プログレ のレビュー

NECROMONKEY / Necroplex

2013,SWEDEN

ANGLAGARDのマティアス・オルソンとGOSTA BERLINGS SAGAのデイヴィッド・ルンドベリによるユニットNECROMONKEYの1stアルバムNecroplex。

メロトロンを中心にクレッシェンドする幻想的なオープニング#1。
#1の雰囲気を銅鑼の一撃で一変、忙しない無機質なマシン・ビートが支配する前半からムーディでどこか古臭い感じのシンフォニック・パートに移行する#2。
マシン・ビートに乗ったリフレインがトリップ感を誘う#3。
チューバやトランペットの断片的なフレーズをコラージュした#4。
郷愁をそそる古びたピアノの音で奏でられるメランコリックなフレーズにメロトロンが絡む#5。
マシン的シークエンスにチェロという意外な組み合わせが面白い前半から、クラリネットがペーソスを醸すダークな後半に移行する#6。
フレットレス・ベースのまろやかなソロをフィーチュアした静謐な#7。
断続的に繰り返す自動伴奏のフレーズに謎めいた語りを加えた前衛チューン#8。
サスペンス映画のサントラに使えそうなクールな#9。シンセやドラムマシンにトランペットやクラリネットが自然に溶け合ったサウンドが新鮮。
空間系エフェクトをたっぷり掛けたバリトン・ギターのナチュラル・トーンのソロ#10。
ギターによる5拍子のアルペジオ・パターンをベースに、フィルターを効かせまくったシンセやCASIOのミニ鍵盤によるピコピコ音やドラム・マシンが音色を変えながら絡みつきシンフォニックに変貌していく近未来プログレ#11。
バス・クラリネットのデュオ#12。
#5のモチーフ・メロディに妖しいメロトロン・クワイヤや加工した子供の声も加え美しく不気味に幕を閉じる#13。

無機質なシークエンス・パターンに手弾きシンセや管弦といったオーガニックな要素を融合させ、マシンっぽいのにどこか暖かみのある新しいようで郷愁も誘う不思議な感触のサウンドを醸成。
シークエンスもヴィンテージな家庭用伴奏付き鍵盤楽器の類(メロトロンも元々はこれ)のプリセットなのか、最新デジタル機材で打ち込んだものにローファイなエフェクトを掛けたものなのか判然としないが、おそらく両方やっていると思われる。
テーマやモチーフを繰り返したりデコレーションを変えて行ったりといった手法を取った各楽曲は、普通の展開・進行が一切無く、はっきりとしたメロディを感じさせるものもある反面、SEやサウンドスケープあるいはアイディアのスケッチ風な部分もある。
ここでの試みは間違いなくマティアス・オルソンの新プロジェクトKAUKASUSに活かされている。

Track List

1. Pea
2. Asshole Vote
3. Elements
4. Tuba Melt
5. Small Rome
6. Every Dead Indian
7. Empty Traps and Nightfall
8. Spoken
9. The Utopian and the Teaspoon
10. Winds Over Iceland
11. Knock Knock Hornets Nest
12. Notebook Memory
13. Last Entry

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SPOCK’S BEARD / Brief Nocturnes and Dreamless Sleep

2013,USA

アメリカのプログレッシブ・ロック・バンドSPOCK’S BEARDの11thアルバムBrief Nocturnes and Dreamless Sleep。
ニック・ディヴァーリジオに代わりジミー・キーガン(Dr)、さらにENCHANTのテッド・レオナルド(Vo/G)を加え5人編成となった。

オープニングに相応しいドラマティックなイントロ、オルガンのシンコーペーション、メロトロンとおいしい要素盛り沢山の序盤から、ボーカル・パートは一旦落としたムードでプログレのインフレを解消。叙情メロやメタルっぽい激しさを交えて進行する#1。
ノリノリの7拍子に乗ったクールなシンセのテーマ・メロでいきなりハートを掴む#2。アーミングやワーミーペダルを駆使して奏でられる光線銃のSEみたいなトリッキーなギター・ソロがブッ飛んでいてカッコ良い。それでいてメロウなパートではメロトロンを投入するなどフックだらけの名曲。
ストリングス、フルート、クワイヤなど様々な音色のメロトロンとズ太いシンセが堪能できる、スケールの大きさと繊細な叙情の起伏も素晴らしいプログレッシブ・チューン#3。スネア2発打ちからのベンダーを使った短いシンセ・ソロは必聴。
アメリカンなおおらかさに少々エキゾチックな風味を加えたテッド・レオナルド作の#4。
左右にパンニングされたパーカッシブなクラヴィネットとロックなギターが、ユニゾンや互いを補完するバッキング・プレイでリードする#5。GENTLE GIANTのようなアカペラ・パートがアクセントになっている。
キャッチーな歌メロとエモーショナルなインストゥルメンタル・パートがバランス良く配合された#6。
ニール・モーズが作曲とギターで参加した12分超の大作#7。TANSATLANTIC的というか初期SPOCK’S BEARD風でもある疾走感あるキャッチーなボーカル・パートが心地良い。ダウンテンポしてのメロウなギター・ソロが次第に激しさを増し、テンポ・チェンジして快活なシンセ・ソロに移行する場面は鳥肌モノの爽快感。壮大なテーマ・メロを配し、巧みな起伏と場面転換で長尺を描き切ってしまうあたりはさすが。

ちょっとしたオブリガードさえも聴き手の印象に刺さる心憎いアレンジや随所に登場するキャッチーなメロディの本物感は、歴史を重ねてきたバンドならでは。
展開の妙を満喫できる#2,#3,#7はヘヴィ・ローテーション決定ナンバー。

Track List

1. Hiding Out
2. I Know Your Secret
3. A Treasure Abandoned
4. Submerged
5. Afterthoughts
6. Something Very Strange
7. Waiting For Me

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STEVEN WILSON / The Raven That Refused To Sing

2013,UK

スティーヴン・ウィルソンの3rdアルバムThe Raven That Refused to Sing。

このところ、KING CRIMSONを皮切りに、ELPやJETHRO TULLなどの旧作リマスターの仕事でも評価を上げ、自らの作品でパフォームするだけでなく新旧プログレ界の架け橋としての存在感も増す、現在のプログレ界で最も多忙で重要な人物であるスティーヴン・ウィルソン。

ニック・ベッグス(B ex.KAJAGOOGOO)、マルコ・ミンネマン(Dr)、テオ・トラヴィス(Sax/Fl)等、錚々たるメンツを集めてレーコーディングされた本作は、プロデュースをアラン・パーソンズに委ねた万全の体制。

疾走感のもたらすソリッドなスリルと静かなパートでのフルートやメロトロンの幽玄な叙情の2面性を持つ#1。
ストリングスも絡め、メロディアスで美しくメランコリックな#2。E-BOWを掛けたギターのフィンガリングのみと思しき滑らかなソロが曲にマッチして胸を熱くします。
各人のソロとそれに呼応するドラムやオルガンのバック陣によるジャムをフィーチュアした冒頭2分、ボーカル・パートでのロックの王道リック、そして王道リックから深遠なパートに移行する意外な展開など、並みのバンドやアーティストなら数曲分に相当するアイディアを贅沢に詰め込んだ#3。
ミステリアスなムードの中、静と動の起伏を巧くつけた#4。
心に染み入る弾き語りパートやメロトロンやスキャットが加わるインスト・パートなど、アコギのアルペジオをフィーチュアした前半から、フルートやクロマチックなフレーズが印象的なギター、サックスによるソロ・パートを挟み、ピアノのアルペジオがリードするボーカル・パートを経てダークに盛り上がる終盤へと展開するプログレッシブ・チューン#5。
ひたすら美しくそしてシンフォニックにもなる、ダークでファンタジックな#6。

ユニゾンやキメがハマった時のカタルシスなどバンドならではのアンサンブルの妙を感じさせる場面も多々あり、内省的な印象の強かったこれまでのソロ作とはまた違った味わい。
スティーヴン・ウィルソン自身、「音楽の旅」ができるアルバムを聴いて育った、とインタビューで語っていたが、本作はまさにその音楽の旅に浸れる傑作。
レジェンドに触れて得た様々な奥義を吸収、咀嚼してスティーヴン・ウィルソンとしてのフィルターを通して表現した、刺激的でいて懐かしくもある素晴らしい作品に仕上がってます。

Track List

1. Luminol
2. Drive Home
3. The Holy Drinker
4. The Pin Drop
5. The Watchmaker
6. The Raven That Refused To Sing

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BIG BIG TRAIN / English Electric (Part Two)

2013,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンド BIG BIG TRAINの8thアルバムEnglish Electric (Part Two)。

スリリングなパートとゆったりとした叙情パートの緩急がドラマティックな15分超の#1。後半、徐々に盛り上がる5拍子のリフレインが壮大なシンフォニック。美しいコーラスや甘美なストリングス、まろやかなブラス・セクションが英国らしい気品を湛えています。
柔らかな管が暖かく響く、センチメンタルな序盤から仄かな明るさを持つサビに移行する#2。
構築度の高いギター・ソロが印象に残る、GENESISの小品のような英国情緒を纏った#3。
どこかオリエンタルなムードに翳りを伴ったヒネリを加え、短い中にドラマを凝縮した#4。
バンジョーやフィドルによる軽快なフォークロア風味と叙情シンフォニックが融合した#5。
Part One 1曲目The First Rebreatherではボーカルやシンセによって奏でられたメロディを管弦の優しいタッチに趣を変えて挿入された#6。
静かなバラードからドマラティックに展開していく#7。アルバム2枚のラストを飾るに相応しい感動のリフレインが胸を熱くします。

前作のEnglish Electric (Part One)同様、蒸気機関車、造船業者、修道院の廃墟を保全する人、蝶の研究家など、近代~現代イギリスにまつわる実話や普通の人々をテーマにした楽曲で構成。管弦を導入した端正な音像と美しいメロディライン、ジェントルな歌唱から、それらの事象や人々にする優しい目線が感じられます。

Track List

1.East Coast Racer
2.Swan Hunter
3.Worked Out
4.Leopards
5.Keeper of Abbeys
6.The Permanent Way
7.Curator of Butterflies

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OPIUM CARTEL / Ardor

2013,NORWAY/SWEDEN

北欧の21世紀プログレを代表するバンド WHITE WILLOWWOBBLERANGLAGARDのメンバーによるプロジェクトOPIUM CARTELの2ndアルバムArdor。

男性ボーカルと可憐な女性ボーカルが時にユニゾン、時にパートを分け合う#1。エレクトロニックなビートにズ太いシンセも交え、ダークでゴシックな世界観が広がる。
ニューウェイブやニューロマンティックを想起させる男性ボーカルがメインのポップ・チューン#2。柔らかいパッド系シンセとエスニックなシーケンス・フレーズを繰り返すマリンバのような音色が印象的。
悲しげなアコギのアルペジオとくすんだフルートをバックに哀愁ボーカルの第一人者ティム・ボウネスが歌う暗黒フォーク#3。
エスニックというかどことなく土着的なムードがするサビのメロディが耳に残る#4。
かわいらしいグロッケンと2本のアコギによる繊細なバックに儚げな女性ボーカルが乗るドリーミーなフォーク・パートと男性ボーカルがリードを取る幽玄な暗黒パートからなる#5。中間部にはメロトロンも。
ボーカル・パートが珍しく終始明るいムードの一方、漆黒のフルートが妖しく舞うインスト・パートとの対比が見事な#6。
女性ボーカルがイコライジングを施した序盤からノーマルに移行するエフェクトが効果的な演出となっている#7。厚いパッド系シンセや滑らかなアナログ・シンセのソロなど、細かい譜割りよりも白玉が目立つアレンジが異色。メロトロンやヴィンテージの香り漂うオルガンが良い感じの空気感を醸成。
アコギとエレキのアルペジオからなる叙情バッキングにウィスパー気味の女性ボーカルが乗るメランコリックな#8。発振させたグラスハープのようなシンセ、滑らかなベースなどが優しく包み込み、暗くも温かみのある北欧ならではの味わい。
イントロのピアノのリフレインをボーカル・パートのバックではグロッケンなどで繰り返し一貫性を持たせつつ、曇天のようなストリングス系シンセ、プログレッシブな様相を呈する7拍子のインスト・パートでの狂おしいサックスなど、器楽系では予想のつかない展開を見せる11分超プログレ・チューン#9。

タイトルのArdor=熱情に反して決して熱くならないクールで幽玄なムードは北欧ならではのもの。
ポップなのに仄暗く、アナログとデジタル的エレクトロニカが融合した独特のサウンド。
男性ボーカルにはゴシックやニューウェイブの薫りも漂い、70年代以降の様々なジャンルの音楽の要素が見え隠れした21世紀的なスタイル。

Track List

1. Kissing Moon
2. When We Dream
3. Then Came the Last Days of May
4. Northern Rains
5. Silence Instead
6. White Wolf
7. The Waiting Ground
8. Revenant
9. Mariner, Come In

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RENAISSANCE / Grandine Il Vento

2013,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドRENAISSANCEの2000年作Tuscanyから13年ぶりとなるアルバムGrandine Il Vento。

2009年頃からの70年代ライブ音源や映像作品リリースを発端とし、ツアー活動にEPアルバムThe Mystic and Other Storiesの発表など、他の懐メロ集金バンド達とは一線を画した現役バンドらしい活動を行ってきたRENAISSANCE。全盛期のメンバーはアニー・ハズラム(Vo)とマイケル・ダンフォード(G)のみというのは寂しい部分もあるが、マイケル・ダンフォードが新曲を書きそれをアニー・ハズラムが歌う、というスタンスはこの近年の活動を正統なRENAISSANCEとして認めさせるに充分な説得力を持っていたのは事実。
そして、ツアーを続けながら基金サイトKICKSTARTERで衣装や楽器などお宝グッズと引き換えに基金を募り、新作の制作を進めているという情報も、現役バンドRENAISSANCEの復興に心躍らせる要因であった。
そんな中、2012年11月にマイケル・ダンフォードの悲報が・・・
活動が順調であっただけにショックは大きかったが、そんな苦難を乗り越えて新作を届けてくれた彼らにまずは賛辞を贈りたい。

ミステリアスなヴァースから感動のサビを経てインスト・パートへ至るいかにもマイケル・ダンフォードな進行を見せる12分超のオープニング・チューン#1。オルガンが入る劇的な場面切り替えも効果的で、霞がかかったようなコーラス部分も含め、70年代のヴァイブを見事に現代に蘇らせている。これでピアノがジョン・タウトの繊細なタッチでベースがジョン・キャンプのリッケンバッカーだったら、と思わず夢見てしまう。
アニーの美声をフィーチュアしたまどろみのフォーク#2。
Mother Russiaあたりを想起させる、重厚さと叙情を兼ね備えた#3。
サビのコーラスにAses Are Burningの頃の素朴さが薫る#4。
透明感ある明るいムードがNorthern Lightsを彷彿させる、イアン・アンダーソンがクセのあるフルートで客演の#5。
アコーディオン、タンゴっぽいリズムに男性(ベースの人か)とのデュエットと珍しい取り合わせの#6。
ピアノをバックにアニーとジョン・ウェットンが共演したバラード#7。ジョン・ウェットンが存在感ありすぎ。
先のEPで既におなじみの#8。マイケル・ダンフォードの未だ衰えぬ作曲技術を見せ付けたドラマティックなナンバー。ラストが少々あっさりしているのが惜しい。

事実上のラストアルバムとも言えるだけに、イアン・アンダーソンやジョン・ウェットンの強烈な個性に頼ることなく純粋にマイケルとアニーのRENAISSANCE色を出して欲しかったとの思いもあるが、楽曲自体は円熟の境地を見せるマイケル・ダンフォードの才能に満ち溢れている。

アニーは60代中盤とかなりの高齢にもかかわらず、気合の入った歌唱で高音部の伸びは往時のそれを彷彿させるものとなっている。反面、中低域の弱めの部分では若干ハリや柔らかさに欠ける印象も。しかしこれは、70年代のモヤがかかったような音像での神秘的なイメージと現代デジタル・レコーディングのによる解像度の違いからくるものかもしれない。

Track List

1. Symphony Of Light
2. Waterfall
3. Grandine il Vento
4. Porcelain
5. Cry To The World
6. Air Of Drama
7. Blood Silver Like Moonlight
8. The Mystic & The Muse

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LIFESIGNS / Lifesigns

2013,UK

ASIAやGREENSLADEをはじめとするプログレのフィールドだけでなく、ポップ界でのセッション・ワークなども幅広くこなすジョン・ヤング(Key/Vo)、元KAJAGOOGOOで最近はスティーヴン・ウィルソンのバンドに在籍するなどすっかりプログレの人となったニック・ベッグス(B/Vo)、マーティン・ビードル(Dr)の渋い熟年トリオによる新バンドLIFESIGNSの1stアルバムLifesigns。

適度に緊張感のあるコード進行とボーカル・パートでもまるでリード楽器のように弾き捲くるベース(スティック?)が強烈に印象に残るオープニング・ナンバー#1。コンテンポラリーな中にも古式に則った風情のトーンで奏でられるシンセ・ソロがまた素晴らしい。
ファンキーなベース・リフがリードする#2。久々にニック・ベッグスの声が聴けるボーカル・ハーモーニーも良い。
シンセのテーマ・メロディや爪弾かれるアコギが繊細なニュアンスをもたらす#3。
瑞々しさの中にインテリジェンスを感じさせる曲調。シンセのリフレインからキャッチーなサビ・メロが飛び出す瞬間のカタルシスがプログレ以外の何者でもない#4。
チャーチ・オルガンとクワイヤをレイヤーしたようなスケールの大きなシンセ・サウンドが心地良い#5。インスト・パートでの叙情的なフルートや変拍子アンサンブルといったプログレの代名詞のようなパートにも余裕と品格が滲む。

ジョン・ヤングの多彩な経歴をバックボーンとする斬新でコンテンポラリーなコード進行と、派手さは無いが品の良い音色で固めたキーボード群の優しいタッチ。落ち着いた中にもジワリとくる叙情と程良い場面転換が大人のイギリス人らしい味わい深いサウンドを醸成。
ゲスト参加のスティーヴ・ハケット(G)、ジャッコ・ジャクスジク(G)、そして特にタイス・フォン・レアー(Fl)のフルートが楽曲の印象を強めるナイスなプレイで貢献しています。

Track List

1. Lighthouse
2. Telephone
3. Fridge Full of Stars
4. At the End of the World
5. Carousel

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カテゴリー: LIFESIGNS

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THE WATCH / Tracks from the Alps

2014,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドTHE WATCHの6thアルバムTracks from the Alps。
今回もGENESISの楽曲#4をカヴァー。

効果的に使用されるメロトロンやシンセがサウンドに占める割合、起伏や明暗などの楽曲展開等、ピーター・ガブリエル期GENESISの音楽的要素を緻密に研究しつくし我が物としたところが、THE WATCHの特長。このアルバムTracks from the Alpsにおいても、楽曲の印象を大きく左右するポイントであるボーカル・スタイルとギター(サウンドとフレージング)が、もはやピーター・ガブリエルとスティーヴ・ハケットにしか聴こえないくらいにGENESIS化が進行。
マイナーな楽曲にスポットを当てるカヴァーにもリスペクトが感じられ、ガブリエル期GENESISの正統フォロワーとして、より一層レベルアップしている。

静かなオープニングからスリリングな5拍子への移行、効果的なメロトロン、冒頭のボーカル・メロディを変奏するシンフォニックなシンセ、終盤の叙情パートなど、ドラマティックな起伏とフック満載の#1。
良く練られたコード進行とキャッチーなパートを持つ#2。
冒頭に雪を踏みしめるSEを配したミステリアスな序盤から躍動感あるパートへ展開。様々な表情を見せるシンフォニックなインスト・パートも聴き所な#3。
メロトロンとフルートが効いている、神秘的な中に叙情を織り込んだ#4。
レトロな音色のリフやバッキング、突如3拍子に拍子チェンジしてのクラシカルなソロとオルガンが活躍する#5。
ギターのアルペジオを中心に進行する静謐な前半からシンフォニックな後半に移行する#6。
フルートとギターのアルペジオの醸し出す叙情、静動のダイナミクス、メロトロンの白玉、、ドラマティックな展開など理想的なプログレ・チューン#7。

オリジナル曲は、単に古い素材を模倣して並び替えたのでは無く、GENESISの新曲としても違和感無く許容できるだけの楽曲クオリティがある。そこにTHE WATCHの凄みを感じる。

Track List

1. A.T.L.A.S.
2. The Cheating Mountain
3. Devil's Bridge
4. Going Out to Get you
5. Once In a Lifetime
6. On Your Own
7. The Last Mile

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PANIC ROOM / Incarnate

2014,UK

英国ウェールズの女性ボーカル・シンフォPANIC ROOMの4thアルバムIncarnate。

ブルーズ・ロック・タイプのギター・リフがリードするミディアム・スローの叙情ナンバー#1。
ストリングスのピチカートによるアルペジオがENYAを想起させる、清涼感のあるポップなナンバー#2。
3音からなるシンプルなアルペジオのリフをベースに、エキゾチックな要素などモーダルな響きを絡めて展開するミステリアスな#3。様々な場面転換がフックとなっている、アルバム中で最もアイディアに満ちた楽曲。
クリーン・トーンのギター・リフとリムショットで淡々と進行するバラード#4。脱退したオリジナル・メンバーのポール・デイヴィスに代わって参加のアダム・オサリバン(G)が渋いギター・ソロを聴かせる。
SUPERTRAMP風のパーカッシブなエレピ(ウーリッツァーか?)がリードするキャッチーな#5。ドラミングもエレピに呼応してタム中心から徐々にスネアを増やして行く良く練ったアレンジとなっている。
モーダルな響きが神秘的なムードを醸成する#6。
メランコリックなロッカバラード#7。ウィスパー気味な序盤から熱唱の大サビまで、アン=マリー・ヘルダー(Vo)のレンジの広いエモーショナルな歌唱が堪能できる。
何となく80年代ポップ風なムードとハーモニカのソロが胸キュンな、軽快なリズムに乗った哀愁チューン#8
仄かに叙情を織り込んだ広がりのあるサウンドのバラード#9。
深遠でミステリアスなムードの#10。

ハード・ロック寄りの派手でエッジの立ったプレイが特徴だったポール・デイヴィスと比較すると、アダム・オサリバンは堅実ながらもやや地味なプレイ・スタイル。
ストリングス・セクション、ポール・デイヴィスによるハードなダイナミズムなどで楽曲をドラマティックに彩った前作のダークさや叙情は後退し、全体的にシンプルで透明感が増した印象。
その結果、PANIC ROOM唯一にして絶対的なセールス・ポイントであるアン=マリー・ヘルダーの歌唱がよりフィーチュアされ、#7などの叙情ナンバーでの扇情力は勿論、#2や#5などの伸びやかでキャッチーなナンバーにおいても彼女の歌声と歌唱の普遍的な魅力が引き出されている。

Track List

1. Velocity
2. Start The Sound
3. Incarnate
4. Nothing New
5. Waterfall
6. Into Temptation
7. All That We Are
8. Searching
9. Close The Door
10. Dust

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YES / Heaven & Earth

2014,UK

シンガーにアメリカのプログレ・バンドGLASS HAMMERのジョン・デイヴィソン(Vo)を迎えたYESの21stアルバムHeaven & Earth。

スティーヴ・ハウ(G)によるボリューム奏法のテーマ・メロディにジェフ・ダウンズ(Key)らしい軽やかなシンセのバッキングが続く緩いポップ・チューン#1。歌の出だしがジョン・アンダーソン風メロディで一瞬オッとなる。インスト・パートのキメ・フレーズを弾くスティーヴ・ハウのトーンが、抑えたというよりは弱々しく聴こえるのは老いたルックスの先入観があるからだろうか。自身が脱退したASIAが若いギタリストを加えて溌剌とした音像のアルバムをリリースしたばかりなのでどうしても対比が目立ってしまう。
イントロのサスティナーを使用したスムーズなフレーズが耳を惹く、穏やかでキャッチーな#2。
シンセによる朗らかなメロディのシーケンス・パターンがリードする#3。
フォーク・タッチのバラード#4。
3連なのに弾む感じが無い、気だるいムードの#5。
スティーヴ・ハウのスライド・ギターが陰影を付ける#6。
リフレインが童謡のような緩いメロディのポップ・ソング#7。
緊張と緩和のドラマティックな対比や変拍子のアクセントなど、ファンが求めるプログレッシブなYESを体現した#8。ジェフ・ダウンズらしいクラシカルなシンセのオーケストレーションや叙情性も含め、アルバム随一の佳曲だがエンディングは淡泊。

呼吸不全でバンドを離れた前任者のブノワ・デイヴィッド同様、ジョン・デイヴィソンもYESフォロワー・バンドを出自とするだけに声質はジョン・アンダーソンに似ているが、本家特有の無垢なニュアンスまでは出し切れておらず全体的に表現力不足。それをバンドも認識した上であえてそうしたのか、それとも単にアイディア不足なのか、明るいムードで統一された楽曲群には神秘性や奥深さが不足し、凡庸なメロディのポップスに止まっている。
YESというバンドの個性のひとつである、各パートのせめぎあいと収束によるアンサンブルの妙も、#8で微かに感じられる程度。ほとんどの楽曲で単なる歌モノのバック・バンドと化してしまっているのが痛い。#6あたりはアレンジ次第でもう少し深みが出たと思う。特にリズム隊の覇気の無さが致命的ですらある。

往年の傑作と比較するのは酷としても、前作がDRAMA期YESを継承した良作だっただけに、連綿と続くバンドの歴史上位置付けが難しいアルバムになってしまった。こうして現役バンドとして新作をリリースするクリエイティブな姿勢は賞賛に値するが・・・。

Track List

1. Believe Again
2. The Game
3. Step Beyond
4. To Ascend
5. In A World Of Our Own
6. Light Of The Ages
7. It Was All We Knew
8. Subway Walls

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FREQUENCY DRIFT / Over

2014,GERMANY

ドイツのプログレッシブ・ロック・バンドFREQUENCY DRIFTの5thアルバムOverのレビュー。

チェロで幕を開けハープをバックにしたメランコリックなボーカル・パートへ移行、もの悲しいデュクラーなるたて笛の静謐や轟音ギターが唸るヘヴィなインスト・パートを含む#1。
イントロの枯れた味わいのギターによるトレモロから既にメランコリック度満点。清楚なIsa Fallenbacher嬢の歌唱がサビで左右CHに振り分けられで幽玄に迫るロマンティックな#2。
ハープの叙情的なイントロから一転してAgathe Labus嬢の妖艶な歌唱パートへと続く前半部、後半のインスト・パートはハープ、デュクラー、フルートの叙情をフィーチュアした#3。
2人の女性シンガーがそれぞれ好対照な持ち味を出すサビがおもしろい#4。終盤にSEで日本語の鉄道駅構内アナウンスが飛び出してハッとする場面も。
スペイシーなシンセのサウンドスケープ、コンテンポラリーなタッチのボーカル・パート、7拍子のハープ・ソロなどを6分弱に収めた美しいナンバー#5。
Isa Fallenbacher嬢のエンジェリック・ヴォイスがフィーチュアされた耽美なボーカル・パートとフルートがアグレッシブに吹き鳴らされるヘヴィなインスト・パートを対比させた#6。
ハープとボーカルのユニゾンにチェロが加わりメランコリックな陰影を増す#7。
マリンバのシークエンスをアクセントにIsa Fallenbacher嬢のセルフ・ハーモニーが甘美な味わいの#8。
Isa Fallenbacher嬢のクリアな歌声を活かしたキャッチーな歌唱、コルグのWavedrumと思しきパーカッション・ソロ、ハープシコードのクラシカルなソロなど予測不能に展開する#9。
Agathe Labus嬢が歌う静かな中にも官能的なダークネスから、エキゾチックなムードも湛えた不思議なインスト・パートへ移行する#10。
重厚なストリングス・セクション、キャッチーなボーカル・パート、ザクザクしたギターをバックに舞い踊るフルート、7拍子のプログレ然としたシンセ・ソロなどアイディア満載の10分の大作#11。
ハープ、ピアノ、チェロなどで優しく奏でられるバックに切々とした歌唱が乗るもの悲しいバラード#12。

厳かなハープ、クラシカルなストリングス・セクション、浮遊感のあるシンセやエレクトロニカ、メタルの面影を残すギターなどが融合。そこにイノセントなIsa Fallenbacherとジャズの素養があるAgathe Labus(#3、#4、#10)の2人の女性ボーカルが乗り、気品と妖しさ、デジタルな無機質さやアンビエントが渾然一体となったユニークなサウンド。大仰なドラマティックさは無いが、耽美なムードにゴシックの薫りも漂う。
緻密でテクニカルなアンサンブルに支えられたボーカル・パートはメロディアスで取っつき易く、メランコリックな風情にアンニュイな女性ボーカル、エレクトロニカという部分でPAATOSファンにもおすすめ。

Track List

1. Run
2. Once
3. Adrift
4. Them
5. Sagittarius A*
6. Suspended
7. Wave
8. Wander
9. Driven
10. Release
11. Memory
12. Disappeared

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NICK MAGNUS / N’Monix

2014,UK

元スティーヴ・ハケット・バンドのキーボーディスト ニック・マグナスの5thアルバムN’monix。

メロトロンも絡むミステリアスなイントロから、英国らしいヒネリの効いたメロディの歌唱パートに移行する#1。ピーター・ガブリエルが歌うとハマりそうなところを、トニー・パターソン(Vo)が技量は少々物足りないが何とか雰囲気は出している。
厳かなストリングスをバックにケイト・ファバー(Vo)の超美麗ソプラノをフィーチュア、終盤はクワイヤで壮大に盛り上がる#2。
ブラス・セクションのファンファーレとマーチのリズムに乗ったイントロから7拍子の歌唱パートへ、さらにGENESIS風の陰影を付けて展開する#3。
パーカッシブなエレピがリードし、ニック・マグナス自身が歌う#4。
ピート・ヒックス(Vo)の明朗な歌声がマッチした、ポップな中にも洒落た起伏でドラマ性を持たせた#5。伸びやかで構築度の高い間奏と、よりエモーショナルでクリケット奏法などトリッキーな技も忍ばせた後奏でスティーヴ・ハケット(G)が魅力たっぷりに聴かせる。
天性の叙情声シンガー ティム・ボウネス(Vo)が歌う湿り気を帯びた#6。ロブ・タウンゼント(Sax)のサックス・ソロ、スティーヴ・ハケットのギター・ソロが哀愁を駆り立てる。
神秘的なクワイヤとスティーヴ・ハケットのギターによる美しいコラボレーション#7。
ジェイムズ・リーヴス(Vo)が歌う、仄かな叙情を交えた優美なファンタジック・チューン#8。

GENESISのファンタジック面を担っていたスティーヴ・ハケットとの長年の仕事から吸収したと思われる上品で翳りを交えた英国風メロディが冴える、英国の良心を体現したかのような上品でファンタジックな作品。
スティーヴ・ハケットをはじめとしたゲスト陣の丁寧なプロの仕事も印象的。

Track List

1. Time
2. Memory
3. Kombat Kid
4. Headcase
5. Eminent Victorians
6. Broken
7. Shadowland
8. Entropy

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KAUKASUS / I

2014,SWEDEN/NORWAY

ANGLAGARDのマティアス・オルソン(Dr)がWHITE WILLOWの盟友Ketil Einarsen(Fl)、OPIUM CARTELに参加のRhys Marsh(Vo/G)と結成したプログレ・プロジェクトKAUKASUSの1stアルバムI。

ダークなグルーヴに妖しいフルートが吹き荒ぶ#1。
Rhys Marshの深いヴィブラートが効いた、メランコリックな中にもヘヴィなパッションがある#2。
リズム・マシンに乗せたマイルドなヴァースから変拍子を交えた生ドラムが登場するサビに移行するゴシック・ムードの#3。
ディレイを掛けたシンセのシーケンス・フレーズが雲海のような浮遊感を演出、その上をズ太いシンセやフルートが舞うトリップ感満点のインストゥルメンタル#4。
クールなボーカル・ラインを持つ歌モノからメロトロンやフルートが折り重なってゾクゾクさせる7拍子の妖しいインスト・パートに移行する#5。
スティール・ギターと寂寥感あるフルートが北欧の暗い冬のような印象のメランコリックな#6。
耽美なサウンドスケープをバリトン・ギター等の重低音が切り裂く、ヌーヴォ・メタル期KING CRIMSONを想起させる#7。

メロトロン、ローズ、タウラス、VCS3などヴィンテージ楽器を使用しつつ、その音楽性は実験的な要素を含む現在進行形のプログレ。
ANGLAGARD風暗黒シンフォにOPIUM CARTELのゴシック、ポスト・ロックなど様々なバックグラウンドが顔を覗かせるが、哀愁あるRhys Marshの声のトーンがムードを引き締め、アルバムの統一感をもたらしている。
オーガニックな熱情を感じさせるボーカルやフルート、ドラミングに、無機的で冷気漂うシンセやサウンドスケープを融合。ダークな中にも暖かさを感じさせる仄かな叙情が北欧的で良い感じ。

Track List

1. The Ending Of The Open Sky
2. Lift The Memory
3. In The Stillness Of Time
4. Starlit Motion
5. Reptilian
6. The Witness
7. The Skies Give Meaning

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FLYING COLORS / Second Nature

2014,USA

ニール・モーズ(Key)、スティーヴ・モーズ(G)、マイク・ポートノイ(Dr)というビッグ・スター3人を含む5人組アメリカン・バンド FLYING COLORSの2ndアルバムSecond Nature。

SPOCK’S BEARD風のフックと起伏ある展開を持つ12分超のプログレッシブ・チューン#1。テーマ・メロディにギターが絡む部分は、ギターの音色とフレージングにもう少し粘りがあればTRANSATLANTICのようだ。エンディングではプログレ然としたアンサンブルを展開。
キャッチーなフックを持つノリの良いロック・チューン#2。
左右チャンネルのギターによる掛け合いバッキング・リフがリードする#3。
ケイシー・マクファーソン(Vo)のファルセットがアクセントとなる美しいメロディの王道バラード#4。
本編4拍子に対する3拍子のリズムに乗せたユニークなメロディによるRUSH風のイントロから始まり、超キャッチーなサビへ展開する北米プログレッシブ・ハードの流れを汲む#5。
爽やかなポップ・チューン#6。
ケルトのダンス・ミュージックのようなリフレインが耳に残る新機軸プログレ・ポップ#7。終盤の5拍子が印象的なフックとなっている。
PINK FLOYDのDark Side of the MoonやDREAM THEATERのThe Spirit Carries Onを彷彿させる、The McCrary Sistersによるゴスペル風女性コーラスをフィーチュアした感動のバラード#8。
ミステリアスなI、落ち着いたムードのII、大陸的な雄大さを感じさせるIIIなど3パートから成る11分超の組曲#9。

プログレのテイストを滲ませたアメリカン・ロックに軸足を置いたデビュー・アルバムより、若干プログレかつシンフォニックな要素を増量。
しかし音像は湿った欧州風とは趣を異とする乾いたものであり、メロディに仄かにカントリーのテイストを感じさせる部分があったりするところはやはり北米ならではのもの。
メンツから期待されるプログレ感やテクニカル感を前面に出さず、ボーカルもこれといった特長が無いタイプなのでどうしても地味に聴こえるが、ベテランらしい堅実なアンサンブルで楽しくロックしている様子が伺えるので、つまりはそういう方向性なのだろう。
凡庸な楽曲もあるが、#1、#5、#8といった突出した曲を作れるあたりはさすがプロ中のプロ。
キャッチーでクールなジャケット・デザインは、RUSHや最近のDREAM THEATERでお馴染みのヒュー・サイムによるもの。

Track List

1. Open Up Your Eyes
2. Mask Machine
3. Bombs Away
4. The Fury of My Love
5. A Place in Your World
6. Lost Without You
7. One Love Forever
8. Peaceful Harbor
9. Cosmic Symphony
I. Still Life of the World
II. Searching for the Air
III. Pound for Pound

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ASIA / Gravitas

2014,UK

再結成オリジナルASIA 4枚目のアルバムGravitas。
脱退したスティーヴ・ハウに代わり、若きサム・クールソン(G)が加入。

教会音楽などのルーツを感じさせるメロディアスでキャッチーな歌メロと堂々ったる歌いっぷりにジョン・ウェットン(B/Vo)、冒頭にシンセによるオーケストレーションを配した#2やシンセのバッキング・フレーズが80年代ポップ風でBUGGLESを彷彿させる#7等にジェフ・ダウンズ(Key)、と双頭のカラーは顕著ながらスティーヴ・ハウによるクセのある一捻りが不在。その為、イントロやインスト・パートでのアレンジ面では割とあっさりとして工夫に欠ける分、ドラマティックさやシンフォニック度が減少。強力なサビを延々と繰り返す場面などでは退屈に感じることも。その独特のトーンと繰り出すフレーズ自体がフックとなっていたスティーヴ・ハウの存在感の大きさを、居なくなったことで逆に露呈した形。
女性ボーカルのゲスト起用などの自由度こそ無いが、全体的なサウンドはASIAというよりはWETTON DOWNESに近い印象だ。

スティーヴ・ハウ不在を埋めつつ自身のタッチで新風を吹き込んで欲しいサム・クールソンだが、単純なルート音8分刻みのバッキングや端正なアコギでステディな部分を見せる反面、彼らしさが感じられるオブリガードが聴けないのが残念。
ギター・ソロでは、少々浮いている感もあるもののハイゲイン・アンプを使用したファットなギター・サウンドや徐々にスピード・アップするテクニカルな巡回フレーズの速弾きに個性の片りんを見せ、現代的かつ流麗なフレージングで巧く楽曲に溶け込んでいる。
次回作があれば、今回は遠慮気味だったアレンジ面やバッキング面でのサム・クールソンの貢献に期待したい。

Track List

1. Valkyrie
2. Gravitas
3. The Closer I Get To You
4. Nyctophobia
5. Russian Dolls
6. Heaven Help Me Now
7. I Would Die For You
8. Joe Di Maggio's Glove
9. Till We Meet Again

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TRANSATLANTIC / Kaleidoscope

2014,USA/UK/SWEDEN

現代プログレッシブ・ロックのスーパー・バンドTRANSATLANTICの4thアルバムKaleidoscope。

序盤にチェロの厳かな音色で奏でられるテーマ・メロディがシンプルでありながら深く心に突き刺さる5部形式の25分超組曲#1。そのままバンドでシンフォニックにテーマを継承、インストゥルメンタルによるダークなパートやブルーズ・ロックのパートを経てメロウなニール・モーズ (Key/Vo)の歌唱がイン。2コーラス目にはメロトロンも効果的に使用。シンセやギターでテーマを繰り返し徐々に盛り上げる。4部にはツアー・メンバーのダニエル・ギルデンロウ(PAIN OF SALVATION)がボーカルで参加。ブルージーなパートにPAIN OF SALVATIONの直近アルバムRoad Saltのイメージがよぎる。最後は2部をリプライズ。アメリカンで爽快なサビを経て壮大なテーマ・メロディで締める圧巻のオープニング。
シタールも交えたアコースティックなイントロに導かれるメロウなフォーク・タッチの#2。ロイネ・ストルト(G/Vo)の良く歌う哀愁のギター・ソロが素晴らしい。
#1のテーマ・メロディの最後のフレーズをモチーフとし、シンセを中心に変奏しながら次第に上昇するリフを持つ#3。ノリの良い3連のリズムを支えるマイク・ポートノイ(Dr/Vo)の溌剌としたドラミング、全員で歌うコーラス・パートに4人が交代でリード・ボーカルを取るパートなど 、ライブ映えしそうな楽しいナンバー。リード・ボーカルのロイネ・ストルトが独特のコブシで冴えを見せ、ここぞで鳴るメロトロン、高揚感に溢れるテイストなどが初期FLOWER KINGSを彷彿させる。
イントロにチェロをフォーチュアしたピアノ・バラード#4。Rich Mouserなるゲストによるペダル・スティールの滑らかな音色も合わせて、もの悲しい中にも心が浄化されるようなムードが心を打つ。
7部からなる31分超のタイトル・トラック#5。センチメンタルなメロディを中心にしたインストの序曲から、オルガンとギターによる明朗でアメリカンなリフに一転しニール・モーズによる最初の歌唱パートへ。続いて不穏なムードから欧風叙情を漂わせたロイネ・ストルトの歌唱パートへ移行。メジャー7thのサビはFLOWER KINGS風。さらに楽曲は緩いムードのピート・トレワヴァス(B/vo)の歌唱パートに。素朴な歌いっぷりと仄かな叙情を交えた心温まるサビが英国調でGENESISの小曲風でもある。リード・ボーカルが各人のカラーに絶妙にマッチングしている。期待したが、マイク・ポートノイの歌唱パートは無し。(本当はホッと安心)そして再びニール・モーズが今度は3連にアレンジして歌うパートへ。ムードを変えるフックが挿入され、バンドが一丸となってのアイディア満載の渾身のインスト・パートでいよいよラスト・スパート。2部のリプライズにメロトロンをバックにしたテーマ・リフが変奏して繰り返され感動のフィナーレへ。

今回も、リーダー・クラスの各メンバーがそれぞれの個性を発揮しながら同時にチーム・プレイにも貢献するという、スーパー・バンドの理想的な姿を提示。
長尺組曲2曲をアルバムの最初と最後に配置、テーマになるメロディを楽曲の随所に巧みに忍ばせて統一感や耳に残る印象を持たせる手法はオーソドックスではあるが、プログレ・ファンやアルバム通して聴くリスナーには嬉しい配慮でもある。
またこれが、ファンに迎合したというよりも彼ら自らのプログレ・ファン気質から自然に楽しみながら滲み出た感があるのが良い。

Track List

1. Into the Blue
I. Overture
II. The Dreamer and the Healer
III. A New Beginning
IV. Written in Your Heart
V. The Dreamer and the Healer (Reprise)
2. Shine
3. Black as the Sky
4. Beyond the Sun
5. Kaleidoscope
I. Overture
II. Ride the Lightning
III. Black Gold
IV. Walking the Road
V. Desolation Days
VI. Lemon Looking Glass
VII. Ride the Lightning (Reprise)

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DAWN / Darker

2014,SWITZERLAND

メロトロンやヴィンテージ・シンセが唸る!スイスのヴィンテージ・シンフォ・プログDAWNの2ndアルバムDarkerのレビュー。

メロトロンにエレピ、オルガン、モーグ風シンセなど、派手さは無いが的を得たプレイのキーボードが70年代英国の薫りを運んでくる。そんなDAWNの素晴らしいサウンドを支えているギターがまた良い。
折角のヴィンテージ・サウンドをメタル・エッジなギターが台無しにするバンドもいる中、当アルバムDarkerで聴けるギター・サウンドは適度に歪んだオーソドックスなもので、オルガンと巧みに絡み合うアレンジの#2のリフ、ユニゾンで迫る#3など、キーボードと共に立体的なアンサンブルを構築している。

ドラマティックな#5や#8においてすら泣きや明暗の表現では決してレンジを突き抜けるようなことは無く、ほどほどに止まっている様はまるで70年代英国のB級バンド。先人達の場合、それが手探りの中新しいものを生み出そうともがいた結果の限界であったのに対し、DAWNの場合は先人達の養分を吸い取ったうえで余力を残した絶妙なさじ加減である点が異なっている。アバウトなインプロビゼーションとしか聴こえない#5中間部のノイジーなパートですら周到さが伺えるのだ。
大仰なギミックや目まぐるしい曲展開に頼らずに淡々と、場面ごとの精緻なアレンジにより緩急を描ききるセンスが秀逸ということなのだろう。

まるでSPRINGのようなメロトロン・フルート、グリッサンドがイカすロック・オルガン、ミニマルで構築的な#4、幽玄なムードを醸成する#3でのアコギのカビ臭い空気感など、ヴィンテージ系バンドの中でも一歩抜きん出た本物感がDAWNにはある。

Track List

1. Yesterday's Sorrow
2. Cold
3. Darker
4. Lullabies for Guterflies
5. 8945
6. Out of Control
7. Lost Anger
8. Endless

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GAZPACHO / Demon

2014,NORWAY

ノルウェーの暗鬱シンフォ・バンドGAZPACHOの8thアルバムDemon。

ピアノと浮遊するシンセを中心に静かに進行する中、時折ハード・エッジなギターのパワーコードが鳴り響き、平坦になりがちな展開にダイナミズムを付加するメランコリックでファンタジックな#1。
中近東エスニック風味なメロディやタンゴ・パートの挿入、欧州的叙情を漂わせるアコーディオンなどの小技も効果的に使用し、全4曲というアルバム全体の流れに起伏を付けている小品#2。
こもったピアノとハミングによるメイン・テーマを反復し進行する繊細な前半からハードなタッチの後半へ移行するAパート、#1のパワーコードをリプライズさせたBパートで構成された、よりメロディに焦点を当てた#3。
琴のような音色のバンジョーによる7拍子のシーケンスにヴァイオリンの妖しげなオブリガードが絡むパート1、パート1を引き継ぎつつ枯れたギターやヴァイオリンによるフックを加えたパート2、ヘヴィネスを加えて静と動のレンジを広げたパート3により構成された#4。

儚げなボーカルと霧のようなパッド系又はストリングス・シンセを基調に、繊細で耽美なパートを中心に丁寧に紡いでいく。ダークな中にも暖かみを帯びたサウンドなのは、バンジョーやアコーディオン、ヴァイオリンといったオーガニックな楽器群の効果的な使用によるもの。
音圧ありきの昨今の音楽とは対極の、音を出すのではなく出さないことで存在感を高めるという逆説的なアイディアがおもしろい。

Track List

1. I've Been Walking Part 1
2. The Wizard of Altai Mountains
3. I've Been Walking Part 2
4. Death Room

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TAIKA / Aware

2014,日本

日本のプログレッシブ・ロック・バンドTAIKAの3rdアルバム Aware。

6/8拍子での高橋在也(Pf)のピアノに絡む妙(Vo/Accordion)のアコーディオンというイントロからTAIKAらしさ満点の#1。
Dani(B)のベースが提示する7拍子パターンがリードするミステリアスな#2。曲調が徐々に激しさを増し、それに呼応して谷本朋翼(Dr)がスネアを入れてくるアレンジがカッコ良い。
ベースのハーモニクスと緩い感じのアコーディオンに煌びやかさを少々抑えたピアノのアルペジオが印象的な、TAIKAには珍しい明るい希望的なサビを持つ#3。勿論、7拍子に超絶ベース・ソロとTAIKAの器楽的な魅力も。
ゆったりとした3拍子でトライバルなタム回しがリードする前半から大きなスケールに展開する#4。
6/8拍子の典型的なTAIKAチューン#5。歌メロを継承しながら軽やかに発展させていくピアノ・ソロとそれに続くアコーディオン、静かなパートでの場面転換など多彩なフックで聴き手を引き込む。
寂寥感と優しさが同居したボーカル、柔らかいタッチのピアノ、和音も駆使したベース・ソロが珍しい4拍子に乗るTAIKA風バラード#6。
ダークな序盤から明るさと躍動感へとドラマティックに移行していく#7。2012年の皆既日食にインスパイアされた楽曲だそうで、なるほど納得。
高速5拍子を軸に展開する#8。ボーカルとシンクロしたドラム、間奏前のジャジーなリズム・チェンジ、ファズ・ベースの超絶攻撃的ソロなど聴き所満載のプログレッシブ・チューン。
間奏のオーバーダブしたスキャットや捻った歌メロなど、神秘的なイメージの#9。
ピアノが提示したモチーフにユニゾンで被せていくアコーディオン、静と動のドラマティックな対比、ピアノ・ソロのバックで徐々に手数を増していくリズム隊等々、理想的なTAIKA典型チューンの#10。

シンプルな楽器編成とムードから受ける第一印象を色でたとえると鈍色(にびいろ)といった感じのTAIKAではあるが、変拍子をさらりと聴かせてしまう高度なアレンジ、#8や#10に代表されるスタイリッシュな独特のグルーヴ感、繊細な妙のボーカルなど各要素が絶妙な配合で華を添え、このメンバーのTAIKAとしてでしか出し得ない独自の世界を醸成している。もはや孤高といっても差し支えないだろう。

妙によるライナー・ノーツはこちら

Track List

1. Alive
2. Gate of Abyss
3. 白き光芒
4. Red Ground
5. 風の標
6. Color to Remind ~ 水底の世界II ~
7. eclipse
8. Immortal Fate
9. Deep into the drowse
10. 渡り鳥

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カテゴリー: TAIKA

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SYNDONE / Odysseas

2014,ITALY

キーボード、ヴィブラフォン、ボーカルの3人に、ゲストでマルコ・ミンネマン(Dr)、ジョン・ハケット(Fl)が参加した、イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドSYNDONEの5thアルバムOdysseasのレビュー。

7拍子のクールなジャズ・ロック風インストゥルメンタル・ナンバー#1。
アコギをバックにおおらかなボーカルをフィーチュアした地中海ムードから一転してクラシカルな叙情パートを内包する#2。
イアン・ギラン並みにシャウトするボーカル、リフをシンセで奏でるミスマッチ感がおもしろいブルーズ・ロック#3。
エキゾチックな妖しさと神秘的な美しさを持つピアノ・バラード#4。
発振と変調が強烈なシンセ・ソロをフィーチュア、各種キーボードが活躍する5拍子のジャズ・ロック小品5。
ストリングス・セクションが映画音楽のようなムードで迫るボーカル・パートとジャズ・ロックなインスト・パートからなる#6。
ダーティなオルガンがリードするインストゥルメンタル#7。
ポルタメントの効いたシンセ・ソロをフィーチュアした7拍子のリフにボーカルが乗った歌モノ#8。
静かな序盤から様々な展開でクールに燃えるインスト・パートに移行する#9。
ディストーション・ギターのようなシンセのパワーコードが鮮烈な#10。
#2のメイン・メロディを厳かにストリングス・セクションが奏でるイントロから、少々フェイクさせながら情感たっぷりに歌い上げるバラードへ展開する#11。
静かな中にもパーカッシブなヴィブラフォンによるソロ#12。
#2を引き継いだ地中海ムードにアルバムのラストならではの感傷的な叙情を加えた感動のエンディング曲#13。

ギターレスの編成で多彩なテイストをゴッタ煮でまとめあげた熱いアルバム。
この熱さと高度なテクニックに裏打ちされたタイトで緻密なアンサンブルは、暑苦しいボーカルも併せてイタリアン・プログレ正統といえる。

Track List

1. Invocazione Alla Musa
2. Il Tempo Che Non Ho
3. Focus
4. Penelope
5. Circe
6. Ade
7. Poseidon
8. Nemesis
9. La Grande Bouffe
10. Eros & Thanatos
11. Vento Avverso
12. Ελευθερια / Freedom
13. Daimones

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カテゴリー: SYNDONE

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