ヘヴィ・メタル のレビュー

VUUR / In This Moment We Are Free

2017,NETHERLANDS

GATHERING脱退後、AGUA DE ANNIQUEを経てソロ・キャリアや数々のプロジェクトで活動しているアネク・ヴァン・ガースバーゲン(Vo)による新バンドVUURのデビュー・アルバムIn This Moment We Are Free。
アネク本人は、今後はソロではフォークを、バンドVUURではメタルをやっていくと宣言。VUURは単なるプロジェクトでは無くパーマネントなバンドである、ということを強調している。

音楽性は、チューニングを下げた(あるいは7弦等の多弦ギターか)ギターによる重低音リフを多用した若干のプログレ要素を含むモダンなスタイルのヘヴィ・メタル。サウンドのカギを握る2人のギタリストはテクニカルなリックも聴かせるテクニシャンである。ただ、そのサウンドやプレイにおいてVUURとしての個性を感じさせることは無く、アネクの歌唱が乗ることが唯一の解決方法となっているところが今後の課題であろう。

各楽曲は世界の有名な都市名をサブタイトルとし、都市のイメージとリンクしているものやそうでないものもあるが、リスナーに興味を持たせるためのアイディアとしては面白い。
アネク本人のパフォーマンスは、轟音にも埋もれない独特の声質で硬軟織り交ぜた表現力を発揮しており安定感は抜群。
デビューをプロモーションするツアーではGATHERINGやソロ・キャリアの楽曲も披露する意向のようで、多分盛り上がるだろう。
ツアーを通じてバンドとしての結束と個性を醸成し、次作ではこれがVUURだ!というものを聴かせて欲しいところ。

Track List

1. My Champion-Berlin
2. Time-Rotterdam
3. The Martyr and the Saint-Beirut
4. The Fire-San Francisco
5. Freedom-Rio
6. Days Go By-London
7. Sail Away-Santiago
8. Valley of Diamonds-Mexico City
9. Your Glorious Light Will Shine-Helsinki
10. Save Me-Istanbul
11. Reunite!-Paris

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カテゴリー: VUUR

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RIVERSIDE / Wasteland

2018,POLAND

RIVERSIDEの7thアルバム。

物語に誘う深遠な独唱のイントロ#1。
#1でマックスに盛り上げてからクールに一転、ザクザクしたギターの変拍子リフとじわじわ押し寄せる抒情的なサビが印象に残る#2。
クールなリフから寂寥感あるサビへ、さらにユニゾンするヘヴィ・パートを経てドラマティックに展開する#3。
アコギのリフが全体の透明感あるトーンを決定。語りかけるような歌唱に引き込まれる#4。
ギター+オルガンのヘヴィなバッキングに乗る清廉なボーカルが宗教儀式のような荘厳なイメージの#5。
不条理感漂うミニマルなリフで紡がれていく序盤からギターやシンセのインプロビゼーションなどスリリングに展開するKING CRIMSON風インスト#6。
モダンな中にフォークロア風味を織り込んだメランコリック・チューン#7。
プログレッシブ・フォーク、リフがけん引するヘヴィ・パート、フォークロア・パートなどから構成される#8。
ピアノに乗せた独唱がアルバムをしっとりと締めくくる#9。

耳に残るフック満載のメロディやアレンジを彩るメロトロン、ローズやハモンドなど説得力あるキーボード群。テルミン、バンジョーやゲストによるヴァイオリンなど意外な楽器も無国籍な神秘性の醸成に効いている。そこに寂しさを湛えつつ仄かな温もりも感じさせるクリーンな歌唱が加わり、ヘヴィネスとメランコリックが抜群のさじ加減で同居したRIVERSIDEの世界が完成している。

Track List

1. The Day After
2. Acid Rain
3. Vale of Tears
4. Guardian Angel
5. Lament
6. The Struggle for Survival
7. River Down Below
8. Wasteland
9. The Night Before

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DREAM THEATER / Distance Over Time

2019,USA

DREAM THEATERの14thアルバム Distance Over Time。

レーベルをINSIDEOUT MUSICに移籍しての第一弾。
アルバムごとに明確なテーマを持って制作にあたるDREAM THEATERらしく、前作の長編コンセプト・アルバムから一転して今作はトータル60分程度の尺にするというのが一つの意図だった模様。

メロウなアルペジオから畳みかける無慈悲なメタル・リフに場面転換するダークな#1。
ミステリアスな中にも微妙な音遣いでインテリジェンスを感じさせ、サビでは普遍的なメロディで感動を提供する#2。
オールドスクールなリフからスラッシーに移行しつつ、後半のギター・オーケストレーションではベタな泣きが意外な#3。
RUSHを彷彿させるカラっとした北米プログレ・ハードの序盤から、構築美とエモーションが融合したギターソロを含むメロウな後半へ展開する#4。
トライバルで粗暴なムードのリズムが目新しい#5。
バンド一体となって変拍子で押しまくるパートとメロディアスなサビが融合した#6。
どこかオリエンタルなムードのモチーフを執拗に繰り返す超絶変態プログレ・ナンバー#7。かといってゴリゴリ一辺倒ではなくメロディアスなサビや後半のエモーショナルなインスト・パートにキャッチーさを残すのもDREAM THEATERらしい。
ピアノとメロウなギターがリードする静謐な美バラード#8。
何かが起こりそうな序盤から漂う大作ムードはそれなりだが、アルバム総尺60分の縛りからか、展開していく各要素が収束するカタルシスが彼らにしてはイマイチな#9。
第2期DEEP PURPLE風をダウン・チューニングで再現したかのようなパーティ・ナンバー#10。

坂本龍一が所有していた郊外のスタジオにメンバーが集合。半ば合宿のような感じで作曲を進めたとあって、リフの元ネタやアレンジに各メンバーのアイディアが民主的に取り入れられているらしい。前作では2枚組の長編ストーリーをほぼジョン・ペトルーシ(G)一人で書き上げた事を考えると方向性は真逆で、緻密なDREAM THEATERらしさの中に生々しいライブ感がいつになく増量されているのもバンドとしての絆がより深まったことの結果であろう。
アルバムのプロモーションにSNSを積極的に利用し、楽曲の背景を垣間見せる手法もインテリジェントなバンドらしく、より深堀りしたいファンの特性にマッチ。アルバムを引っ提げてのツアーではリリース20周年となるMetropolis PT2 : Scenes from a Memoryのアルバム全曲再現をアナウンスするなど、商売とファン・サービスが見事に融合している点も見逃せない。

Track List

1. Untethered Angel
2. Paralyzed
3. Fall into the Light
4. Barstool Warrior
5. Room 137
6. S2N
7. At Wit's End
8. Out of Reach
9. Pale Blue Dot
10. Viper King

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DREAM THEATER / A View From The Top Of The World

2021,USA

DREAM THEATERの15thアルバム A View From The Top Of The World。

ミステリアスかつヘヴィなリフ、メロウなパート、ギターとシンセによる超絶バトル等、DREAM THEATERのエッセンスを凝縮した#1。
ヘヴィながらメロディアスな歌唱パートとギターとシンセのスリリングなハーモニーをフィーチュアしたインスト・パートを持つ#2。
キャッチーな抒情メロディを軸に快活なパートや構築度の高いギターソロなどを交えドラマティックに聴かせる#3。
メカニカルなモチーフで緊張感を高めていき、メロウなサビで落差を演出する#4。ダーティなオルガン、幽玄なストリングス系など場面を彩る鍵盤群が効果的。
明朗なリフに近年のDREAM THEATERというかジョン・ペトルーシ(G)ではお馴染みのケルト風味を漂わせた北米プログレ・ハードの系譜に連なる#5。
8弦ギター導入が話題の#6。ことさらヘヴィネスを強調せずメロウネスとのバランス感覚が秀逸。
様々なパートを力技で繋ぎ合わせた感が逆に新鮮な20分超えの長尺チューン#7。

前作にともなう日本公演が中止になるなどCOVID-19の世界的影響で活動もままならない中でも彼らの創作意欲は衰え知らず・・、ではあるのだが、各曲が短尺傾向にあった前作では各楽曲の個性が際立っていたが、今作では長尺にシフトしたためか各楽曲内での展開がバラエティに富んでいる分、楽曲毎のフックが多少弱まった印象。
しかしながら、丸みを帯びたトーンにエモーショナル面での円熟味を感じさせつつ、8弦ギター導入や#1に見られる指板上をメカニカルに移動する構築されたフレーズなどに未だ研究熱心さを伺わせるジョン・ペトルーシの現役ギター・ヒーローぶりが眩しいし、充実したインストパートではギターもシンセも弾きまくってます。

Track List

1. The Alien
2. Answering the Call
3. Invisible Monster
4. Sleeping Giant
5. Transcending Time
6. Awaken the Master
7. A View from the Top of the World

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