シンフォニック のレビュー

WITHIN TEMPTATION / The Heart of Everything

2007,NETHERLANDS

オランダのゴシック・メタル・バンドWITHIN TEMPTATIONの4thアルバムThe Heart of Everything。

混声クワイヤとプラハ・フィルハーモニック・オーケストラが織り成す荘厳な装飾、オケに溶け込んだ単音主体のソリッドなギター・リフ、そして硬軟織り交ぜた多彩かつ圧倒的な表現力を見せ付けるシャロン・デン・アデル(Vo)の歌唱が一体となり威厳すら感じさせるオープニング・チューン#1。
シャロンの蕩ける様な美声に導かれ、同じレーベル(本作よりROADRUNNERに移籍)所属のゲスト・シンガー キース・キャプートのデュエットで展開する#2。
切ない表情を見せるシャロンの歌唱がグっと来る#3。
混声クワイヤが宗教的とも言える高揚感をもたらす、理想的な荘厳ゴシック・メタル・チューン#4。
リズム・セクションとシンクロしたヘヴィなギター・リフに乗り、ヴァースでのワイルドな歌唱とサビでのクリーンな歌唱を使い分けたタイトル・チューン#5。
ストリングス・セクションとピアノがリードがするオケをバックに、シャロンが艶のある美声でキャッチーなメロディを歌う#6。ゲストのフィドルと珍しいツイン・リード・ギターもアクセントになっています。
バンド主体の演奏に、ゲストのチェロとエフェクトを掛けたシャロンのヴォイスがちょっとしたフックとなった#7。
シャロンが息づかいの生々しい歌唱を聴かせる#8。
アコギのアルペジオにチェロが絡みサビに向けて盛り上がるストリングスをバックに、シャロンがファルセットを含め繊細で優しく歌う希望的なメロディのバラード#9。
一転して、物悲しくもドラマを感じさせるイントロから、クワイヤとストリングス、ギターが荘厳にリフを奏でる得意の3連系ゴシック・ナンバー#10。
ピアノをバックに、しっとりと囁くような歌唱で綴るバラード#11。

前作・前々作あたりで見せたあからさまなケルト風味は影を潜め、#6のフィドル・パートのようにアレンジの一貫として完全に消化。名盤である前作The Silent Forceと同様、バンドとオケが一体となってのゴージャスなシンフォニック・ゴシック路線はもはや完成の域に。

Track List

1. The Howling
2. What Have You Done
3. Frozen
4. Our Solemn Hour
5. The Heart Of Everything
6. Hand Of Sorrow
7. The Cross
8. Final Destination
9. All I Need
10. The Truth Beneath the Rose
11. Forgiven

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FLOWER KINGS / The Sum of No Evil

2007,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドFLOWER KINGSの2007年11stアルバムThe Sum of No Evil。

ウーリッツァー(多分)のくぐもったトーンのフレーズが、バンド・インと共にポルタメントの効いたアナログ・シンセでリピートされると、一瞬にしてブライトなFLOWER KINGSの世界が広がるシンフォニックな#1。ハッセ・フロベリ(Vo/G)の優しい歌唱、ヨナス・レインゴールド(B)のマイルドなフレットレス・ベースのオブリガードを中心に醸し出す、あくまでもポジティブな桃源郷サウンドは相変わらずです。勿論、御大ロイネ・ストルト(G)も健在。テーマメロディをジャジーにアレンジし、アーミングを絡めてギターとは思えないニュアンスに仕上げたソロが見事です。
ロイネの渋いボーカルにホーミーっぽいSEを交えてのどかにゆったり進行していく#2は、ダークなパートを経ていきなりシンフォニク&叙情的なハイライトを迎えます。そして、泉のように溢れる豊富なアイディアを具現化した様々なパートが時にジャジーに、時に壮大に、とカラフルな表情を見せて展開していく24分超の大作。
ロイネの素晴らしい歌唱とギター・ソロが堪能できるバラード#3。
序盤のメロトロンとマリンバが支配する静けさから、ダークでスペイシーなシンフォニック・ロックに展開する所が往年のスリリングなFLOWER KINGSを想起させる#4。
トマス・ボーディン(Key)の書いた、ユーモラスなトーンのメイン・フレーズが耳を引くインストゥルメンタル・ナンバー#5。
あくまでも歌モノでありながら、さりげなく重層的なアレンジとテクニシャン達による余裕のプレイでドラマティックに仕上がった#6。

これまでの作品でドラマティックなムードを演出していたインスト・パートのアレンジにおいて、フュージョン風味の比重が増量、アダルトなムードが薫るシンフォニック・プログレに進化したアルバムです。

Track List

1. One More Time
2. Love Is the Only Answer
3. Trading My Soul
4. Sum Of No Reason, The
5. Flight 999 Brimestone Air
6. Life In Motion

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WETTON DOWNES / Icon 3

2007,uk

ジョン・ウエットン(B/Vo)とジェフ・ダウンズ(Key)のユニットWETTON DOWNESの3rdアルバムIcon 3。

80年代風シンセに導かれるメロディアスで勇壮なハード・ポップ#1。
美しいコーラスとWETTON DOWNESでは毎度お馴染みヒュー・マクドウェル(Cello)の滑らかなチェロが印象的なバラード#2。
シンセ・ストリングスの8分刻みやヴォコーダーが80年代風味な#3。
毎回ゲストで女性シンガーを招いている本ユニットの今回の歌姫はアン=マリー・ヘルダー。翳りのある歌声がダークでしっとりとした曲調にぴったりの#4で、ジョン・ウェトンと素晴らしいデュエットを聴かせています。
チェロとピアノによる物悲しく端整なイントロからリズムインし、希望的なムードを垣間見せるサビに発展する#5。
ハードなギター・リフをイントロとサビに配置した#6。
ハープとチェロ、ストリングスで奏でるクラシカルなインストゥルメンタル#7。
コンパクトながらもドラマティックな展開を持つバラード#8。
80年代風シンセのブラスストリングスがリードする快活なヴァースと叙情的なサビの#9。
明るいムードでキャッチーな#10。
アン=マリー・ヘルダーがスキャットとコーラスで登場、クラシカルなメロディをジョン・ウェットンが抜群の歌唱力で歌い上げる#11。

ゲスト女性シンガーとのデュエット、ヒュー・マクドウェルのチェロ、ウェットンとダウンズ共通の嗜好という教会音楽の影響が滲み出たクラシカルなコード進行など、定番フォーマットが確立。
若干マイナー・キーに偏りつつも、美メロが随所で炸裂しております。

Track List

1. Twice The Man I Was
2. Destiny
3. Green Lights And Blue Skies
4. Raven
5. My Life Is In Your Hands
6. "Sex, Power And Money"
7. Anna'S Kiss
8. Under The Sky
9. Don'T Go Out Tonight
10. Never Thought I'd See You Again
11. Peace In Our Time

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MAGENTA / Metamorphosis

2008,UK

英国の女性ボーカル・シンフォ・プログレ MAGENTAの5thアルバムMetamorphosis。

20分クラスの長尺曲#1と#3を擁する全4曲という、1st”Revolutions”や2nd”Seven”といった初期の名作を思い起こさせる”らしい”構成で、否が応でも期待は高まるというものです。
内容も期待に違わず濃厚。
クリスティーナ(Vo)の若干鼻にかかったナチュラル・ヴィブラート・ヴォイスや荘厳なシンセによるアレンジ、印象的なメロディによるコーラス・パートは健在。
要所要所で生のストリングス・セクションやこの筋では引っ張りだこのゲスト トロイ・ドノックリーによるイリアン・パイプスのスパイスを効かせ、彼ら独特のしっとりとした世界を醸成している点も初期の姿そのもの。
さらに今作では、アルバム・カヴァーのインパクトを体現したかのようなヘヴィなギター・リフも増量。
そのヘヴィさに最初はたじろぎましたが、#1は第一次世界大戦に赴く兵士の物語だし、#3に至っては精神分裂症者による連続殺人の話、ということで徐々に曲のテーマを表現する為の必然であることに気付きます。
といっても、ヘヴィ・メタルのように表層的な激しさによる表現ではなく、もっと繊細なタッチで心象風景を描くような芸風なので、構えずに奥行きのあるサウンドに身を任していればいいんですよね。
#3ラストのスライド・ギターがかぶさるリフレインや”Seven”の繊細なしっとり感を想起させる#4。
この辺りの豊かな叙情性は、うっとり没入してずっと聴いていたくなる程です。

Track List

1. Ballad of Samuel Layne
2. Prekestolen
3. Metamorphosis
4. Blind Faith

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MOON SAFARI / Blomljud

2008,SWEDEN

爽やかなシンフォニック・プログ・バンドMOON SAFARIの2ndアルバム Blomljud。

アカペラ・コーラスで幕を開けるDISC1 #1。
#1を引き継ぐ15分超の大作DISC1 #2。爽やかなボーカル、ピアノやアコギの清涼感を、変拍子を含む起伏あるアレンジに自然に溶け込ませる脅威の力量を早くも見せ付けます。
ダーティなオルガンが唸る序盤のシリアスでヘヴィなタッチから一転、雄大で爽やかなシンフォニック・ロックに展開するインストゥルメンタル・チューンDISC1 #4。
シタールの味付けが効いたフォーク・タッチのDISC1 #5。
ピアノのフレーズからダークネスを湛えたパートを経てスライド・ギターが舞うシンフォニックなイントロへ移行。ピアノにメロトロンやアコギが加わるボーカル・パートを中心に、透明感あるインスト・パートが感動的なメロディを紡ぐドラマティックなハイライト・チューンDISC1 #6。
カントリーっぽいギターから始まる軽快なDISC2 #1。瑞々しいサウンドに自然な7拍子、天駆けるギター・ソロやジャジィなコード進行の洒落たコーラス・パートなど豊富なアイディアで構成。
北欧のダンス・チューンといった趣の、3連に乗るエキゾチックなメイン・メロディが印象的なDISC2 #2。
重層コーラスを中心にしたキャッチーさの中に、ハッとする転調など非凡なセンスを盛り込んだDISC2 #3。
メロディアスなボーカル・パート、スリリングなインスト・パートを配した、31分超の長尺チューンDISC2 #4。
雨の雫のような美しいピアノのアルペジオをメロトロンが優しく包むDISC2 #5。

既に完成された1stと同路線ながら、溢れる才能を抑えきれないかの如く、メロディとフックが次々に繰り出される様に圧倒される、更に磨きがかかった独自のキャッチーなプログレッシブ・ロック。

Track List

DISC1
1. Constant Bloom
2. Methuselah's Children
3. In the Countryside
4. Moonwalk
5. Bluebells
6. The Ghost of Flowers Past

DISC2
1. Yasgur's Farm
2. Lady of the Woodlands
3. A Tale of Three and Tree
4. Other Half of the Sky
5. To Sail Beyond the Sunset

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KARMAKANIC / Who’s the Boss in the Factory?

2008,SWEDEN

FLOWER KINGS等で活躍するベーシスト ヨナス・レインゴールド(B)率いるプログレッシブ・ロック・バンド KARMAKANICの2008年3rdアルバムWho’s the Boss in the Factory?。

便利屋ヨラン・エドマン(Vo)、ラレ・ラーション(Key)、ゾルタン・チョース(Dr)、クリステル・ヨンソン(G)を核に、ロイネ・ストルト(G)、テオ・トラヴィス(Sax)等ヨナス参加プロジェクトの人脈から豪華ゲストも参加。

メロトロンを使用した7拍子のファンタジックなリフに時折叙情を織り交ぜた初期FLOWER KINGS風イントロ。もう既にここでハートを鷲づかみにされてしまう#1。抑えたトーンではジャジーに、歪みを加えた場面ではテクニカルにと、柔軟に且つスムーズなプレイを聴かせるクリステル・ヨンソン、ズ太いシンセのソロやカラフルなバッキングにセンスの良さを感じさせるラレ・ラーション、とインスト陣の見せ場もたっぷりな19分超大作。
軽快な7拍子に乗せたポップな歌モノ#2。
ピアノとフレットレスベースによるムーディな序盤から一転、キャッチーな中にもヒネリを効かせたボーカル・メロディがやはりFLOWER KINGSっぽい#3。美しいコーラス、個性的な音使いのシンセ・ソロとピアノ・ソロ、叙情的なテーマ・メロディからピアノとベースが絡み合うクライマックス、とインストゥルメンタル・パートもドラマティック。
哀愁のサビメロを際立たせるテオ・トラヴィスのサックスが良い感じの#4。サックスのメロディが変化したのをきっかけに、インストゥルメンタル・パートに突入。ヨナスの甘いフレットレスベースを皮切りに、ロイネ・ストルトのワウを掛けた粘っこい歌うギター、テオ・トラヴィスのサックス、と職人達の味わい深いプレイが楽しめます。
雫のようにしっとりと煌びやかなピアノによるインスト#5。
#5のムードを継承しつつ、アコーディオンによるヨーロッパ風な哀愁も加えて叙情的に仕上がった#6。

どうしてもインスト陣に耳が向きがちですが、昔、イングヴェイ・マルムスティーンとの仕事では無理やりハイトーンを要求させられて苦しそうだったヨラン・エドマンの歌唱も、ナチュラルに強弱と陰影を使い分けて楽曲のドラマ性演出に大貢献。見直しました。
さすが便利屋、HR/HMからファンタジックなプログレまで幅広く仕事をこなします。
ジャケット・アートから受ける硬質なテクニカル路線との先入観とは全く違い、あくまでもメロディと歌が主役なメロディアス&シンフォニックなコンテンポラリー・プログレの良作です。FLOWER KINGSより若干翳りが増量されているところが個人的には好み。

Track List

1. Send a Message From the Heart
2. Let in Hollywood
3. Who's the Boss in the Factory?
4. Two Blocks from the Edge
5. Eternally Pt.1
6. Fternally Pt.2

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RENAISSANCE / Dreams & Omens live at the Tower Theatre

2008,UK

2008年リリースの英国プログレッシブ・ロックの華、RENAISSANCEのライブDreams & Omens live at the Tower Theatre。
1978年のフィラデルフィア公演でオーケストラは無し。

#5や#6はこの手のオフィシャル・ライブ作品では初の収録じゃないでしょうか。
#5はマイケル・ダンフォード(G)が1番のサビからエレキに変えてるみたいですね。2番のアルペジオから明らかにトーンが違いますもんね。これはレアですね。
#5、#6以外はライブではお馴染みの選曲ながら、オケ無し時のRENAISSANCEならではの味が楽しめます。何と言ってもジョン・タウト(Key)がピアノ、ストリングス・アンサンブル、シンセと大活躍。それに忘れちゃいけないのがアニー・ハズラム(Vo)のクリスタル・ヴォイスによるスキャット。オーケストラ不在で音の厚みが薄くなるところを上手くカバーしてスタジオ・バージョンには無い、艶やかなテイストを醸し出してます。

それにしてもアニー。ライブを聴く度に思うんですが、音程・声の伸び・滑らかさと、どれをとっても完璧ですね。こんなお宝音源がまだあったとは。

Track List

1. Can You Hear Me
2. Carpet of the Sun
3. Day of the Dreamer
4. Midas Man
5. Northern Lights
6. Things I Don't Understand

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AGENTS OF MERCY / The Fading Ghosts of Twilight

2009,SWEDEN

FLOWER KINGSのロイネ・ストルト(G/Vo)による新プロジェクトAGENTS OF MERCYの2009年1st。
メンツは、Nad Sylvan(Vo)、Biggo Zelfries(Key/Violin)、Pat Mastelotto(Dr)、Jimmy Keegan(Dr)にFLOWER KINGSからはお馴染みのJonas Reingold(B)、Zoltan Csorsz(Dr)。
Nadのヴォーカルはフィル・コリンズとロイネを足して2で割ったような、若干演劇風味が入った渋い感じ。そして肝心の音楽性ですが、ここ数作ではコテコテの桃源郷シンフォニック路線に落ち着き気味の本家TFKには無い陰影や叙情性が、アダルトにリラックスしたムードの中にも程良く盛り込まれており大満足です。
デジタル・シンセによる過度な装飾は皆無でピアノ、オルガン、モーグ、メロトロン、ローズ、ウーリッツァーといったオーガニックなキーボード達のサウンドやアレンジが、より楽曲と各パートのプレイの魅力を引き出してます。ロイネによる円熟のトーン・コントロールも冴え捲くってます。

Track List

1.The Fading Ghosts Of Twilight
2.The Unwanted Brother
3.Afternoon Skies
4.Heroes & Beacons
5.Jesus On The Barricades
6.Waiting For The Sun
7.A Different Sun
8.Ready To Fly ?
9.People Like Us
10.A Soldiers Tale
11.Bomb Inside Her Heart
12.Mercury & Mercy

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THE TANGENT / Down and Out in Paris and London

2009,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドTHE TANGENTの5thアルバムDown and Out in Paris and London。

アンディ・ティリソン(Kye/Vo)、テオ・トラヴィス(Sax/Fl)、ガイ・マニング(G)以外のメンバーは相変わらず落ち着かず、リズム隊の入れ替えで全員が英国人となった。

ギターの叙情的なメロディにシンセやサックス、フルートが絡み、ミニマルなオルガンフレーズに至る濃厚なイントロを持つ#1。カンタベリー風なインストパートやテオ・トラヴィスのマイルドなプレイが耳を捕らえて離さない、洒落たAORタッチのプログレ・チューン。
ジャジィなボーカル・パートを中心としつつ、鮮烈なシンセがフックとなった#2。
テーマ・メロディのリフレインとソロによる躍動感あるインスト・パートを内包した、ゆったりとレイドバックした#3。
マイルドなボーカル・パート、若干ヘヴィなパート、唸るシンセと滴るメロトロンの5拍子のインスト・パート、と意表を衝く展開を見せる#4。
叙情的なボーカル・チューン#5。
NATIONAL HEALTHのThe Collapsoを想起させる食器を落とした効果音にニヤリとさせられる#6。オルガンやエレピで繰り返されるミニマルなリフレイン、軽快なリズム、まろやかなシンセ、等々カンタベリーのオマージュで構成。

大人な落ち着きが全編を覆う少々地味な印象の中、カンタベリーとシンフォニック・プログレを融合させた独自路線が深化した佳作。

Track List

1. Where Are They Now?
2. Paroxetine - 20mg
3. Perdu Dans Paris
4. The Company Car
5. Everyman's Forgotten Monday
6. Canterbury Sequence Volume 2. Ethanol Hat Nail

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TRANSATLANTIC / The Whirlwind

2009,USA,UK,SWEDEN

ニール・モーズ(Key/ex.SPOCK’S BEARD)、ロイネ・ストルト(G/FLOWER KINGS)、ピート・トレワヴァス(B/MARILLION)、マイク・ポートノイ(Dr/DREAM THEATER)によるプログレ・プロジェクト・バンドの3rd。

ニール・モーズが聖書の中のテーマ「Whirlwind=旋風・つむじ風」について構想を練っていたデモを元に、メンバーのアイディアをプラスして完成させた78分近くに及ぶコンセプト・アルバム。オープニングの#1にいくつものテーマ・メロディが提示され、それらのメロディが切れ目無く繋がった後の楽曲に楽器や音色を換えて何度も登場する、という典型的なコンセプト・アルバムの形式で構成されています。しかし彼らが普通じゃないのは、そのテーマ・メロディの質と量。並みのバンドなら1枚アルバムが作れるくらいの強力なアイディアが4~5個あり、それが縦横無尽に張り巡らされて一気に聴けてしまう恐るべきクオリティ。
コードの独特なヴォイシングやメロディの端々にSPOCK’S BEARD風というかニール・モーズ節が感じられるのは当然として、ジャジーな部分や変態っぽい箇所、開放的に突き抜ける部分に初期FLOWER KINGSのフレイヴァーも感じられ、それらの要素が巧く溶け合っているのが素晴らしいです。音を重ね過ぎず、オルガンやアナログ・シンセ、メロトロンといったオーガニックなサウンドをセンス良く配したニール・モーズ。本家FLOWER KINGSでは何となくマンネリで生彩を欠くロイネ・ストルトも、ネバっこい歌唱と独特のコシのあるギター・プレイで活き活きしてますね。ツーバス連打や滑らかなロールでメタルっぽい興奮をもたらすマイク・ポートノイ。芯のしっかりしたトーンでソリッドに、かつメロディアスに底辺を支えるピート・トレワヴァス。など、個々のプレイもそれぞれの個性を出しながらも全体のサウンドの中で浮く事無く、必然性を持って楽曲に練り込まれてます。
ブルージーなギター・ソロのバックでのアルペジオがPINK FLOYDのCrazy Diamond風でニヤリとさせる#6。テーマ・メロディが充実のボーカル・パートを彩る#8~#10の流れ。アッチェレランドのネオクラ風ユニゾン・フレーズでスリリングに盛り上げる#11。壮大に大団円を迎える#12。などなど、勿体無い位においし過ぎるネタが満載の超優良盤です。

Track List

1. Overture/Whirlwind
2. Wind Blew Them All Away
3. On the Prowl
4. Man Can Feel
5. Out of the Night
6. Rose Colored Glasses
7. Evermore
8. Set Us Free
9. Lay Down Your Life
10. Pieces of Heaven
11. Is It Really Happening?
12. Dancing with Eternal Glory Whirlwind(Reprise)

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Q / Frequency

2009,UK

英国のベテラン・プログレ・バンドIQの2009年9thアルバムFrequency。

マーティン・オフォードに代わりマーク・ウェストワース(Key)、ポール・クックに代わりアンディ・エドワーズ(Dr)と2名のオリジナルメンバーの交代を経て制作。(ポール・クックは後に復帰)
アルバム・タイトルのFrequency=周波数やブックレットに記されたモールス信号(バンド名とタイトル)、#2後半のメロディが#6で再登場、#3,#4,#5がクロスフェードして繋がっている所、等々にコンセプチュアルなムードが漂います。
前作でシンフォニック・プログレの奥義を習得した彼ららしく、巧みで自然な場面転換による曲構成やメロトロン風、ピアノ、エレピ、ズ太いアナログ風シンセ・リード、オルガンなど実はカラフルながらも品良く纏め上げられたキーボードの活用センスに老獪なまでの余裕を感じさせます。
印象的で美しいメロディとそれを活かすピーター・ニコルス(Vo)のマイルドな歌唱を中心に据え、堅実なアンサンブルでドラマティックに物語を紡ぐスタイルは不変です。

Track List

1. Frequency
2. Life Support
3. Stronger Than Friction
4. One Fatal Mistake
5. Ryker Skies
6. Province
7. Closer

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カテゴリー: IQ

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AGENTS OF MERCY / Dramarama

2010,SWEDEN

ロイネ・ストルト(G)とナッド・シルヴァン(Vo)のプログレ・プロジェクト・バンドAGENTS OF MERCYの2010年2ndアルバムDramarama。

一発で耳に残る奇妙なメロディのリフレインや、GENESISっぽい7拍子が初期FLOWER KINGSを思わせる、ロイネ・ストルトが得意なタイプの典型的プログレッシブ・チューン#1。
メロトロンが哀愁を呼び起こす、メロディアスなシンフォニック・バラード#2。
ハモンドB3のバッキング・リフが印象的な#3。
ラレ・ラーション(Key)がシンセを弾き捲くる凄まじいソロをフィーチュアした神秘的なムードの#4。
フレットレス・ベースのまろやかな音色がリードする、FLOWER KINGSの桃源郷テイスト漂う#5。
SUPERTRAMPっぽいウーリッツァーの音色がペーソス感を、ストリングスのオブリガードがELOを想起させる#6。勿論メロトロンも効いてます。
ちょっとセンチメンタルなフォークロア風サビを持つ透明感あるプログレッシ・フォークの#7。
アコギとスライド・ギター中心のシンプルなアレンジの#8。
ウクレレとウーリッツァーのパーカッシブなバッキングに乗せてナッドの歌唱が物語を紡ぐ#9。
メロトロンによる大仰なオープニングから一転して、軽く歪んだエレピをバックにシンフォニックなパートも含めて展開する#10。
コーラス・パートや重層的なシンセによるシンフォニック・パートがGENESISっぽいテイストの#11。
壮大でメロディアスなバラード#12。

60年代末から70年代初頭のサウンドやヴァイブを再発見するというコンセプト通り、メロディアスでレトロなムードのプログレッシブ・ロックが展開されているのは前作と同様ですが、今回はヨナス・レインゴールド(B)、ラレ・ラーションら脇を固めるメンツもライブを通して固定され、よりバンドらしくまとまってきました。
と同時に、各人の個性も浮かび上がってきました。特にナッド自ら作曲した、とぼけたムードの歌唱を活かしたキャッチーな歌モノの連作#6,#7,#8,#9における、英国っぽい叙情性が最高。全体的にはロイネ色の濃い楽曲とアレンジが目立つ中で、良いアクセントになっています。

Track List

1. The Duke Of Sadness
2. Last Few Grains Of Hope
3. Peace United
4. Journey
5. Gratitude
6. Meet Johnnie Walker
7. Cinnamon Tree
8. The Ballad Of Mary Chilton
9. Roger The Tailor
10. Conspiracy
11. We Have Been Freed
12. Time

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PANIC ROOM / Satellite

2010,UK

PANIC ROOMの2ndアルバムSatellite。

メンバーが過去に在籍したMOSTLY AUTUMNKARNATAKAが得意とするケルティックなテイストは皆無。
そんな装飾に頼らずとも勝負できるという矜持が漂う佳作。

軽快なロック・ナンバー#1。
くぐもったエレピが印象的な、コンテンポラリーなタッチのブルース風ナンバー#2。
ネコの鳴き声を模したギターで幕を開ける#3。コミカルなヴァースのムードから一転してシリアスかつミステリアスになるサビへの展開が巧妙。
アン=マリー・ヘルダー(Vo/G)がウィスパー気味に迫るムーディな#4。抑えたドラミングや霧のようなパッド・シンセが美声を引き立てています。
ザクザクしたリフがリードするハード・ロック#5。
幽玄なムードとヘヴィネスが融合したクールな#6。
12弦アコギが煌くコンテンポラリー・フォーク・ナンバー#7。耳元で囁くようなウィスパー・ヴォイスが素敵。
優しい歌唱がバックのサウンドに溶け込む、コンテンポラリー・ポップス#8。
チャーチオルガンの荘厳なアルペジオがドラマティック。ロング・トーン中心に堂々と歌い上げるハード・ロック#9。
雫が滴るようなピアノをバックに、しっとりと歌うバラード小品#10。
サビにおける絹のような美声が染み渡る、センチメンタルなエンディング・チューン#11。

アン=マリーの伸びやかな中に若干のハスキーさと憂いを含む美声をフィーチュア。
ソフトなポップスからハード・ロックまで、幅広い曲調がアン=マリーの多彩な歌唱表現を引き出し、ギミックやアクロバット的インスト・パートに頼らない普遍的なロックとしての完成度を高めている。

Track List

1. Freedom to Breathe
2. Picking Up Knives
3. I Am a Cat
4. The Fall
5. Black Noise
6. Yasuni
7. Sunshine
8. Into the Fire
9. Dark Star
10. Muse
11. Satellite

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MOON SAFARI / Lover’s End

2010,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドMOON SAFARIの3rdアルバムLover’s End。

煌くピアノとどこかセンチメンタルなハーモニカに導かれて一点の曇りも無い爽快なボーカル・メロディが登場するオープニング・ナンバー#1。ちょっとくすんだトーンのメロトロン・フルート(?)が良い感じです。

序曲風の#1のエンディングから溌剌と劇的に幕を開ける#2。FLOWER KINGSを彷彿させるシンフォニックな冒頭、YESのような疾走感あるインスト・パートを内包した14分近くの大作ながら、適度な起伏と数々の素晴らしいフックの存在が長尺である事を一切感じさせません。コーラスのメロディを引き継いでアナログ・シンセ~ギター・ソロと続く中間部は何度聴いてもトリ肌の快感。
重層的なコーラスとピアノによる透明感あるバラード#3。
素直な美メロを奏でるピアノがリードする#4。ここでもボーカル・メロディの反復からインプロヴァイズに移行するシンセ・ソロ、という楽曲のメロディを印象付ける素晴らしいアレンジが施されています。
キャッチーなボーカル・パートにプログレ由来の変拍子シンセ・パートが自然に溶け込んだ、ウルトラ・ポップ・ナンバー#5。
冒頭のメロトロンとシンセによる変拍子インスト・パートがGENESISを彷彿させるアルバム中最もプログレ的な#6。ギターとシンセのユニソン・フレーズを中心に展開していく中間部はシンフォニック・プログレ・ファンなら大興奮間違い無し。
重層コーラスをフィーチュアした#7。北欧フォークロア風なメロディを奏でる3拍子+2拍子のシンセ・パートが印象的。
甘酸っぱい余韻を残し、再び最初からのリプレイを誘う#8。

親しみやすい明るくキャッチーなメロディと、FLOWER KINGSから屈折パートやダークな部分などを取り除いた結果残った希望溢れる桃源郷サウンドで綴る爽快なプログ・ポップ。

ピアノ、オルガン、アコギ、NORDのアナログ風・シンセ、メロトロンなどを必要以上に重ねないシンプルなサウンドでボーカル・ハーモニーを引き立てつつ、インスト・パートでは自然な変拍子やプログレ然とした節回しのシンセ・ソロが耳を楽しませてくれる職人的なアレンジも見事。これでメンバー全員が昼間は別の職業に就いているパート・タイム・ミュージシャンだとは・・・。

Track List

1. Lover's End Pt. I
2. A Kid Called Panic
3. Southern Belle
4. The World's Best Dreamers
5. New York City Summergirl
6. Heartland
7. Crossed the Rubicon
8. Lover's End Pt. II

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KARNATAKA / The Gathering Light

2010,UK

ウェールズ出身のシンフォニック・ロック・バンドKARNATAKAの4thアルバムThe Gathering Light。

前作発表後、メンバー達が各々自らのバンド結成に向かいバンドは解散状態になるも、イアン・ジョーンズ(B)を中心に新たなメンバーでバンドが復活。ゲストでIONAのマルチプレイヤー トロイ・ドノックリーが参加。イリアン・パイプやホイッスルで瑞々しいケルト風味を加えています。

イリアン・パイプがパッド系シンセの海と雷鳴のSEをバックに、滑らかな音色を響かせる厳かな小曲#1でアルバムはスタート。
枯れた味わいのギターが#1のムードを引き継ぎ、シンセのオーケストレーションを中心にドラマティックに盛り上がる#2。と、冒頭2曲はインストゥルメンタル。
ミクソリディアン・モードを使用した神秘的な美メロを女性シンガー リサ・フュリィ(Vo)がしっとり歌うシンフォニック・ロック#3。
ピアノとアコギ、ストリング・カルテットをバックに伸びやかに歌い上げるバラード#4。ここでもイリアン・パイプがナイスに味付けされてます。
サビの開放的ムードが心地良い、ケルト風メロディをコンテンポラリーに昇華した10分超の#5。
ストリング・カルテットにリサの美声が乗る静かな序盤から、リズム・インして一気に広がりのあるインストゥルメンタル・パートへ劇的に展開する12分超の#6。
中近東風メロディのオブリガードを取り入れたメロディアスな#7は、メインストリームでのヒットも狙えそうなポピュラリティ抜群の佳曲。もう一聴して気に入りましたね。
そして、再びイリアン・パイプやストリングスをフィーチャーし、伸びやかな歌唱が美メロを紡ぐ14分超の#8でしっとりと余韻を残してエンディング。

特に難しい事はやってないし、コード進行や展開もオーソドックスなんですが、憂いを保ちつつもポジティブな希望的メロディが美声と優美なサウンドと相まって爽やかな感動を呼ぶ傑作です。

Track List

1. The Calling
2. State Of Grace
3. Your World
4. Moment In Time
5. Serpent And The Sea
6. Forsaken
7. Tide to Fall
8. The Gathering Light

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TRANSATLANTIC / Whirld Tour 2010 DVD

2010,USA/UK/SWEDEN

現代プログレッシブ・ロックのスーパー・バンド、TRANSATLANTICの新作アルバムWhirldwindをサポートするツアーよりロンドン公演を収めたDVD。 2010年5月21日、会場はロンドンのShepherd’s Bush Empire。2000人収容の由緒あるホール。 ステージには左からニール・モーズ(Key/G/Vo)、ロイネ・ストルト(G/Vo)、ピート・トレワヴァス(B/Vo)、マイク・ポートノイ(Dr/Vo)が並列に並び、4人が同格である事をアピールしているようでもあります。一列下がった所にサポート・メンバーのダニエル・ギルデンロウ(G/Key/Vo/etc)が控え、少々狭いスペースでそれぞれがお互いにアイコンタクトを取りながら楽しそうに緻密なアンサンブルをキメていきます。 初っ端から最新作The Whirlwindの全編80分弱を通しで演奏。 長尺をものともしないタイトな演奏と、それを支える各メンバーの体力が凄い! それぞれの見せ場をキッチリ見せるカメラワークと編集も秀逸で、楽器をプレイする視聴者の満足度も高いですね。 インターミッションを挟み、又もや長尺の#2、ニール・モーズの12弦アコギとロイネのエレキによる美しいデュオから発展するバラード#3、DEEP PURPLEのHighway Starの一節を挿入した#4と続きDVD 1が終了。 DVD 2はアンコールの2曲。 ニール・モーズの今度はピアノとロイネ・ストルトのボリューム奏法を使用したギターのデュオでのバラード#1と、ドラムをニール・モーズに任せたマイク・ポートノイがステージ・ダイヴするラストならではの盛り上がりを見せる#2を収録。この部分は続くドキュメンタリーを見ると公演によって違っていたようで、ある時はマイク・ポートノイが仕切ってのオーディエンスとの掛け合いだったり、マイク・ポートノイがピート・トレワヴァスからベースをブン取って歌まで歌うBLACK SABBATHのHeaven and Hell(バンドが全然付いて来てない・・・)だったり、PURPLEのSmoke on the Waterだったりと、結局マイク・ポートノイのお楽しみタイムと化していた模様。 特典映像#5は、7月に行われたハイ・ヴォルテージ・フェスティバルにて、スティーヴ・ハケットを迎えてのGENESISのナンバー。ハケットの元祖ライト・ハンド奏法が拝めます。 さて、ここからは機材関係その他について。 ニール・モーズはCMEのマスター・キーボードUF80をメインに、左手にヴァーチャル・トーンホイールを搭載したROLANDのデジタル・オルガンVK-7をカギ型に配置したシンプルなセット。背後にはVK-7に接続したレズリー・スピーカーが鎮座し、本物へのこだわりを感じさせます。右手に見えるノートパソコンは、メロトロンからズ太いアナログ・シンセ風トーンまで多彩な音色をコントロールするソフトシンセをインストールしているんでしょうか。UF80の操作子を触っている様子が無いので、おそらくシーケンス・ソフトからMIDIのプログラムチェンジでパッチを切り替えているんでしょう。 そして、このライブの影の主役は何と言ってもダニエル・ギルデンロウ。 12弦アコギ、シンセ、パーカッション、バッキングボーカル、そしてエレキ、と縦横無尽に大活躍。場面転換での静かなアルペジオやロイネ・ストルトとのツイン・リード・ハーモニー、ボトルネック奏法、一部ではメンバー随一のパワフルなリードボーカルを聴かせたりと、ライヴの節目節目で印象的な役割を果たしています。 そのダニエル。よく見ると、エレキのフィンガー・ボードにPAIN OF SALVATIONの新作アルバムのタイトルである、Road Saltのインレイが施されています。ちゃっかり宣伝ですね。 さらによく見るとこのギター、7弦でしかもこのゆがんだフレットは?!

daniel

変形ヤング音律に基づいたものでは! 細かい説明は省きますが、このフレットの打ち方によって濁りの無い和音が奏でられるんですよね。 さすが完全主義者のダニエル、そこまで拘るとは・・・・ ただ惜しむらくはミックスの加減によりその効果があまり聴こえない事。残念です。ちなみにミックスはロイネ先生が行っておりますヽ(;´ω`)ノ とまぁそんな感じでお腹いっぱいのDVD2枚組。 TRANSATLANTICファンは勿論、PAIN OF SALVATIONファンも必見です!

Track List

DVD 1 (147 minutes)
1. The Whirlwind
2. All of the Above
3. We All Need Some Light
4. Duel With the Devil

DVD 2 (190 minutes)
1. Bridge Across Forever
2. Stranger in Your Soul
3. Documentary
4. Band Interview
5. Return of the Giant Hogweed (with Steve Hacket)

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RENAISSANCE / The Mystic and the Muse

2010,UK

アニー・ハズラム(Vo)、マイケル・ダンフォード(G)を中心とし、2009年に40周年を記念したツアー活動を再開したRENAISSANCEのミニアルバムThe Mystic and the Muse。

ツアーでは過去の名曲オンパレードになるのは仕方が無いとしても、せっかく現在進行形で活動するのであればクリエイティブな部分を見せて欲しいところ。
そんなファンの期待に見事に応えてくれました。

8分弱の大作#1は、マイケル・ダンフォードならではのミステリアスかつメロディアスなメロディが印象的な、往年の名曲達を彷彿させるドラマティックな佳曲。アニー・ハズラムの超高音スキャットに現役バリバリの迫力を、シンセ中心のシンフォニックなアンサンブルにコンテンポラリーな感触を感じます。ツアーをこなすことで昔のケミストリーが蘇ったんでしょうか。2000年の再結成アルバムTuscanyの楽曲テイストよりも、新旧の魅力が自然に融合された感じがあります。
#2,#3はアニー・ハズラムの歌唱をフィ-チュア。
叙情的な曲調に合わせて優しく歌うバラード・タッチの#2。
Scheherazadeの一節を引用しながらシンフォニックに歌い上げる#3。
気品とキャッチーさを両立させた見事な仕上がりは、マイケル・ダンフォードの作曲センスによるところ大です。
欲を言えば、ここにジョン・タウトのリリカルなピアノとジョン・キャンプのバキバキしたベースがあれば最高なんだけどなぁ。
曲線とグラデーションが特徴的なジャケット・アートはアニー画伯によるものです。

Track List

1. The Mystic and the Muse
2. Immortal Belpved
3. Tonight

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THE TANGENT / Comm

2011,UK

英国のプログレッシブ・ロックバンドTHE TANGENTの6thアルバム Comm。

タイタニック号が客船カルパチア号に送った遭難信号から現代のウィキペディアまで、コミュニケーション手段の様々な側面をテーマとしたコンセプト・アルバム。元IT BITESのフランシス・ダナリーからの影響が見て取れる若干21歳のルーク・マシン(G)が加入し、老獪なアンディ・ティリソン(Key/Vo)やテオ・トラヴィス(Sax/Fl)らと互角のインタープレイを披露。THE TANGENTに新鮮な息吹を注入しています。

ズ太いシンセのリフで幕を開け、ギターによる叙情的なテーマ・メロディ、シンフォニックなパートやハードなパートを織り交ぜた20分超の組曲#1。オブリガードでのさりげないスウィープ奏法やトーン・コントロールが見事なアコギ・ソロをキメるルーク・マシン、オルガンにシンセと変幻自在のプレイを聴かせるアンディ・ティリソンのプレイなど聴き所だらけの名曲。
ダークなムードの#2。ホールズワースやフランシス・ダナリーの系譜に連なるルーク・マシンの超絶変態フレージングが鮮烈なアクセントとなりつつ、朴訥なアンディ・ティリソンの歌唱とマイルドなテオ・トラヴィスのサックスでTHE TANGENTのテイストにまとめられています。
ジョナサン・バレット(B)のスムーズなフレットレス・ベースをフィーチュアしたメロウな#3。抑えたギター・ソロ、レズリーの回転をコントロールしたオルガンやペーソス漂うサックスなど味わい深い演奏が染み入ります。
オルガンのミニマルなリフにフルートが絡むカンタベリー・タッチの#4。お約束のファズ・オルガン単音ソロも登場。
叙情的なボーカル・メロディを中心に、静と動のダイナミズムを活かした起伏に富んだアレンジで構成した組曲の#5。

各パートが様々に表情を変えながら紡ぐアンサンブルと、確かなテクニックに支えられたギターやキーボードのツボを得たプレイが、静かなスリルを感じさせてくれる大人な作品です。名作!

ルーク・マシンは自身のプログレッシブ・メタル・バンドCONCRETE LAKE(PAIN OF SALVATIONからの影響モロ出しな微笑ましいネーミング。Tシャツも”BE”だし!)での作品リリースも予定している模様。
現代的なテクニックを活かした超絶技巧やアヴァンギャルドなフレージングから、少ない音数でセンス良く聴かせるプレイまで幅広くこなすこの男、今後注目されることになるかも。

Track List

1. The Wiki Man
2. The Mind's Eye
3. Shoot Them Down
4. Tech Support Guy
5. Titanic Calls Carpathia

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AGENTS OF MERCY / The Black Forest

2011,SWEDEN

活動休止中のTHE FLOWER KINGSに代わり、もはやロイネ・ストルト(G)のメイン・バンドとの感もあるスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドAGENTS OF MERCYの3rdアルバム The Black Forest。

日常に潜む不穏な事象を、”漆黒の森”に喩えたコンセプト・アルバム。

期待感と高揚感を煽るイントロから11分に渡って繰り広げられるシンフォニックな序曲#1。耳を捉えて離さないシンセとギターのユニゾンで奏でられる奇妙なメロディ、静寂と喧騒の対比や緩急を活かしたアレンジが冴えるドラマティックなナンバー。
ダークなムードの中、ファンキーに進行する#2。突如突き抜けるシンフォニック感覚にハッとさせられるニクいアレンジ。バッキングでのダーティなオルガン、インスト・パートでの7色のシンセと鍵盤群を変幻自在に操るラレ・ラーション(Key)のプレイが見事。
超絶シンセ・ソロをフィーチュアした、ヘヴィなギターとダーティなオルガンのリフがリードする#3。
タイトル通りの悲痛なメロディが胸に突き刺さるメランコリックなバラード#4。ロイネ・ストルトのストレートな泣きのギター・ソロが素晴らしいです。
THE FLOWER KINGSを思わせる桃源郷的シンフォに、ダークなテイストを内包したロックなサビを持つ歌唱パートが融合した#5。
メロトロンをうっすらと絡めたバックにロイネ・ストルトがメインのボーカルを取る#6。独特の苦味がある歌唱とセンス良いギターのオブリガードといったロイネ・ストルトの個性が、フック満載のアレンジとあいまった初期FLOWER KINGSのような趣のナンバー。
不穏なムードのSEを配した序盤から、ナッド・シルヴァンとロイネ・ストルトが掛け合いで歌う中近東風メロディをアクセントに使用した歌唱パートに移行する#7。ヘヴィなパートとゴスペル風コーラスをあしらった中間部のメロウなパートの起伏が楽曲にダイナミクスを生み出している。
序盤のまろやかなシンセ、霧のようなメロトロン、ギターの繊細なアルペジオが神秘的なムードを演出する#8。短いボーカル・パートを受け継ぎ、徐々に盛り上がる叙情的なバッキングに乗った2分半に及ぶエモーショナルなギター・ソロでアルバム56分の旅を締めくくるロイネ ファン感涙のメランコリックなナンバー。

前作でナッド・シルヴァンが見せた軽妙な英国風ポップを今回は封印、YESGENESISよりはむしろBLACK SABBATHLED ZEPPELIN寄り、と本人達が言うように、適度にエッジの立ったヘヴィネスやダークな色合いを増量。
そしてそれらが従来のシンフォニックなサウンドやプログレッシブな曲展開に見事に融合し、コンセプトの元にアルバム通して一分の隙も無い作品を作り上げました。

桃源郷サウンドがあまりにも緩く拡散してしまった近作のFLOWER KINGSよりも、むしろ初期THE FLOWER KINGSに近いドラマティックな起伏とロイネ・ストルトの存在感が楽しめるAGENTS OF MERCY。
来年あたりTHE FLOWER KINGSの活動再開もあるようですが、ロイネ節を期待するならAGENTS OF MERCYの方が良い様な気がします。

Track List

1. The Black Forest
2. A Quiet Little Town
3. Elegy
4. Black Sunday
5. Citadel
6. Between Sun & Moon
7. Freak Of Life
8. Kingdom Of Heaven

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WITHIN TEMPTATION / The Unforgiving

2011,NETHERLANDS

オランダのゴシック・メタル・バンドWITHIN TEMPTATIONの5thアルバムThe Unforgiving。

試行錯誤の1st、ケルトに活路を見出しスケールの大きなサウンドに進化した2nd、壮麗なオーケストレーションを施し独自のゴシック・メタルを完成させたた3rdとそのスタイルを継承した4th、と順調にキャリアを重ねシーンの頂点に君臨するに至ったWHITHIN TEMPTATION。
前作で感じた「これ以上完璧なモノがまだ創れるのか?」という危惧にも似た疑問に対する回答がこの5thアルバム。
その回答は意外なものでした。
まず商売的には、オリジナルのコミックに基いたストーリー仕立て、という楽曲ダウンロード時代でのCD販売を見据えた斬新なメディアミックス手法。
そして音楽的には、シャロン・デン・アデル(Vo)の異常なまでにしゃくり度合いを増したワイルドな歌唱法や、 これまでは存在すらしないかあってもアレンジされたメロディをなぞる程度だったギター・ソロが大幅増量で個性をアピールするなど、普遍的なHR/HMの様式に則った表現を随所に導入。
特にオケの一部と化し没個性にも感じられた存在からの脱却を果たしたギターの存在感は、前作・前々作でのオケ:ギター比率=7:3から4:6くらいにそのシェアを逆転。
壮麗でスケールの大きさをも感じさせる一方で作り込み感も高かったスタイルから、身近で少々ラフなスタイルへと、サウンドの質感に大きな変化をもたらしています。かといってシャロンの表現力に陰りは無く、メロディの質は相変わらず高いので、もはや質の問題では無く単に好きか嫌いかだけでしょう。
個人的には、溌剌としたシャロンも良いですが、”Forsaken”(The Silent Force)などのような清廉なソプラノ・ヴォイスをもっと聴きたかった。
次はどう出てくるんでしょうか?

Track List

1. Why Not Me
2. Shot In The Dark
3. In The Middle Of The Night
4. Faster
5. Fire And Ice
6. Iron
7. Where Is The Edge
8. Sinéad
9. Lost
10. Murder
11. A Demon's Fate
12. Stairway To The Skies

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