プログレ のレビュー

LANDBERK / Indian Summer

1996,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドLANDBERKの3rdアルバムIndian Summer。

物憂げなボーカルとメロトロンも交えつつ暗く屈折したバッキングで淡々と進行する#1。
さらに沈んだトーンからスタートし、エフェクトを掛けたボーカルや静謐かつ幽玄なメロトロン、サイケな凶暴性と繊細なタッチを見事にコントロールしたレイネ・フィスケ(G)のギターが耽美な彩りを添える暗黒シンフォ#2。
暴発寸前に歪んだギターによるタテ乗りサイケ風リフからメランコリックな歌唱パートに移行する#3。
アコギや控え目なメロトロンがたゆたう霧のようなバッキングをベースに、優しい歌メロをフィーチュアした#4。
グルーヴィなリズムが陶酔感をもたらすダークなサイケ・ポップ#5。
急かすようなスネアのヒットが息苦しい緊張感を聴き手に与える#6。
殆ど弾かないのに存在感あるギターと沈鬱なボーカルによるユニゾンに妖しくカラフルなフックを交えて展開。後半のゲスト女性ボーカルをフィーチュアしたクールでメランコリックなリフレインは、後のPAATOSのプロトタイプのようでもある耽美シンフォ・チューン#7。
Indian Summer=小春日和でありながら、孤独に凍えるようなギターと消え入るようなボーカルによる寂寥感に満ちたデュオ#8。

メロディはメランコリックなのに決して大仰にならず、クールな一線を越えないストイックさはニュー・ウェーヴを通過したものにしか出せない独特のプログレ。
暗く凍てつく北欧の冬を想起させながら、何故か炭火のような暖かさも内包した独特のオーガニックなサウンドは、レイネ・フィスケとステファン・ディムレ(B)が後に結成するPAATOSに継承されることになる。

Track List

1. Humanize
2. All Around Me
3. 1st Of May
4. I Wish I Had A Boat
5. Dustgod
6. Dreamdance
7. Why Do I Still Sleep
8. Indian Summer

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WISHING TREE / Carnival of Souls

1996,UK

MARILLIONのソングライターでギタリストのスティーブ・ロザリーのプロジェクト・バンドTHE WISHING TREEの1996年作。

当時学生だったという”20世紀最後の妖精”ハンナ・ストバート(Vo)の美声が大いにフィーチャーされた英国情緒たっぷりなフォーク/ロック。胸キュン・メロディーと女性ボーカルの絶妙な絡みはALL ABOUT EVEを想起させる。普遍的な魅力に溢れたアルバムです。

Track List

1. Evergreen
2. Starfish
3. Nightwater
4. Hall Of Memories
5. Midnight Snow
6. Night Of The Hunter
7. Firebright
8. Thunder In Tinseltown
9. Empire Of Lies
10. The Dance

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RIVERSIDE / Rapid Eye Movement

1997,POLAND

ポーランドのプログレ・バンドRIVERSIDEの1997年3rdアルバムRapid Eye Movement。

#1のストリングスにかぶさる美しい男声コーラスからのゾクゾクする展開と、ヘヴィな不条理系リフに絡みつく程よくダーティなオルガンが最高。全体的には、屈折度の低いPORCUPINE TREEっていう感じで、ボーカルも”鼻にかからないスティーヴン・ウィルソン”とでも形容したら良いかな。個人的にはもっと練りや捻りがあった方が好きなので、時折単調なテーマの繰り返しが気になる部分もありますが、プロダクションも含めてクオリティ高いですね。所属レーベルはPAATOSやPORCUPINE TREEと同じくINSIDE OUTっていうことで納得の1枚。

Track List

1. Beyond the Eyelids
2. Rainbow Room
3. O2 Panic Room
4. Schizophrenic Prayer
5. Parasomnia
6. Through the Other Side
7. Embryonic
8. Cybernetic Pillow
9. Ultimate Trip

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カテゴリー: RIVERSIDE

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FLOWER KINGS / Stardust We Are

1997,SWEDEN

FLOWER KINGSの1997年3rdアルバムStardust We Areは初の2枚組。

オルガンのリフやサビの歌メロがカッコ良い、ドライブ感抜群のシャッフル・ナンバー#1からアクセル全開。高揚感あふれるギターのメロディや少々屈折した不条理アンサンブルのパートなど、のっけから彼らの魅力が満載された10分38秒で早くも鳥肌。
その他、POPな高速5拍子がカッコ良い#12、ゆったりとした3連に乗ったポジティブなメロディのボーカル・ナンバー#16あたりが好きですね。
勿論ラストの3部構成25分に及ぶタイトル曲も必聴。祈るようなボーカルが切ないパート1、ミステリアスな雰囲気のパート2、サビメロが大団円を感じさせる感動のパート3という一大叙事詩となっています。

正直、アルバム通して聴くと散漫な印象もありますが、一曲一曲が各々別のドラマを持っていて飽きが来ないですね。
とにかく、メロディ・リズム・ハーモニーという音楽の三要素全てにおいて、技巧と親しみやすさが高次元で融合した極上の楽曲群に圧倒されます。1度ハマると抜けられませんね。

Track List

DISC 1
1. In the Eyes of the World
2. Room With a View
3. Just This Once
4. Church of Your Heart
5. Poor Mr. Rain; S Ordinary Guitar
6. Man Who Walked With Kings
7. Circus Brimstone
8. Crying Clown
9. Compassion

DISC 2
10. Pipes of Peace
11. End of Innocence
12. Merry-Go-Round
13. Don of the Universe
14. Day at the Mall
15. Different People
16. Kingdom of Lies
17. If 28
18. Ghost of the Red Cloud
19. Hotel Nirvana
20. Stardust We Are

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SOLSTICE / Circles

1997,UK

SOLSTICEの1997年3rdアルバムCircles。

今回もアンディ・グラス(G)、マーク・エルトン(Vln/Key)以外のメンバーが入れ替えられ、女性ヴォーカリストもハイディ・ケンプからエマ・ブラウンに交代。エマの声は初代シンガーのサンディ・レイに近いものの、サンディ程の神秘性は無く、もっとスッキリした感じ。
前作ではピッキング・ハーモニクス等現代的なエッジを多用して浮いていたギターが、比較的オーガニックな叙情プレイに戻ったのと呼応して、エマのストレートなクリーン・ヴォイスがピースフルなSOLSTICEらしい世界観の表現にぴったりハマってます。勿論ヴァイオリンも重要なパートで必ず登場。

イントロダクション的な挨拶代わりのインスト#1からピースフル&ドリーミングなSOLSTICE節が満開。重厚なバックとの対比がナイスな、お馴染みのモーダルなヴォーカルラインで浮遊感あるメロディアスさを演出するタイトル曲#2で早くも最高潮。
キャッチーな#4。
歌唱とヴァイオリンが絡んで美メロを紡ぐ#5。
モダンなアレンジが緊張感をもたらし、サビでの美しい展開の印象を倍増させる#6。
枯れた味わいのギターが切ない#7。

一気に聴き手を引きずり込むオーガニック・ワールドが健在の好盤です。

Track List

1. Salu
2. Circles
3. Soul to Soul
4. Thank You
5. Medicine
6. Sacred Run
7. Coming Home

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KING CRIMSON / The Night Watch

1997,UK

Starless And Bible Blackの元ネタとなった1973年11月23日アムステルダムでのライブThe Night Watch。
BBCの放送用音源だったこともあり、長年ブートが出回っていた。

インプロビゼーションのDISC1 #6, DISC2 #1の他、Starless And Bible Blackではイントロのみ採用されたDISC1 #5のボーカル・パート以降の本来の姿が聴けるなど、資料的価値が高い。
後にデヴィッド・クロス(Vln/Key)がバンドを去る原因となったインプロビゼーションでの大音量もここでは適度に保たれており、徐々にクレイジーになっていくDISC2 #4でもノイジーなギターに対抗しヴァイオリンでアグレッシヴにプレイしています。
ロバート・フリップ(G/Mellotron)、ジョン・ウェットン(B/Vo)、ビル・ブラッフォード(Dr)、デヴィッド・クロスという最強メンツで演奏されるDISC2 #6も、ヴァイオリンがもたらす新鮮なフレイバーや抜群の呼吸でインプロビゼーション・パートを仕切るリズム・セクションなども興味深いものがあります。

Track List

Disc 1
1. Easy Money
2. Lament
3. Book of Saturday
4. Fracture
5. The Night Watch
6. Improvisation: Starless and Bible Black

Disc 2
1. Improvisation: Trio
2. Exiles
3. Improvisation: The Fright Watch
4. The Talking Drum
5. Larks' Tongues in Aspic (Part II)
6. 21st Century Schizoid Man

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RENAISSANCE / At the Royal Albert Hall Part1

1997,UK

英国プログレッシブ・ロックの華RENAISSANCEの、1997年に突如リリースされたKING BISCUIT FLOWER HOURのライブAt the Royal Albert Hall。

1977年10月14日にイギリスはロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで収録。
アニー・ハズラム(Vo)がジャケットのPART1の後にしばらく置いてからマイケル・ダンフォード(G)のPART2がリリースされ、やきもきさせました。
曲目はLive at Carnegie Hallのそれとダブる代表曲に加え、当時の最新アルバムNovellaからの3曲が聴ける貴重盤。KING BISCUIT FLOWER HOURというラジオ番組の放送用音源ということで録音は概ね良好。
時折ハウったり、裏でノイズが鳴りっぱなしの部分もありますが、そんなマイナス要因を払いのける程ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラの演奏が活き活きしてます。
そのオーケストラのがんばりもあって、PART1 #4やPART2 #4などスタジオ盤では神秘的な美しさを感じさせた楽曲が、ライブにおいてはオペラティックなまでに荘厳な迫力を伴って演奏される様は圧巻です。
収録曲、ダイナミックレンジの観点からRENAISSANCEのライブ・アルバムを選ぶとすれば断然このAt the Royal Albert Hall。特にSong of Scheherazadeの躍動感はLive at Carnegie Hallよりも数倍良いですよ。

PART2のラストには70年代末のスタジオ未発表曲Youもオマケで収録。
時代を反映したPOPな要素とプログレッシブなテイストが巧く融合しきらないもどかしさはあるものの、ドラマティックな要素もあるなかなかの佳曲。

Track List

1. Prologue
2. Can You Understand
3. Carpet of the Sun
4. Can You Hear Me
5. Song of Scheherazade

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RENAISSANCE / At the Royal Albert Hall Part2

1997,UK

RENAISSANCEのKING BISCUIT FLOWER HOURのライブAt the Royal Albert Hall Part2。

Track List

1. Running Hard
2. Midas Man
3. Mother Russia
4. Touching Once(is So Hard to Keep)
5. Ashes are Burning
6. Prologue
7. You

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RENAISSANCE / Songs from Renaissance Days

1997,UK

1997年にリリースされたRENAISSANCEの70年代後期からの未発表曲集。
チープなシンセ・サウンドと基準以下の楽曲群には往年の面影はどこにも無いのが残念。Youは何とか聴ける方。

Track List

1. Africa
2. Dreamaker
3. Northern lights
4. No beginning no end
5. Only when I laugh
6. The body machine
7. Writers wronged
8. Island of Avalon
9. America
10. You

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RENAISSANCE / Ocean Gypsy

1997,UK

マイケル・ダンフォード(G)がMICHAEL DUNFORD’S RENAISSANCE名義でステファニー・アドリントン(Vo)に往年の名曲を歌わせた1997年作。

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MORTE MACABRE / Symphonic Holocaust

1998,SWEDEN

ANEKDOTENのニクラス・バーカー(G)、ピーター・ノルディンズ(Dr)とLANDBERK/PAATOSのレイネ・フィスケ(G)、ステファン・ディムレ(B)によるホラー映画のサントラ曲をカヴァーしたプロジェクトMORTE MACABREの1998年作Symphonic Holocaust。

全員にメロトロンがクレジットされている通り、幽玄なメロトロンがアルバム通じて大活躍。暗鬱で寂寥感に満ちたサウンドを醸成しております。
暗黒ヘヴィ・グルーヴとメロトロンが織り成す悲しくも激しい#1。
メロトロンの不安定なサウンドが不穏な空気を高める#3。
YASSICA LINDKVISTなる女性シンガーのラララ・・・というスキャットが寂寥感満点な#4。
LANDBERKやPAATOSの1stでの枯れた味わいのギターを彷彿させるGOBLINのカヴァー#5。
美しいメロディーがメロトロンによって穏やかに奏でられる#6。
メンバーの趣味なのか?何故かポルノ映画からのカヴァーとなったマイルドなメロディーが美しい#7。
これらカヴァーに負けず劣らず暗鬱かつ、出身バンドのヘヴィネスを注入した17分超の渾身のオリジナル・ナンバー#8。

絞り込んだテーマとメロトロン等によるサウンドの統一感で、アルバム自体が何かの映画のサントラであるかの印象を受けます。

Track List

1. Apoteosi del Mistero
2. Threats of Stark Reality
3. Sequenza Ritmica E Tema
4. Lullaby
5. Quiet Drops
6. Opening Theme
7. Photosession
8. Symphonic Holocaust

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SPOCK’S BEARD / The Kindness Of Strangers

1998,USA

アメリカのプログレッシブ・ロック・バンドSPOCK’S BEARDの3rdアルバムThe Kindness Of Strangers。

シンセストリングスとチェロによるスペイシーかつ厳かなイントロを配した#1。様々な音色のオルガンやギターで彩られたインスト・パートがやがて激しさを増し、アコースティック・ギターのカッティングからアメリカンなムードのチャッチーなボーカル・パートへ展開。メロトロンやチェロが絶妙に配置され、どこか郷愁を誘う歌メロを引き立てている。
奇妙なシンセ音による掛け合いで提示されたユーモラスなテーマが印象的な#2。メロトロンが入ってムードを変化させたりとコンパクトな中にもアイディアが詰め込まれています。
ウラから入るピアノのリフレインがトリッキーな#3。
アコギとコーラスワークで聴かせるフォーク・タッチのバラード#4。
メロトロンのクワイヤが唸る#5。ギターのオブリガードや足踏みオルガンのバッキングなど細部にもこだわりのアレンジが施されています。
プログレ然とした大仰なイントロ、ボーカルが入ってからの静かに浮遊するメロトロンがファンタジックな序盤、7拍子に乗って軽快に疾走する中盤、テンポを落として感動のフィナーレを迎えるエンディングと、ドラマティックな#6。
SPOCK’S BEARD節とも言えるミュージカルのような場面転換の連続で進行する#7。ユーモラスなテーマのリフレインで統一感を持たせると同時に、ハイライトとなるパートやクライマックスもキッチリ用意。彼らのソングライティング能力の高さを示す、3部構成15分超の大作。

長尺や小品問わず、ボーカル・パートはストレートにロックする場面が増え、キャッチーな歌メロとあいまってまさにアメリカンなシンフォニック・プログレを展開。
そんな中で、大量に使用されたメロトロンがもたらす深遠さがアメリカンな快活さの中にヨーロピアンな深みを与えています。

Track List

1. The Good Don't Last
I. Introduction
II. The Good Don't Last
III. The Radiant Is
2. In the Mouth of Madness
3. Cakewalk on Easy Street
4. June
5. Strange World
6. Harm's Way
7. Flow
I. True Believer
II. A Constant Flow of Sound
III. Into the Source

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VIENNA / Unknown

1998,JAPAN

手数王 菅沼孝三(Dr)が参加した、プログレッシブ・ロック・バンドVIENNAの1998年の再結成作。

藤村幸宏(G/Vo)の歌いっぷりが荒くなったのとギターのエッジが前面に出ている所からハード・ロック色が強くなった印象。勿論ド変態テクニカル変拍子がいたる所に配置されているので安心です。相変わらずズ太い永井敏巳(B)のフレットレス・ベースは健在だし、菅沼の音数の多さは採譜屋泣かせだ。再結成までの10年で一番発達したシンセ関係もデジタルとアナログを上手く使い分けてるようでブ厚く、それでいて息苦しくならない程度の空間的広がりをもたらすアレンジが絶妙。甘さを抑えたビターな大人向けの渋くてカッコ良いプログレッシブ・ハード・ロックです。

Track List

1. Entrance
2. Shesp ankh (Sphinx)
3. Legend
4. Open Sesame
5. Anubis
6. Melancholy of matador
7. Moonstone
8. The destruction day
9. For an illusion

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WHITE WILLOW / Ex Tenebris

1998,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの2ndアルバムEx Tenebris。

12弦アコギのアルペジオにシンセが絡む穏やかでドリーミーなイントロで始まる#1。残念なのはボーカルインしてからのメロディとヘボな男性ボーカル。ボーカルの空間処理もさほどされていないので粗が目立つ。楽曲はその後、シンフォニックなインスト・パートに展開するだけに惜しい。
こちらも男性ボーカルがメインながら、繊細なアコギのアルペジオと美麗な女性ボーカルのハーモニーに救われた感のある#2。フルートのソロやメロトロンの優しい装飾も良い感じです。
アコギとピアノで紡ぐメランコリックなメロディが胸を打つイントロから厳かなオルガンのパートを経て、清廉なソプラノ女性ボーカルが登場する神秘的で美しい#3。テイストは違いますが、RENAISSANCEのSistersを連想しました。
美しい女性ボーカルとピアノで綴る静かなフォークに、屈折した不条理インスト・パートを内包した9分超の大作#4。
アコギと女性ボーカルで切々と展開するメランコリックなフォーク#5。
バスドラのビートがトライバルなムードを醸し出す、オルガンやブ厚いパッド系シンセによるインスト#6。
少々屈折したインスト・パートとドリーミーな美声ボーカル・パートが対比した#7。ダークな中間部ではメロトロンが大活躍。

普遍的な美しいメロディの比率が高まり、新歌姫シルヴィア・エリクセン(Vo)の柔らかく透明感のある美声や聴かせ所をはっきりさせたアレンジと相まってバンドがスケールアップ。
特に#2,#3,#5あたりのコンパクトな楽曲は印象的なメロディが多くクオリティが高い。
後は男性ボーカルをやめて、時に冗長になる無意味なインスト・パートが整理されればメジャー級なんですが…。

Track List

1. Leaving the House of Thanatos
2. The Book of Love
3. Soteriology
4. Helen and Simon Magus
5. Thirteen Days
6. A Strange Procession...
7. A Dance of Shadows

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FLOWER KINGS / Flower Power

1999,SWEDEN

FLOWER KINGSの1999年4thアルバムFlower Power。2枚組。

DISC 1冒頭から約60分の組曲#1で聴き手を圧倒。得意の5拍子によるスリリングなパートや心地良いメロディ、往年のプログレを彷彿させるオルガンの響き、エキゾチックな要素、そしてユーモア・・・この組曲だけで十二分にFLOWER KINGSを味わえる。
DISC 2はバラエティに富んでます。緊張感あふれる7拍子でのサビがカッコ良い、エキゾチック&ドラマティックな#1。
定番のエキゾチックでPOPな#2。
オルガンが牽引する7拍子のプログレッシブPOP、#3。
トマス・ボ-ディン(Key)のオルガンが荘厳にしてセンチメンタルな#4。
POPなサビとドラマティックなインスト・パートの融合が見事な#5。
ミステリアスな#6。
メロディと左Chのメロトロンが印象的で美しい#7。
プログレッシブ&ドラマティックなイントロから一転して美しいサビを持つ思索ナンバー#8。
大仰なイントロで幕を開け様々な要素を内包しながら展開していく#9。
ポジティブなムードでシンフォニックに締めくくる#10。
等々、全体的に上手くまとめた印象です。

Track List

DISC 1
1.Garden Of Dreams
2.Captain Capstan
3.IKEA By Night
4.Astral Dog

DISC 2
1.Deaf, Numb and Blind
2.Stupid Girl
3.Corruption
4.Power of Kindness
5.Psychedelic Postcard
6.Hudson River Sirens Call
7.Magic Pie
8.Painter
9.Calling Home
10.Afterlife

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YES / The Ladder

1999,UK

プログレッシブ・ロック・バンドYESの16thアルバム The Ladder。
メンツはジョン・アンダーソン(Vo)、クリス・スクワイヤ(B)、スティーヴ・ハウ(G)、アラン・ホワイト(Dr)のクラシック・メンバーに、ビリー・シャーウッド(G)、イゴール・コロシェフ(Key)を加えた6人編成。

序盤のダークでアンニュイな部分ではどことなくレゲエっぽいグルーヴ。中間部の3連パートを経て徐々にプログレッシブ・ロックに移行し、終盤はシンセやオルガンが壮大に鳴り響くシンフォニック・ロックに展開する#1。
琴か三味線のような東洋的な楽器音が印象的なゆったりとしたナンバーの#2。優しく美しいメロディ、シンフォニックな盛り上がりなどコンパクトな中に旨味を凝縮。
ホーン・セクションを導入したトロピカル・ミュージックにアップテンポのタテ乗りアレンジを施したポップな#3。
パーカッションとスキャットのトライバルなムードをベースにしながらも、シンセの白玉やジョン・アンダーソンの美声により土着風にならず不思議な感触のインスト#4。
爽やかなギターのカッティングがリードする明るく開放的な#5。終盤に登場する、いかにもスティーヴ・ハウというギター・パートが短か過ぎて残念。
伸びやかで美しいボーカル・メロディが、ラップ・スティールやシンセの控えめながらも印象的なバッキングに溶け込んだキャッチーな#6。
なんとなく東洋風なメロディ、シタール風なサウンドなどエスニック要素をポップに昇華した#7。
ポップに飛ばす前半から、シンセ・ストリングスをバックにアコギ、ギター、ボーカルがゆったりとシンフォニックにメロディを奏でる後半に展開する#8。
ファンキーなベースのリフを軸に少々ダークに進行するも、壮大なコーラスを持つサビ前からはYESらしく開放的に進行する#9。
ウェイクマン風クラシカルなオルガンとミニマルなフレーズを繰り返すハウのギターのイントロ、バンド・インしての続く疾走パート、と序盤からスリリングな#10。ボーカル・パートは序盤こそ又もや南国風テイストを漂わせながらも、ミステリアスでダークなパートを経て、メロディが徐々に天高く上り詰めるような最高のサビを迎えるドラマティックな構成。個性的なアコギ・ソロ、メロトロンっぽい白玉など、中簡に配された器楽パートも充実。

全編通して非常にポップですが、ワールド・ミュージック風なスパイスも嫌味が無く、産業ロックという程のギラついたあざとさも無い、自然体の心地良さが楽しめるアルバム。長尺で起伏ある展開に往年のプログレ・テイストを想起させる#1や#10の出来も素晴らしい。

Track List

1. Homeworld (The Ladder)
2. It Will Be A Good Day (The River)
3. Lightning Strikes
4. Can I?
5. Face To Face
6. If Only I Knew
7. To Be Alive (He Yadda)
8. Finally
9. The Messenger
10. New Language
11. Nine Voices (Longwalker)

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ANEKDOTEN / From Within

1999,SWEDEN

スウェーデンの鬱系プログレANEKDOTENの1999年3rdアルバムFrom Within。

バンドが一体となってのヘヴィ・グルーヴで迫るインストゥルメンタル・パートとヴィブラフォンを効果的に使用したクールなボーカル・パートの対比がダイナミズムを生む#1。
メロトロンとギターによる重厚なユニゾン・リフが印象的な#2。
中間部での軋むギターがKING CRIMSONを彷彿させる#3。
ニクラス・ベルグ(G/Vo)とピーター・ノルディンス(Dr)がLANDBERKのメンバーと組んだ、ホラー映画のサントラを題材にしたプロジェクトMORTE MACABREのような不気味な迫力のメロトロンがのっけから全開の#4。ボーカル・パートはヴィブラフォンが神秘的なムードを付加し、陰鬱かつ静かに展開。不条理系メタリックなリフに不安感を煽るメロトロンが絡む#5。
リズムにトリッキーなトラップを仕込んだ暗鬱ギター・リフが淡々とリード、メロトロンがアクセントとなった#6。
コード=Aで延々展開するダークでクールなベース・リフ上をメロトロンやアンナ・ソフィ(Key)のチェロが不気味に浮遊するインストゥルメンタル#7。
叙情的なアコギのアルペジオをバックに儚く美しく紡がれた小品#8。

極北の暗く長い冬の夜を想起させる静かなダークネスの中に、炭火のような暖かさも感じさせるオーガニックなサウンド。
主に中音域で鳴らされるメロトロンがヘヴィなギターやベースと一体となり、独特のダークなうねりを醸成しています。

Track List

1. From within
2. Kiss of life
3. Groundbound
4. Hole
5. Slow fire
6. Firefly
7. The sun absolute
8. For someone

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カテゴリー: ANEKDOTEN

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TOMAS BODIN / An Ordinary Night In My Ordinary Life

1999,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンド FLOWER KINGSのキーボード奏者トマス・ボディンの1stソロ・アルバムAn Ordinary Night In My Ordinary Life。

FLOWER KINGSのメンバーが全面バック・アップ。
全曲インストながら、特にロイネ・ストルトのギターが絡む#3,#7あたりの叙情性は抜群。勿論主人公のトマスも全編にわたりハモンド、ローズ、メロトロン、シンセと大活躍。パワフルに、クラシカルに、アバンギャルドに、そして清楚に・・・音楽性も特に何と限定できないごった煮風ですがカラフルに楽しませてくれます。
FLOWER KINGSでもそうですが、この人の音色セレクトは見事の一言。微妙にヴィブラートした笛のようなシンセ等の作った音も素晴らしいし、楽曲ごとのテイストや場面に応じたサウンド・メイキングのセンスが秀逸で聴いていてハッとさせられます。
中には趣味に走った退屈なテクノ風楽曲やほとんどがFX(効果音)の曲もありますが、それすらアルバム通して聴くと場面転換の繋ぎのようにも感じられ、それはそれで良くできてるなぁーと変に感心したりして。
前述の#3,#7に加え、チャーチ・オルガンの荘厳な調べ#4、軽快なフュージョン#5、3部構成の組曲#10あたりが好きですね。
#10中間部のピアノが奏でるメロディとその後のレズリーかけまくりのハモンドをバックに泣きまくるロイネのギターときたら・・・それはもう絶品です。

Track List

1,Entering the Spacebike
2,Into the Dreamscape
3,The Ballerina From Far Beyond
4,Daddy in the Clouds
5,Speed Wizard
6,An Ordinary Nightmare in Poor Mr. Hope's Ordinary Life
7,In the Land of the Pumpkins
8,The Magic Rollercoaster
9,The Gathering
10,Three Stories

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PORCUPINE TREE / Stupid Dream

1999,UK

スティーヴン・ウィルソン(G/Vo)率いる英国のプログレッシブ・ロック・バンドPORCUPINE TREEの1999年5thアルバムStupid Dream。

ストリングスとアコギをバックにしたメロディアスなボーカル・パート、スライド・ギターのスペイシーなオブリガードにPINK FLOYDの影がちらつく#1。終盤には、ヘヴィなリフ・パートから抑えたトーンのギター・ソロへ至る部分や謎の番号を繰り返す管制塔風なナレーションSEまでPORCUPINE TREEらしいインテリジェンスな深みも。
アコギとピアノのシンプルなバッキングに、グランジ風なギター・リフとスペイシーなスライド・ギターがアクセントとなったキャッチーな#2。
#2と#4を繋ぐSEインスト#3に続く#4はアコギのカッティングがリードするメロディアスなフォーク・ナンバー。グロッケンのようなキラキラした音が印象的です。
ベースのグルーヴィなリフに、長三度と短三度のアルペジオを交互に繰り返すピアノが乗り不安定なトリップ感を醸し出す#5。
心象風景を映したかのようなSEを交えた沈鬱なヴァースから、深遠なストリングスをバックに盛り上がるサビへと展開する#6。インスト・パートでは静かな部分のフルートと激しく盛り上がる後半のサックスでテオ・トラヴイスが客演しております。
軽快なリズム・パターンとアコギのカッティングにメロトロンも加わり優しく進行するフォークに、ハード・ロック的なエッジを持ったパートを内包した#7。
神秘的で妖しいムードの序盤から、いつの間にかコーラス・ハーモニーの美しいフォークへとドラマティックに移行する#8。
アコギのカッティングとスライド・ギターのオブリガードをバックに優しいボーカルが乗る爽やかなフォーク#9。
アコギのメイン・テーマ・メロディにピアノやストリングスが絡み、トレモロを効かせたギターと深みのあるストリングスで神秘的に浮遊するサビに展開するダークなバラード#10。
カリギュラ等で知られるイタリア人映画監督ティント・ブラスの名を冠したインストゥルメンタル・ナンバー#11。女性による妙なイントネーションの日本語ナレーションとヘヴィなギター・リフがクールにキマってます。
ピアノとリズム隊のシンプルな演奏に美しくも儚げなボーカル・メロディが乗る#12。

ポジティブで開放的なムードを持つアルバム序盤#1~#4や、メロディアスな中にも英国的な深みを感じさせるフォーク#7、#9あたりはメインストリームでも勝負できそうな取っ付き易さで、実験的要素が強かった前作からの変貌に驚きますが、トリップ感漂う5#や#11に代表される音響的仕掛けが全曲のそこかしこに施されており、結局何をやってもPORCUPINE TREEらしい印象を残す歌モノ路線への転換作。

Track List

1. Even Less
2. Piano Lessons
3. Stupid Dream
4. Pure Narcotic
5. Slave Called Shiver
6. Don't Hate Me
7. This Is No Rehearsal
8. Baby Dream In Cellophane
9. Stranger By The Minute
10. A Smart Kid
11. Tinto Brass
12. Stop Swimming

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カテゴリー: PORCUPINE TREE

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RENAISSANCE / BBC Sessions

1999,UK

英国プログレッシブ・ロックの華RENAISSANCEの、1999年にリリースされたライブ・アルバムBBC Sessions。
収録曲は、75年5月8日、76年5月25日、77年1月6日、78年8月19日の4つの時期にBBCの放送用音源として録音されたマテリアルからセレクトされたものとなっています。

A Song for All Seasonsからの楽曲が収録されたのも、このライブ盤が初。
ライブというとオーケストラと共演したCarnegie HallやRoyal Albert Hallが思い浮かびますが、本作はオーケストラ無しで全てバンドのみの演奏。
やはりジョン・タウト(Key)がピアノ、シンセ、ソリーナと大活躍でオーケストラのパートを再現するのは当然としても、アニー・ハズラム(Vo)がスキャットで器楽パートを補完したり、テレンス・サリヴァン(Dr)がティンパニや銅鑼を轟かせたり、ジョン・キャンプ(B)がエフェクトで様々な音色を弾き出したり、スタジオ・バージョンでは気づかなかった男性陣のブ厚いコーラスなど、あの壮大な楽曲をバンドだけでどうやって再現していたのかという答えがここに。

オーディエンス・ノイズがカットされている部分があったりして、ライブとしての盛り上がりに欠けるきらいはありますが、オーケストラが排除されたことでメンバー個々のプレイが浮かび上がり、RENAISSANCEはライブ・バンドとしても凄かったという事を証明する資料的価値の高い作品です。

Track List

DISC 1
1. Prologue
2. Vultures Fly High
3. Midas Man
4. Day Of The Dreamer
5. Touching Once
6. Song Of Scheherazade

DISC 2
1. Can You Hear Me
2. Ocean Gypsy
3. Carpet Of The Sun
4. Mother Russia
5. Running Hard
6. Ashes Are Burning

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