陰陽座 のレビュー

陰陽座 / 風神界逅

2014,日本

妖怪ヘヴィ・メタル・バンド陰陽座の11thアルバム風神界逅。

クリーンなギターのカッティングとメロトロン・フルートの静かなイントロから、壮大で爽やかなシンフォニック・パートに発展する陰陽座としては珍しいタイプのオープニング・チューン#1。
#1からの入り方がメタル王道のカッコ良さを持つ疾走チューン#2。狩姦(G)による構築度の高いクラシカルなリックがカッコ良い。
#2とテンポやキーが同じで一瞬「続き?」と錯覚するも、ハード・ロック寄りなリフとキャッチーなサビに個性を持たせた#3。
瞬火(B)がシャウトするゴリゴリなヘヴィ・メタルに、黒猫(Vo)の和風コブシ歌唱で陰陽座らしいフックを加えた#4。
黒猫のフェミニンな歌声をフィーチュアしたバラード#5。
ブリティッシュ・ハード・ロックの古式に則ったツイン・リード・リフが牽引する、タイトルを具現化したスピード・チューン#6。
単音とハーモニクスを多用したリフに80年代アメリカンHR/HMの薫り漂う、瞬火の歌唱パートも含んだ忍法帖シリーズとしては異色の#7。
ムーディな序盤から3拍子へ変化し、さらに5拍子のパートも交えての複雑な展開をメロディアスにさらりと聴かせる、陰陽座らしいプログレッシブ・バラード#8。
メイン・ストリームでも充分通用するであろう、狩姦作曲のメロディアスなポップ・チューン#9。
シンセストリングスをバックに黒猫の美麗ソプラノが堪能できる、日本的な雅を感じさせるメロディも秀逸な黒猫作曲の雄大なバラード#10。
疾走チューンでありながら、黒猫、瞬火ともにメタル度を抑えたマイルドな歌唱で叙情を印象付けるドラマティックでメロディアスなメタル・ナンバー#11。瞬火歌唱パートに、1オクターブ上でユニゾンする黒猫の歌唱がうっすらとミックスされて神秘的な透明感を演出する手法は陰陽座ならでは。
黒猫の伸びやかでキュートな歌唱をフィーチュアした明るいポップ・ナンバー#12。

同時リリースの雷神創世が剛だとすると、本作風神界逅は柔か。
全曲レギュラー・チューニングによる煌びやかさは、時に疾風の如くあるいは爽やかな風のように、風をモチーフにした楽曲との相性が良く、瞬火のプロデュース能力の高さを改めて証明。
少々キャッチーながらそこは勿論妖怪ヘヴィ・メタルの範疇の話であり、メタル・ファンならガッツ・ポーズ間違いなしの#2、#11など楽曲群は珠玉揃い。
楽曲ダウンロード全盛の時代にあって、瞬火自ら手掛けるアートワークへのこだわりやクレジットでのちょっとした遊び心には、次もCDを買ってみたいと思わせる吸引力がある。
サウンド・プロダクションやギタリスト2人のプレイも、数作前と比較すると格段に向上している。

Track List

1. 風神(ふうじん)
2. 神風(かみかぜ)
3. 然れど偽りの送り火(されどいつわりのおくりび)
4. 一目連(いちもくれん)
5. 蛇蠱(へびみこ)
6. 飆(つむじかぜ)
7. 無風忍法帖(むふうにんぽうちょう)
8. 八百比丘尼(やおびくに)
9. 眼指(まなざし)
10. 雲は龍に舞い、風は鳳に歌う(くもはりゅうにまい、かぜはとりにうたう)
11. 故に其の疾きこと風の如く(ゆえにそのはやきことかぜのごとく)
12. 春爛漫に式の舞う也(はるらんまんにしきのまうなり)

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