合しきっていない中途半端さも逆に味があって大好きですね。

Track List

1. Autumn: Heroine's Theme/Deep Summer's Sleep/The Winter Long
2. Sad Young Man
3. Just Love
4. Shine On Silver Sun
5. Hero and Heroine
6. Midnight Sun
7. Out in the Cold
8. Round and Round
9. Lay a Little Light on Me
10. Hero's Theme

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カテゴリー: STRAWBS

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RENAISSANCE / Turn of the Cards

1974,UK

英国プログレッシブ・ロックの華RENAISSANCEの1974年5thアルバムTurn of the Cards。

詩人ベティ・サッチャーとの黄金コンビで全曲を作曲したマイケル・ダンフォード(G)が正式メンバーとしてクレジットされ、ここに黄金期RENAISSANCEのメンバー構成が完成。音楽性もアコースティック楽器によるバンド演奏にオーケストラを導入したスケールの大きなシンフォニック・ロック、というスタイルが確立されました。

ジョン・タウト(Key)のクラシカルなピアノ・ソロをオープニングに配した本アルバム最長9分34秒の#1から早くもクライマックス。オリジナルRENAISSANCEの2ndアルバムIllusionに収録されたMr. Pineのエキゾチックなパートがシンフォニックな装いで挿入されるなど、オーケストラを活用し壮大なスケールに仕上がってます。
ハープシコードが隠し味的に効いたバラード風の#2ではアニー・ハズラム(Vo)のまろやかな美声が堪能できます。
ジャジーなテイストとミステリアスなムードの序盤、アニーのクリスタル・ヴォイスによるスキャットがフィーチャーされた中盤、そして美しいボーカル・ハーモニーでポジティブなメロディを紡ぐ終盤と全てバンドのみの演奏で9分の長尺を描き切った#3。
アコギのアルペジオによる静かなオープニングから、ハープシコードが厳かな美を湛えるサビでドラマティックに盛り上がる#4。
チャーチオルガンをバックにアニーが切々とアダージョのメロディを歌い上げる#5。
オーケストラを使用した美しく壮大な#6は、エキゾチックなメロディとアニーの渾身の歌唱が感動を呼ぶ9分超の大作。またもやアニーのクリスタル・ヴォイスによるスキャットが華を添えております。

大作と小品をバランス良く配したアルバム構成も素晴らしいです。

Track List

1. Running Hard
2. I Think of You
3. Things I Don't Understand
4. Black Flame
5. Cold Is Being
6. Mother Russia

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SUPERTRAMP / Crime of the Century

1974,UK

英国のロックバンドSUPERTRAMPの1974年3rdアルバム。

2人のソングライター、ロジャー・ホッジスン(Vo/G/Piano)とリチャード・デイヴィス(Vo/Key)による適度なウェット感とPOP感覚を兼ね備えたメロディーにプログレッシブな要素が相まった親しみやすくもヒネったサウンドが特徴。高音中心で少々クセのあるロジャーと中音域中心でストレートなリック、という2人のヴォーカリストのキャラクターもサウンド面での幅を持たせる要因に。#5などでSUPERTRAMPサウンドのカギともいえる”プアマンズ・ローズ”ウ-リッツァーのひしゃげたような独特のトーンも活躍。#3、#4、#6など6~7分台の楽曲を普通に配する所も売れ線狙いとは一線を画すバンドのプレゼンスを主張してます。それと忘れちゃいけないのが、ジョン・アンソニー・ヘリウェルによるサックスやクラリネットが醸しだす何とも言えないペーソス感。物悲しいんですが、暖かみもあり、少々とぼけた風でもあるこの感じ。それに気付いた時にはもう虜です。

Track List

1. School
2. Bloody Well Right
3. Hide in Your Shell
4. Asylum
5. Dreamer
6. Rudy
7. If Everyone Was Listening
8. Crime of the Century

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カテゴリー: SUPERTRAMP

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TEMPEST / Living in Fear

1974,UK

TEMPESTの1974年2nd。

1stでギターを弾いていたアラン・ホールズワースに代わりオリー・ハルソールが参加。ギターは勿論、ヴォーカルやキーボードをこなすオリーのもたらしたカラーなのか、よりストレートでキャッチーなハード・ロックを展開。とはいえ、スライド・ギターによるオブリガードが印象的な#3をはじめ、印象的なリフ中心の楽曲構成の中で時折見せるジャズ風味のアレンジが新鮮。ソロ時の存在感はアランの圧倒的な超絶変態プレイに到底及ばないが、オリーも十二分にテクニカルでスリリング。各楽曲のキャラ立ちやアレンジの多彩さにタイトな演奏と、アルバムのトータルの出来としてはこちらが上かも。ハード・ロックを極めたリーダーのジョン・ハイズマン(Dr)はTEMPESTを解散しCOLUSSEUM Ⅱを結成、再びジャズ・ロックを追及します。

Track List

1. Funeral Empire
2. Paperback Writer
3. Stargazer
4. Dance To My Tune
5. Living In Fear
6. Yeah, Yeah, Yeah
7. Waiting For A Miracle
8. Turn Around

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カテゴリー: TEMPEST

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ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA / Eldorado

1974,UK

オーケストラをロック・バンドに取り込みユニークなサウンドを創出したELECTRIC LIGHT ORCHESTRAの全米16位となった4thアルバムEldorado。

編成はジェフ・リン(G/Moog/Vo)を中心とした4ピースのロック・バンド+チェロ2名、ヴァイオリン1名。
スペイシーなSEとディズニーのようなメルヘンちっくなオープニングからストリングスの下降フレーズが壮大なドラマを予感させる序曲#1で幕を開け、しっとりしたストリングスをバックにした#2のピアノによるゆるやかなイントロ。もうこの部分だけでワクワクしますね。
ブラスのファンファーレをあしらった#3では弦のピチカートが印象的です。
チェロのオブリガードが効いている#4は、ファルセットを上手く使ったサビの歌唱が抜群のメロディと相まって超キャッチー。それでいてヴァースではラフな雰囲気の歌唱も渋く聴かせてます。
#7は英国っぽいペーソスを感じさせる佳曲で、ホンキートンクなピアノ・ソロが良い感じ。
胸キュンで雄大なサビが物語の終焉が近い事を悟らせて胸を熱くさせる#9でクライマックスに。
そしてエキゾチックな終盤に続き、#10では#1のオーバーチュアがリプライズされ圧巻のフィナーレを迎えます。

Track List

1. Eldorado Overture
2. Can't Get It Out Of My Head
3. Boy Blue
4. Laredo Tornado
5. Poor Boy (The Greenwood)
6. Mister Kingdom
7. Nobody's Child
8. Illusions In G Minor
9. Eldorado
10. Eldorado Finale

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CAMEL / Mirage

1974,UK

CAMELの1974年2ndアルバムMirage。

プログレ界では後発バンドだけに、練られたアレンジ、楽曲のドラマチックな構成力に長けてます。

オープニングはエッジの鋭いバッキング・ギターがリードするハードロックな#1だが、一筋縄で行くはずも無く、ギター・ソロ部でのジャジーな流れに続き変拍子を絡めてコンパクトな中にもシンフォニックに展開させる構成力はさすが。
アンディ・ラティマー(G/Fl/Vo)によるフルートが叙情メロディを奏でるインスト#2。
同じく彼のギターによる甘いトーン、ピーター・バーデンス(Key)によるメロトロンやオルガンの包み込むような空間演出、ポルタメントが滑らかなムーグによる印象的なメロディ、ダークなムードを思わせるアレンジの妙で一気に聴かせる#3。
イントロの叙情から甘くポジティブなフィーリングをムーグのメロディが演出し、スリリングな中間部で盛り上げる#4。
と、各楽曲のキャラ立ても巧み。ハードロック、叙情、スリルを起伏あるアレンジでスムーズに繋げ一時も聴き手を休ませない、それでいて優しい12分超の#5がまさに集大成。

Track List

1. Freefall
2. Supertwister
3. Nimrodel/The Procession/The White Rider
4. Earthrise
5. Lady Fantasy: Encounter/Smiles for You/Lady Fantasy

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KAIPA / Kaipa

1975,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドKAIPAの1975年1stアルバムKaipa。

北欧らしいポジティブな美メロが透明感溢れるシンフォニックなサウンドでゆったりと心地良く奏でられます。歌詞はスウェーデン語で独特のイナタさが辺境ムードを増強。ハンス・ルンディン(Vo/Key)が歌うハイトーンが、自身の演奏するストリングス・アンサンブル(LOGANのSTRING MELODYか?)の澄んだ音色に溶け込み清涼感も抜群です。
勿論ロイネ・ストルトのギターも既に円熟の味わい。
#1でのボリューム奏法による繊細なタッチや後のFLOWER KINGSでも定番となる得意なエキゾチック・ナンバー#7でのネバリ等、良く歌うギターをプレイしてます。アルバム・ジャケットのイラストもロイネ先生です。素晴らしいです。尊敬します。

Track List

1. Musiken Ar Ljuset
2. Saker Har Tva Sidor
3. Ankaret
4. Skogspromenad
5. Allting Har Sin Borjan
6. Se Var Morgon Gry
7. Forlorad I Istanbul
8. Oceaner Foder Liv

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