IQ のレビュー

IQ / Tales from the Lush Attic

1983,UK

70年代末の英国に勃興したNWOBHMムーブメントに呼応するかのように起こったプログレッシブ・ロック再興ムーブメント=ポンプ・ロック。そのシーンの代表格であるIQの1983年デビュー作Tales from the Lush Attic。

ピーター・ゲイブリエル期GENESISのシアトリカルなヴォーカルと、ゲイブリエル後GENESISが確立したシンフォニックなプログレの型を融合したサウンドは非常にありがちながら、いきなりの19分超チューンである#1から見せる巧みな場面転換による長尺の構成力はなかなかなものです。曲想優先でヴォーカルのメロディがイマイチついて行っていない所は若干の苦笑も禁じえませんが・・・そんなぎこちないヴォーカルと固めのシンセ・サウンドが折角の叙情味を殺いでいる所も若さ故か。
キャリアを重ねる事で表現力を増して行ったピーター・ニコルス(Vo)のヴォーカルも、マァこれが1stだし仕方が無いとしても、キツ目の矩形波っぽいシンセ・サウンドがもうちょいポルタメントとかエコー処理で滑らかだったら印象もかなり変わったと思いますね。

Track List

1. The Last Human Gateway
2. Through The Corridors
3. Awake And Nervous
4. My Baby Treats Me Right ‘Cos I’m A Hard Lovin’ Man All Night Long
5. The Enemy Smacks

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IQ / The Wake

1985,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドIQの1985年2ndアルバムThe Wake。

GENESIS影響下のポンプ・ロック勢の例に漏れず、このIQもピーター・ニコルズ(Vo)のピーター・ゲイブリエルをよりデフォルメしたような歌唱とマーティン・オフォード(Key)のシンセ・ストリングスを中心としたシンフォニックなアンサンブルが特徴。
ハイトーンに付いていけず”しゃくる”ような歌唱になってしまう#1のように少々辛い部分もあるピーター・ニコルズですが、アイデンティティ確立の過程での試行錯誤の1ページということでしょうか。

軽快な5拍子に乗ってシンセ・ストリングスとクリーンなアルペジオがリードする#1。中間部では7拍子にシフト・チェンジしてテーマ・メロディをギターやシンセでアレンジして聴かせる等、定番の手法ながら考え抜かれた構成が見事です。
ミステリアスなシンセのリフレインからドッシリしたビートで堂々としたアンサンブルを展開する#2。80年代らしく、キャチーなテイストも織り交ぜています。
序曲的な#2の余韻に繋げたシンセのぶ厚いイントロから軽快な7拍子、まろやかなフレットレス・ベースがたゆたう歌唱パート、とめまぐるしく展開する#3。サビでは#2のメロディが再登場し関連性を持たせ、スペイシーなギターのシンフォニックなソロでフェイドアウト。
スティール・ドラムのような音色のシンセとエレクトリック・シタールをフィーチャーした無国籍風エキゾチックな#4。
クリーン・ギターの7拍子アルペジオに絡むムード抜群のフルート系シンセとぶ厚いパッド系シンセが織り成す翳りある冒頭から、シンフォニックかつスリリングに発展する9分超の#5。希望的な歌メロを補完するパワフルなドラムが楽曲のダイナミクスを増強しています。
ギターの軽快なカッティングとシンセ・ストリングスがリードするキャッチーなボーカル・ナンバー#6。単にポップに終わるのではなく、少々捻ったインスト・パートを挿入するセンスも素晴らしいです。
ラストを飾る#7は伝統的英国叙情を漂わせた静かな冒頭から、ヘヴィなビートに乗せたスケール練習のようなGENESIS風シンセ・ソロとギター・ソロに続き、#1のモチーフを長3度メジャー版にしたフレーズが登場、アルバムとしての統一感を醸し出しています。ラストのフォークロア風味を感じさせるギターのリフレインも良い感じ。

自然に聴かせる変拍子やここぞという場面でのキメ・フレーズなど、テクニックに走らずメロディとアンサンブルを大切にした等身大のシンフォニック・ロックが好感度高し。彼らのクラシックとも評される1枚です。

Track List

1. Outer Limits
2. The Wake
3. The Magic Roundabout
4. Corners
5. Widow's Peak
6. The Thousand Days
7. Headlong

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IQ / Ever

1993,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドIQの1993年5thアルバムEver。

一旦脱退したピーター・ニコルス(Vo)が復帰、ベースにジョン・ジョウィト(B)が加入。

ドラムのロールで幕を開け変拍子を交えた緊張感あるプログレッシブなインストゥルメンタル・パートから、爽やかに疾走するボーカル・パートに移行する#1。中間部のインスト・パートも変拍子やポリリズムを導入したアンサンブルで、耳に引っかかりを残す仕掛けが巧み。
キラキラしたシンセのアルペジオとフレットレス・ベースのまろやかな響きに優しいボーカルが乗るバラード調の前半、ダークなインストゥルメンタル・パートの後半という2部構成の#2。
得意の7拍子でタイトに迫るリフを序盤と終盤に配し、キャッチーなボーカル・パートをサンドした#3。
#2とは微妙にレイヤー音色を変えたキラキラ・シンセのアルペジオにパッド系シンセ、フレットレス・ベース、ピーター・ニコルスの切ないボーカルでしっとりとしたムードを醸成する序盤、バンドインしてからのヘヴィなパートを交えてのロックな展開と、起伏で14分超を描いた#4。マーティン・オフォード(Key)のシンセがリードする、GENESISばりのドラマティックなインストゥルメンタル・パートがアルバム随一のハイライトとなっています。
印象的なピアノ+シンセによるメイン・リフ、12弦ギターのアルペジオをパッド系シンセが包み込むむバラード#5。中間部~終盤ではまたもやGENESISをルーツとする7拍子プログレ・パートが登場。ハケット風なライトハンドを聴かせるギターや、単音フレーズを奏でる矩形波っぽいシンセのレトロな響きもナイス。
#5のムードを引継ぎメドレーでエンディング曲#6へ繋がる展開も、4人編成時のGENESISがアルバム終盤でやっていた手法で微笑ましいですね。
偉大な先人に対してのオマージュということでしょうか。

ボーカル・パートはキャッチーに変拍子もさりげなく、楽曲個々の展開やインスト・パートでは思わずニヤッとさせる大小のプログレッシブな技を仕込み、程良い緊張感とともに瑞々しく爽やかなシンフォニック・ロックにまとめあげたアルバムです。

Track List

1. The Darkest Hour
2. Fading Senses:
i) After All
ii) Fading Senses
3. Out Of Nowhere
4. Further Away
5. Leap Of Faith
6. Came Down

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IQ / Dark Matter

2004,UK

IQの2004年8thアルバムDark Matter。

4~5分台のコンパクトな楽曲#2,#3,#4を曲間無く繋ぎ長尺曲#1,#5でサンドイッチするアルバム構成は、コンセプト・アルバムかと見紛うほどの統一性で時間があっという間に過ぎて行きます。
コンパクトな楽曲群は、叙情的な#2、緊張感ある序盤とキャッチーなサビを持つ#3、思索ナンバー#4とそれぞれが明快なキャラクターを持ち、デジタル・シンセによるシンフォニックなストリングス系サウンドやサンプラーと思しきモーグ、コルグCX3によるハモンド等のヴィンテージ・サウンドによるアクセントが効いたアレンジに、キャッチーでフック満載のヴォーカルやギターのメロディが乗る全く隙の無い完璧な構成。
それに輪をかけて完璧なのがポジティブで高揚感溢れる#1や、緩急織り交ぜた組曲形式で24分超の物語を紡ぐ#5。

豊富なアイディアによるプログレッシブ・ロック的なおいしいパーツが随所に点在しながらも、最終的には明快な楽曲キャラクターにまで昇華する手腕が見事な素晴らしいアルバムです。

Track List

1. Sacred Sound
2. Red Dust Shadow
3. You Never Will
4. Born Brilliant
5. Harvest Of Souls

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Q / Frequency

2009,UK

英国のベテラン・プログレ・バンドIQの2009年9thアルバムFrequency。

マーティン・オフォードに代わりマーク・ウェストワース(Key)、ポール・クックに代わりアンディ・エドワーズ(Dr)と2名のオリジナルメンバーの交代を経て制作。(ポール・クックは後に復帰)
アルバム・タイトルのFrequency=周波数やブックレットに記されたモールス信号(バンド名とタイトル)、#2後半のメロディが#6で再登場、#3,#4,#5がクロスフェードして繋がっている所、等々にコンセプチュアルなムードが漂います。
前作でシンフォニック・プログレの奥義を習得した彼ららしく、巧みで自然な場面転換による曲構成やメロトロン風、ピアノ、エレピ、ズ太いアナログ風シンセ・リード、オルガンなど実はカラフルながらも品良く纏め上げられたキーボードの活用センスに老獪なまでの余裕を感じさせます。
印象的で美しいメロディとそれを活かすピーター・ニコルス(Vo)のマイルドな歌唱を中心に据え、堅実なアンサンブルでドラマティックに物語を紡ぐスタイルは不変です。

Track List

1. Frequency
2. Life Support
3. Stronger Than Friction
4. One Fatal Mistake
5. Ryker Skies
6. Province
7. Closer

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IQ / The Road Of Bones

2014,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドIQの前作Frequency以来5年振りとなる10thアルバムThe Road Of Bones。

クールでスリリングなムードのヴァースから突き抜けるサビへの移行が鮮烈。ヘヴィなミディアム・テンポの#1。
ピアノやシロフォンをアクセントに柔らかなパッド系シンセをバックにした序盤~中盤、続く最後の2分半は荘厳なシンセストリングスとヘヴィなドラムがリードする深遠なパートへと展開するタイトルトラック#2。
軽いサンプル・ビートの上を浮遊するパッド系シンセが柔らかく包むバラード、ヘヴィな中間の歌唱パート、アコギやシンセを絡めた静謐パート、テンポアップしてのインスト・パートなど、変拍子も忍ばせながら目まぐるしく展開していく19分超のプログレ超大作#3。
トリッキーなリズム・セクションのひっかかりを持つ柔和なバラード・ナンバー#4。
ヘヴィネスとミステリアスが支配するプログレッシブなパートから、キャッチーかつメロディアスなボーカル・パートへ移行、シンフォニックな大団円を経て静かに幕を降ろす12分の大作#5。

特に冒頭3曲において、シリアスでヘヴィなパートからメロディアスで開放的なサビへの転換がドラマティックに決まっている。
アナログ・シンセやオルガン系、ストリングスなどオーソドックスながらツボを押さえたキーボードの音色、ヘヴィなビートと華麗なロールを叩き出すドラム、安定したピーター・ニコルスの歌唱と、スタイルを確立させた者だけが持つ威厳すら感じさせる重厚なサウンドが全編を覆う名作。

Track List

1. From The Outside In
2. The Road Of Bones
3. Without Walls
4. Ocean
5. Until The End

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IQ / Resistance

2019,UK

英国の重鎮ポンプ・バンドIQの2019年作Resistance。

ズッシリしたリフに乗せた緊張感あるパートからシンセが唸りを上げるサビで一気にシンフォニックなカタルシスを味わえる#1。
内省的な序盤から次第にヘヴィかつスペイシーな広がりへと展開するシリアスな#2。
霧のような白玉シンセにピアノやアコギのアルペジオで繊細なムードを演出する前半から、リズム隊も加わり重厚なシンフォに移行する#3。
厚いシンセのサウンドスケープにエキゾチックな管楽器風のアクセントを加えたミステリアスな前半とギターとヴォーカルをフィーチュアした後半からなる#4。
メロトロンの雲の上に切々とした歌唱が乗るシンフォ・バラード#5。
パッド系シンセとまろやかなベースをバックにしたマイルドなナンバー#6。
どこか郷愁をそそりながらユーモラスでもある足踏みオルガン風のサウンドと幽玄なアレンジが浮遊感を演出する序盤、起承転結を持つギター・ソロをフィーチュアしテンポを上げた中盤を経て、解放感とポジティブなムードに包まれた終盤へと展開する15分超えの#7。
シンセと手数の多いドラムがリードする変拍子リフレインを軸にその変奏や緊張と緩和による緩急で21分超えをドラマティックに描く#8。
エモーショナルなギター・ソロを配したバラード#9。
攻撃的なオルガンと抑制されたギターが対比する#10。
浮遊するシンセをバックにしたドリーミーなバラード、スリリングなバンドの器楽パート、スペイシーなシンフォパート等からなる#11。

スロー~ミディアム・テンポの曲調にシンセの白玉アレンジが多く、アルバム全体に統一した抒情的ムードはあるものの、楽曲ごとの強烈な個性に欠ける印象。そんな中、ズ太いトーンと派手なポルタメントで楽曲に印象的なフックをもたらすIQ加入後2作目となるニール・デュラント(Key)がアレンジ面で気を吐き、ピーター・ニコルズ(Vo)の耳馴染みの良い歌唱で長尺かつ重厚な楽曲群を聴かせきってしまう大御所の貫禄。

Track List

Disc1
1. A Missile
2. Rise
3. Stay Down
4. Alampandria
5. Shallow Bay
6. If Anything
7. For Another Lifetime

Disc2
1. The Great Spirit Way
2. Fire And Security
3. Perfect Space
4. Fallout

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