フォーク のレビュー

THE WISHING TREE / Ostara

2009,UK

英国ネオ・プログレバンドMARILLIONのスティーブ・ロザリー(G)が”20世紀最後の妖精”ハンナ・ストバート(Vo)と組んだプロジェクト WISHING TREEの13年ぶりとなる2ndアルバム。

英国トラッドの香りも仄かに漂うしっとりと落ち着いたアンサンブルをバックに、ハンナの少々鼻にかかったような独特の美声がたゆたうスタイルは不変。ハンナの声は中音域がベースだが、高音になった時の瑞々しい透明感が堪らないです。モーダルな歌メロがアニーハズラム(RENAISSANCE)、ジュリアンヌ・リーガン(ALL ABOUT EVE)、アネク・ヴァン・ガースバーゲン(GATHERING~AGUA DE ANNIQUE)等の歌姫達を想起させるタイトル曲#1から、アコギのシンプルな伴奏に耳元で囁かれているかのような生々しい歌声が映える#8まで、21世紀になってもやっぱり妖精なハンナの魅力がアルバム全編通して大フィーチャーされております。

Track List

1.Ostara
2.Easy
3.Hollow Hills
4.Seventh Sign
5.Falling
6.Fly
7.Kingfisher
8.Soldier

THE WISHING TREE / Ostara のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

JUDY DYBLE / Talking with Strangers

2009,UK

FAIRPORT CONVENTIONの初代ボーカリストにしてKING CRIMSON胎動期にも参加していた女性シンガー ジュディ・ダイブル(Vo)の2009年4thソロ・アルバムTalking with Strangers。

アコースティック楽器を中心にしたアンサンブルに贅沢なコーラスを加えたオーガニックなサウンドでコンテンポラリーな叙情フォークを展開。ロバート・フリップ(G)、イアン・マクドナルド(Sax/Fl)、サイモン・ニコル(G)などCRIMSON、FAIRPORT人脈の他、PENTANGLEのジャッキー・マクシー、TREESのセリア・ハンフリーズ、ALL ABOUT EVEのジュリアンヌ・リーガンといった名だたる歌姫達がバッキング・ボーカルで参加しております。
イントロ的にテーマ・メロディを提示して終了するアコースティック小曲#1。
ジュディ・ダイブルが奏でるオート・ハープのかわいらしい音色がお伽噺のような曲調にマッチした叙情チューン#2ではイアン・マクドナルドが素晴らしいフルートのソロを披露。
しっとりと歌い上げるEMERSON LAKE & PALMERのカバー#3。
シンプルなピアノ伴奏に美しいボーカル・メロディが映える#4。
オートハープとフルートが印象的なトラッド風郷愁を誘うフォーク#5。
男女ボーカルの絡みと哀愁のSAXがジャジーで大人なムードを醸し出す#6。
そして19分に及ぶ#7は総勢15名がレコーディングに参加、繊細なコーラスや各種楽器の音色がフィーチャーされたプログレッシブ・チューン。#1のテーマを軸に様々な発展形で構築されたボーカル・パートに混沌としたムードのインスト部が挿入され、ISLANDS期CRIMSONのような典雅な盛り上がりを経て最後は#1のメロディと印象的な吐息のようなコーラスがリプライズされ感動的に幕を引きます。

Track List

1. Neverknowing
2. Jazzbirds
3. C'est La Vie
4. Talking with Strangers
5. Dreamtime
6. Grey October Day
7. Harpsong

JUDY DYBLE / Talking with Strangers のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

OPIUM CARTEL / Night Blooms

2009,NORWAY/SWEDEN

WHITE WILLOWのヤコブ・ホルム・ルポ(G/Key/Vo)を中心としたANGLAGARDのマティアス・オルセン(Dr)、WOBBLERのラース・フォレデリク・フロイスリー(Key)らのプロジェクトOPIUM CARTELの1stアルバムNight Blooms。

ライス・マーシュ(Vo)の繊細な歌唱をアコギやメロトロンで優しく包み込むフォーク#1。
ギター・ポップ風のリフを加えたエレクトリック・フォーク#2。
ステファン・ベネット(Vo)とWHITE WILLOWのシルヴィア・エリクセン(Vo)のデュエットによる木漏れ日フォーク#3。中間部のシルヴィアによるウィスパー気味のソロ・パートが可憐。
ティム・ボウネス(Vo)とレイチェル・ヘイデン(Vo)のデュエットによる、美しく儚げなブライアン・イーノのカヴァー#4。
シルヴィアのオーバー・ダブによる美声天上ハーモニーにチェロやメロトロンが絡む、フォーキーな中にもエレクトロニカなビートを微かに交えたドリーミー・ポップ#5。
ヤコブ・ホルム・ルポによると思われるヘタウマ・ボーカルをフィーチュアしたポップ・ロック#6。
沈痛なメロトロンのイントロからヘヴィなサビに展開する、中期CRIMSON風ダークネスを纏った8分超のプログレッシブ・チューン#7。
レイチェル・ヘイデンをフィーチュアしたドリーミーなフォーク#8。
WHITE WILLOWの3rdアルバムSacrament収録の同名曲をカヴァーした#9。オリジナルは男女デュエットだったが、こちらはシルヴィアの無垢な美声ボーカルのみでより透明感が増量。

朗らかな音像のそこかしこに仄かに北欧的な暗さを潜ませた、プログレッシブ・フォーク。
エレクトロニカとオーガニックな管弦を巧みに融合させた温かみのあるサウンド。
メロディはあくまでも耽美で、女性ボーカルが絡む楽曲は女性ボーカル・ファン必聴。

Track List

1. Heavenman
2. Better Days Ahead
3. Skinnydip
4. By This River
5. Three Sleepers
6. Honeybee
7. Beach House
8. Flicker Girl
9. The Last Rose of Summer

OPIUM CARTEL / Night Blooms のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

PRISCILLA HERNANDEZ / The Underliving

2011,SPAIN

スペインのシンガー・ソングライター兼イラストレーター プリシラ・エルナンデスの2ndアルバムThe Underliving。

音楽性、イラスト、そして自身のコスプレまで全てがファンタジックでゴシック。
神話や伝説などの文学作品、ホラーやファンタジー映画、そしてスタジオジブリ作品からの影響を自らの作品に投影。
ストリングスにハープやイリアン・パイプ系のオーガニックな楽器から、シンセやデジタル・シーケンスのビートも一つの世界観の中で巧みに融合。
音楽に限って言えば、アンビエントな質感とウィスパーから情念ヴォイスまで様々な声を多層で重ねた音像はダークなエンヤといったところ。

繊細で美しくも妖しいベストトラックの#1を筆頭に、シンセを使用してニュー・ウェーブ風なゴシック感を漂わせる#3、軽快なビートに一瞬明るい表情を見せるメロディが切ない#4、風のSEが不気味な#10、心が洗われるかのような聖なるムードを持つ#11、などファンタジーに浸れる秀作が目白押し。

Track List

1. In the Mist
2. The Underliving
3. Feel the Thrill
4. Through the Long Way
5. Don't be Sad
6. In my Mind's Eye
7. Off the Lane
8. Storm
9. The Aftermath
10. The Wind Song
11. Ode to the Silence
12. Northern Lights
13. Morning Light
14. At the Dream's Door
15. One Last Hope

PRISCILLA HERNANDEZ / The Underliving のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

WHITE WILLOW / Terminal Twilight

2011,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの5年ぶりとなる6thアルバムTerminal Twilight。

2nd~4thアルバムに参加していた美声のシルヴィア・エリクセン(Vo)が復帰。サウンドも前作のコンテンポラリー・ポップス路線から、メロディックなプログレ・フォークに素朴で時にダークかつ混沌とした要素を溶け込ませた初期のイメージに近いものに回帰。

シンセによるゆったりとしたアルペジオが神秘的で妖しいムードを醸し出すオープニングや屈折した歌メロが初期のテイストを想起させる#1。終盤にようやくポジティブなメロディの木漏れ日が差し込み、ここまでの暗鬱と対比。
シルヴィアの可憐なボーカルをフィーチュアしたキャッチーなコンテンポラリー・フォーク#2。
色んなところに客演しているゲストのティム・ボウネス(NO-MAN)とバンドの共作でティム自ら枯れた哀愁の歌唱を聞かせるメランコリックなフォーク#3。
シンセの重層的なアンサンブルでシンフォニックに高揚するインスト・パートが圧巻。ボーカル・パートではシルヴィアの素朴で可憐な歌声が楽しめるアルバム前半のハイライト#4。
シンプルなアルペジオにフルートやシンセが絡むイントロ~ボーカル・パートのポジティブなドリーミー感、ヴィンンテージ風オルガンとシンセで少々アヴァンな不条理パートを盛り込みつつも仄かな叙情を感じさせるインスト・パートの対比が見事なプログレ・フォーク#5。
北欧フォークロア風メロディを紡ぐ掠れたメロトロン、シンセを中心としたアンサンブルによるドラマティックなインストゥルメンタル#6。
ドリーミー、叙情、暗鬱と様々な表情を見せるボーカル・パートを、ロックなドラムとメロトロンを始めとした鍵盤群のバックが支える#7。フルートとギターのアルペジオによる寂寥パートから、オルガンのグリッサンドと共になだれ込む激情パートへのドラマティックな場面転換など、起伏に富んだ13分超の長尺曲。
12弦アコギのアルペジオがGENESISっぽい、爽やかでどこか神秘的な余韻でアルバムを締めくくるインスト#8。

優しいメロディがもたらす全体的な暖かみや大作#5,#7でのインスト・パートの構成力、巧みなシンセの音使いなど、垢抜けたメジャー・クラスのアレンジとサウンドに独特の屈折テイストを絶妙に配合したキャリアの集大成にして最高傑作。

Track List

1. Hawks Circle the Mountain
2. Snowswept
3. Kansas Regrets
4. Red Leaves
5. Floor 67
6. Natasha of the Burning Woods
7. Searise
8. A Rumour of Twilight

WHITE WILLOW / Terminal Twilight のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

STORM CORROSION / Storm Corrosion

2012,UK/SWEDEN

PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンとOPETHのミカエル・オーカーフェルトによるプロジェクトSTORM CORROSIONの1stアルバム Storm Corrosion。

OPETHの2001年作 Blackwater Parkをスティーヴンがプロデュースしたことから始まり、互いの作品に客演するなど交流を深めてきた彼ら。ファン待望のコラボ。
事前に、それぞれの最新作(スティーヴンのソロ Grace For Drowning、OPETHのHeritage)に続く三部作との発言もあったことから、レトロなプログレッシブ・ロックを思いっきり追求してくれるのではと期待していましたが、届いた音は意外にシンプル。
勿論、スタジオワークに定評のあるスティーヴンのインプットと思われる精緻な音作りがもたらすプラスアルファはあるものの、音楽性としては2人の歌唱とアコギ(一部クリーンなエレキ)を中心としてストリングスや管を加えたダークでメランコリックなプログレッシブ・フォークで統一されています。

ミカエルが歌うダークな#1。中間部のギター・リフ、ピッキングの細かいニュアンスが枯れた味わいを醸すギター・ソロ、奇妙な音使いのアルペジオなど、ミカエルのカラーが前面に出ています。
アコギのアルペジオをバックにスティーヴンが歌うメロウなフォークの#2。こちらはGrace For Drowningの流れを汲む端正で静かなスティーヴン然としたナンバー。終盤のアルペジオはミカエルっぽい音使い。
冷たいメロトロンのストリングスが印象的な#3。静かな中、中間部では若干ヘヴィなパートの起伏も。
アコギのアルペジオとスキャットが、70年代ブリッティッシュ暗黒フォークのような深遠なムードを醸成する#4。
アコギによる6/8拍子のリフにストリングスやエレピなどが重なり展開していくインストゥルメンタル・ナンバー#5。ストリングスのアレンジはデイヴ・スチュワート(元HATFIELD AND THE NORTH)。
OPETHでは見せたことの無いミカエルのウィスパー気味歌唱が新鮮な#6。清廉で神秘的なムードを醸し出す、霧のようなパッド系シンセの白玉が延々続くパートがやや冗長な感じも。後半はスティーヴンのアンビエントな歌唱が寂寥感を掻き立てます。

全体的に、スティーヴンの世界観にミカエルが乗っかり、得意の変態アルペジオなどで捻りを加えた感じ。
また、本家の活動との線引きを意識してか、あからさまなヘヴィネスやめくるめく展開といった要素が抑えられており、起伏に欠けやや一本調子な印象も。
個人的にはそういう部分での2人のケミストリー=相乗効果を勝手に期待していただけにちょっと肩透かしか。

アルバム・カヴァーのアートは2010年に死去したスイス人アーティスト ハンス・アーノルドによるもの。サイケでビザールな独特の世界観に引き込まれます。

Track List

1. The Watch
2. Thunder Has Spoken
3. One Day
4. In The Wilderness
5. Soaring On
6. Let Us Now Make Love
7. Scene Of The Crime
8. End Of The Road
9. Exit

STORM CORROSION / Storm Corrosion のレビューを見る

カテゴリー: STORM CORROSION

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

JUDY DYBLE / Flow and Change

2013,UK

ロバート・フリップやイアン・マクドナルドらの参加で話題となった前作Talking with Strangersから4年ぶりのリリースとなる、FAIRPORT CONVENTIONやTRADER HORNEで活躍した女性シンガー ジュディ・ダイブル(Vo)のソロ・アルバムFlow and Change。

SEやスライド・ギターが幽玄な空気を醸し出すフォーク・ロック#1。妖しさとドリーミーなムードの対比がおもしろい。
管弦セクションがクラシカルで厳かな彩りを加える#2。
ストリングスとピアノのバックに控え目なボーカルが乗る、孫娘に捧げられたセンチメンタルなナンバー#3。
ダルシマーのシーケンス・フレーズからクリーンなエレキ・ギターのアルペジオに移行する、エレクトリック・フォークな趣きの#4。
弦楽セクションをバックにした穏やかなフォーク#5。
ジュリアンヌ・リーガンとの共作で、穏やかだが幾分ポップス寄りな#6。少量加えた翳りが心地良いフックとなっている。
ピアノと弦楽セクションをバックにした静謐な#7。途中でドラムも加わるが、パーカッション的なプレイで楽曲の世界観をキープしている。
男性ボーカルとのデュエットを聴かせるエレクトリック・フォーク#8。オーボエが加わる終盤のインスト・パートではドラミングもプロレッシブなアプローチを見せるも残念ながらそのままフェイドアウト。
ピアノと管弦セクションをバックにした端正なバラード#9。
管弦セクションとエレキ/アコギのギターが様々に表情を変えながらも静かに紡ぐ11分超の大作#10。アコギのパートにはトラッドの薫り漂う部分も。

一部に混沌プログレ・パートも存在した前作から打って変わって、管弦を多用した格調高いアレンジがジュディ・ダイブルの儚げな歌声に絶妙にマッチした穏やかなフォーク・ロック。
地味ではあるが、時にはこういう音楽に安らぎを求めたい時もありますね。

Track List

1. Black Dog Dreams
2. Featherdancing
3. Beautiful Child
4. Crowbaby
5. Driftaway
6. Head Full of Stars
7. Silence
8. Letters
9. Wintersong
10. The Sisterhood of Ruralists

JUDY DYBLE / Flow and Change のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

OPIUM CARTEL / Ardor

2013,NORWAY/SWEDEN

北欧の21世紀プログレを代表するバンド WHITE WILLOWWOBBLERANGLAGARDのメンバーによるプロジェクトOPIUM CARTELの2ndアルバムArdor。

男性ボーカルと可憐な女性ボーカルが時にユニゾン、時にパートを分け合う#1。エレクトロニックなビートにズ太いシンセも交え、ダークでゴシックな世界観が広がる。
ニューウェイブやニューロマンティックを想起させる男性ボーカルがメインのポップ・チューン#2。柔らかいパッド系シンセとエスニックなシーケンス・フレーズを繰り返すマリンバのような音色が印象的。
悲しげなアコギのアルペジオとくすんだフルートをバックに哀愁ボーカルの第一人者ティム・ボウネスが歌う暗黒フォーク#3。
エスニックというかどことなく土着的なムードがするサビのメロディが耳に残る#4。
かわいらしいグロッケンと2本のアコギによる繊細なバックに儚げな女性ボーカルが乗るドリーミーなフォーク・パートと男性ボーカルがリードを取る幽玄な暗黒パートからなる#5。中間部にはメロトロンも。
ボーカル・パートが珍しく終始明るいムードの一方、漆黒のフルートが妖しく舞うインスト・パートとの対比が見事な#6。
女性ボーカルがイコライジングを施した序盤からノーマルに移行するエフェクトが効果的な演出となっている#7。厚いパッド系シンセや滑らかなアナログ・シンセのソロなど、細かい譜割りよりも白玉が目立つアレンジが異色。メロトロンやヴィンテージの香り漂うオルガンが良い感じの空気感を醸成。
アコギとエレキのアルペジオからなる叙情バッキングにウィスパー気味の女性ボーカルが乗るメランコリックな#8。発振させたグラスハープのようなシンセ、滑らかなベースなどが優しく包み込み、暗くも温かみのある北欧ならではの味わい。
イントロのピアノのリフレインをボーカル・パートのバックではグロッケンなどで繰り返し一貫性を持たせつつ、曇天のようなストリングス系シンセ、プログレッシブな様相を呈する7拍子のインスト・パートでの狂おしいサックスなど、器楽系では予想のつかない展開を見せる11分超プログレ・チューン#9。

タイトルのArdor=熱情に反して決して熱くならないクールで幽玄なムードは北欧ならではのもの。
ポップなのに仄暗く、アナログとデジタル的エレクトロニカが融合した独特のサウンド。
男性ボーカルにはゴシックやニューウェイブの薫りも漂い、70年代以降の様々なジャンルの音楽の要素が見え隠れした21世紀的なスタイル。

Track List

1. Kissing Moon
2. When We Dream
3. Then Came the Last Days of May
4. Northern Rains
5. Silence Instead
6. White Wolf
7. The Waiting Ground
8. Revenant
9. Mariner, Come In

OPIUM CARTEL / Ardor のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

LUNA ROSSA / Secrets & Lies

2014,UK

英国ウェールズの女性ボーカル・シンフォPANIC ROOMに在籍するアン=マリー・ヘルダー(Vo/G)とジョナサン・エドワーズ(Key)によるプロジェクトLUNA ROSSAの2ndアルバムSecrets And Lies。

爽やかなバックにアン=マリーのスキャットが乗る清涼感あるオープニング#1。
トレモロを掛けたエレキ・ギターのソロがアクセントとなった、アコギとピアノをバックに抑えたトーンで歌うメランコリックな#2。
くすんだエレピの渋いトーンにジャストフィットしたディープな歌唱が乗るムーディな#3。
バックのアコギとウッドベースの暖かみあるトーンが印象的なフォーク・ナンバー#4。
流れるようなピアノのアルペジオとロング・トーン中心の歌唱が対をなす神秘的なイメージの#5。
ユーモラスなムードを持つトラッドのダンス・チューン風ナンバー#6。
まろやかなエレピとベースに乗るアン=マリーのハスキー気味な歌唱が胸に刺さる、メランコリックなトッド・ラングレンのカヴァー#7。
ケルティック・ハープの厳かな響きを活かした#8。アン=マリーの美しいハイ・トーンがタイトル通りの飛翔感を演出。
ルナ・ロッサ・ストリング・カルテットなる弦楽四重奏が素晴らしいサポートを見せるランディ・ニューマンのカヴァー#9。
弦楽四重奏の優しく浮遊する白玉とアン=マリーの歌唱が絶妙のハーモニーを醸し出す#10。
ピアノとウッド・ベースのみをバックに従えた5拍子の感動的バラード#11。

PANIC ROOMではハード・ロックから哀愁ナンバーまで、幅広くエモーショナルな歌唱を聴かせるアン=マリーだが、LUNA ROSSAではリラックスした自然体で憂いを含んだ深みのある歌声を披露。楽曲群もアンプラグド寄りのシンプルな音像ゆえ、アン=マリーの魅力がより鮮明に伝わる。
よりシリアスなバンド形態のPANIC ROOM、英国伝統の感触を残すLUNA ROSSAと、明確にテイストの違いを打ち出し、それぞれの活動に良い形でフィードバックさせているようだ。

Track List

1. Aurora
2. Secrets & Lies
3. Disappointment
4. The Black Dog
5. Flowers In My Hair
6. Happy Little Song
7. Tiny Demons
8. Fly Away
9. I've Been Wrong Before
10. The Harmony
11. No Chords Left

LUNA ROSSA / Secrets & Lies のレビューを見る

カテゴリー: LUNA ROSSA

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

WHITE WILLOW / Future Hopes

2017,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの7thアルバムFuture Hopes。
2015年にシングルとしてリリースされたSCORPIONSのカバーAnimal Magnetism(本作の#6)でフィーチュアされたベンケ・ナッツソン(Vo)を新たな歌姫として迎え、楽器隊は、ヤコブ・ホルム・ルポ(G/B/Syn)、ラース・フォレデリク・フロイスリー(Syn)、マティアス・オルセン(Dr)らを中心とする今や北欧プログレの手練れ達で前作Terminal Twilight時のメンツと同様。

冒頭のミステリアスでダークなエレクトロニカから、ボーカル・パートに入ると光が射し込む、ドリーミーなシンフォニック・フォーク#1。
ベンケ・ナッツソンによるウィスパー気味の可憐な歌唱が光る美しい儚げフォーク#2。チープだが味のあるサウンドのヴィンテージ風シンセ・ソロが印象的でボーカルのオーガニックな美しさを引き立てている。
無機的なシンセのシーケンス・サウンドに浮遊するボーカルが乗るドリーミー・パート、ハード・エッジなギターも絡む抒情的なパート、寂寥感や屈折した表情を持つインスト・パートから構成される#3。メロトロンも交えたダークな屈折感はANGLAGARDを想起させる。
メロトロンやノイズによる嵐の中を物悲しいギターが漂うダークなウンドスケープ#4。
フォーキーな微睡み歌唱パート、様々な音色を多層で重ねたスペイシーなシンセのオーケストレーションからなる18分超えのシンフォニック・ナンバー#5。シンセやメロトロンに加えギターやオルガンも登場する中間部の長尺インスト・パートは、木漏れ日ムードから哀愁を経て神秘性までドラマティックに展開。
エレクトロニカとアンニュイな女性ボーカルによるアレンジが斬新な前述の#6と独特のアンビエント感が郷愁を誘う屈折抒情メロディを持つピアノ・ソロの佳曲#7はボーナス・トラック。

普遍的なメロディアスさは可憐なボーカル・パートに残しつつ、インスト・パートでは初期のダークなムードも健在。ただ、ヴィンテージ・シンセを駆使したであろう深遠なオーケストレーションや構築性の高いシーケンス・パターンなど手法はより熟練度を増しており、各人がそれぞれのプロジェクト(KAUKASUSNECROMONKEYWOBBLER等)で得た経験がフィード・バックされているようだ。
ベンケ・ナッツソンの歌声は柔らかいシンセや繊細なアコギとの相性が抜群。次作があれば、続投を切に望む。
アルバム・カヴァー・アートはロジャー・ディーンによるもの。一見してわかる程のさすがの記名性だが、YES用に製作した没バージョンのようでもありWHITE WILLOW音楽性には合っていない。

Track List

1. Future Hopes (4:30)
2. Silver and Gold (4:04)
3. In Dim Days (11:04)
4. Where There Was Sea There Is Abyss (1:59)
5. A Sacred View (18:16)
6. Animal Magnetism (CD/Digital bonus track) (7:15)
7. Damnation Valley (CD/Digital bonus track) (3:16)

WHITE WILLOW / Future Hopes のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

OPIUM CARTEL / Valor

2020,NORWAY/SWEDEN

WHITE WILLOWのヤコブ・ホルム・ルポ(G/Key/Vo)を中心としたプロジェクトOPIUM CARTELの3rdアルバムValor。

ゆったりとした7拍子に乗るドリーミー・フォーク#1。
優しい歌唱の温かみと枯れた味わいのギターによる寂寥感が不思議なムードを醸し出す#2。
ミュンミュンしたポルタメントたっぷりのシンセがリードする浮遊インストゥルメンタル#3。
快活なエレクトロ・ポップ・チューン#4。
シンセやギターによる霧のようなサウンドスケープに時折ダークな色彩も挿入したミステリアスな#5。
80年代風が逆に新鮮なポップ・チューンの前半から後半は思索系インストへと展開する#6。
生のストリングスとシンセやエフェクトが融合し、神々しさも漂うシンフォニック・フォーク#7。
AIRBAGのBjørn Riis(G)の哀愁ギターにメロトロンが絡むメランコリックなインストゥルメンタル#8。
どこかで聴いたサビだと思ったらLAメタル・バンドRATTの4thアルバム収録の楽曲カヴァーだった#9。RATTとしては駄曲だったが、ニューロマンティック風にアレンジした本作はなかなか良くできている。

Silje Huleboer (#1,#2,#5,#6)の可憐な歌唱を中心に、明るくてもどこか陰りを感じさせる北欧感とレトロ感に満ちたドリーム・ポップ。

Track List

1. In the Streets
2. Slow Run
3. A Question of Re-entry
4. Nightwings
5. Fairground Sunday
6. Under Thunder
7. The Curfew Bell
8. A Maelstrom of Stars
9. What’s It Gonna Be

OPIUM CARTEL / Valor のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

LUNATIC SOUL / Through Shaded Woods

2020,POLAND

RIVERSIDEのヴォーカリスト マリウス・デューダのサイド・プロジェクトLUNATIC SOULの7thアルバム。

モーダルな展開からのコード・チェンジでそれまでのくすんだ色彩からパッと変化する#1。
様々なリフがダークな抒情から一筋の光明やドラマティックなサビ等の起伏を演出。静かなのにヘヴィな#2。
トラッドなモチーフに呪術的な詠唱ヴォイスが溶け込む神秘的な#3。
トラッドな装いのバッキングに現代的普遍性を持つメロディを融合した#4。
静かなアコギのアルペジオとジェントルな歌唱が寂寥感を生むヴァースから躍動するサビに移行する#5。
ピアノやアコギのアルペジオによる瑞々しいサウンド。透明感の中に仄かな暗さを帯びた#6。
4つ打ちビートにモーダルなアコギ・リフが乗るフォークロア・ダンス・チューン#7。
ヘヴィなリフが変化しながら展開する#8。
厳粛な儀式を思わせる歌唱というか詠唱的パート、躍動するダンス・パート、チェレスタが印象的な幻想パート、シンセによるサウンドスケープ等で構成された27分超えの#9。

シンプルな反復リズムをバックにアコギを中心にモチーフを延々と繰り返し一種のトリップ感を生む。そのプリミティブなビートに深遠なシンセや宗教儀式かのようなヴォイスが加わりシャーマニズム、スラブ、バイキング、70年代暗黒フォークのムードを醸し出す。
北欧やスラブの寒くダークな印象の中に時折オーガニックな温かみも感じさせる、ゆったりと浸り心を浄化してくれる洗練されたCOMUSみたいな音楽。

Track List

DISC1
1.Navvie (04:03)
2.The Passage (08:57)
3.Through Shaded Woods (05:51)
4.Oblivion (05:03)
5.Summoning Dance (09:52)
6.The Fountain (06:04)
DISC2
7.Vyraj (05:32)
8.Hylophobia (03:20)
9.Transition II (27:45)

LUNATIC SOUL / Through Shaded Woods のレビューを見る

カテゴリー: LUNATIC SOUL

タグ: ,

フォローもよろしくお願いします!

Search

Twitter

Facebook

TOP