シンフォニック のレビュー

NAD SYLVAN / Courting The Widow

2015,SWEDEN

UNIFAUN、AGENTS OF MERCYを経て、スティーヴ・ハケットのGENESIS REVISITEDへの参加にまで登りつめたナッド・シルヴァン(Vo)のソロ。

スティーヴ・ハケット(G)をはじめ、ロイネ・ストルト(G、FLOWER KINGS/AGENTS OF MERCY/TRANSATLANTIC)、ヨナス・レインゴールド(B、FLOWER KINGS/AGENTS OF MERCY/KARMAKANIC)、ニック・ベッグス(B、LIFESIGNS/STEVEN WILSON)、ニック・ディヴァージリオ(Dr、BIG BIG TRAIN)らプログレ界の実力者たちが参加。

軽快な中にメロトロンなどシンフォニックな要素を巧く配合した、4人編成時GENESISを彷彿させる#1。
幽玄なシンセが印象的な静かなパートとリズムインしたパートから構成された、ジェントルなナンバー#2。
重厚でシリアスな叙情ナンバー#3。ピアノとの厳かなアンサンブルで提示されたフルートのメロディをスティーヴ・ハケットが継承。倍音を繊細にコントロールした艶やかなギター・トーンにリスナーも陶酔必至。
大作にありがちな過剰な演出や力みが無く、歌唱パートと器楽パートを自然な場面転換で繰り返しスムーズに聴き手をその世界に引き込む20分超の#4。ここでも前半のスティーヴ・ハケットの叙情的ギターがハイライト。少ない音数にもかかわらず、サスティナー使用と思しきロングトーンを巧みに操り様々な表情を見せる。
素朴な足踏みオルガンで幕を開け混声コーラスやストリングスで優しく装飾した、英国風ペーソスを感じさせる#5。ネズミ退治用に古くから船に乗せられてきたネコがタイトルとなっているが、「グー~」というSEがミックスされているのは、ネコのゴロゴロ音なのか?
チェンバロや弦楽を加えてクラシカルなコード進行も織り込むなど、小品ながら単純なボーカル曲に留まらせないアイディアとセンスを感じさせる#6。
ストリングス・セクションを中心に上品なアレンジで静動と陰影を表現した#7。
ロイネ・ストルトと思われるタッチのギターがテーマ・メロディを奏でる叙情チューン#8。後半のギター・ソロは、左CH=ハケット、右CH=ストルトか? エモーショナルな珠玉のダブル・リードが感動を呼ぶ。

基本GENESIS路線ではあるが、数多のGENESISフォロワーのようなGENESIS様式のキッチュな拝借というよりは、GENESISを通じて得た英国風味が自然な感じで滲み出ており、スティーヴ・ハケットの参加もあいまってより本物感を漂わせている。
フォロワーが本物(スティーブ・ハケット)との共演を経て、自らが聴きたいと思ったものを作り上げた自己表現の成果が、思いがけずもGENESISが”やりそうでやらなかったような”楽曲群となって結実。

Track List

1. Carry Me Home
2. Courting The Widow
3. Echoes Of Ekwabet
4. To Turn The Other Side
5. Ship's Cat
6. The Killing Of The Calm
7. Where The Martyr Carved His Name
8. Long Slow Crash Landing

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KARNATAKA / Secrets of Angels

2015,UK

アイリッシュ・ダンス方面の活動と平行し2012年に新加入したヘイリー・グリフィス(Vo)をフィーチュアしての初スタジオ作となるKARNATAKAの5thアルバムSecrets of Angels。

厳かなストリングスで幕を開け、シンフォニックな中にエキゾチックなアラビア音階のモチーフを加えたKARNATAKAらしい#1。
ピアノとストリングス・セクション、緊張感あるブリッジ・パートにゴシックの薫り漂う#2。
ゴシカルで荘厳なイントロや重層クワイヤとストリングスを配し、サビでは凛としながらも清涼感あるメロディで開放感を得る#3。
静かなオープニングから一転し、ヘヴィなバッキングが入るパートからゴシック色を増す#4。
端正なストリングのバッキングが彩りを加えるヴァースととキャッチーなサビを対比させた#5。
中音域で情感たっぷりに歌うパートでヘイリー・グリフィスが表現力を発揮するバラード#6。
ポジティブなムードが溢れる優美なシンフォニック・ナンバー#7。
トロイ・ドノックリーのイリアン・パイプをフィーチュアしたトラッド風ケルト・パートとストリングスも交えた壮大なシンフォニック・パートが行き来する20分超の#8。ハープとスキャットの神秘的なコラボ・パートや緩急を交えた展開でドラマティックに聴かせるエピック・チューン。

ここ数作は作品ごとにシンガーが交代するKARNATAKA。音楽性もその都度変化し、今回はリヴ・クリスティン(LEAVES’ EYES、ex.THEATRE OF TRAGEDY)を彷彿させるヘイリー・グリフィスのエンジェリック・ヴォイスにインスパイアされたのか、ゴシック・メタルの作法を大幅に導入。
元々シンフォニックなサウンドとの融和性が高いゴシック・テイストと存在感あるヘイリー・グリフィスの歌唱がKARNATAKAサウンドの幅を広げる効果をもたらしている。

Track List

1. Road To Cairo
2. Because Of You
3. Poison Ivy
4. Forbidden Dreams
5. Borderline
6. Fairytale Lies
7. Feels Like Home
8. Secrets Of Angels

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ANEKDOTEN / Until All The Ghosts Are Gone

2015,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドANEKDOTENの6thアルバムUntil All The Ghosts Are Gone。

OPETHのペル・ヴィバリがオルガンでゲスト参加、ギターとのソロ・バトルを展開する#1。奇妙な音使いのリフがOPETH風でもある、適度な重さとワイルドさを兼ね備えた独特のグルーヴにモーダルな歌メロが乗るANEKDOTENらしい鈍色のヘヴィ・プログ。不穏なインスト・パートとメロウな歌唱パートの対比も良い感じ。勿論、ここぞの場面ではメロトロンも登場。
掠れたメロトロンが荒涼としたムードを醸し出す、ミディアム・スローの#2。
包み込むようなメロトロンがバッキングをリードするメロウな#3。ヴィブラフォンやゲストのテオ・トラヴィスによるフルートが哀愁を添える絶妙なアクセントとなっている。
静かな歌唱パートやアコギ・パートと、ヘヴィなボトムスにメロトロンの白玉が乗るシンフォ・パートの起伏が見事な#4。
ALL ABOUT EVEのマーティ・ウィルソン・パイパーがエレキと12弦アコギでゲスト参加の#5。テオ・トラヴィスの幽玄なフルートに導かれるメロウなナンバー。
うねるグルーヴに乗るメタリックな質感のギターがメロディをリードするインストゥルメンタル・ナンバー#6。ゲストのグスタフ・ニーグレンによるサックスが狂気を孕んだスリリングなプレイで聴かせる。

歌メロにモードを多用することによる調性がはっきりしない微妙な緊張感と、クールなメランコリーを併せ持つ独特の暗黒シンフォ・サウンドは健在。とりわけ今回はメランコリックな成分が増量され、ヘヴィネスとの落差でドラマティック度を増している。

Track List

1. Shooting Star
2. Get Out Alive
3. If It All Comes Down to You
4. Writing On the Wall
5. Until All The Ghosts Are Gone
6. Our Days Are Numbered

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STEVEN WILSON / 4 1/2

2016,UK

スティーヴン・ウィルソンの前2作、Hand. Cannot. Erase.(#1,#3,#4)及びThe Raven That Refused to Sing(#2)のセッションで書かれたアルバム未収録曲を仕上げたものを中心としたミニ・アルバム 4 1/2。
記号のようなタイトルは、4thアルバムと次作5thの間を意味するらしい。
全曲参加のバンド・メンバー ニック・ベッグス(B)とアダム・ホルツマン(Key)に加え、曲によって様々なメンツがプレイしている。

乾いたギターのカッティングやタイトルが前作を彷彿させる#1。キャッチーな歌唱パートとスリリングなインスト・パートを併せ持つ最近のスティーヴン・ウィルソンの定番フォーマット。テクニカルで変態的なギター・ソロはデイヴ・キルミンスター(G)。現代的センスのフレージングがレトロなミニ・モーグのソロと面白い対比を成している。ドラムはマルコ・ミンネマンと思いきやFROSTにも参加しているクレイグ・ブランデル(Dr)。ギター・ソロ中のギターとのユニゾンで叩き出すトリッキーな変拍子風ビートはFROSTのスタジオ・ライブ作The Rockfield Filesにも通ずるものがあり、腑に落ちた。
アコギのアルペジオと深遠なストリングスにThe Raven That Refused to Singの幽玄なムードが漂う#2。
快活なサビがHand. Cannot. Erase.のムードそのままの歌モノ#3。
テオ・トラヴィス(Sax/Fl)の物憂げなフルートをフィーチュアした、ダークな中にも温かみのあるインストゥルメンタル・ナンバー#4。
独特のヒネリとフックのあるメイン・リフを様々に変容させながらグイグイ聴き手を引き込んでしまうインストゥルメンタル・ナンバー#5。
Hand. Cannot. Erase.にも参加のイスラエル人女性シンガー ニネット・タイブ(Vo)が切ない歌唱を聴かせる、POCUPINE TREEのアルバムStupid Dream収録曲の新バージョン#6。

アルバムの収録に漏れたのが不思議なほど各楽曲は高品質。これだけクオリティの高い楽曲を新作アルバムに取っておくような事はせず、あえてミニ・アルバムとしてリリースした理由は2つあると思う。
一つ目は楽曲がアルバムのカラーに染まり過ぎている事。
二つ目はストックに頼らずとも、新作のコンセプトに沿ってゼロから創作できるという自信だ。
スティーヴン・ウィルソン。まだまだ楽しませてくれそうです。

Track List

1. My Book of Regrets
2. Year of the Plague
3. Happiness III
4. Sunday Rain Sets In
5. Vermillioncore
6. Don't Hate Me

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FROST / Falling Satellites

2016,UK

英国の新感覚プログレッシブ・ロック・バンドFROSTの3rdアルバムFalling Satellites。
しばらく音沙汰が無かったが、ジェム・ゴドフリー(Key/Vo)はそのセンスと演奏力を買われてジョー・サトリアーニの2012年G3ツアーに参加したり、FROSTとしてスタジオ・ライブをリリースしたり、ジョン・ミッチェル(G/Vo)は個人のプロジェクトLONELY ROBOTでアルバムをリリースしたり、と忙しくしていた模様。

アルバムのイントロ的な小品#1。
無機的なシンセのシーケンス・リフとエモーショナルなサビが融合。これぞFROSTと思わず膝を打つ、心地よい疾走感を持った3拍子のスタイリッシュなナンバー#2。
DAWでの編集では無くシンセに搭載されたフレーズ編集機能を使用したと思われる#3。ハイテク機械の動作音や衝撃音などのSEやサンプリングした演奏の断片をデジタルで再構成し、ロックな躍動感を演出する手法が斬新。
キャッチーなメロディに耳が行きがちだが実は5拍子や7拍子など複雑に拍子が入れ替わる#4。
ゲストの女性ボーカルと煌びやかなシンセがムーディで幻想的な世界を醸し出すメロウな#5。
スタジオ・ライブ作The Rockfield Filesでいち早くお披露目されていた#6-a Heartstrings以降は組曲となっており、#6で提示された様々なモチーフが組曲を構成する各曲に登場する。
#6-a自体はThe Rockfield Filesでのライブ・バージョンのカッコ良さとキャッチーさはそのままに、サビでのシンセ・オーケストレーションが厚くなり、よりシンフォニックさを増した印象。スリリングなポリリズムがリスナーを幻惑する中間部インスト・パートも、ネイサン・キング(B)とクレイグ・ブランデル(Dr)のリズム隊がバンドに馴染み、ヘヴィさを増している。
終盤にロックなインスト・パートを持つ、ハワード・ジョーンズ風シンセ・ポップ・ナンバー#6-b。
クレイグ・ブランデルの手数王ドラミングが緩急と静動を巧みにリードする21世紀型プログレ・チューン#6-c。
#6-aのリフを軸にシンセのオーケストレーションを施した#6-d。前半のヘヴィでダークなムードから、テーマ・メロディを経て終盤は希望的パートや疾走歌唱パートに発展。
#6-aのテーマ・メロディを長い白玉にし、ブ厚く重ねたシンセで織り込んだシンフォニックなサウンドスケープ#6-e。
組曲のラストであるとともに、#1と対比させたタイトルでアルバムを締めくくるピアノ・バラード#6-f。

FROSTといえば、単なる装飾やソロに止まらずリフとして楽曲をリードするなどグイグイ来る芸風のジェム・ゴドフリーによるズ太いデジタル・シンセが最大の特徴だが、今回もこれは継続。また、機材マニアのジェム・ゴドフリーならではの味付けも施されており、現代的なプログレの旗手としての存在感は絶大。IT BITESのジョン・ベックも最新機材の使い手だったが、ジェム・ゴドフリーもその系譜を継承しつつダンス系のビートも取り入れて現在進行形のプログレッシブなロックを創造している。

Track List

1. First Day
2. Numbers
3. Towerblock
4. Signs
5. Lights Out
6.
a. Heartstrings
b. Closer To The Sun
c. The Raging Against The Dying Of The Light Blues
d. Nice Day For It.
e. Hypoventilate
f. Last Day

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BIG BIG TRAIN / Folklore

2016,UK

近世イギリスの市井の人々をテーマにした楽曲を綴った2作のEnglish Electricアルバムを経て、BIG BIG TRAINが9thアルバムに冠したタイトルはFolklore。

ストリングスと管による端正なイントロに続くエキゾチックなテーマが楽曲のカラーを象徴するタイトル・トラック#1。フォークロア風メロディを従来のBIG BIG TRAINらしい抒情メロディに融合。重厚なオルガンやプログレ然としたアナログ・シンセ・ソロなど器楽要素も盛りだくさんで、ニュー・アルバムの素晴らしいプレゼンとなっている。
アコギのアルペジオとフルートに導かれるメロウな歌唱パート、一転してテンポアップしてのカンタベリー風ジャズ・ロック的硬質なインスト・パートを持つ抒情プログレ・チューン#2。
優しく包み込むブラス・セクションと美しいコーラスに耳がいきがちだが、実は凝った変拍子を軸に進行するジェントルなナンバー#3。
優雅なストリングス・セクションをフィーチュアした小品#4。
柔らかいブラスと澄んだストリングスが絡み合う透明感溢れるイントロから、妖艶なアルペジオからのムーディな歌唱パートへ展開する#5。
フィドルと呼んだ方が相応しいヴァイオリンのメロディ、トラッドな質感のボーカル・メロディ、そして堂々たるサビに至るフォークロア・シンフォ#6。
中間部のインスト・パートやボーカル・パートでGENESISのヴァイブを感じさせる、起伏に満ちたアルバム随一のロック・ナンバー#7。
5拍子に乗って進行するスリリングなインスト・パートを内包した12分超のプログレ・チューン#8。
リラックスしたムードの歌モノ#9。

最も英国らしい抒情サウンドを持つBIG BIG TRAINがトラッドをも取り込み、もはや孤高の域に達した感も。
寓話や童話を題材に当時の英国事情を楽曲に投影していたGENESISの姿を彷彿させるものがある。

Track List

1. Folklore
2. London Plane
3. Along the Ridgeway
4. Salisbury Giant
5. The Transit of Venus Across the Sun
6. Wassail
7. Winkie
8. Brooklands
9. Telling the Bees

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THE WATCH / Seven

2017,ITALY

イタリアのGENESISフォロワーTHE WATCHの7thアルバムSeven。

ギター・ソロにおけるのっぺりしたトーンとシーケンス・フレーズがスティーヴ・ハケット本人かと思うほど特徴をコピー。奇妙なコード進行を持つ幽玄かつ抒情的な#1。
歌唱、歌メロ、バッキングのシンセ等、全てが怪しく進行しつつ、コーラスがどこか儚げなムードを演出する#2。
シンプルな歌モノにハケット風なエッジの立ったギターとメロトロンが加わり一気にGENESIS度が上がる#3。中盤のギター・ソロを経て終盤にシンフォニックにスケール・アップするアレンジも良い。
フルートとメロトロンの静謐パート、くぐもったエレピの音色のせいか軽快だが陰鬱なヴァース、シンセ中心の畳みかけ、等々ドラマティックに場面転換するシンフォニック・チューン#4。
アコギのカッティングをバックにしたメロウなナンバー#5。パーカッションやストリングス系シンセの使い方が上手く、シンプルだが単調にならない。
緩急や明暗でドラマティックな演出を施した#6。
何とご本人が12弦アコギでゲスト参加。スティーヴ・ハケットの1stソロVoyage of the Acolyte収録曲のカヴァー#7。終盤にシンセが入ってくる辺りはシンフォニック度マックスで感動的だが、意外とあっさりと終了するのも”らしい”感じ。
牧歌的なアコースティック・パートとエレクトリックなシンフォ・パートが同居する#8。7拍子のインスト・パートは元祖やフォロワーがさんざんやってきたパターンだが、THE WATCHがやると深みと説得力が一味違う。

最初の2,3回はそのあまりのアクの強さでアレルギーを起こしそうになるが、耳に馴染むとともに屈折したメロディや独特のコード進行がフックとなって耳から離れない。
GENESISを絶対的なルーツとしながらも独自路線を伺わせた前作から一転、再びピーター・ゲイブリエル在籍期GENESISの英国的な妖しい世界を再現。体に染みついてもうGENESISしかできなくなってしまったかのような、作曲、演奏、唱法。
もしGENESISがそのままの音楽性で存続していたらこんなアルバムを作っていた、と思わせるところが単なるモノマネを超越した職人バンドの矜持なのだろう。

Track List

1. Blackest Deeds
2. Disappearing Act
3. Masks
4. Copycat
5. It's Only a Dream
6. Tightrope
7. The Hermit
8. After the Blast

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STEVEN WILSON / To The Bone

2017,UK

現代プログレ界の重要人物スティーヴン・ウィルソン(Vo/G/B/Key)の5thアルバムTo The Bone。

ファンキーなグルーヴが珍しいギター・ロックからスティーヴン・ウィルソンらしい深遠なサウンドスケープに移行する#1。
流れるようなサビ、爽やかなスライド・ギター、コンパクトながらメロディアスに展開するインスト・パートとフック満載のポップ・チューン#2。
ハスキーな歌声でエモーショナルな歌唱を聴かせる女性シンガー ニネット・タイブ(Vo)とのデュエットによるバラード#3。神々しいメロトロンが押し寄せるインスト・パートが圧巻。
ジャキジャキしたギターと意外性のあるファルセットを軸にゆったりたゆたうポップ・チューン#4。感動的なストリングスとギターに合わせたスキャットのフックが印象的。
スペイシーなソリーナや郷愁を誘うハーモニカなどを上手くアレンジに取り入れるセンスがさすが。抒情を湛えた神秘的ナンバー#5。
いかにも英国的なポップ・チューンという雰囲気のメロディ、サビの解放感が気持ち良いアップ・テンポの#6。
再びニネット・タイブとデュエットのプログレ・フォーク小品#7。
捻りを加えたコード進行が耳に残る、掻き鳴らしギターがリードするロック・ナンバー#8。
ソフィ・ハンガー(Vo)とのデュエットによるダークでファンキーなナンバー#9。中近東風な隠し味を加えたストリングスが映画のサウンド・トラックのような説得力で迫る。
静謐にエレクロニカ、そしてスリリングなヘヴィネスと、独自の音楽性を9分超に凝縮した#10。テーマ・メロディを自然にリスナーの脳裏に刷り込む手腕がさすが。個人的に中間部のパーカッションとギターのカッティングが入る神秘パートにKAJAGOOGOOを想起したが、ニック・ベッグス(B)は関与していなかった。
感動的で深遠なサウンド・スケープに浸れるシンフォニックなバラード#11。

ここ2作をほぼ固定メンバーのバンド形態で制作してきたのに対し本作To The Boneは、ニック・ベッグスが#6に参加したのみで他はソロ全作でアレンジ等で関与する元HATFIELD AND THE NORTHNATIONAL HEALTHでストリングス・アレンンジのデイヴ・スチュワートをはじめとして、全曲でサポートするアダム・ホルツマン(Key)、FROSTなどで活動するクレイグ・ブランデル(Dr)らを楽曲ごとに使い分けて制作。

テオ・トラヴィスやガスリー・ゴーヴァンらのプレイが聴けないのは寂しいが、耳障りの良いキャッチーなメロディの影にスティーヴン・ウィルソン個人の色を濃く反映した内省的なカラーが絶妙に配合され、独自のプログレッシブ・ポップを展開。ロックなギター・カッティングやパーカッシブな#7のギター・ソロなど、スティーヴン・ウィルソン本人のギター・プレイもルーツに戻ったかのようなシンプルかつストレートでいながらエネルギーに満ち溢れ、アルバム全体のソロ色を濃くしている。

Track List

1.To the Bone
2.Nowhere Now
3.Pariah
4.The Same Asylum as Before
5.Refuge
6.Permanating
7.Blank Tapes
8.People Who Eat Darkness
9.Song of I
10.Detonation
11.Song of Unborn

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WOBBLER / From Silence to Somewhere

2017,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンド WOBBLERの4thアルバム。

フォークロアなテイストやメロトロンがフックとなる抒情~激情歌唱パートを中心に、木管までもが唸りを上げる攻撃的器楽パートを内包したエピック・チューン#1。
ダークな抒情インストゥルメンタル小品#2。
エナジードリンクを注入したYESのようなアグレッシブなバンド一体器楽パートで度肝を抜く序盤から、メランコリックな歌唱パートではパーカッシブなオルガンが静かに、盛り上がるにつれファズを効かせたギターやベースという具合に各楽器がテーマを継承して起伏を演出する#3。勿論、白玉メロトロンはダダ漏れ。
アコギやグロッケン、木管等で静かに紡ぐアンサンブルが幽玄からドリーミングまで様々な表情を醸し出し、エレクトリック楽器がパワーを付加してそれを継承。北欧フォークロアも薫る#4。

Hammond C3, Mellotron, Minimoog Model D, Chamberlin, Hohner clavinet, Rhodes MKII, spinet, ARP Axxe/Pro Soloist, Solina String Ensemble, optigan, Wurlitzer 200, Marxophone, grand piano等のヴィンテージ楽器を惜しげもなく動員し、YES風の硬質アンサンブルを聴かせる。
普遍的なメロディの質が不足しているところは特徴的な土着メロディで補いつつ独自性を出しており、ヴィンテージ楽器のトーンとの相乗効果で強く印象に残る。

Track List

1. From Silence to Somewhere (20:59)
2. Rendered in Shades of Green (2:05)
3. Fermented Hours (10:10)
4. Foxlight (13:19)

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BAROCK PROJECT / Detachment

2017,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの5thアルバムDetachment。

ピアノによる軽やかで抒情を湛えたイントロ#1。
#1からシームレスに繋がり、シンフォニックなシンセ、優雅なストリングス、ズ太いアナログ・シンセ、ダーティなオルガンなど多彩な鍵盤群をはじめ、躍動するバンド各パートの見せ場も用意し、さながらインスト隊のプレゼンの趣。ポップなヴァースから抒情をまぶしたメロディアスなサビへという楽曲展開とも相まってアルバムへの期待感が膨らむ#2。
ベタなラテン系抒情と気品漂うクラシカルなメロディが高度に融合、3連系リズムにチェンジしてのフォークロア・パートをも擁し、PFMの系譜を継ぐ傑作シンフォニック・ロックの#3。
エンジニアリングも担当するバンドの頭脳ルカ・ザッビーニ(Key/Vo/G)の爪弾く美麗でもの悲しいアコギに導かれる#4。ラテンの陰陽が表裏一体となりクラシカルなフレーバーを纏ったシンフォニック・チューン。
モダンなフォークロアから爽快なサビに発展する#5。
ゲストのピーター・ジョーンズが歌う#6。情感あふれる歌唱が場面転嫁しながら徐々に盛り上がる楽曲に絶妙にマッチ、まるでミュージカルを見ているかのような高揚感をもたらし9分超の長尺を感じさせない。
スパニッシュ風味のアコギがフックとなったミステリアスな小品#7。
再びピーター・ジョーンズ歌唱によるアーバン・テイストなピアノ・バラード#8。
コンテンポラリーなムードに変拍子が自然に溶け込むポップ・チューン#9
アコギのアルペジオにピアノやストリングスが絡む美しいフォーク調の前半からスケールの大きなシンフォニック・ロックに移行する#10。
打ち込みっぽいシンセやリズムのシーケンスを印象的に配置したキャッチーな#11。
おおらかなムードのフォークにダイナミックなロック・パートが融合した北米プログレ・ハード風ナンバー#12。
ゆったりとした中にスリリングなパートを包含した#13。

抒情やフォークロアにPFMのような地中海テイストを感じさせながら、クラシカルな装いで纏め上げるのがBAROCK PROJECT流。しかしながら今回は、クラシカルなテクニックで圧倒する若々しさは影を潜め、高い音楽性に裏打ちされた引き出しの中から微妙な陰影を描き出す方向にシフト。
尺の長尺を問わずメロディアスでいながら意外性もある楽曲展開でリスナーをグイグイ引き込む豊富なアイディアが秀逸。
2017年6月にBAROCK PROJECTとのカップリングで来日公演を行うSWEDENのMOON SAFARIが青春の甘酸っぱさとすれば、BAROCK PROJECTは甘さの中にもビターな大人の味わいといったところ。

Track List

1. Driving Rain 1:03
2. Promises 5:05
3. Happy to see you 7:37
4. One day 7:23
5. Secret therapy 5:37
6. Broken (ft. Peter Jones) 9:10
7. Old Ghosts 4:07
8. Alone (ft. Peter Jones) 3:14
9. Rescue Me 4:55
10. Twenty years 6:06
11. Waiting 5:43
12. A New tomorrow 7:39
13. Spies 7:23

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WHITE WILLOW / Future Hopes

2017,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの7thアルバムFuture Hopes。
2015年にシングルとしてリリースされたSCORPIONSのカバーAnimal Magnetism(本作の#6)でフィーチュアされたベンケ・ナッツソン(Vo)を新たな歌姫として迎え、楽器隊は、ヤコブ・ホルム・ルポ(G/B/Syn)、ラース・フォレデリク・フロイスリー(Syn)、マティアス・オルセン(Dr)らを中心とする今や北欧プログレの手練れ達で前作Terminal Twilight時のメンツと同様。

冒頭のミステリアスでダークなエレクトロニカから、ボーカル・パートに入ると光が射し込む、ドリーミーなシンフォニック・フォーク#1。
ベンケ・ナッツソンによるウィスパー気味の可憐な歌唱が光る美しい儚げフォーク#2。チープだが味のあるサウンドのヴィンテージ風シンセ・ソロが印象的でボーカルのオーガニックな美しさを引き立てている。
無機的なシンセのシーケンス・サウンドに浮遊するボーカルが乗るドリーミー・パート、ハード・エッジなギターも絡む抒情的なパート、寂寥感や屈折した表情を持つインスト・パートから構成される#3。メロトロンも交えたダークな屈折感はANGLAGARDを想起させる。
メロトロンやノイズによる嵐の中を物悲しいギターが漂うダークなウンドスケープ#4。
フォーキーな微睡み歌唱パート、様々な音色を多層で重ねたスペイシーなシンセのオーケストレーションからなる18分超えのシンフォニック・ナンバー#5。シンセやメロトロンに加えギターやオルガンも登場する中間部の長尺インスト・パートは、木漏れ日ムードから哀愁を経て神秘性までドラマティックに展開。
エレクトロニカとアンニュイな女性ボーカルによるアレンジが斬新な前述の#6と独特のアンビエント感が郷愁を誘う屈折抒情メロディを持つピアノ・ソロの佳曲#7はボーナス・トラック。

普遍的なメロディアスさは可憐なボーカル・パートに残しつつ、インスト・パートでは初期のダークなムードも健在。ただ、ヴィンテージ・シンセを駆使したであろう深遠なオーケストレーションや構築性の高いシーケンス・パターンなど手法はより熟練度を増しており、各人がそれぞれのプロジェクト(KAUKASUSNECROMONKEYWOBBLER等)で得た経験がフィード・バックされているようだ。
ベンケ・ナッツソンの歌声は柔らかいシンセや繊細なアコギとの相性が抜群。次作があれば、続投を切に望む。
アルバム・カヴァー・アートはロジャー・ディーンによるもの。一見してわかる程のさすがの記名性だが、YES用に製作した没バージョンのようでもありWHITE WILLOW音楽性には合っていない。

Track List

1. Future Hopes (4:30)
2. Silver and Gold (4:04)
3. In Dim Days (11:04)
4. Where There Was Sea There Is Abyss (1:59)
5. A Sacred View (18:16)
6. Animal Magnetism (CD/Digital bonus track) (7:15)
7. Damnation Valley (CD/Digital bonus track) (3:16)

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BIG BIG TRAIN / Grimspound

2017,UK

BIG BIG TRAINの10thアルバムGrimspound。
ここ数作のリリース間隔が1年毎というところにバンドの良好なコンディションが想像される。

ヴァイオリンやチェロがフォークロアやクラシカルな装いを付加、オルガンが牽引する緊張感とドラマティックが混在するインスト・パートを持つ現在のBIG BIG TRAINを象徴するシンフォニック・ナンバー#1。
リード楽器が次々にテーマを提示し緊張と緩和の緩急をつけるインスト・ナンバー#2。オルガンのミニマルなシーケンスがカンタベリー風でもある。
霧のようなシンセ・ストリングスに導かれる抒情的な序盤から、ボーカル・インするとGENESISスタイルの英国風味を醸し出す#3。GENESISならシンセで奏でていたフックのメロディーをストリングス・セクションに置換するところにBIG BIG TRAINらしさを発揮している。
タイトル通り、牧草地ののどかな風景が広がるジェントルなアコ-スティック・ナンバー#4。
英国のダートムーア国立公園にある史跡をタイトルに戴く、捻りの効いた歌メロとが英国らしいムードのタイトル・トラック#5。
ジュディ・ダイブル(Vo)をゲストに招いたトラッド風ナンバー#6。郷愁を誘うメロディの魅力に負けじとエレクトリック・パート移行のダイナミズムやその後のシンセによる抒情モチーフなど器楽的要素も充実。
モダンで軽快な4拍子、スリリングな3拍子パート、ゆったりとしたメロウなパートなどリズムの起伏で場面転換していく15分超の長尺シンフォ#7。
モダンな音像に男女デュエットやフルート/ストリングスなどのオーガニックな音色が融合した#8。

トラッド/フォークロア路線を完成させる最後のピースとして伝説の歌姫ジュディ・ダイブルを起用。
コンスタントにこの路線を継続するのか、また新たな展開を見せるのか。

Track List

1. Brave Captain (12:37)
2. On The Racing Line (5:12)
3. Experimental Gentlemen (10:01)
4. Meadowland (3:36)
5. Grimspound (6:56)
6. The Ivy Gate (7:27)
7. A Mead Hall In Winter (15:20)
8. As The Crow Flies (6:44)

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MAGENTA / We Are Legend

2017,UK

MAGENTAの7thアルバムWe Are Legend。

シンセによるまろやかなサウンドスケープを切り裂いて不安を煽るかのようなスリリングなテーマ・メロディに移行する#1。
パーカッシブなブリッジを経てのボーカル・パートはクリスティーナ・ブース(Vo)のフェミニンな歌唱を活かした抒情テイストでフックとしても充分。その後もベテランらしいスケール感やメロディアスなパートを織り重ねて展開。それぞれのパートのクオリティはさすがのロブ・リード(G/Key)印ながら、各ピースを繋ぎ合わせて長尺26分超の大曲として昇華させるだけの大団円の魅力に乏しく結果的に散漫な印象。
コンテンポラリーでクールな感覚とドラマティックなサビのギャップでリスナーの心を掴む#2。
枯れたギターやくすんだオルガンによるインスト・パートが英国ロックのクラシックに則った手法でクリスティーナのエモーショナルな歌唱とも相性良好。#1とは逆に世界観やムードが一貫しており、楽曲が紡ぐストーリーに引き込まれる。
ギターによる少々ベタな抒情テーマ・メロディや静謐パートが名作Sevenを彷彿させる#3。
シンセの無機的なシーケンス・フレーズと繊細なタッチのピアノがドラマティックな対比を生んでいる。

長尺3曲収録ながら全体の尺は50分を切っており、非常に聴きやすい構成になっている。
特に#2と#3は、展開が巧みで10分超であることを感じさせない充実度。病気からの復帰作としては先にソロThe Lightをリリースしていたクリスチーナもブランクを感じさせない歌唱を聴かせている。

Track List

1. Trojan (26:09)
2. Colours (10:47)
3. Legend (11:32)

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LONELY ROBOT / The Big Dream

2017,UK

IT BITESFROSTで活躍するジョン・ミッチェル(G/Vo)によるソロ・プロジェクト2ndアルバム。
FROSTの同僚クレイグ・ブランデル(Dr)やゲストの女性ボーカル以外のパートは自らプレイ。

スペイシーなイントロ#1。
イントロを継承するスペイシーかつドラマティックなミディアム・スロー・ナンバー#2。クレイグ・ブランデルの叩き出すヘヴィなビートが底辺をがっちりと支えている。
#2と同じようなテンポながらポップ・ソングの定番進行でよりキャッチーな#3。深遠さを垣間見せるインスト・パートでもクレイグ・ブランデルの小技が効いている。
サビにおける女性ボーカルのユニゾンが柔らかい印象を付加。神秘的でありながらキャッチーにまとめられたバラード#4。
ズ太いシンセが加わればFROSTの楽曲になりそうなリフを持つコンパクトなモダン・シンフォ#5。
サビに仄かな抒情を含んだメジャーセブンスが爽やかで洒落たポップ・チューン#6。
#6を継承するメジャーセブンスに頭打ちのリズム、ギターソロでのワーミーペダルの使用や構築度の高いスリリングなフレーズが印象的な#7。
ウーリッツアー風のエレピがどこか郷愁を誘う希望的メロディのバラード#8。
ナレーションが好奇心を掻き立てる深遠かつ壮大なインストゥルメンタル#9。
マシンのクールなビートによる寂寥感が男女ユニゾン・ボーカルのオーガニックさを引き立てるバラード#10。
アイリッシュ・ホイッスルによるエキゾチックなメロディが印象的なエピローグ#11。

ドラムを除く全パートが自身による演奏なので当然だが、ジョン・ミッチェルが意図したアレンジを忠実なアンサンブルで表現。全体のスペイシーな音像やムードも統一されており、楽曲やアルバム通してのストーリー展開に自然に引き込まれる。
ダミ声にもかかわらず爽やかな独特の声質や自在のタッチで様々なトーンを弾き出すギターも記名性に溢れ、改めてIT BITESやFROSTにおけるジョン・ミッチェルの存在感を思い知らされる。

Track List

1. Prologue - Deep Sleep (2:12)
2. Awakenings (5:10)
3. Sigma (5:06)
4. In Floral Green (5:08)
5. Everglow (4:58)
6. False Light (5:33)
7. Symbolic (5:06)
8. The Divine Art Of Being (5:38)
9. The Big Dream (8:02)
10. Hello World, Goodbye (3:52)
11. Epilogue - Sea Beams (2:48)

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SPOCK’S BEARD / Noise Floor

2018,USA

アメリカン・プログレッシブ・ロックバンドSPOCK’S BEARDの13thアルバムNoise Floor。
脱退したドラマーの穴をオリジナル・メンバーのニック・ディヴァージリオ(Dr)が埋めている。

メロトロンの掠れた音色やズ太いモーグ風シンセがレトロなムードを付加している快活な北米プログレ・ハード#1。
70年代サスペンス映画のテーマ曲のような趣の序盤からカラっと爽やかな中にメロウネスを含んだポップ・チューンに移行する#2。
アラン・モーズ(G)のアコギやハーモナイズさせたリード・ギターをフィーチュア。生の弦がクラシカルな色を添えるパワー・バラード#3。
シンセのテーマ・メロディがなんともSPOCK’S BEARDらしい#4。アコギとオルガンのリフレインが北米テイストを醸しながらテーマ・メロディを軸にした壮大なエンディングへと昇華する爽快なエピック・チューン。
クラシカルな弦セクションが効いている、BEATLESへの憧憬が顕著な甘酸っぱいバラード#5。
SPOCK’S BEARDらしいシンセのテーマがリードする#6。抑えた歌唱パートやエキサイティングなインスト・パートを擁し起伏を付けた展開で聴かせる。
清濁併せ持った展開でめくるめく進行、ピアノ、メロトロン、オルガン、シンセと鍵盤を総動員した奥本亮(Key)作によるインスト・チューン#7。
夕暮れの野外ステージが似合いそうなアリーナ・ロックの歌唱パートと予測不能なインスト・パートからなる#8。

SPOCK’S BEARDらしい突き抜け切らないイナたさは健在ではあるが、テッド・レオナルド(Vo)のストレートな歌唱を活かすためか、キメのインスト部などで少々小さくまとまり過ぎるきらいも。
もう少し大胆で変態なアレンジがあっても良いと思う。

Track List

1. To Breathe Another Day
2. What Becomes of Me
3. Somebody's Home
4. Have We All Gone Crazy Yet
5. So This Is Life
6. One So Wise" Ausmus
7. Box of Spiders
8. Beginnings

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THE SEA WITHIN / The Sea Within

2018,SWEDEN,GERMANY,USA

ロイネ・ストルト(G)、ダニエル・ギルデンロウ(Vo)、ヨナス・レインゴールド(B)、マルコ・ミンネマン(Dr)、トム・ブリスリン(Key)によるプログレ/シンフォ・プロジェクト・バンドTHE SEA WITHINの1stアルバム。

シンセによる深海のようなSEからドラマティックに幕を開ける#1。ダニエルの魂の歌唱が印象付けるシリアスでダークなテイストにゲストのサックスがアクセントを加えている。
仄暗い思索系ムードの中にオーガニックな温かみを感じさせる#2。
アコギの静謐なアルペジオ、微妙にデチューンさせたシンセのソロが神秘性を醸し出す#3。
アップテンポのロック・ナンバーにジャジーなピアノ・ソロを内包した#4。
グルーヴィな7拍子に乗せたプログレッシブAORナンバー#5。
柔らかいフレットレス・ベースが印象的なエキゾチックなインスト・ナンバー#6。
古き良き英国ポップを想起させる序盤、FLOWER KINGS的桃源郷ムードのインスト部とYESの大曲風神秘セクションを持つ中盤、余韻たっぷりの終盤と音楽の旅にどっぷり浸れる#7。
ポジティブな空気を纏ったメロディアスなボーカル・ナンバー#8。

FLOWER KINGSやライヴでのTRANSATLANTICで共演歴が長いロイネの粘っこいギターとPAIN OF SALVATION同様に憑かれたような独特の表現力で圧倒するダニエルの歌唱は相性が抜群。ただ、ダニエルのアクが強い分アルバム全体のトーンはダーク寄り。
どの楽曲も単純なカテゴライズが難しく、とっつきやすいポップ性の中に多彩な音楽性を自然に溶け込ませる各メンバーの音楽的懐の深さが驚異的。

Track List

1. Ashes of Dawn
2. They Know My Name
3. The Void
4. An Eye for an Eye for an Eye
5. Goodbye
6. Sea Without
7. Broken Cord
8. The Hiding of the Truth

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ROINE STOLT’S THE FLOWER KING / Manifesto Of An Alchemist

2018,SWEDEN

THE FLOWER KINGSのロイネ・ストルト(G)が凄腕たちのスーパー・バンドTHE SEA WITHINの作品に続いてリリースした新作。トマス・ボ-ディン(Key)が不参加なこともあってか、名義はROINE STOLT’S THE FLOWER KINGとなっている。

呪文のようなコーラスを繰り返す神秘的なインスト小品#1。
オーガニックな響きのドラム、オルガン、ギター、ベースが一丸となって躍動する#2。スペイシーなシンセ及びネバりまくるギターと渋い歌唱がロイネ節全開。珍しくカラっとアメリカンなサビがありながらメロウなパートには往年のFLOWER KINGSサウンドが。
ロイネの抑えた歌唱とエモーショナルなギターが堪能できる物悲しいバラード#3。
冒頭2分弱のフュージョン風イントロの器楽要素、桃源郷的歌唱パート、シンフォニックなインスト・パートで構成されたエピック・チューン#4。
スリルとメロディが満載の前半から静かな中にうっすらメロトロンで包み込む中盤、シンフォニックな後半と展開するインスト#5。
どこか郷愁を誘うメロウなナンバー#6。
エレピが醸し出すミステリアスなムードにサックスが舞い踊るインスト#7。
アコギやマンドリンにローファイなエフェクトがかかった歌唱が乗る優しいボーカル・ナンバー#8。
#8のムードを継承するインスト#9。
アルバム随一のダークな要素を盛り込みながらも希望的なメロディも忘れないバランス感覚が秀逸な#10。

躍動感と小技の安定感が光るマルコ・ミンネマン(Dr)、フレットレスの独特なサウンドでお馴染みヨナス・レインゴールド(B)らが個性を発揮しながらもバックを支えオーガニックなムードを創出。そこに乗るロイネの歌唱とギターがもたらすファンタジックでスペイシーなサウンドは初期FLOWER KINGSに近く、楽曲の表情がよりストレートに迫ってくる。

Track List

1. Rainsong
2. Lost America
3. Ze Pawns
4. High Road
5. Rio Grande
6. Next to a Hurricane
7. The Alchemist
8. Baby Angels
9. Six Thirty Wake-Up
10. The Spell of Money

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RIVERSIDE / Wasteland

2018,POLAND

RIVERSIDEの7thアルバム。

物語に誘う深遠な独唱のイントロ#1。
#1でマックスに盛り上げてからクールに一転、ザクザクしたギターの変拍子リフとじわじわ押し寄せる抒情的なサビが印象に残る#2。
クールなリフから寂寥感あるサビへ、さらにユニゾンするヘヴィ・パートを経てドラマティックに展開する#3。
アコギのリフが全体の透明感あるトーンを決定。語りかけるような歌唱に引き込まれる#4。
ギター+オルガンのヘヴィなバッキングに乗る清廉なボーカルが宗教儀式のような荘厳なイメージの#5。
不条理感漂うミニマルなリフで紡がれていく序盤からギターやシンセのインプロビゼーションなどスリリングに展開するKING CRIMSON風インスト#6。
モダンな中にフォークロア風味を織り込んだメランコリック・チューン#7。
プログレッシブ・フォーク、リフがけん引するヘヴィ・パート、フォークロア・パートなどから構成される#8。
ピアノに乗せた独唱がアルバムをしっとりと締めくくる#9。

耳に残るフック満載のメロディやアレンジを彩るメロトロン、ローズやハモンドなど説得力あるキーボード群。テルミン、バンジョーやゲストによるヴァイオリンなど意外な楽器も無国籍な神秘性の醸成に効いている。そこに寂しさを湛えつつ仄かな温もりも感じさせるクリーンな歌唱が加わり、ヘヴィネスとメランコリックが抜群のさじ加減で同居したRIVERSIDEの世界が完成している。

Track List

1. The Day After
2. Acid Rain
3. Vale of Tears
4. Guardian Angel
5. Lament
6. The Struggle for Survival
7. River Down Below
8. Wasteland
9. The Night Before

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OPETH / In Cauda Venenum

2019,SWEDEN

OPETHの13thアルバムIn Cauda Venenum。

メロトロンのクワイヤによる思わせぶりなイントロ#1。
いきなりの荘厳なコーラスが不条理リフに乗る衝撃の#2。静寂のメロウ・パートの質感は70年代そのもの。ハードなパートの歌メロはいつになくシンフォニックに洗練されており直後の不穏なメロディとのギャップを印象付けている。
ダイナミックなリズムの70年代風ハード・ロックにOPETHらしい捻ったメロディが乗る#3。キャッチーな中にも深遠さがあり、フレドリック・オーケソン(G)が弾きまくるギター・ソロもカッコ良い。
オルガンやアコギによる静とバンドによる動が対比する#4。ストリングスの荘厳かつエキゾチックなメロディが耳を引くアレンジも秀逸。
メランコリックな美バラード#5。切り返しからギター・ソロに突入する場面転換が見事。
性急なギター・リフにオルガンの奇妙なミニマル・リフなど典型的なOPETH要素てんこ盛りのヘヴィな#6。
えっOPETHと耳を疑う爽やかなストリングスや70年代風フォークの幻想的要素を盛り込んだ#7。
イントロでは何とリュートを使用、以降はジャジーなムードにミカエルのスキャットまで登場する暗黒ワルツ#8。
印象的なドラムとアコギがリードしスケールの大きなバンド・パートへと展開する#9。
アコギがたゆたうアンビエントな序盤からヘヴィなパートを経て、シンプルだが殺傷力抜群の大サビのメロディでリスナーを昇天に導くエピック・チューン#10。

シンフォニックなオケのアレンジはアルバムPale Communion時同様にHATFIELD AND THE NORTHBILL BRUFORDに在籍したデイヴ・スチュワートが行っており万全。デイヴ・スチュワートがOPETHの音楽についてどのように感じているか興味があるところだが。。
ミカエル・オーカーフェルトの70代ロック/フォーク好きは有名だが、Heritage以降の模索を経てようやくそれら懐古趣味にOPETHが従来持つ幽玄さや郷愁を誘う北欧フォークロア風味が融合。全編でメロディが耳に残り、クセになる不条理リフと合わせて何度も聴きたくなるアルバムだ。

Track List

1. Garden of Earthly Delights
2. Dignity
3. Heart in Hand
4. Next of Kin
5. Lovelorn Crime
6. Charlatan
7. "Universal Truth
8. The Garroter
9. Continuum
10. All Things Will Pass

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FLYING COLORS / Third Degree

2019,USA

スティーヴ・モーズ(G)、ケーシー・マクファーソン(Vo)、ニール・モーズ(Key)、デイヴ・ラルー(B)、マイク・ポートノイ(Dr)から成る5人組シンフォ・バンドFLYING COLORSの3rdアルバムThird Degree。

意表を突く転調からのサビのスケール感が強力なハード・ロック#1。
ミステリアスなリフがどことなくDEEP PURPLE風と思っていると終盤のニール・モーズによるシンセ・ソロもドン・エイリーっぽく聴こえる#2。
メロトロンやストリングスのアレンジ、テーマ・メロがSPOCK’S BEARD風な北米シンフォ・チューン#3。
7拍子を感じさせないマイルドな序盤、ハード・ポップなサビ、デイヴ・ラルーのベース・ソロをフィーチュアした解放感広がる中間部のインスト・パートなど意匠を変えながらポジティブなムードで展開する#4。
テーマ・メロディを各所に散りばめて展開する10分超えのエピック・チューン#5。
スウィング感が心地よいシンフォニックAORチューン#6。
ハート・ウォーミングなシンフォニック・バラード#7。
メロディ、コーラス、ビート等々、70年代ポップのテイスト満載で楽しい#8。
ドラマティックなギター・ソロが聴きどころ。長尺の随所でクラシカルなモチーフがベースになっており端正な印象を受ける#9。

ニール・モーズの色が出るとどうしてもSPOCK’S BEARDやTRANSATLANTICがチラつくが、ベテランらしく隙の無いアレンジと十二分にテクニカルな人達が楽曲第一のアンサンブルに徹する姿勢が清々しいアメリカン・ハード・シンフォ。

Track List

1. The Loss Inside
2. More
3. Cadence
4. Guardian
5. Last Train Home
6. Geronimo
7. You Are Not Alone
8. Love Letter
9. Crawl

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