YES のレビュー

YES / Heaven & Earth

2014,UK

シンガーにアメリカのプログレ・バンドGLASS HAMMERのジョン・デイヴィソン(Vo)を迎えたYESの21stアルバムHeaven & Earth。

スティーヴ・ハウ(G)によるボリューム奏法のテーマ・メロディにジェフ・ダウンズ(Key)らしい軽やかなシンセのバッキングが続く緩いポップ・チューン#1。歌の出だしがジョン・アンダーソン風メロディで一瞬オッとなる。インスト・パートのキメ・フレーズを弾くスティーヴ・ハウのトーンが、抑えたというよりは弱々しく聴こえるのは老いたルックスの先入観があるからだろうか。自身が脱退したASIAが若いギタリストを加えて溌剌とした音像のアルバムをリリースしたばかりなのでどうしても対比が目立ってしまう。
イントロのサスティナーを使用したスムーズなフレーズが耳を惹く、穏やかでキャッチーな#2。
シンセによる朗らかなメロディのシーケンス・パターンがリードする#3。
フォーク・タッチのバラード#4。
3連なのに弾む感じが無い、気だるいムードの#5。
スティーヴ・ハウのスライド・ギターが陰影を付ける#6。
リフレインが童謡のような緩いメロディのポップ・ソング#7。
緊張と緩和のドラマティックな対比や変拍子のアクセントなど、ファンが求めるプログレッシブなYESを体現した#8。ジェフ・ダウンズらしいクラシカルなシンセのオーケストレーションや叙情性も含め、アルバム随一の佳曲だがエンディングは淡泊。

呼吸不全でバンドを離れた前任者のブノワ・デイヴィッド同様、ジョン・デイヴィソンもYESフォロワー・バンドを出自とするだけに声質はジョン・アンダーソンに似ているが、本家特有の無垢なニュアンスまでは出し切れておらず全体的に表現力不足。それをバンドも認識した上であえてそうしたのか、それとも単にアイディア不足なのか、明るいムードで統一された楽曲群には神秘性や奥深さが不足し、凡庸なメロディのポップスに止まっている。
YESというバンドの個性のひとつである、各パートのせめぎあいと収束によるアンサンブルの妙も、#8で微かに感じられる程度。ほとんどの楽曲で単なる歌モノのバック・バンドと化してしまっているのが痛い。#6あたりはアレンジ次第でもう少し深みが出たと思う。特にリズム隊の覇気の無さが致命的ですらある。

往年の傑作と比較するのは酷としても、前作がDRAMA期YESを継承した良作だっただけに、連綿と続くバンドの歴史上位置付けが難しいアルバムになってしまった。こうして現役バンドとして新作をリリースするクリエイティブな姿勢は賞賛に値するが・・・。

Track List

1. Believe Again
2. The Game
3. Step Beyond
4. To Ascend
5. In A World Of Our Own
6. Light Of The Ages
7. It Was All We Knew
8. Subway Walls

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