シンフォニック のレビュー

SPOCK’S BEARD / Brief Nocturnes and Dreamless Sleep

2013,USA

アメリカのプログレッシブ・ロック・バンドSPOCK’S BEARDの11thアルバムBrief Nocturnes and Dreamless Sleep。
ニック・ディヴァーリジオに代わりジミー・キーガン(Dr)、さらにENCHANTのテッド・レオナルド(Vo/G)を加え5人編成となった。

オープニングに相応しいドラマティックなイントロ、オルガンのシンコーペーション、メロトロンとおいしい要素盛り沢山の序盤から、ボーカル・パートは一旦落としたムードでプログレのインフレを解消。叙情メロやメタルっぽい激しさを交えて進行する#1。
ノリノリの7拍子に乗ったクールなシンセのテーマ・メロでいきなりハートを掴む#2。アーミングやワーミーペダルを駆使して奏でられる光線銃のSEみたいなトリッキーなギター・ソロがブッ飛んでいてカッコ良い。それでいてメロウなパートではメロトロンを投入するなどフックだらけの名曲。
ストリングス、フルート、クワイヤなど様々な音色のメロトロンとズ太いシンセが堪能できる、スケールの大きさと繊細な叙情の起伏も素晴らしいプログレッシブ・チューン#3。スネア2発打ちからのベンダーを使った短いシンセ・ソロは必聴。
アメリカンなおおらかさに少々エキゾチックな風味を加えたテッド・レオナルド作の#4。
左右にパンニングされたパーカッシブなクラヴィネットとロックなギターが、ユニゾンや互いを補完するバッキング・プレイでリードする#5。GENTLE GIANTのようなアカペラ・パートがアクセントになっている。
キャッチーな歌メロとエモーショナルなインストゥルメンタル・パートがバランス良く配合された#6。
ニール・モーズが作曲とギターで参加した12分超の大作#7。TANSATLANTIC的というか初期SPOCK’S BEARD風でもある疾走感あるキャッチーなボーカル・パートが心地良い。ダウンテンポしてのメロウなギター・ソロが次第に激しさを増し、テンポ・チェンジして快活なシンセ・ソロに移行する場面は鳥肌モノの爽快感。壮大なテーマ・メロを配し、巧みな起伏と場面転換で長尺を描き切ってしまうあたりはさすが。

ちょっとしたオブリガードさえも聴き手の印象に刺さる心憎いアレンジや随所に登場するキャッチーなメロディの本物感は、歴史を重ねてきたバンドならでは。
展開の妙を満喫できる#2,#3,#7はヘヴィ・ローテーション決定ナンバー。

Track List

1. Hiding Out
2. I Know Your Secret
3. A Treasure Abandoned
4. Submerged
5. Afterthoughts
6. Something Very Strange
7. Waiting For Me

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STEVEN WILSON / The Raven That Refused To Sing

2013,UK

スティーヴン・ウィルソンの3rdアルバムThe Raven That Refused to Sing。

このところ、KING CRIMSONを皮切りに、ELPやJETHRO TULLなどの旧作リマスターの仕事でも評価を上げ、自らの作品でパフォームするだけでなく新旧プログレ界の架け橋としての存在感も増す、現在のプログレ界で最も多忙で重要な人物であるスティーヴン・ウィルソン。

ニック・ベッグス(B ex.KAJAGOOGOO)、マルコ・ミンネマン(Dr)、テオ・トラヴィス(Sax/Fl)等、錚々たるメンツを集めてレーコーディングされた本作は、プロデュースをアラン・パーソンズに委ねた万全の体制。

疾走感のもたらすソリッドなスリルと静かなパートでのフルートやメロトロンの幽玄な叙情の2面性を持つ#1。
ストリングスも絡め、メロディアスで美しくメランコリックな#2。E-BOWを掛けたギターのフィンガリングのみと思しき滑らかなソロが曲にマッチして胸を熱くします。
各人のソロとそれに呼応するドラムやオルガンのバック陣によるジャムをフィーチュアした冒頭2分、ボーカル・パートでのロックの王道リック、そして王道リックから深遠なパートに移行する意外な展開など、並みのバンドやアーティストなら数曲分に相当するアイディアを贅沢に詰め込んだ#3。
ミステリアスなムードの中、静と動の起伏を巧くつけた#4。
心に染み入る弾き語りパートやメロトロンやスキャットが加わるインスト・パートなど、アコギのアルペジオをフィーチュアした前半から、フルートやクロマチックなフレーズが印象的なギター、サックスによるソロ・パートを挟み、ピアノのアルペジオがリードするボーカル・パートを経てダークに盛り上がる終盤へと展開するプログレッシブ・チューン#5。
ひたすら美しくそしてシンフォニックにもなる、ダークでファンタジックな#6。

ユニゾンやキメがハマった時のカタルシスなどバンドならではのアンサンブルの妙を感じさせる場面も多々あり、内省的な印象の強かったこれまでのソロ作とはまた違った味わい。
スティーヴン・ウィルソン自身、「音楽の旅」ができるアルバムを聴いて育った、とインタビューで語っていたが、本作はまさにその音楽の旅に浸れる傑作。
レジェンドに触れて得た様々な奥義を吸収、咀嚼してスティーヴン・ウィルソンとしてのフィルターを通して表現した、刺激的でいて懐かしくもある素晴らしい作品に仕上がってます。

Track List

1. Luminol
2. Drive Home
3. The Holy Drinker
4. The Pin Drop
5. The Watchmaker
6. The Raven That Refused To Sing

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BIG BIG TRAIN / English Electric (Part Two)

2013,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンド BIG BIG TRAINの8thアルバムEnglish Electric (Part Two)。

スリリングなパートとゆったりとした叙情パートの緩急がドラマティックな15分超の#1。後半、徐々に盛り上がる5拍子のリフレインが壮大なシンフォニック。美しいコーラスや甘美なストリングス、まろやかなブラス・セクションが英国らしい気品を湛えています。
柔らかな管が暖かく響く、センチメンタルな序盤から仄かな明るさを持つサビに移行する#2。
構築度の高いギター・ソロが印象に残る、GENESISの小品のような英国情緒を纏った#3。
どこかオリエンタルなムードに翳りを伴ったヒネリを加え、短い中にドラマを凝縮した#4。
バンジョーやフィドルによる軽快なフォークロア風味と叙情シンフォニックが融合した#5。
Part One 1曲目The First Rebreatherではボーカルやシンセによって奏でられたメロディを管弦の優しいタッチに趣を変えて挿入された#6。
静かなバラードからドマラティックに展開していく#7。アルバム2枚のラストを飾るに相応しい感動のリフレインが胸を熱くします。

前作のEnglish Electric (Part One)同様、蒸気機関車、造船業者、修道院の廃墟を保全する人、蝶の研究家など、近代~現代イギリスにまつわる実話や普通の人々をテーマにした楽曲で構成。管弦を導入した端正な音像と美しいメロディライン、ジェントルな歌唱から、それらの事象や人々にする優しい目線が感じられます。

Track List

1.East Coast Racer
2.Swan Hunter
3.Worked Out
4.Leopards
5.Keeper of Abbeys
6.The Permanent Way
7.Curator of Butterflies

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RENAISSANCE / Grandine Il Vento

2013,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドRENAISSANCEの2000年作Tuscanyから13年ぶりとなるアルバムGrandine Il Vento。

2009年頃からの70年代ライブ音源や映像作品リリースを発端とし、ツアー活動にEPアルバムThe Mystic and Other Storiesの発表など、他の懐メロ集金バンド達とは一線を画した現役バンドらしい活動を行ってきたRENAISSANCE。全盛期のメンバーはアニー・ハズラム(Vo)とマイケル・ダンフォード(G)のみというのは寂しい部分もあるが、マイケル・ダンフォードが新曲を書きそれをアニー・ハズラムが歌う、というスタンスはこの近年の活動を正統なRENAISSANCEとして認めさせるに充分な説得力を持っていたのは事実。
そして、ツアーを続けながら基金サイトKICKSTARTERで衣装や楽器などお宝グッズと引き換えに基金を募り、新作の制作を進めているという情報も、現役バンドRENAISSANCEの復興に心躍らせる要因であった。
そんな中、2012年11月にマイケル・ダンフォードの悲報が・・・
活動が順調であっただけにショックは大きかったが、そんな苦難を乗り越えて新作を届けてくれた彼らにまずは賛辞を贈りたい。

ミステリアスなヴァースから感動のサビを経てインスト・パートへ至るいかにもマイケル・ダンフォードな進行を見せる12分超のオープニング・チューン#1。オルガンが入る劇的な場面切り替えも効果的で、霞がかかったようなコーラス部分も含め、70年代のヴァイブを見事に現代に蘇らせている。これでピアノがジョン・タウトの繊細なタッチでベースがジョン・キャンプのリッケンバッカーだったら、と思わず夢見てしまう。
アニーの美声をフィーチュアしたまどろみのフォーク#2。
Mother Russiaあたりを想起させる、重厚さと叙情を兼ね備えた#3。
サビのコーラスにAses Are Burningの頃の素朴さが薫る#4。
透明感ある明るいムードがNorthern Lightsを彷彿させる、イアン・アンダーソンがクセのあるフルートで客演の#5。
アコーディオン、タンゴっぽいリズムに男性(ベースの人か)とのデュエットと珍しい取り合わせの#6。
ピアノをバックにアニーとジョン・ウェットンが共演したバラード#7。ジョン・ウェットンが存在感ありすぎ。
先のEPで既におなじみの#8。マイケル・ダンフォードの未だ衰えぬ作曲技術を見せ付けたドラマティックなナンバー。ラストが少々あっさりしているのが惜しい。

事実上のラストアルバムとも言えるだけに、イアン・アンダーソンやジョン・ウェットンの強烈な個性に頼ることなく純粋にマイケルとアニーのRENAISSANCE色を出して欲しかったとの思いもあるが、楽曲自体は円熟の境地を見せるマイケル・ダンフォードの才能に満ち溢れている。

アニーは60代中盤とかなりの高齢にもかかわらず、気合の入った歌唱で高音部の伸びは往時のそれを彷彿させるものとなっている。反面、中低域の弱めの部分では若干ハリや柔らかさに欠ける印象も。しかしこれは、70年代のモヤがかかったような音像での神秘的なイメージと現代デジタル・レコーディングのによる解像度の違いからくるものかもしれない。

Track List

1. Symphony Of Light
2. Waterfall
3. Grandine il Vento
4. Porcelain
5. Cry To The World
6. Air Of Drama
7. Blood Silver Like Moonlight
8. The Mystic & The Muse

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LIFESIGNS / Lifesigns

2013,UK

ASIAやGREENSLADEをはじめとするプログレのフィールドだけでなく、ポップ界でのセッション・ワークなども幅広くこなすジョン・ヤング(Key/Vo)、元KAJAGOOGOOで最近はスティーヴン・ウィルソンのバンドに在籍するなどすっかりプログレの人となったニック・ベッグス(B/Vo)、マーティン・ビードル(Dr)の渋い熟年トリオによる新バンドLIFESIGNSの1stアルバムLifesigns。

適度に緊張感のあるコード進行とボーカル・パートでもまるでリード楽器のように弾き捲くるベース(スティック?)が強烈に印象に残るオープニング・ナンバー#1。コンテンポラリーな中にも古式に則った風情のトーンで奏でられるシンセ・ソロがまた素晴らしい。
ファンキーなベース・リフがリードする#2。久々にニック・ベッグスの声が聴けるボーカル・ハーモーニーも良い。
シンセのテーマ・メロディや爪弾かれるアコギが繊細なニュアンスをもたらす#3。
瑞々しさの中にインテリジェンスを感じさせる曲調。シンセのリフレインからキャッチーなサビ・メロが飛び出す瞬間のカタルシスがプログレ以外の何者でもない#4。
チャーチ・オルガンとクワイヤをレイヤーしたようなスケールの大きなシンセ・サウンドが心地良い#5。インスト・パートでの叙情的なフルートや変拍子アンサンブルといったプログレの代名詞のようなパートにも余裕と品格が滲む。

ジョン・ヤングの多彩な経歴をバックボーンとする斬新でコンテンポラリーなコード進行と、派手さは無いが品の良い音色で固めたキーボード群の優しいタッチ。落ち着いた中にもジワリとくる叙情と程良い場面転換が大人のイギリス人らしい味わい深いサウンドを醸成。
ゲスト参加のスティーヴ・ハケット(G)、ジャッコ・ジャクスジク(G)、そして特にタイス・フォン・レアー(Fl)のフルートが楽曲の印象を強めるナイスなプレイで貢献しています。

Track List

1. Lighthouse
2. Telephone
3. Fridge Full of Stars
4. At the End of the World
5. Carousel

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THE WATCH / Tracks from the Alps

2014,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドTHE WATCHの6thアルバムTracks from the Alps。
今回もGENESISの楽曲#4をカヴァー。

効果的に使用されるメロトロンやシンセがサウンドに占める割合、起伏や明暗などの楽曲展開等、ピーター・ガブリエル期GENESISの音楽的要素を緻密に研究しつくし我が物としたところが、THE WATCHの特長。このアルバムTracks from the Alpsにおいても、楽曲の印象を大きく左右するポイントであるボーカル・スタイルとギター(サウンドとフレージング)が、もはやピーター・ガブリエルとスティーヴ・ハケットにしか聴こえないくらいにGENESIS化が進行。
マイナーな楽曲にスポットを当てるカヴァーにもリスペクトが感じられ、ガブリエル期GENESISの正統フォロワーとして、より一層レベルアップしている。

静かなオープニングからスリリングな5拍子への移行、効果的なメロトロン、冒頭のボーカル・メロディを変奏するシンフォニックなシンセ、終盤の叙情パートなど、ドラマティックな起伏とフック満載の#1。
良く練られたコード進行とキャッチーなパートを持つ#2。
冒頭に雪を踏みしめるSEを配したミステリアスな序盤から躍動感あるパートへ展開。様々な表情を見せるシンフォニックなインスト・パートも聴き所な#3。
メロトロンとフルートが効いている、神秘的な中に叙情を織り込んだ#4。
レトロな音色のリフやバッキング、突如3拍子に拍子チェンジしてのクラシカルなソロとオルガンが活躍する#5。
ギターのアルペジオを中心に進行する静謐な前半からシンフォニックな後半に移行する#6。
フルートとギターのアルペジオの醸し出す叙情、静動のダイナミクス、メロトロンの白玉、、ドラマティックな展開など理想的なプログレ・チューン#7。

オリジナル曲は、単に古い素材を模倣して並び替えたのでは無く、GENESISの新曲としても違和感無く許容できるだけの楽曲クオリティがある。そこにTHE WATCHの凄みを感じる。

Track List

1. A.T.L.A.S.
2. The Cheating Mountain
3. Devil's Bridge
4. Going Out to Get you
5. Once In a Lifetime
6. On Your Own
7. The Last Mile

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PANIC ROOM / Incarnate

2014,UK

英国ウェールズの女性ボーカル・シンフォPANIC ROOMの4thアルバムIncarnate。

ブルーズ・ロック・タイプのギター・リフがリードするミディアム・スローの叙情ナンバー#1。
ストリングスのピチカートによるアルペジオがENYAを想起させる、清涼感のあるポップなナンバー#2。
3音からなるシンプルなアルペジオのリフをベースに、エキゾチックな要素などモーダルな響きを絡めて展開するミステリアスな#3。様々な場面転換がフックとなっている、アルバム中で最もアイディアに満ちた楽曲。
クリーン・トーンのギター・リフとリムショットで淡々と進行するバラード#4。脱退したオリジナル・メンバーのポール・デイヴィスに代わって参加のアダム・オサリバン(G)が渋いギター・ソロを聴かせる。
SUPERTRAMP風のパーカッシブなエレピ(ウーリッツァーか?)がリードするキャッチーな#5。ドラミングもエレピに呼応してタム中心から徐々にスネアを増やして行く良く練ったアレンジとなっている。
モーダルな響きが神秘的なムードを醸成する#6。
メランコリックなロッカバラード#7。ウィスパー気味な序盤から熱唱の大サビまで、アン=マリー・ヘルダー(Vo)のレンジの広いエモーショナルな歌唱が堪能できる。
何となく80年代ポップ風なムードとハーモニカのソロが胸キュンな、軽快なリズムに乗った哀愁チューン#8
仄かに叙情を織り込んだ広がりのあるサウンドのバラード#9。
深遠でミステリアスなムードの#10。

ハード・ロック寄りの派手でエッジの立ったプレイが特徴だったポール・デイヴィスと比較すると、アダム・オサリバンは堅実ながらもやや地味なプレイ・スタイル。
ストリングス・セクション、ポール・デイヴィスによるハードなダイナミズムなどで楽曲をドラマティックに彩った前作のダークさや叙情は後退し、全体的にシンプルで透明感が増した印象。
その結果、PANIC ROOM唯一にして絶対的なセールス・ポイントであるアン=マリー・ヘルダーの歌唱がよりフィーチュアされ、#7などの叙情ナンバーでの扇情力は勿論、#2や#5などの伸びやかでキャッチーなナンバーにおいても彼女の歌声と歌唱の普遍的な魅力が引き出されている。

Track List

1. Velocity
2. Start The Sound
3. Incarnate
4. Nothing New
5. Waterfall
6. Into Temptation
7. All That We Are
8. Searching
9. Close The Door
10. Dust

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YES / Heaven & Earth

2014,UK

シンガーにアメリカのプログレ・バンドGLASS HAMMERのジョン・デイヴィソン(Vo)を迎えたYESの21stアルバムHeaven & Earth。

スティーヴ・ハウ(G)によるボリューム奏法のテーマ・メロディにジェフ・ダウンズ(Key)らしい軽やかなシンセのバッキングが続く緩いポップ・チューン#1。歌の出だしがジョン・アンダーソン風メロディで一瞬オッとなる。インスト・パートのキメ・フレーズを弾くスティーヴ・ハウのトーンが、抑えたというよりは弱々しく聴こえるのは老いたルックスの先入観があるからだろうか。自身が脱退したASIAが若いギタリストを加えて溌剌とした音像のアルバムをリリースしたばかりなのでどうしても対比が目立ってしまう。
イントロのサスティナーを使用したスムーズなフレーズが耳を惹く、穏やかでキャッチーな#2。
シンセによる朗らかなメロディのシーケンス・パターンがリードする#3。
フォーク・タッチのバラード#4。
3連なのに弾む感じが無い、気だるいムードの#5。
スティーヴ・ハウのスライド・ギターが陰影を付ける#6。
リフレインが童謡のような緩いメロディのポップ・ソング#7。
緊張と緩和のドラマティックな対比や変拍子のアクセントなど、ファンが求めるプログレッシブなYESを体現した#8。ジェフ・ダウンズらしいクラシカルなシンセのオーケストレーションや叙情性も含め、アルバム随一の佳曲だがエンディングは淡泊。

呼吸不全でバンドを離れた前任者のブノワ・デイヴィッド同様、ジョン・デイヴィソンもYESフォロワー・バンドを出自とするだけに声質はジョン・アンダーソンに似ているが、本家特有の無垢なニュアンスまでは出し切れておらず全体的に表現力不足。それをバンドも認識した上であえてそうしたのか、それとも単にアイディア不足なのか、明るいムードで統一された楽曲群には神秘性や奥深さが不足し、凡庸なメロディのポップスに止まっている。
YESというバンドの個性のひとつである、各パートのせめぎあいと収束によるアンサンブルの妙も、#8で微かに感じられる程度。ほとんどの楽曲で単なる歌モノのバック・バンドと化してしまっているのが痛い。#6あたりはアレンジ次第でもう少し深みが出たと思う。特にリズム隊の覇気の無さが致命的ですらある。

往年の傑作と比較するのは酷としても、前作がDRAMA期YESを継承した良作だっただけに、連綿と続くバンドの歴史上位置付けが難しいアルバムになってしまった。こうして現役バンドとして新作をリリースするクリエイティブな姿勢は賞賛に値するが・・・。

Track List

1. Believe Again
2. The Game
3. Step Beyond
4. To Ascend
5. In A World Of Our Own
6. Light Of The Ages
7. It Was All We Knew
8. Subway Walls

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NICK MAGNUS / N’Monix

2014,UK

元スティーヴ・ハケット・バンドのキーボーディスト ニック・マグナスの5thアルバムN’monix。

メロトロンも絡むミステリアスなイントロから、英国らしいヒネリの効いたメロディの歌唱パートに移行する#1。ピーター・ガブリエルが歌うとハマりそうなところを、トニー・パターソン(Vo)が技量は少々物足りないが何とか雰囲気は出している。
厳かなストリングスをバックにケイト・ファバー(Vo)の超美麗ソプラノをフィーチュア、終盤はクワイヤで壮大に盛り上がる#2。
ブラス・セクションのファンファーレとマーチのリズムに乗ったイントロから7拍子の歌唱パートへ、さらにGENESIS風の陰影を付けて展開する#3。
パーカッシブなエレピがリードし、ニック・マグナス自身が歌う#4。
ピート・ヒックス(Vo)の明朗な歌声がマッチした、ポップな中にも洒落た起伏でドラマ性を持たせた#5。伸びやかで構築度の高い間奏と、よりエモーショナルでクリケット奏法などトリッキーな技も忍ばせた後奏でスティーヴ・ハケット(G)が魅力たっぷりに聴かせる。
天性の叙情声シンガー ティム・ボウネス(Vo)が歌う湿り気を帯びた#6。ロブ・タウンゼント(Sax)のサックス・ソロ、スティーヴ・ハケットのギター・ソロが哀愁を駆り立てる。
神秘的なクワイヤとスティーヴ・ハケットのギターによる美しいコラボレーション#7。
ジェイムズ・リーヴス(Vo)が歌う、仄かな叙情を交えた優美なファンタジック・チューン#8。

GENESISのファンタジック面を担っていたスティーヴ・ハケットとの長年の仕事から吸収したと思われる上品で翳りを交えた英国風メロディが冴える、英国の良心を体現したかのような上品でファンタジックな作品。
スティーヴ・ハケットをはじめとしたゲスト陣の丁寧なプロの仕事も印象的。

Track List

1. Time
2. Memory
3. Kombat Kid
4. Headcase
5. Eminent Victorians
6. Broken
7. Shadowland
8. Entropy

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KAUKASUS / I

2014,SWEDEN/NORWAY

ANGLAGARDのマティアス・オルソン(Dr)がWHITE WILLOWの盟友Ketil Einarsen(Fl)、OPIUM CARTELに参加のRhys Marsh(Vo/G)と結成したプログレ・プロジェクトKAUKASUSの1stアルバムI。

ダークなグルーヴに妖しいフルートが吹き荒ぶ#1。
Rhys Marshの深いヴィブラートが効いた、メランコリックな中にもヘヴィなパッションがある#2。
リズム・マシンに乗せたマイルドなヴァースから変拍子を交えた生ドラムが登場するサビに移行するゴシック・ムードの#3。
ディレイを掛けたシンセのシーケンス・フレーズが雲海のような浮遊感を演出、その上をズ太いシンセやフルートが舞うトリップ感満点のインストゥルメンタル#4。
クールなボーカル・ラインを持つ歌モノからメロトロンやフルートが折り重なってゾクゾクさせる7拍子の妖しいインスト・パートに移行する#5。
スティール・ギターと寂寥感あるフルートが北欧の暗い冬のような印象のメランコリックな#6。
耽美なサウンドスケープをバリトン・ギター等の重低音が切り裂く、ヌーヴォ・メタル期KING CRIMSONを想起させる#7。

メロトロン、ローズ、タウラス、VCS3などヴィンテージ楽器を使用しつつ、その音楽性は実験的な要素を含む現在進行形のプログレ。
ANGLAGARD風暗黒シンフォにOPIUM CARTELのゴシック、ポスト・ロックなど様々なバックグラウンドが顔を覗かせるが、哀愁あるRhys Marshの声のトーンがムードを引き締め、アルバムの統一感をもたらしている。
オーガニックな熱情を感じさせるボーカルやフルート、ドラミングに、無機的で冷気漂うシンセやサウンドスケープを融合。ダークな中にも暖かさを感じさせる仄かな叙情が北欧的で良い感じ。

Track List

1. The Ending Of The Open Sky
2. Lift The Memory
3. In The Stillness Of Time
4. Starlit Motion
5. Reptilian
6. The Witness
7. The Skies Give Meaning

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TRANSATLANTIC / Kaleidoscope

2014,USA/UK/SWEDEN

現代プログレッシブ・ロックのスーパー・バンドTRANSATLANTICの4thアルバムKaleidoscope。

序盤にチェロの厳かな音色で奏でられるテーマ・メロディがシンプルでありながら深く心に突き刺さる5部形式の25分超組曲#1。そのままバンドでシンフォニックにテーマを継承、インストゥルメンタルによるダークなパートやブルーズ・ロックのパートを経てメロウなニール・モーズ (Key/Vo)の歌唱がイン。2コーラス目にはメロトロンも効果的に使用。シンセやギターでテーマを繰り返し徐々に盛り上げる。4部にはツアー・メンバーのダニエル・ギルデンロウ(PAIN OF SALVATION)がボーカルで参加。ブルージーなパートにPAIN OF SALVATIONの直近アルバムRoad Saltのイメージがよぎる。最後は2部をリプライズ。アメリカンで爽快なサビを経て壮大なテーマ・メロディで締める圧巻のオープニング。
シタールも交えたアコースティックなイントロに導かれるメロウなフォーク・タッチの#2。ロイネ・ストルト(G/Vo)の良く歌う哀愁のギター・ソロが素晴らしい。
#1のテーマ・メロディの最後のフレーズをモチーフとし、シンセを中心に変奏しながら次第に上昇するリフを持つ#3。ノリの良い3連のリズムを支えるマイク・ポートノイ(Dr/Vo)の溌剌としたドラミング、全員で歌うコーラス・パートに4人が交代でリード・ボーカルを取るパートなど 、ライブ映えしそうな楽しいナンバー。リード・ボーカルのロイネ・ストルトが独特のコブシで冴えを見せ、ここぞで鳴るメロトロン、高揚感に溢れるテイストなどが初期FLOWER KINGSを彷彿させる。
イントロにチェロをフォーチュアしたピアノ・バラード#4。Rich Mouserなるゲストによるペダル・スティールの滑らかな音色も合わせて、もの悲しい中にも心が浄化されるようなムードが心を打つ。
7部からなる31分超のタイトル・トラック#5。センチメンタルなメロディを中心にしたインストの序曲から、オルガンとギターによる明朗でアメリカンなリフに一転しニール・モーズによる最初の歌唱パートへ。続いて不穏なムードから欧風叙情を漂わせたロイネ・ストルトの歌唱パートへ移行。メジャー7thのサビはFLOWER KINGS風。さらに楽曲は緩いムードのピート・トレワヴァス(B/vo)の歌唱パートに。素朴な歌いっぷりと仄かな叙情を交えた心温まるサビが英国調でGENESISの小曲風でもある。リード・ボーカルが各人のカラーに絶妙にマッチングしている。期待したが、マイク・ポートノイの歌唱パートは無し。(本当はホッと安心)そして再びニール・モーズが今度は3連にアレンジして歌うパートへ。ムードを変えるフックが挿入され、バンドが一丸となってのアイディア満載の渾身のインスト・パートでいよいよラスト・スパート。2部のリプライズにメロトロンをバックにしたテーマ・リフが変奏して繰り返され感動のフィナーレへ。

今回も、リーダー・クラスの各メンバーがそれぞれの個性を発揮しながら同時にチーム・プレイにも貢献するという、スーパー・バンドの理想的な姿を提示。
長尺組曲2曲をアルバムの最初と最後に配置、テーマになるメロディを楽曲の随所に巧みに忍ばせて統一感や耳に残る印象を持たせる手法はオーソドックスではあるが、プログレ・ファンやアルバム通して聴くリスナーには嬉しい配慮でもある。
またこれが、ファンに迎合したというよりも彼ら自らのプログレ・ファン気質から自然に楽しみながら滲み出た感があるのが良い。

Track List

1. Into the Blue
I. Overture
II. The Dreamer and the Healer
III. A New Beginning
IV. Written in Your Heart
V. The Dreamer and the Healer (Reprise)
2. Shine
3. Black as the Sky
4. Beyond the Sun
5. Kaleidoscope
I. Overture
II. Ride the Lightning
III. Black Gold
IV. Walking the Road
V. Desolation Days
VI. Lemon Looking Glass
VII. Ride the Lightning (Reprise)

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DAWN / Darker

2014,SWITZERLAND

メロトロンやヴィンテージ・シンセが唸る!スイスのヴィンテージ・シンフォ・プログDAWNの2ndアルバムDarkerのレビュー。

メロトロンにエレピ、オルガン、モーグ風シンセなど、派手さは無いが的を得たプレイのキーボードが70年代英国の薫りを運んでくる。そんなDAWNの素晴らしいサウンドを支えているギターがまた良い。
折角のヴィンテージ・サウンドをメタル・エッジなギターが台無しにするバンドもいる中、当アルバムDarkerで聴けるギター・サウンドは適度に歪んだオーソドックスなもので、オルガンと巧みに絡み合うアレンジの#2のリフ、ユニゾンで迫る#3など、キーボードと共に立体的なアンサンブルを構築している。

ドラマティックな#5や#8においてすら泣きや明暗の表現では決してレンジを突き抜けるようなことは無く、ほどほどに止まっている様はまるで70年代英国のB級バンド。先人達の場合、それが手探りの中新しいものを生み出そうともがいた結果の限界であったのに対し、DAWNの場合は先人達の養分を吸い取ったうえで余力を残した絶妙なさじ加減である点が異なっている。アバウトなインプロビゼーションとしか聴こえない#5中間部のノイジーなパートですら周到さが伺えるのだ。
大仰なギミックや目まぐるしい曲展開に頼らずに淡々と、場面ごとの精緻なアレンジにより緩急を描ききるセンスが秀逸ということなのだろう。

まるでSPRINGのようなメロトロン・フルート、グリッサンドがイカすロック・オルガン、ミニマルで構築的な#4、幽玄なムードを醸成する#3でのアコギのカビ臭い空気感など、ヴィンテージ系バンドの中でも一歩抜きん出た本物感がDAWNにはある。

Track List

1. Yesterday's Sorrow
2. Cold
3. Darker
4. Lullabies for Guterflies
5. 8945
6. Out of Control
7. Lost Anger
8. Endless

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GAZPACHO / Demon

2014,NORWAY

ノルウェーの暗鬱シンフォ・バンドGAZPACHOの8thアルバムDemon。

ピアノと浮遊するシンセを中心に静かに進行する中、時折ハード・エッジなギターのパワーコードが鳴り響き、平坦になりがちな展開にダイナミズムを付加するメランコリックでファンタジックな#1。
中近東エスニック風味なメロディやタンゴ・パートの挿入、欧州的叙情を漂わせるアコーディオンなどの小技も効果的に使用し、全4曲というアルバム全体の流れに起伏を付けている小品#2。
こもったピアノとハミングによるメイン・テーマを反復し進行する繊細な前半からハードなタッチの後半へ移行するAパート、#1のパワーコードをリプライズさせたBパートで構成された、よりメロディに焦点を当てた#3。
琴のような音色のバンジョーによる7拍子のシーケンスにヴァイオリンの妖しげなオブリガードが絡むパート1、パート1を引き継ぎつつ枯れたギターやヴァイオリンによるフックを加えたパート2、ヘヴィネスを加えて静と動のレンジを広げたパート3により構成された#4。

儚げなボーカルと霧のようなパッド系又はストリングス・シンセを基調に、繊細で耽美なパートを中心に丁寧に紡いでいく。ダークな中にも暖かみを帯びたサウンドなのは、バンジョーやアコーディオン、ヴァイオリンといったオーガニックな楽器群の効果的な使用によるもの。
音圧ありきの昨今の音楽とは対極の、音を出すのではなく出さないことで存在感を高めるという逆説的なアイディアがおもしろい。

Track List

1. I've Been Walking Part 1
2. The Wizard of Altai Mountains
3. I've Been Walking Part 2
4. Death Room

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IQ / The Road Of Bones

2014,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドIQの前作Frequency以来5年振りとなる10thアルバムThe Road Of Bones。

クールでスリリングなムードのヴァースから突き抜けるサビへの移行が鮮烈。ヘヴィなミディアム・テンポの#1。
ピアノやシロフォンをアクセントに柔らかなパッド系シンセをバックにした序盤~中盤、続く最後の2分半は荘厳なシンセストリングスとヘヴィなドラムがリードする深遠なパートへと展開するタイトルトラック#2。
軽いサンプル・ビートの上を浮遊するパッド系シンセが柔らかく包むバラード、ヘヴィな中間の歌唱パート、アコギやシンセを絡めた静謐パート、テンポアップしてのインスト・パートなど、変拍子も忍ばせながら目まぐるしく展開していく19分超のプログレ超大作#3。
トリッキーなリズム・セクションのひっかかりを持つ柔和なバラード・ナンバー#4。
ヘヴィネスとミステリアスが支配するプログレッシブなパートから、キャッチーかつメロディアスなボーカル・パートへ移行、シンフォニックな大団円を経て静かに幕を降ろす12分の大作#5。

特に冒頭3曲において、シリアスでヘヴィなパートからメロディアスで開放的なサビへの転換がドラマティックに決まっている。
アナログ・シンセやオルガン系、ストリングスなどオーソドックスながらツボを押さえたキーボードの音色、ヘヴィなビートと華麗なロールを叩き出すドラム、安定したピーター・ニコルスの歌唱と、スタイルを確立させた者だけが持つ威厳すら感じさせる重厚なサウンドが全編を覆う名作。

Track List

1. From The Outside In
2. The Road Of Bones
3. Without Walls
4. Ocean
5. Until The End

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カテゴリー: IQ

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MAGIC PIE / King For A Day

2015,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンド MAGIC PIEの4thアルバムKing For A Day。

緩急や拍子チェンジにドライヴィングなギター・リフが切れ込むキャッチーで爽快な#1。
コーラスとメイン・ボーカルの掛け合いで進行するアリーナ・ロック風パートでスケール感を見せつけ、ヘヴィ・ロックや北欧フォークロア風味を交えたインスト・パートにメロウなパートも織り込んだ中間部を経て再びアリーナ・ロックに回帰する#2。かわいらしいオルゴールで締めるアイディアもありがちだが、琴線に触れる心憎い演出ではある。
フックの効いたQUEEN風パートやメロトロンがやさしく包み込むメロウ・パートを内包した快活なハード・ロック・チューン#3。シンセとギターの高速ユニゾンに始まるカラフルなインスト・パートには、FLOWER KINGSのような桃源郷テイストも。
ロングトーンを活かしたソフトなギターのランドスケープを継承し、メロトロン・フルートとクリーン・ギターのアルペジオによる神秘的なイントロに移行する#4。メロトロン・ストリングスが登場するメロウネスとダークなヘヴィネスを対比させたボーカル・パート、エキゾチックなメロディをまぶしたシンセやギターによるインスト・パートへと巧みに展開。
インスト・パートのシンセとギターによるハーモナイズ・フレーズがテクニカルでカッコ良い、叙情メロディアス・ハード・ロック#5。
27分超のタイトル・トラック#6。快活なロックンロールや抑えた叙情で起伏を付けたボーカル・パートとテクニックに裏打ちされたスリルを盛り込んだインスト・パートが交互に主役を張って進行するエピック・チューン。テーマのモチーフを変形・発展させながら繰り返していく手法はSPOCK’S BEARDTRANSATLANTICの奥義に迫るものがある。エンディングでのクラシカルで構築されたメロディと手癖が良い感じで融合した弾き捲くりのギターが圧巻。

時折出現するヘヴィ・メタルなタッチのシュレッドな早弾きギターに象徴されるエッジの立ったギターがサウンドのスパイスとなってMAGIC PIEとしての独自性を発揮。多層コーラスやひねりの効いた演出にMOON SAFARIっぽい部分もあるが、MAGIC PIEはストロングにも歌えるボーカルの存在感からより硬派な印象を受ける。

Track List

1. Trick of the Trade
2. Introversion
3. According To Plan
4. Tears Gone Dry
5. The Silent Giant
6. King For A Day

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BIG BIG TRAIN / Wassail

2015,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンド BIG BIG TRAINの2015年作EP Wassail。

イングランド西部に中世初期から伝わる伝統行事をテーマとした#1。フィドルやフルート、マンドリンが演出するトラッド風モーダルなメロディをフィーチュア。サビはBIG BIG TRAINらしく堂々たるシンフォニック。
繊細な12弦ギターとジェントルな歌唱及びコーラスによる仄かに叙情薫るキャッチーなヴァースから、テンポと拍子の大胆な変化で激情クライマックスへとドラマティックに展開する#2。GENESISの系譜を継承するBIG BIG TRAINならではの端正な英国風サウンドにストリング・セクションもマッチしている。
19世紀ロンドンの貧困層のひとつ 泥ひばりを題材にしペーソスを漂わせる、簡素なコーラス以外はほぼインストゥルメンタルの#3。序盤の9/8拍子から3拍子そして4拍子へと自然に拍子を変化させるセンスはさすが。
The Underfall Yardに収録された楽曲のスタジオライブ#4。こだまのように折り重なる多重コーラスが美しい。

直近のEnglish Electric 2部作で近代~現代英国の日常を生きる人々を温かく描写。今最も英国らしいプログレを聴かせるBIG BIG TRAINによる、新作フルアルバムへの期待を煽るEP。

Track List

1. Wassail
2. Lost Rivers of London
3. Mudlarks
4. Master James of St. George

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CHRISTINA / The Light

2015,UK

英国のシンフォ・バンドMAGENTAの女性ボーカリスト クリスチーナのソロ・アルバム The Light。

くぐもったエレピの渋いカラーが支配するブルース風ナンバー#1。
ピアノのアルペジオとチェロのピチカートが滴り落ちる水の雫のようなムードを作り、繊細な管弦セクションがシンフォニックな彩りを加える、神秘性とコンテンポラリーな要素を融合した#2。
クリスチーナの伸びやかな歌声を活かしたオーソドックスな叙情ナンバー#3。
ピアノと管弦セクションをバックに切々と歌う気品溢れる#4。
クラシカルなマイナー・メロディが際立つ、どこかRENAISSANCEを彷彿とさせる#5。モジュレーションをかけたレトロなギター、ストリングス、ブラスなどを適所にピンポイントで使用するアレンジのセンスが素晴らしい。
サビの仄かな叙情が心に染み入る、リラックスした穏やかなフォーク風ナンバー#6。
ピアノをバックした語りかけるようなバラード#7。厳かなチェロも効いている。
スキャトが印象に残るムーディなAOR風ナンバー#8。
雄大なアレンジが施された、タイトル通りポジティブで希望的ムードに溢れる#9。

乳がんの治療から復帰したクリスチーナを祝福するかのように、MAGENTAやKOMPENDIUMなどで良作を連発する才人ロブ・リード(Key/G/B)、同じくMAGENTAの同僚クリス・フライ(G)をはじめ、IT BITESのジョン・ミッチェル(G)、元IQ、元FROSTのアンディ・エドワーズ(Dr)、THE TANGENTのアンディ・ティリソン(Key)、プログレ界で幅広い人脈を持つ売れっ子テオ・トラヴィス(Sax/Fl)など錚々たるメンツが集結。

クリスチーナの個性的な歌声やロブ・リードによるものと思われるアレンジがもたらすムードは、やはりMAGENTA直系の高品質。ただし、MAGENTAの楽曲をエピカルに彩る大仰でドラマティックな展開や時にハードな部分はここには無く、ひたすらクリスチーナの歌唱に焦点を当てた内容となっている。
MAGENTAの名作Seven収録のAngerがそうであったように、バックがシンプルであるほどこの人の地声が持つ叙情が活きるようだ。
ともすれば内省的で地味にも映るが、絶妙に異なるカラーを持たせた楽曲のバラエティもあり飽きさせない。このあたりはロブ・リードの面目躍如といったところ。

Track List

1. Full Stop
2. Stay
3. Legend In The Making
4. Disappeared
5. When The Darkness Falls
6. The Anger In Your Words
7. The Same Old Road
8. Last Breath
9. The Light

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BAROCK PROJECT / Skyline

2015,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの4thアルバムSkyline。

爽やかな多声コーラスで幕を開ける#1。5拍子をベースにメロディアスな歌メロを乗せ、ブラスやストリングスを要所で効果的に使用し明朗かつ希望的に展開するFLOWER KINGS風シンフォニック・ロック。
オルガン中心でELPを彷彿とさせつつ、シンセが入る部分ではELPはELPでもEMERSON LAKE & POWELLのようなポップ性も伺わせながら弾むようなリズムで爽快に進行。非常にテクニカルでありながらそうとは感じさせないメロディとアレンジの妙が際立つクラシカルなインストゥルメンタル・チューン#2。
乾いたウェスタン風フォークを軸に、端正なクラシカル・パートやヘヴィなパート、シンフォニックなインスト・パートを内包する10分超の大作#3。NEW TROLLSのヴィットリオ・デ・スカルツィ(Vo/Fl)をゲストに招き、ヘヴィネスとクラシカルが融合したアレンジをバックにフルートのソロをフィーチュア。
ミステリアスなムードを演出するシンセの小技が効いたドラマティックな#4。
クールなフォーク・パートとクラシカルなパートが表裏一体となった#5。清涼感あるコンテンポラリーなパートからクラシカルな叙情への展開が意外性を伴いハッとさせられる。
語りかけるようなジェントルなボーカルをピアノ、アコギ、ストリングス・セクションが支える気品あるバラード小品#6。
洒落たジャジーなコード進行がフックとなった、ファンキーな中に少々ペーソスを効かせた#7。
STYXのような産業ロック的キャッチーさを持った歌メロやスリリングなプログレ・ハード風インスト・パートを内包。ストリングスによるクラシカルなデコレーションを施したスケールの大きな#8。
クラシカルでメランコリックなバラード#9。
中期GENESISや初期FLOWER KINGSのような突き抜ける爽快感を持ったイントロが印象的なシンフォニック・ロック#10。晩夏を思わせる寂寥感が心地良い余韻となっている。

全編に良質な歌メロが散りばめられており、テクニカルで壮麗な器楽要素が満載でありながら散漫にならずに芯の通った作品となっている。その歌メロもイタリア的な甘いものからクラシカル、コンテンポラリーなどバラエティに富んでおり、中心人物ルカ・ザッビーニ(Key/B)の音楽的素養の高さが伺える。
アルバム・タイトルから連想したと思しきシュールなジャケット・アートは、GENESISの作品でお馴染みのポール・ホワイトヘッドによるものでちょっと古臭いタッチが微妙。洗練された音楽性からはヒュー・サイムとかの芸風が合っている気がする。

Track List

1. Gold
2. Overture
3. Skyline
4. Roadkill
5. The Silence of Our Wake
6. The Sound of Dreams
7. Spinning Away
8. Tired
9. A Winter's Night
10. The Longest Sigh

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SPOCK’S BEARD / The Oblivion Particle

2015,USA

アメリカのプログレッシブ・ロック・バンドSPOCK’S BEARDの12thアルバムThe Oblivion Particle。

静と動の対比、ダイナミズムと各パートのタイトなアンサンブルで聴かせる典型的なSPOCK’S BEARDチューンの#1。
爽やかな3声コーラス、深遠なメロトロン、耳にひっかかる奇妙なリフなど様々な要素が違和感なく展開。アレンジの妙が冴える#2。
アコギとフルート風シンセの音色が印象的。アメリカンなポップさがの中に自然な拍子チェンジも交えたキャッチーな#3。
ジミー・キーガン(Dr)がリード・ボーカルを担当。シタールやマンドリンを使用したレトロなムードの中に不思議と未来感覚を合わせ持った#4。
マイナー調のメロディックな歌ものナンバー#5。
ドラマティックな切り返しや妖しいメロディに次々と展開していくインスト・パートなど、シアトリカルな要素が満載の#6。
ピアノのエチュード風フレーズから始まり、ミステリアスとコミカルが同居したSPOCK’S BEARDらしいリフレインを経てスケール感のあるキャッチーなシンフォニック・ロックに移行する#7。インスト・パートではシンセとギターのクラシカルなハーモニー・プレイで聴かせる。
スペイシーなスケール感を持ったミディアム・スローの思索系ナンバー#8。
KANSASのデヴィッド・ラグスデール(vln)が参加したスリリングなインスト・パートを内包したセンチメンタルなバラード#9。

テッド・レオナルド(Vo)とジミー・キーガンが加わった前作と同じメンツで制作。テッド・レオナルドは#2、#3を作曲するなど創作面でも存在感を確立。
キャッチーな歌メロと捻ったクセのあるアレンジというSPOCK’S BEARDらしさは相変わらずだが、全体的には普遍的なアメリカン・ロック成分が増えた印象。そんな中、#1のソロでのアグレッシブなアーミングや#7のトレモロを掛けたオブリガードなど、アラン・モーズ(G)が随所に個性を発揮。全編に渡って使用されるメロトロンとあいまって、SPOCK’S BEARDとしての記名性を高めている。

Track List

1. Tides of Time
2. Minion
3. Hell's Not Enough
4. Bennett Built a Time Machine
5. Get Out While You Can
6. A Better Way to Fly
7. The Center Line
8. To Be Free Again
9. Disappear

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RIVERSIDE / Love, Fear and The Time Machine

2015,POLAND

ポーランドの薄暗プログレ/シンフォ・バンドRIVERSIDEの6thアルバムLove, Fear and The Time Machine。
ジャケットアートはお馴染みのトラヴィス・スミス。

オリエンタルなエキゾティックさを感じさせるモーダルなメロディによる新機軸#1。
クリーンなギターのアルペジオがリードし、浮遊感あるまろやかなシンセがアクセントとなる#2。終盤の叙情リフレインがシンプルながらもグッと来る。
リフレインとAメロに若干邪悪な音使いを絡めてフックとしながらも、全体としてはメランコリックなメロディで流れるように展開するキャッチーな#3。アコギとシンセによる幽玄なアウトロに何となく70年代B級プログレ臭が(良い意味で)あり秀逸。
7拍子の引っ掛かりと終盤のギターやシンセによる叙情的なシンフォ・パートが印象的な#4。
クールな7拍子と不条理系ヘヴィ・リフを巧みに融合させた#5。荒涼としたアンビエントから炭火のように暖かいメランコリックなメロディへの展開が見事。
オルガンとベースのみをバックに切々と歌われる、ダークでメランコリックなバラード#6。
リズミックなベースのリフがリード、トレモロをかけたギターやシンセがヴィンテージ風なフックとなり、コンテンポラリーなサビと対比している#7。
アコギのアルペジオがまどろみフォーク風の序盤から、OPETH風暗黒インスト・パートの後半に移行する劇的な#8。
終盤に叙情リフレインを配したアコギ・フォーク#9。
ミニマルなアルペジオとオルガンの白玉という相反する要素を持つクールなフォーク#10。

HM/HR系バンドにありがちな、リフありき→歌メロ後付けの楽曲制作パターンとは真逆のまずは歌メロありきと思えるメロディアスな楽曲が並ぶ。
一方インスト・パートは、テーマを変容させながらこれでもかと繰り返すことで聴き手の心に深い印象を残す手法を確立。
メロディとムードを優先する叙情的な方向性は、ダークなプログレの最先端を行くスティーヴン・ウィルソンに近いものがあるが、歌唱もジェントルかつクールで決してウェットに耽溺しない絶妙なバランス感覚はRIVERSIDE独自のものといえる。

Track List

1. Lost (Why Should I Be Frightened By a Hat?)
2. Under the Pillow
3. #Addicted
4. Caterpillar and the Barbed Wire
5. Saturate Me
6. Afloat
7. Discard Your Fear
8. Towards the Blue Horizon
9. Time Travellers
10. Found (The Unexpected Flaw of Searching)

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