PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンとOPETHのミカエル・オーカーフェルトによるプロジェクトSTORM CORROSIONの1stアルバム Storm Corrosion。
OPETHの2001年作 Blackwater Parkをスティーヴンがプロデュースしたことから始まり、互いの作品に客演するなど交流を深めてきた彼ら。ファン待望のコラボ。
事前に、それぞれの最新作(スティーヴンのソロ Grace For Drowning、OPETHのHeritage)に続く三部作との発言もあったことから、レトロなプログレッシブ・ロックを思いっきり追求してくれるのではと期待していましたが、届いた音は意外にシンプル。
勿論、スタジオワークに定評のあるスティーヴンのインプットと思われる精緻な音作りがもたらすプラスアルファはあるものの、音楽性としては2人の歌唱とアコギ(一部クリーンなエレキ)を中心としてストリングスや管を加えたダークでメランコリックなプログレッシブ・フォークで統一されています。
ミカエルが歌うダークな#1。中間部のギター・リフ、ピッキングの細かいニュアンスが枯れた味わいを醸すギター・ソロ、奇妙な音使いのアルペジオなど、ミカエルのカラーが前面に出ています。
アコギのアルペジオをバックにスティーヴンが歌うメロウなフォークの#2。こちらはGrace For Drowningの流れを汲む端正で静かなスティーヴン然としたナンバー。終盤のアルペジオはミカエルっぽい音使い。
冷たいメロトロンのストリングスが印象的な#3。静かな中、中間部では若干ヘヴィなパートの起伏も。
アコギのアルペジオとスキャットが、70年代ブリッティッシュ暗黒フォークのような深遠なムードを醸成する#4。
アコギによる6/8拍子のリフにストリングスやエレピなどが重なり展開していくインストゥルメンタル・ナンバー#5。ストリングスのアレンジはデイヴ・スチュワート(元HATFIELD AND THE NORTH)。
OPETHでは見せたことの無いミカエルのウィスパー気味歌唱が新鮮な#6。清廉で神秘的なムードを醸し出す、霧のようなパッド系シンセの白玉が延々続くパートがやや冗長な感じも。後半はスティーヴンのアンビエントな歌唱が寂寥感を掻き立てます。
全体的に、スティーヴンの世界観にミカエルが乗っかり、得意の変態アルペジオなどで捻りを加えた感じ。
また、本家の活動との線引きを意識してか、あからさまなヘヴィネスやめくるめく展開といった要素が抑えられており、起伏に欠けやや一本調子な印象も。
個人的にはそういう部分での2人のケミストリー=相乗効果を勝手に期待していただけにちょっと肩透かしか。
アルバム・カヴァーのアートは2010年に死去したスイス人アーティスト ハンス・アーノルドによるもの。サイケでビザールな独特の世界観に引き込まれます。