シンフォニック のレビュー

IQ / Resistance

2019,UK

英国の重鎮ポンプ・バンドIQの2019年作Resistance。

ズッシリしたリフに乗せた緊張感あるパートからシンセが唸りを上げるサビで一気にシンフォニックなカタルシスを味わえる#1。
内省的な序盤から次第にヘヴィかつスペイシーな広がりへと展開するシリアスな#2。
霧のような白玉シンセにピアノやアコギのアルペジオで繊細なムードを演出する前半から、リズム隊も加わり重厚なシンフォに移行する#3。
厚いシンセのサウンドスケープにエキゾチックな管楽器風のアクセントを加えたミステリアスな前半とギターとヴォーカルをフィーチュアした後半からなる#4。
メロトロンの雲の上に切々とした歌唱が乗るシンフォ・バラード#5。
パッド系シンセとまろやかなベースをバックにしたマイルドなナンバー#6。
どこか郷愁をそそりながらユーモラスでもある足踏みオルガン風のサウンドと幽玄なアレンジが浮遊感を演出する序盤、起承転結を持つギター・ソロをフィーチュアしテンポを上げた中盤を経て、解放感とポジティブなムードに包まれた終盤へと展開する15分超えの#7。
シンセと手数の多いドラムがリードする変拍子リフレインを軸にその変奏や緊張と緩和による緩急で21分超えをドラマティックに描く#8。
エモーショナルなギター・ソロを配したバラード#9。
攻撃的なオルガンと抑制されたギターが対比する#10。
浮遊するシンセをバックにしたドリーミーなバラード、スリリングなバンドの器楽パート、スペイシーなシンフォパート等からなる#11。

スロー~ミディアム・テンポの曲調にシンセの白玉アレンジが多く、アルバム全体に統一した抒情的ムードはあるものの、楽曲ごとの強烈な個性に欠ける印象。そんな中、ズ太いトーンと派手なポルタメントで楽曲に印象的なフックをもたらすIQ加入後2作目となるニール・デュラント(Key)がアレンジ面で気を吐き、ピーター・ニコルズ(Vo)の耳馴染みの良い歌唱で長尺かつ重厚な楽曲群を聴かせきってしまう大御所の貫禄。

Track List

Disc1
1. A Missile
2. Rise
3. Stay Down
4. Alampandria
5. Shallow Bay
6. If Anything
7. For Another Lifetime

Disc2
1. The Great Spirit Way
2. Fire And Security
3. Perfect Space
4. Fallout

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カテゴリー: IQ

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CHASING THE MONSOON / No Ordinary World

2019,UK

KARNATAKAの中心人物イアン・ジョーンズ(B/Key)によるプロジェクト。KARNATAKAのアルバムThe Gathering Lightに参加していたリサ・フューリー(Vo)をフィーチュア。

ウェットな質感のサウンドとパーカッションがエキゾチックなムードを醸成する、神秘的な女声スキャットを配したインストゥルメンタル#1。
モーダルなメロディが印象的な抒情シンフォニック・バラード#2。
1コードのみで進行するモーダルな前半から瑞々しいサウンドスケープとスキャットに移行するエスニック風味漂う#3。
リサ・フューリーの歌唱をフィーチュアしたポップなAORチューン#4。
コーラスや歌メロ及び男性ボーカルの声質からYESを彷彿させるポジティブな印象のファンタジック・チューン#5。
雲海のようなパッド系シンセの上にリサ・フューリーの美声がたゆたう#6。
クールなヴァースからメランコリックなサビへと展開する#7。
アコギによるトラッド風リフレインにスキャットとトロイ・ドノックリーのイリアン・パイプが乗るケルティックなテイストの#8。
エスニック風味が皆無でアルバム中でも異色のALL ABOUT EVEのような抒情チューン#9。
宗教的とも言える厳かなサウンドスケープに雷鳴のようなSEが絡むドラマティックなイントロを有するスケールの大きな抒情シンフォ#10。

ワールドミュージック風バックグラウンドにコンテンポラリーな歌モノ要素を融合したスタイルが新鮮な女性ボーカル・シンフォ。
少々鼻にかかった声質のリサ・フューリーの歌唱は、シンフォニック・メタルのような壮麗な装いに変化した本家KARNATAKAにはそぐわないが、本作のような神秘性も湛えた落ち着いたムードには非常にマッチしている。

Track List

1. Chasing The Monsoon
2. Circles Of Stone
3. Dancing In The Afterglow
4. Dreams
5. Into The Light
6. Innocent Child
7. December Sky
8. Lament
9. Love Will Find You
10. No Ordinary World

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THE FLOWER KINGS / Waiting For Miracles

2019,SWEDEN

FLOWER KINGSとしては6年ぶりとなる13thアルバムWaiting For Miracles。

徐々に煌びやかさを増していく静かなピアノがアルバム全体と続く#2のイントロとなっているインストゥルメンタル小品DISC1 #1。
希望的メロディとアナログ・シンセ、ロイネ・ストルト(G/Vo)の味わい深い歌唱、演劇的なフックのあるインスト・パートとTHE FLOWER KINGSらしさの詰まったDISC1 #2。
メインのモチーフを中心に軽快なオルガンをはじめとた鍵盤群が色を添え、幻想的ムードを掻き立てるインスト・パートを絡めて場面転換していく10分超のエピック・チューンDISC1 #3。
シンセのミニマルなシーケンスとヨナス・レインゴールド(B)のフレットレス・ベースの甘いトーンが幻惑的ムードを醸し出す序盤から、少々センチメンタル要素をまぶした桃源郷サウンドがゆったりと進行するDISC1 #4。
ハッセ・フロベリ(Vo)とロイネ・ストルト2人の歌唱で綴るバラードDISC1 #5。
映画のサウンドトラックのような幻想的インストゥルメンタルDISC1 #6。
オーソドックスなポップ・チューンDISC1 #7。
冒頭にジャケット・アートの象を思わせる鳴き声を配置、ギターとシンセがリードするインストゥルメンタルDISC1 #8。
印象的でドラマティックなイントロから抒情的な歌唱パートに移行するDISC1 #9。
ロイネによる粘っこいギターと枯れた味わいの歌唱をフィーチュアしたDISC1 #10。

DISC1 #1をより元気にシンフォニックにしたリプライズDISC2 #1。
シンセによるサウンドスケープやDISC1 #3の歌唱パートのサンプル素材のコラージュからなるDISC2 #2。
タイトルから受けるSF的要素よりもメロウな抒情が際立つDISC2 #3。
躍動感あるリズムに希望的サウンドが乗るDISC2 #4。
アウトロとなるインスト小品DISC2 #5。

ROINE STOLT’S THE FLOWER KING名義のアルバムManifesto Of An Alchemistがロイネ・ストルトの魅力を前面に打ち出した事で初期FLOWER KINGSを彷彿させる佳作になった反面、THE FLOWER KINGS名義の今作Waiting For Miraclesは、長らく鍵盤パートを担っていたトマス・ボディンの不在で、良くも悪くもトマス・ボディンの持っていた多彩な音色や意外性のあるフレーズといったアクの強さがFLOWER KINGSには不可欠なのだと逆説的に知らしめる結果となってしまった。随所にヨナスやハッセが個性を発揮する場面はあるものの、バンドFLOWER KINGとしての個性にまで昇華していないのが少々残念。

Line-up / Musicians
– Roine Stolt / electric & acoustic guitars, keyboards, lead vocals
– Jonas Reingold / bass, fretless bass
– Hasse Fröberg / lead & backing vocals
– Zach Kamins (An Endless Sporadic) / guitar, keyboards
– Mirko DeMaio (Mind Key) / drums, percussion

With:
– Michael Stolt / bass, vocals
– John “Zach” Dellinger / viola
– Paul Cartwright / violin

cover art created by US artist Kevin Sloan

Track List

Disc 1:
1.House Of Cards
2.Black Flag
3.Miracles For America
4.Vertigo
5.The Bridge
6.Ascending To The Stars
7.Wicked Old Symphony
8.The Rebel Circus
9.Sleep With The Enemy
10.The Crowning Of Greed

Disc 2:
1.House Of Cards Reprise
2.Spirals
3.Steampunk
4.We Were Always Here
5.Busking At Brobank

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BAROCK PROJECT / Seven Seas

2019,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの6thアルバムSeven Seas。

ストリング・セクションを絡めて静と動を行き来するスケールの大きなシンフォニック・ロック・チューン#1。
ジャキジャキした7拍子のギター・リフがリードするキャッチーな北米プログレ・ハード風ナンバー#2。
一転してロマンティックなピアノが主導するヨーロピアン・テイストの#3。抒情的かつ印象的なモチーフを彩りを変えながら巧みに展開。シンセやオルガンによるスリリングな・インスト・パートを内包した構成力も見事。
徐々に盛り上がるドラマティックな構成にロックのダイナミズムとクラシックの端正さを融合したエピック・チューン#4。
バロック調のアコギとストリングスが端正な彩を加え、感傷的な中にも炭火のような温かさを持つ歌メロをフィーチュアした小品#5。
瑞々しいサウンドスケープから内省的な歌唱パートやアナログ風シンセが唸るインスト・パートを経て美しく感動的にエンディングへと展開する11分超の#6。
アコギをバックにしたジェントルな弾き語りからロック・パートに移行、スペイシーなシンセを交えて空間的な広がりを見せたかと思うとギター/シンセ/ベースのユニゾンで早いパッセージを聴かせる超絶パートで度肝を抜く#7。
イタリアらしい歌心ある美メロをアコギやピアノ、ストリングスがドラマティックに支えるバラード#8。
地中海的な明るさを持つポップ・チューン#9。
シンセを中心にエレクトリック楽器がリードするコンテンポラリーなロック・チューン#10。
アルバムのラストを飾る感動的なバラード#11。

冒頭の2曲を聴いた段階でだいぶ作風が変わったか?と思わせるも、#3以降からお馴染みのBAROCK PROJECT節が炸裂。トータルで見た場合、音楽性やスケールがさらに拡張していることに唸らされる。
クラシックの端正さや構築美に豪放なロックをモダンなセンスで融合し独自のプログレを推進。一人でピアノ・リサイタルもやっちゃう位の本物の音楽家ルカ・ザッビーニの才能に驚きっ放し。

– Luca Zabbini / keyboards, acoustic guitar, vocals
– Francesco Caliendo / bass
– Marco Mazzuoccolo / electric guitars
– Eric Ombelli / drums, percussion
– Alex Mari / lead vocals, acoustic guitar

Track List

1. Seven Seas
2. I Call Your Name
3. Ashes
4. Cold Fog
5. A Mirror Trick
6. Hamburg
7. Brain Damage
8. Chemnitz Girl
9. I Should Have Learned To
10. Moving On
11. The Ones

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LONELY ROBOT / Under Stars

2019,UK

ジョン・ミッチェル(G/Vo)によるソロ・プロジェクトLONELY ROBOTのPlease Come Home(2015)、The Big Dream(2017)と合わせて3部作との位置づけとなる3rdアルバム。
ドラムをクレイグ・ブランデル(Dr)が叩いているほか、一部でSteve Vantsisがベースをプレイしている以外の全てを本人がプレイ。

ジャケット・アートのイメージ通りの序曲#1。
7拍子リフのメロディをモチーフに展開する#2。
爽やかさとメランコリーが融合したサビが印象的な#3。
エモーショナルなギター・ソロと歌唱が胸を打つバラード#4。
イントロのテーマ・メロを軸にしたメロディアス・シンフォ#5。
重層的なシンセのオーケストレーションでスペイシーな浮遊感を醸し出す#6。
マイルドなシンセ音による5拍子アルペジオがリードする#7。
ヘヴィな5拍子リフとシンフォニックなサビの落差が耳を惹く#8。
思索的ムードの壮大なバラード#9。
スペイシーなインストゥルメンタル#10。
3部作の終幕となる優しいメロディの#11。

絶妙な空間処理による透明感ある音像がキャッチーなメロディの魅力を増幅。特徴的なリフやテーマを繰り返すことでで楽曲を強く印象付ける手法も常套手段ながら巧み。だからこそ#8のような変化球も活きてくる。
本人によれば、本プロジェクトの今後はどうなるかわからない、とのことだが。。

Track List

1. Terminal Earth (1:55)
2. Ancient Ascendant (5:47)
3. Icarus (5:20)
4. Under Stars (5:16)
5. Authorship of Our Lives (5:39)
6. The Signal (3:19)
7. The Only Time I Don't Belong is Now (5:15)
8. When Gravity Fails (5:03)
9. How Bright is the Sun? (6:03)
10. Inside this Machine (3:28)
11. An Ending (2:39)

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MAGENTA / Masters of Illusion

2020,UK

MAGENTAの8thアルバムMasters of Illusion。『魔人ドラキュラ』主演俳優の#1をはじめ、50~60年代ホラー映画の名優達を題材にしたコンセプト作。

凝ったリズムがボーカル・メロディにガッチリ噛み合ってポップな耳馴染みの良さを感じさせる。ロブ・リード(Key)らしいドラマティックなオーケストレーションやコーラスのアレンジとクリスティーナ・ブース(Vo)の美声で一気にMAGENTAワールドに引き込まれる#1。
モーダルな歌メロが浮遊し、アコギと柔らかな管楽器による穏やかで気品あるアレンジがRENAISSANCEを彷彿させる#2。
ポジティブで高揚感ある展開の中間部を持つ、サビメロが温かく優しさに満ちたバラード・チューン#3。
コンテンポラリーなムードとシンフォニックな要素をコンパクトにまとめたプログレ・ポップ・チューン#4。
感傷的な序盤からボーカルを引き立てるシンフォニックなパート、客演のピート・ジョーンズ(Sax)をフィーチュアしたシンセとの掛け合いを含む器楽パート、と場面転換しながら終盤はトロイ・ドノックリーのイリアン・パイプが仄かな郷愁を残す#5。
抒情的なテーマを奏でるマイルドなエレキ、YESを彷彿させるチャカチャカしたワウ・ギター、アコギなど各種ギターにオルガンやアナログ・シンセの鍵盤群など、バンド・サウンドを中心に長尺を紡ぐ16分超えのエピック・チューン#6。

全編を覆う端正な英国感と穏やかな温かみが心地よい秀作。

Track List

1. Bela
2. A Gift From God
3. Reach For The Moon
4. Snow
5. The Rose
6. Masters Of Illusion

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THE FLOWER KINGS / Islands

2020,SWEDEN

前作Waiting For Miracles同様、ザック・カミンス(Key)、ミルコ・ディマイオ(Dr)を含むラインナップでの2作目。カヴァー・アートはついにロジャー・ディーンが担当。

躍動感とロイネ・ストルト(G/Vo)の渋い歌唱で期待が高まるオープニング・チューン#1。
リラックスした7拍子でカラフルな桃源郷感を醸し出す#2。
ペーソス溢れるメイン・メロディを中心にQUEEN風ハーモナイズ・ギターも登場するシアトリカルな#3。
ロイネ・ストルトのジェントルな歌唱が味わえるほのぼの爽やかチューン#4。
ポジティブなムードに包まれたノリノリの5拍子プログレ・ポップ#5。
メランコリックなシンフォニック・バラード小品#6。
カッコ良いジャズ・ロック・インストゥルメンタル小品#7。
グルーヴィなシンフォニック・フュージョン#8。
中間部にプログレ然としたアナログ・シンセ・ソロやファンタジックなインスト・パートを配しつつも、クールネスと哀愁を兼ね備えた歌唱パートで聴かせる#9。
ロイネの粘る歌唱とギターをフィーチュアした穏やかなナンバー#10。
ワウ・ギターが歌いまくるインストゥルメンタル#11。

ヨナス・レインゴールド(B)のメロディアスなベース・ライン、ハッセ・フロベリ(Vo)の溌溂とした歌唱がリード。感傷的なサビを持つ#12。
ザック・カミンスのオルガンがELPのタルカスばりにグイグイ迫り、ミステリアスなムードで進行するインストゥルメンタル#13。
メロトロンを薄っすらと使用するセンスが洒落たプログレ・AOR・チューン#14。
スリリングなプログレ・ジャズ・ロック・インスト#15。
ゲストのロブ・タウンゼント(Sax)のソプラノ・サックスをフィーチュアした#16。
ロイネ・ストルトのコシのある・ギター・トーンとメランコリックなフレージングが楽しめる#17。
ギター・ソロのロングトーンがむせび泣くメランコリックな#18。
ベースがグルーヴをリードするAORチューン#19。
シンフォニックにデコレートされたポップ・チューン#20。
スライド・ギターが幻想的ムードを醸し出す#21。

ジャケット・カヴァーのファンタジックな印象から往年のYESのような超大作をイメージするも、内容は短尺歌モノ中心で随所に印象的なフックを配しながらじっくり聴かせるタイプの落ち着いた楽曲集。DISC1は特にロイネ色が強く、往年のテイストが感じられる。
各種鍵盤を操るザック・カミンスはインスト曲などで時折スゴ腕を見せるものの、全般的にアンサンブルに合わせた堅実な仕事。もっと暴れてもらって長尺曲で緊張と緩和のドラマを作ってくれても大歓迎なんですが。

Track List

DISC 1
1. Racing with Blinders On (4:33)
2. From the Ground (4:11)
3. Black Swan (5:58)
4. Morning News (4:06)
5. Broken (6:48)
6. Goodbye Outrage (2:25)
7. Journeyman (1:49)
8. Tangerine (4:13)
9. Solaris (9:32)
10. Heart of the Valley (4:42)
11. Man in a Two Piece Suit (3:29)

DISC 2
12. All I Need Is Love (5:54)
13. A New Species (5:56)
14. Northern Lights (5:45)
15. Hidden Angles (0:52)
16. Serpentine (3:53)
17. Looking for Answers (4:45)
18. Telescope (4:52)
19. Fool's Gold (3:18)
20. Between Hope & Fear (4:42)
21. Islands (4:15)

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FROST / Others

2020,UK

当初ダブル・アルバムを想定していたFalling Satellites時に書かれた作品をまとめたEP。

畳みかけるリフに深遠なストリングス系をはじめ様々なデジタル・サウンドで埋め尽くした鮮烈なオープニング・チューン#1。
感傷的なバラード・パートや躍動するサビなどをデジタル・シーケンスで構築した#2。
冒頭にエキゾチックなSEを配し、デジタル・ビートで押し捲る#3。
メロディアスなボーカル・ラインをフィーチュアした#4。
サンプリング・ヴォイスによるシーケンスで基本部分を構築した異色の#5。
アンビエントな音像によるサウンドスケープ#6。

ギターをはじめとするロック・バンド的な要素が少なく、全編ジェム・ゴドフリー(Key/Vo)のシンセが活躍。
それでも#1の分厚いリフ、#3の攻撃的なシンセ・ソロ、#5の荘厳なサウンドスケープなどにはFROSTらしさが十分に感じられ、つまりジェム・ゴドフリーこそがFROSTなのだと再認識。

Track List

1.Fathers
2.Clouda
3.Exhibit A
4.Fathom
5.Eat
6.Drown

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カテゴリー: FROST

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WOBBLER / Dwellers of the Deep

2020,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンド WOBBLERの5thアルバム。

オルガンを中心にメロトロンやピアノでリードする鍵盤を軸に、オルガンのリフに絡みつくようなギターをはじめバンド全体がタイトに進行する#1。
厳かなオルガンとコーラスで幕を開け、躍動する歌唱パート、オルガンとギターのスリリングなハーモニーなど、疾走感がカッコよい#2。
穏やかなアコギに妖しいメロトロンの白玉がアクセントで効いたまどろみフォーク#3。
エキゾチックなミステリアスさを湛えたメロディを緩急交えたアンサンブルで支え、不穏なムードを演出する大曲#4。

縦横無尽なアナログ楽器の薫りと緻密な演奏アンサンブルから硬質な印象を受けるが、#1後半にみられる北欧フォークロア風メロディや垢抜けない歌唱で中和してWOBBLER独特のヴィンテージ・サウンドを展開している。

Track List

1. By the Banks (13:49)
2. Five Rooms (8:28)
3. Naiad Dreams (4:24)
4. Merry Macabre (19:00)

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TRANSATLANTIC / Abusolute Universe

2021,USA,UK,SWEDEN

TRANSATLANTICの5thアルバムAbusolute Universe。

アルバム各所に織り込まれたモチーフを織り込んだ序曲#1。
軽快なイントロからあまりお上手とは言えない歌唱が飛び出す#2。サビでのニール・モーズ(Key/Vo)による歌唱が力強くさすがの上手さだけに落差が残念。
ロイネ・ストルト(G/Vo)の味わい深い歌唱とシンフォニックなオブリガード、サビのコーラスが印象的な#3。
エキゾチックなテーマ・メロディや全体のムードがロイネ主導と思われるFLOWER KINGS風桃源郷シンフォ#4。
変拍子とコード・チェンジで展開する熟練のインスト・パートを内包。#3のモチーフをメジャーに変換したメロディに導かれる開放的フォーク#5。
3連のリズムに乗せた英国風ロカビリー#6。
BEATLESやGENESISを彷彿させる端正で甘酸っぱいポップ・チューンにアルバムのテーマ・メロディを巧みに挿入した#7。
ハードボイルドなベース・ラインがリードする#8。
掻き鳴らしギター・ロック風イントロ、変幻自在なドラムがリードするインスト・パート、メロディアスな歌唱パート等からなる9分超の大作#9。
#2の別バージョンのような躍動感ある#10。
アコースティックな小品#11。
ミステリアスなムードとスリリングな切り替えしにロイネ色が濃い#12。
感傷的なバラードから入り、テーマ・メロディを交えて壮大に展開する#13。
#2のテーマの変奏で織り込まれた#14。
#16のイントロ的歌モノ小品#15。
よりスポンティニアスなインスト・パートで再構成した#8のリプライズ#16。
オルガンが躍動するトリッキーな変拍子パート、GENTLE GIANT風コーラス・パートを配し、アルバムのテーマをおさらいのように奏でる#17。
アルバムのメイン・テーマを雄大かつ壮大に聴かせて幕を閉じる#18。

ギターとシンセのフレージングが微妙にズレて各人の個性を演出しニヤリとさせるユニゾン・パート、ポップ・バンドのようなキャッチーなコーラス・ワークなどTRANSATLANTICらしい余裕と、一部で素人臭い歌唱が音楽の旅からリスナーを現実世界に引き戻す民主・平等路線の弊害が共存するお馴染みの作風。
ではありながら、要約版(モーズ、トレワヴァスが賛成)、拡張版(ストルト、ポートノイが賛成)、究極版と、収録楽曲及び全体の尺や歌唱者などが異なる3つのバージョンでリリースしてしまうところに絶対的リーダーが居ない不安も感じさせるが、この緩さもまた彼ららしさなのかもしれない。
いくつかのテーマが各楽曲を往来しながら最終的に大団円を迎える、というコンセプト・アルバムの典型パターンではあるが、弱いテーマ・メロディの繰り返しによるくどさ、この手法に対するリスナーの慣れもあってか爽快感はそれほどでもない。

Track List

1. Overture
2. Heart Like a Whirlwind
3. Higher Than the Morning
4. The Darkness in the Light
5. Swing High, Swing Low
6. Bully
7. Rainbow Sky
8. Looking for the Light
9. The World We Used to Know
10. The Sun Comes Up Today
11. Love Made a Way (Prelude)
12. Owl Howl
13. Solitude
14. Belong
15. Lonesome Rebel
16. Looking for the Light (Reprise)
17. The Greatest Story Never Ends
18.Love Made a Way

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FROST / Day And Age

2021,UK

ジェム・ゴドフリー(Key/Vo)による英国のプログレ・プロジェクトFROSTの4thスタジオ・フル・アルバムDay And Age。

スペイシーかつメロディアスに疾走する爽快なオープニング・チューン#1。
思索パートとFROSTらしいヘヴィなリフが絡み合う#2。
流れるようなピアノのアルペジオ、音像を包み込むサウンドスケープが心地よい#3。
ドラム・パターンやギターのカッティングなどのモチーフがシンセのリフを軸に有機的に一体化していくトランス感覚のプログ・ポップ#4。
典型的ポップ・ソングのフォーマットに中間部のエキゾチックなムードを纏ったシンセで捻りを加えた#5。
シンセの深遠なオーケストレーションがリスナーを没入させる#6。
メランコリックな歌唱パート、ズ太いリフ、#1のリフレイン挿入など様々な表情を見せる#7。
#7から継承したテーマ・メロディを展開させていく#8。

中心人物ジェム・ゴドフリー、ジョン・ミッチェル(G/Vo)に加え、ネイサン・キング(B)、ドラマーはパット・マステロットなど3名が参加。
全編に通底するスタイリッシュで冷ややかな質感と爽快感がFROSTらしく、予想不能な楽曲進行がスリリング。型にハマった懐古型プログとは別次元の現在進行形プログにどっぷり浸れます。

Track List

1. Day And Age
2. Terrestrial
3. Waiting For The Lie
4. The Boy Who Stood Still
5. Island Life
6. Skywards
7. Kill The Orchestra
8. Repeat To Fade

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カテゴリー: FROST

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THE TANGENT / The Slow Rust of Forgotten Machinery

UK,2017

アンディ・ティリソン(Key/Dr/Vo)率いるTHE TANGENTの9thアルバムThe Slow Rust of Forgotten Machinery。

ミニマルなオルガンのフレーズや女性コーラスがカンタベリーなテイストを漂わせる#1。ここぞで登場する突き抜けたシンセが爽快感抜群。アンディ・ティリソンの素朴な歌唱、スリリングなインスト・パート、抒情を帯びたメロディとTHE TANGENTらしいシンフォニック・ナンバーとなっている。
各パートが緻密に絡み合うアンサンブルと滑らかなインプロヴァイズで聴かせるジャズ・ロック#2。アームを巧みに駆使した官能的なフレージングから超絶シュレッドまで弾きまくるルーク・マシン(G)をフィーチュアしつつ、クールに抑えたプレイで支えるテオ・トラヴィス(Sax/Fl)の職人技も光る。
随所に印象的なフックを配して静と動、陰と陽の起伏を付けて進行する歌唱パート、シンフォニックなインスト・パートの2軸が交差する22分超の大作#3。
ヨナス・レインゴールド(B)のベース・ソロやアンディ・ティリソンによる40秒程のドラム・ソロを含むソロ・パートがテクニカルでスリリングな#4。
心地よいグルーヴと仄かな抒情を交えたAOR風ジャズ・ロック#5。ホルストの木星からの引用は色んな所で手垢が付き過ぎて今更感も。
4つ打ちのバスドラとハンドクラップで一瞬ダンス系?と驚くも柔らかな音色で舞うシンセのメロウネスにほっとするエンディング・ナンバー#6。

ヨナス・レインゴールド、テオ・トラヴィス、ルーク・マシンといったお馴染みのメンバーに、ルーク・マシンとはMASCHINEでのバンドメイトであるマリー・イヴ ド・ゴルティエ(Key/Vo)が参加。4thアルバムNot As Good As The Book以来の女性ボーカルが、NATIONAL HEALTHHATFIELD AND THE NORTHの可憐な女性コーラスを彷彿させ、シンフォニックなカンタベリー風ジャズ・ロックという独自路線の確立に貢献。
場面に応じて適材適所のプレイを披露するルーク・マシンはプロデュースも担当。多彩な技巧に加えエモーショナルな表現力も増し、バンド内での存在感を強めている。

Track List

1. Two Rope Swings 06:32
2. Dr. Livingstone (I Presume) 11:58
3. Slow Rust 22:31
4. The Sad Story Of Lead and Astatine 16:00
5. A Few Steps Down The Wrong Road 17:31

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