プログレ のレビュー

ANEKDOTEN / Vemod

1993,SWEDEN

スウェーデンのKING CRIMSONフォロワーANEKDOTENの1993年1stアルバムVemod。
メタリックな質感は中期KING CRIMSONって感じだが、このバンドがエラいところはちゃんと現代風なヘヴィさにアップグレードされているところ。
#3のイントロのベースにKOされました。又そのあとすぐ叙情パートを持ってくるあたりが非常に巧み。アコースティックな#6や本編ラストの#7の不条理反復リフの怪しい雰囲気も良いが、日本盤ボーナスの「SAD RAIN」のメロトロン大洪水には、イントロからただただ絶句。ジャケットもいいなぁ。

Track List

1. Karelia
2. Old Man and the Sea
3. Where Solitude Remains
4. Thoughts in Absence
5. Flow
6. Longing
7. Wheel
8. Sad Rain

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SOLSTICE / New Life

1993,UK

前作から約10年ぶりに突如リリースされたSOLSTICEの1993年2ndアルバムNew Life。

バンドの双頭アンディ・グラス(G)、マーク・エルトン(Vln/Key)以外のメンバーが入れ替えられ、看板の女性ヴォーカリストもサンディ・レイからハイディ・ケンプに交代。ハイディは前任者よりもクセが無く繊細なトーンが持ち味。バンドの音楽性も1stで顕著だった独特のモーダルな雰囲気や神秘性は#1でかろうじて感じられる程度に薄れ、全体的にPOPでまろやかなトーンが支配してます。
それでも、インスト#3に見られるように叙情性は健在。ただし湿度はさほど高くなく、むしろ爽やかで清らかなテイストです。

アレンジ面では前作以上にヴァイオリンの登場機会が増えシンセは後退。#2のようにギターとのバトルやハーモニーでソロを弾いたり、#4では歌モノなのにほとんどの場面でオブリガードが鳴っていたり、#5ではコンテンポラリーなソロを聴かせたり、とヴァイオリン大活躍。
ギターのトーンが歪み度を高くし空間系エフェクトを多用して現代的なエッジを感じさせるのとは反対に、滑らかなヴァイオリンのトーンを多用する事で全体のバランスを保っている感じです。

Track List

1. Morning Light
2. Guardian
3. Sea
4. New Life
5. Pathways
6. Journey

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IQ / Ever

1993,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドIQの1993年5thアルバムEver。

一旦脱退したピーター・ニコルス(Vo)が復帰、ベースにジョン・ジョウィト(B)が加入。

ドラムのロールで幕を開け変拍子を交えた緊張感あるプログレッシブなインストゥルメンタル・パートから、爽やかに疾走するボーカル・パートに移行する#1。中間部のインスト・パートも変拍子やポリリズムを導入したアンサンブルで、耳に引っかかりを残す仕掛けが巧み。
キラキラしたシンセのアルペジオとフレットレス・ベースのまろやかな響きに優しいボーカルが乗るバラード調の前半、ダークなインストゥルメンタル・パートの後半という2部構成の#2。
得意の7拍子でタイトに迫るリフを序盤と終盤に配し、キャッチーなボーカル・パートをサンドした#3。
#2とは微妙にレイヤー音色を変えたキラキラ・シンセのアルペジオにパッド系シンセ、フレットレス・ベース、ピーター・ニコルスの切ないボーカルでしっとりとしたムードを醸成する序盤、バンドインしてからのヘヴィなパートを交えてのロックな展開と、起伏で14分超を描いた#4。マーティン・オフォード(Key)のシンセがリードする、GENESISばりのドラマティックなインストゥルメンタル・パートがアルバム随一のハイライトとなっています。
印象的なピアノ+シンセによるメイン・リフ、12弦ギターのアルペジオをパッド系シンセが包み込むむバラード#5。中間部~終盤ではまたもやGENESISをルーツとする7拍子プログレ・パートが登場。ハケット風なライトハンドを聴かせるギターや、単音フレーズを奏でる矩形波っぽいシンセのレトロな響きもナイス。
#5のムードを引継ぎメドレーでエンディング曲#6へ繋がる展開も、4人編成時のGENESISがアルバム終盤でやっていた手法で微笑ましいですね。
偉大な先人に対してのオマージュということでしょうか。

ボーカル・パートはキャッチーに変拍子もさりげなく、楽曲個々の展開やインスト・パートでは思わずニヤッとさせる大小のプログレッシブな技を仕込み、程良い緊張感とともに瑞々しく爽やかなシンフォニック・ロックにまとめあげたアルバムです。

Track List

1. The Darkest Hour
2. Fading Senses:
i) After All
ii) Fading Senses
3. Out Of Nowhere
4. Further Away
5. Leap Of Faith
6. Came Down

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ROINE STOLT / The Flower King

1994,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドKAIPAの元ギタリスト ロイネ・ストルト(G/Vo/B/Key)のソロ1994年作The Flower King。

メロディアス、変拍子、シンフォニック、ドラマティック、エキゾチック、時折ロカビリーという後のFLOWER KINGSにも共通する要素がてんこ盛り。特に、緊張感ある展開の中ふと見せるキャッチーなフックが感動的な#2なんてもう反則ですね。他にも、ギターとサックスのユニゾンによるテーマ・メロディがアダルトかつ哀愁の#5、歪んだオルガンによるクラシカルなメロディの3連フレーズがリードするプログレ・ハードなインスト#6、あたりが好きですね。
アルバムの目玉は6パートからなる20分超の#7。#5に通じるアダルトな序盤からロカビリー、叙情、フォークロア等、各パートが個性を放ちつつも壮大な一つのテーマの元に収斂していく壮大な組曲です。

Track List

1. The Flower King
2. Dissonata
3. The Magic Circus Of Zeb
4. Close Your Eyes
5. The Pilgrims Inn
6. The Sounds Of Violence
7. Humanizzimo: Twilight Flower/The Messenger/The Nail/Only Human/This Is The Night/The Flower Of Love
8. Scanning The Greenhouse

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ANGLAGARD / Epilog

1994,SWEDEN

スウェーデンの暗黒叙情プログレANGLAGARDの1994年2ndアルバムEpilog。

フルートやゲストのヴァイオリン等弦楽器が醸し出すミステリアスで荒涼とした静の部分と、不条理系メタリックな質感のヘヴィ・リフが暴れる動の部分の対比を軸に、メロトロンを効果的に絡ませた独自の音世界を構築。
Redの頃のKING CRIMSONから、ある意味キャッチーな歌部分を排除した上で暗黒叙情とメタリックなヘヴィさを抽出し、北欧の極寒で結晶化させたような混じりっけ無しのサウンド。
歌や甘いメロディーといったケレン味が一切無いストイックな楽曲群で綴られたにもかかわらず、メロディアスで耳に残るこの不思議な感触は、もはや唯一無二。孤高の世界ですね。

Track List

1.Prolog
2.Höstsejd
3.Rösten
4.Skogsranden
5.Sista Somrar
6.Saknadens Fullhet

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COLLAGE / Moonshine

1994,POLAND

ポーランドの叙情シンフォニック・プログレッシブ・ロックバンドCOLLAGEの1994年2nd。ウェットな音像の中、濃密なパッド/ストリングス系シンセによるシンフォニックなバッキングの海をたゆたう甘いヴォーカルとメロディアスな泣きのギターが叙情シンフォニック・ワールドを醸成。長尺曲での思索的ヴォーカル・パートでは若干のダレも見られますが、各曲に設けられた必殺の叙情パートとそこに至るまでの起伏あるアレンジが聴き手の集中力を逸らさない力を持ってます。惜しむらくはこのシンセ・サウンドのトーンが一本調子な所ですかね。ズ太いアナログ・シンセとかをアクセントに使ってもらえるともっと良かったんですが・・・しかし、本家英国ポンプ勢に劣らないこのクオリティ。恐るべしポーランド。

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ANNIE HASLAM / Blessing in Disguise

1994,UK

70年代英国プログレッシブ・ロックの華RENAISSANCEの歌姫アニー・ハズラム(Vo)の3rdソロ。一応ANNIE HASLAM’S RENAISSANCE名義ではあるものの、当時のメンバーは皆無。これは多分に営業的な見地からのネーミングということでしょう。女性の年齢を云々するのは何ですが、1947年生まれのアニーもこの時47歳。さすがに声のハリとか滑らかさは全盛期と比較すると辛いものがあります。ところが、アニーの美声を引き立てる事のみを優先したであろう多彩な楽曲と繊細にして品のあるアレンジが、そんなマイナス面を見事に払拭。大物プロデューサー トニー・ヴィスコンティの力量は勿論ですが、実はDREAM THEATER加入前のジョーダン・ルーデス(Key)が作曲・アレンジ・演奏で、ハープシコードが印象的な神秘的で清楚な#6、クラシカルなフレーバーをまぶした#8、中近東風メロディを取り入れた異色のナンバー#9の3曲に関わっており、渋いグッジョブで貢献しております。又、マイケル・ダンフォード(作曲)とベティ・ニューシンガー(作詞/旧姓サッチャー)という往年のRENAISSANCEでの黄金コンビが#3を提供。マイナーな中にも希望的メロディが輝く佳曲で、アニーの歌唱も水を得た魚のように活き活きしていますね。近代クラシック作曲家ガブリエル・フォーレの”パヴァーヌ”にベティの歌詞を付けた、厳かなハープや弦をバックにしっとりと聴かせる#11はニッカ・ウィスキーのCM(魚図鑑編)にも使用されていました。

Track List

1. Blessing In Disguise
2. Pool Of Tears
3. Love Lies Love Dies
4. Can't Turn The Night Off
5. In Another Life
6. Raindrops & Leaves
7. Whisper From Marseilles (For Julien)
8. I Light This Candle
9. What He Seeks
10. See This Through Your Eyes
11. The Sweetest Kiss
12. The Children (Of Medellin)
13. A New Life
14. After The Oceans Are Gone

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LANDBERK / One Man Tell’s Another

1994,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドLANDBERKの2ndアルバムOne Man Tell’s Another。

仄かに歪ませたギターのカッティングがリードし、幽玄なグルーヴにメロトロンも絡む#1。
7/8拍子のオルガン・シークエンスが心地よいズレを生み出し、レイネ・フィスケ(G)の独特のタッチによる繊細かつ荒々しいギターが暴発寸前の狂気を滲ませる屈折チューン#2。
枯れたギターがリードし霧のようなメロトロンが叙情を加味する、クールさとメランコリーが同居した#3。全体的なムードはレイネ・フィスケとステファン・ディムレ(B)が後に結成するPAATOSに繋がるものがある。
イントロや各部に挿入されるギターによる7拍子のアルペジオをアクセントに、淡々としながらも妖しく叙情も交えて進行する#4。
幽玄なメロトロンをバックにギターのアルペジオとパーカッションの反復がトリップ感を生み出す#5。
沈み込む3拍子のバラードからリズム隊が合流して淡々としたジャジーなムードへ移行、繊細なタッチのギターが寂寥感を醸成する#6。
これまで控え目だったメロトロンが唸りをあげる(それでもまだ控え目)シンフォニックな#7。フィードバックやハウリング・ノイズまでをも巧みにコントロールした狂気のギター・ソロと端正でメロディアスなメロトロンの白玉とのギャップが強烈。

全編スウェーデン語で歌われた1stアルバムで見られた土着の妖しさとハード・ロック的な激しさは後退し、コンテンポラリーで静かな音像に移行。
そんな中、枯れたトーンと独特の微妙なタッチにより繊細な寂寥感から暴虐の狂気までを演じ分けるレイネ・フィスケのギターが孤高の輝きを放つ北欧暗黒シンフォ。決して多くを弾くことは無いものの、雄弁に各曲のカラーを表現する独創的なフレージング(とノイズ)が耳を捉えて離さない。

Track List

1. Time
2. Kontiki
3. Mirror man
4. You are
5. Rememberence
6. Valentinsong
7. Tell

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カテゴリー: LANDBERK

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TERU’S SYMPHONIA / Egg the Universe

1994,JAPAN

1994年作。MAGDALENAでは無理やり高音をファルセットで歌っていたのがウソのような自然で優しい徳久恵美(Vo)の歌声が楽しめます。ちょっと恥ずかしい感じのポップな#3が好き。ボーカル・メロディをなぞったギター・ソロや印象的なベースライン、クリーンなギターのアルペジオ、シンセのアレンジなど全てが完璧なプログレッシブ・ポップ。プログレ然とした大仰なイントロと軽快なヴァースの#4も最高。全編に漂うどこかダークな雰囲気も良い。

Track List

1. Metancholic Garden
2. Drawer of night
3. You
4. Tears for a Harmit
5. Mildah
6. Egg the Universe

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FLOWER KINGS / Back in the World of Adventures

1995,SWEDEN

KAIPAのロイネ・ストルト(G)のソロ・プロジェクトから発展したスウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドFLOWER KINGSの1995年1stアルバムBack in the World of Adventures。

全10曲でインスト曲が半分。ヴォーカル曲では#1や#8のように非常にキャッチーなメロディを主軸にしながらも、場面に応じたキーボードの音色チョイスやグルーヴ感、練りこまれ、時に緊張感あるアレンジ等で注意を逸らさせないインストパートがドラマティック度アップに貢献、楽曲に深みを持たせている。
勿論インスト曲でも魅力は健在。というかむしろ色々とイマジネーションをかきたてられます。
#6に代表される、ちょっと切ない半面希望に満ちたメロディが彼らの最大の魅力。何度でも聴きたくなるシンフォニックな音のシャワー。

Track List

1. World of Adventures
2. Atomic Prince/Kaleidoscope
3. Go West Judas
4. Train to Nowhere
5. Oblivion Road
6. Theme for a Hero
7. Temple of the Snakes
8. My Cosmic Lover
9. Wonder Wheel
10. Big Puzzle

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ANEKDOTEN / Nucleus

1995,SWEDEN

スウェーデンの鬱系プログレッシブ・ロック・バンドANEKDOTENの1995年2ndアルバムNucleus。

鋼鉄のように重厚なベースがうねる現代的暗黒ヘヴィ・グルーヴが突然耳を襲う#1で単なる懐古趣味バンドで無いことを強烈にアピール。
静かな中での反復フレーズによるポリリズムのずれが心地良いトリップ感を生む#3の前半もKING CRIMSONの影響丸見えながら、後半では同郷のANGLAGARDにも通ずる不条理濁音によるカオティックな展開で今を生きるバンドとしてのアイデンティティを主張しています。
アンナ・ソフィ(Cello/Mellotron)のチェロがレトロな叙情を醸しだす#6。
メロディアスな叙情と不条理ヘヴィネスが融合した#7。
チェロが終始楽曲をリードし、男女ボーカルによるユニゾン歌唱が官能的な#8。
等々、メロトロンを中心にフェンダー・ロ-ズ、クラビネット、ポンプ・オルガンなどアナログ・キーボードが場面ごとに効果的に使用されており、時に寂寥感を演出しながら、又別の時には重量感抜群なリズム隊の醸し出す凶暴なグルーヴを後押ししています。

Track List

1. Nucleus
2. Harvest
3. Book of Hours
a) Pendulum Swing
b) The Book
4. Raft
5. Rubankh
6. Here
7. This Far from the Sky
8. In Freedom

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カテゴリー: ANEKDOTEN

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SPOCK’S BEARD / The Light

1995,USA

アメリカの4人組プログレッシブ・ロックバンドSPOCK’S BEARDの1995年1stアルバムThe Light。

デビュー作ながら、いきなり組曲形式の2曲を含む4曲を収録。メンバーはそれぞれLA周辺でのセッション等で活躍していた人達のようです。ニール・モーズ(Key/Vo)のペンになる各楽曲は、彼がミュージカルの仕事もしていたというだけあって、場面転換とフックに溢れた小曲が止めどなく流れて組曲を構成する様は見事の一言。唐突な展開にGENTLE GIANT、ゴスペル風女性コーラスにPINK FLOYDを思わせる所もありますが、この辺は偉大なる先人への敬意を込めたオマージュと言ったところでしょうか。

古臭くも無ければ、かといって最新シンセのような軽さも無い不思議なムードを醸し出すキーボード群のセンス良いアレンジも素晴らしいです。せっかくのメロトロンも味付け程度なのが奥ゆかしいですね。

Track List

1. The Light
ⅰthe dream
ⅱone man
ⅲgarden people
ⅳlooking straight into the light
ⅴthe man in the mountain
ⅵsenor valasco's voodoo love dance
ⅶthe return of the horrible catfish man
ⅷthe dream
2. Go the Way You Go
3. The Water
ⅰintroduction/the water
ⅱwhen if all goes to hell
ⅲa thief in the night
ⅳFU/I'm sorry
ⅴthe water(revisited)
ⅵrunnin' the race
ⅶreach for the sky
4. On the Edge

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STANDARTE / Standarte

1995,ITALY

キーボード、ドラム、ベースによるイタリアのハード・ロック3人組STANDARTEの1995年1st。
キーフが手がけたヴァーティゴ・レーベルのAFFINITYやBLACK SABBATHのジャケット・アートを彷彿させるくすんだ色調のカヴァー・デザイン、メロトロンやオルガン、故ヴィンセント・クレイン(Key, ex ATOMIC ROOSTER)に捧ぐのクレジット等からも明らかな70年代ブリティッシュ・ロックのスタイルを踏襲したサウンド。
一応メンバーのクレジットではギターレスながら、歪んだリフやクリーントーンでのアルペジオにソロ、といった具合で結構頻繁にギターが登場し大活躍しているのはご愛嬌か。
ATOMIC ROOSTER風なオルガン主導のリフ中心に構成されたインスト部に野暮ったいヴォーカルが乗るハード・ロックではあるが、メロトロンの効果的な導入や組曲形式での結構唐突な場面転換が非常にプログレ的でもありドラマティック。 本家イギリスからでは無く周辺国からこういったバンドが出てくるのがおもしろいですね。

Track List

1. Dream Love Sequence Nr 9
2. One Strange December Evening
3. As I Wandered
4. Tolerance Town
5. Beat Pimp Muzak
6. A War Was Declared
7. In My Time of Dying
8. Traumland
9. I Want You

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KING CRIMSON / Thrak

1995,UK/USA

90年代に復活したKING CRIMSONのスタジオ11thアルバムThrak。

ロバート・フリップ(G)、エイドリアン・ブリュー(G/Vo)、トニー・レヴィン(B/Stick)、トレイ・ガン(Stick)、ビル・ブラッフォード(Dr)、パット・マステロット(Dr)の6人によるダブル・トリオ編成という驚愕のラインナップ。

左右にパンニングされたダブル・トリオによる演奏で構築の中に混沌を内包した、Red期を彷彿させるメタリックなナンバー#1,#2。
ギター・シンセのストリングスに導かれ、メタリックなリフがリードするキャッチーなボーカル・ナンバー#3。
どこかオリエンタルなムードを漂わせたソフトでメロウな#4。
金属的なSEをバックにしたドラムスのデュオによるインストゥルメンタル#5。
ダブル・トリオが生み出すそれぞれのアクセントが、シンクロしたりズレたりと80年代CRIMSONのポリリズムを踏襲したかのようなヘヴィ・リフがリードする#6。
ダークでミステリアスなボーカル・チューン#7,#12。
キャッチーな中にもスリリングな要素を含むボーカル・チューン#8。
冷たい無機質なSE #9,#11。
まるでスティングのようなムードのアダルトでクールなメランコリック・チューン#10。
ダブル・トリオの混沌インスト・パートをフィーチュアしたファンキーな#13。
太陽と戦慄のアルバム構成をを踏襲した、#1に対する#14~#15による幕引き。

規律・鍛錬・反復・ポリリズムなど、お題目が先走った80年代CRIMSONと比較すると、自由に色々と試しているような作風。
メタリックな#1,#2,#3,#6,14、実験的な#5,#9,#11、キャッチーな歌モノ#4,#10とバラエティに富んだ内容の中に過去の遺産も巧く融合させ、KING CRIMSONの看板に恥じない作品を作り上げたところはさすが。
注目のダブル・トリオは、丁々発止のやり取りが楽しめるライブとは違って、音だけだと何か窮屈な中に混沌だけが残り、あまり機能していない気もしますが・・・

Track List

1. Vrooom
2. Coda: Marine 475
3. Dinosaur
4. Walking On Air
5. B'Boom
6. Thrak
7. Inner Garden I
8. People
9. Radio I
10. One Time
11. Radio II
12. Inner Garden II
13. Sex Sleep Eat Drink Dream
14. Vrooom Vrooom
15. Vrooom Vrooom: Coda

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WHITE WILLOW / Ignis Fatuus

1995,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの1stアルバムIgnis Fatuus。
アコギやフルートによる静かなバッキングに清楚な女性ボーカルが乗り、シンセやメロトロンが幽玄な装飾を施すダークなフォークを展開しています。

冒頭の物悲しいアコギのアルペジオとハープシコードで心を鷲づかみ。続く美声ソプラノ女性ボーカルの登場で一気に引き込まれる#1。
美声ボーカルをフィーチュア、終盤のイリアン・パイプやシタールがエキゾチックなテイストの#2。
リコーダーを中心に北欧トラッド風メロディを展開する#3。
フルートとヴァイオリン、素朴な男性ボーカルの#4。
中間部のインスト・パートに土着フォークロア部を挿入したメロトロン白玉が儚げな#5。
アコギ、コントラバス、リコーダー、ハープシコードなど、場面ごとに推移する多彩な楽器による演奏に女性のソプラノ・スキャットが。フルートが絡む部分では初期KING CRIMSONのような神秘性も感じさせる#6。
ハープシコードの厳かな調べに可憐なボーカルが映える#7。後半のアコギのカッティングとシンセ・ソロの場面では明るいムードも。
アコギのアルペジオとメロトロンのフルートに美しいスキャットが乗る小品#8。
モーダルなボーカル・メロディが神秘的な中にもコンテンポラリーなムードを醸し出す#9。
不条理なコード進行とメジャー/マイナーの調性があいまいなメロディがフックとなった前半、若干ヘヴィなパートを経てスペイシーなシンセ・ソロに展開する後半からなる11分超の#10。
女性ボーカルが中音域で歌う暗鬱フォーク#11。
ディストーション・ギターが登場する中間部などで暗黒ゴシック路線を垣間見せる#12。

おそらく土着フォークに根ざしたものであろう独特の暗いメロディによるボーカル・パートに、メロトロンをバックにしたシンセのソロなど幻想的な展開を見せるインスト・パートが絡みユニークな世界を醸成。適度に各楽器が聴こえる、必要以上に分厚くなることの無いアレンジも良い感じです。
#4,#5,#12などでの男性ボーカルは意図があってのものだろうが、はっきり言って素人レベル。女性ボーカルで統一した方が良いと思うぞ。

Track List

1. Snowfall
2. Lord of Night
3. Song
4. Ingenting
5. The Withering of the Boughs
6. Lines on an Autumnal Evening
7. Now in These Fairy Lands
8. Piletreet
9. Till He Arrives
10. Cryptomenysis
11. Signs
12. John Dee's Lament

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FLOWER KINGS / Retropolis

1996,SWEDEN

FLOWER KINGSの2ndアルバムRetropolis。

テーマ曲である#2冒頭の古臭いメロトロンの調べから、もう雰囲気抜群。インストパートにおいて展開されるいくつかの印象的なメロディ・ラインが各曲に所々顔を出し、このアルバムがコンセプト・アルバムであることを印象付けています。あるときはエキゾチックに、又あるときはコンテンポラリーな響きで。いつのまにか時間も場所も超越した架空の都市=RETROPOLISを旅しているような気分にさせてくれます。賑やかな雑踏に迷い込んだり、発展を象徴する巨大な建造物におののいたり、といった風にどんどん想像力を掻き立ててくれるアルバムです。
シンセによるテーマの上昇フレーズが高揚感を煽るシンフォニックな#3。
サックスの哀愁フレーズがエキゾチックなムードを醸しだす#6。
ボーカルのリバーブ処理にロカビリーなムードを漂わせつつ、シンセのカウンター・フレーズがシンフォニックなフックとして印象的な#7。等々、ロイネ・ストルト(G)の味のある歌唱、ネバリあるギターのトーン、クリケット奏法などやワウを絡めたメロディアスなプレイが、ドラマティックに場面転換する楽曲群にオーガニックな息吹を与えています。
キーボードでサポートするトマス・ボ-ディン(Key)の音色選択のセンスも見事で、バリエーション豊かでいながらアルバムとして統一された色彩にまとめあげています。

Track List

1. Rhythm of Life
2. Retropolis
3. Rhythm of the Sea
4. There Is More to This World
5. Romancing the City
6. Melting Pot
7. Silent Sorrow
8. Judas Kiss
9. Retroplis by Night
10. Flora Majora
11. Road Back Home

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PORCUPINE TREE / Signify

1996,UK

スティーヴン・ウィルソン(G/Vo)率いる英国のプログレッシブ・ロック・バンドPORCUPINE TREEの1996年4thアルバムSignify。

イントロ的な#1に続き、単音のハード・ロック風リフが延々と繰り返す緊張感の中、シンセによる上物がミステリアスなデコレーションを施すインスト#2。
静かな序盤からサビではクールな激情に発展する、ダークな叙情チューン#3。
SE的小品#4。
コンテンポラリーなフォークといった趣にミステリアスなテイストを加味した#5。
#5のムードを引き継ぎ、ベースとパーカッションによるグルーヴと鍵盤やギターのサウンドスケープによって起伏を生み出す#6。
モーダルなボーカル・メロディに緊張感漂う序盤と、メロウなサビを対比させた#7。
パーカッションとまろやかな笛のメロディがもたらすエキゾチックなムードから、シンセのミニマルなリフとドラムのビートが加わり、スペイシーなトリップ・ミュージックに発展するインスト#8。
アコギのカッティングにエフェクト処理されたボーカル、スライド・ギターと多層コーラスでマイルドかつサイケなムードを醸し出す#9。
ベースの2小節パターン・リフに、ギター、シンセ、ピアノ、その他様々なエフェクトが加わり浮遊するトリップ・インスト#10。
白玉中心のパッド系シンセとコーラスが寄せては返し、霧のように立ち込める#11。
ゆったりとした7拍子にメロウなサビのボーカル・パートを配し浮遊する#12。

歌モノは基本的にキャッチーなメロディアス・パートを持ちつつも、アンビエントな装飾による思索的なムードが加わることで決して安っぽくならず、インテリジェンスと気品を保っているところが英国らしくて良いです。
全体的にトリップ感抜群のインストゥルメンタルの比重が高く、深遠でダークなPINK FLOYDとでもいった感じ。

Track List

1. Bornlivedie
2. Signify
3. The Sleep of No Dreaming
4. Pagan
5. Waiting - Phase One
6. Waiting - Phase Two
7. Sever
8. Idiot Prayer
9. Every Home is Wired
10. Intermediate Jesus
11. Light Mass Prayers
12. Dark Matter

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SPOCK’S BEARD / Beware of Darkness

1996,USA

アメリカのプログレッシブ・ロック・バンドSPOCK’S BEARDの1996年2ndアルバムBeware of Darkness。
日本人キーボーディスト奥本亮が参加、オルガンとメロトロンをプレイ。ライブでのニール・モーズ(Key/Vo)の負担を軽減すると共に表現力もアップ。日本版ボーナス・トラック#8のオルガン・ソロでの個性的なフレージングは本編でも随所に聴かれます。

奇妙でシンフォニックなSPOCK’S BEARDワールドを展開する#1は、何とジョージ・ハリスンのカヴァー。原曲を知らなかったので、クレジットをちゃんと読むまではオリジナルだと思ってました。
場面転換がミュージカル風な#2もまさしく彼ら独特の世界。古めかしいトーンのメロトロンが良い味を出しています。
テーマフレーズが、瑞々しいピアノ、シンセと曲中に様々な表情で引き継がれ、キャッチーな歌メロとともに展開していく#3。
クラシカルなタッチにコンテンポラリーなセンスをまぶしたアコギのソロ#4は楽器と作曲クレジットからすると、ニール・モーズ(Key/Vo)によるものでしょうか。落ち着いた叙情と流麗な演奏が素晴らしい小曲です。
オルガンがリードする序盤から、爽快でポジティブなムードの歌パート、フレットレス・ベースが浮遊する静かなパートを経てシンフォニックな広がりを見せる#5。
アコギをバックにした内省的な歌モノが、バンド演奏が加わる事でスケール感を増す#6。
随所にユニゾンやハーモニーにる印象的なメロディのフックを配し、何となくレトロなムードで16分超を紡ぎあげていく#7。

1stアルバムで見せた演劇的スタイルのSPOCK’S BEARDらしい楽曲展開がますます増量、独特のスタイルが確立されたアルバムです。

Track List

1. Beware of Darkness
2. Thoughts
3. Doorway
4. Chatauqua
5. Walking on the Wind
6. Waste Away
7. Time Has Come
8. On the Edge(LIVE)

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カテゴリー: SPOCK'S BEARD

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NATIONAL HEALTH / Missing Pieces

1996,UK

NATIONAL HEALTHの1stアルバム以前の音源をまとめた1996年リリースのコンピレーションMissing Pieces。

デイヴ・スチュワート/アラン・ガウエン(Key)、フィル・ミラー/スティーヴ・ヒレッジ(G)、モント・キャンベル/ニール・マーレー(B)、ピップ・パイル/ビル・ブラッフォード(Dr)というカンタベリー・ミュージックの錚々たるメンツによる1975~1976年にかけてのセッション。様々なメンバーが出入りしながらも、構築美と変態とユーモアが同居する#5をはじめとして、あくまでもきちんとしたアレンジありきな部分に、後のレギュラー・アルバムで聴かれるNATIONAL HEALTHらしさが既に感じられます。個人的なハイライトは、やはりアマンダ・パーソンズ(Vo)の美声が堪能できる#3。何故アルバムから漏れたのか理解不能な美しいメロディの名曲です。フィル・ミラー(G)の独特の甘いトーンがアマンダのヴォーカルに絡みつく所なんて堪らないですね。繊細なエレピとまろやかなシンセのオブリガードも、この曲の美しい世界観の構築に欠かせないパートです。アレンジはスチュワートでしょうか、さすがです。

Track List

1.Bourée
2.Paracelsus (Inc. Bourée Reprise)
3.Clocks and Clouds
4.Agrippa
5.Lethargy Shuffle and The Mind-Your-Backs Tango
6.Zabaglione
7.Lethargy Shuffle, Pt. 2
8.Croquette for Electronic Beating Group
9.Phlâkatön
10.Towplane and the Glider
11.Starlight on Seaweed
12.Walking the Dog

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QUIDAM / Quidam

1996,POLAND

女性ボーカルをフィーチャーしたポーランドのシンフォ・バンドQUIDAMの1996年1stアルバム。

メジャー・セブンスを多用し、メロディアスでロマンティックなシンフォをやってます。コケティッシュで透明感溢れる声質のEmila Derkowska(Vo)嬢が歌うポーランド語の独特な響きが辺境らしいエキゾチックさを醸し出す一方で、バックのサウンドはあくまでも雄大で気品に満ちており、そのギャップというか絶妙なバランス感覚が素敵です。ビッシリと、それでいて優雅に敷き詰められたストリングス系シンセと、フルートやチェロなど生楽器のブレンドによるアンサンブルも見事。シンフォニックな音のシャワーに溶け込んだ美声にウットリします。

Track List

1. Sanktuarium
2. Chocbym...
3. Bajkowy
4. Gleboka Rzeka
5. Nocne Widziadla
6. Niespetnienie
7. Warkocze
8. Bijace Serca
9. Ptone

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