PAATOS

PAATOS

LANDBERKのメンバーによって2000年に結成されたスウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAATOS。
女性ボーカルをフィーチュアし、メロトロンや時にエレクトロニックなビートなどコンテンポラリーな要素も付加。北欧らしいメランコリックなメロディとジャジーなテイストも絡めた独自の音楽性を展開。

何回かメンバー・チェンジを経て、現在は、ウィスパー気味に優しく、そして時に力強く歌い上げる美貌・美声のボーカリスト ペトロネラと、繊細なテクニックとロックの豪快さを併せ持つドラマー リカルドのネッテルマルム夫妻、枯れた味わいのギターに加え管も演奏するペーター・ナイランダーを中心に活動している。

PAATOS のレビュー

PAATOS / Timeloss

2002,SWEDEN

スウェーデンの鬱系アンビエント・プログレPAATOSの1stアルバムTimeloss。

メロディアスな女性ボーカルを中心に、KING CRIMSONのような静謐な詩情、現代的なアンビエント感、ジャジーなムード、サイケなテイストが渾然一体となった独特のサウンドが確立されてます。

オシャレなジャズかな?と思ったのもつかの間、ギターのカッティングからロック・モードに突入。叩きまくるロックなドラムがカッコいい#1。ギターとオルガンのトーンやフレーズがサイケなフィーリングも醸し出しておりナイスです。
#2は各パートの抑えた演奏とウィスパー気味のボーカルが暗鬱ながらも心温まるサウンドを醸成してます。枯れたGと影のようなメロトロン 、ゲストのフルートが良い。終盤はメロトロンを中心に大盛り上がり。
そして、Petronella(Vo)、Huxflux(Dr)夫妻の子供さんの名前を冠した#3は、スウェーデン語で切々と歌う静かでクールな前半と後半は激情メロトロン&スキャットに失神寸前の代表曲。
うっすらとしたメロトロン 、オフマイク気味のもやもやしたパーカッションに乗るウィスパー・ボーカルが心に染み渡る#4。
打ち込みエレクトロニック・ビートとオーガニックな熟練ミュージシャンのプレイが見事に融合した実験的な#5、
とデビュー作にして充実の内容。それもそのはず、中心メンバーのReine Fiske(G)、Stefan Dimle(B)の2人はスウェーデンの暗鬱土着プログレLANDBERKの元メンバー。

Track List

1.Sensor
2.Hypnotique
3.Téa
4.They Are Beautiful
5.Quits

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PAATOS / Kallocain

2004,SWEDEN

スウェーデンの鬱系メランコリック・プログレPAATOSの2ndアルバムKallocain。

オリジナルメンバーで元LANDBERKのReine Fiskeが脱退し、Peter Nylander(G)が加入。レーベル(INSIDEOUT) ・メイトのスティーヴン・ウィルソンPORCUPINE TREE)がミックスを担当しています。

衝撃のヴァイオリン・ソロから7拍子中近東風リフが淡々と繰り返され、サビで爆発する緊張感抜群なオープニング・チューンの#1。
一転して、モーダルなチェロが印象的でサビ・メロとコーラスが胸に染み入る#2。
無機質な打ち込みビートにPetronella Nettermalm(Vo)のウィスパー・ヴォイスによる美メロが乗る、もの悲しくも爽やかで清涼感のある#3。サビの変拍子とメロトロンによる味付けが効いています。
ラジオ風エフェクトをかけたボーカルが生声になる瞬間がトリ肌の静かな#4。この曲も中盤以降のメロトロンが効いてます。
さりげなく自然で優しい7拍子の#5は、ボーカル・メロディやコーラス、中間部の展開も完璧で美しさの中に溶けて行きそうです。
絶望的な暗鬱感漂うイントロ~中間部から一転、後半にかけての場面転換で一瞬一筋の光が射したと思いきや超哀メロで畳み掛ける後半で涙する#6。でも、なんか暖かいんですよね。
続くジャジーな雰囲気の暗鬱バラード#7は切ないボーカル・メロディとサビが美しすぎます。後半にかけては超ド級の哀しいメロトロンが涙腺を攻撃。もう反則です。
3拍子系のリフ(エレピが良い!)から4拍子に入る定番なトリッキー・テクの罠にはまってハッとさせた後はエキゾティックなメロディから段々盛り上がり、哀メロのサビでメロトロンと一緒に泣ける#8。
ラストは何層も重ねた霧のようなボーカル・ハーモニーを中心に切々と紡がれるエンディングにピッタリな雰囲気の#9で締めています。

ジャズをも咀嚼したセンス抜群のミュージシャン達が紡ぐ、女性ボーカル、メロトロン、叙情メロディーをフィーチュアした現代的プログレの大推薦盤です。

Track List

1. Gasoline
2. Holding On
3. Happiness
4. Absinth Minded
5. Look At Us
6. Realty
7. Stream
8. Won't Be Coming Back
9. In Time

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PAATOS / Silence of Another Kind

2006,SWEDEN

女性ボーカルをフィーチャーしたスウェーデンのメランコリックなプログレッシブ・ロック・バンドPAATOSの3rdアルバムSilence of Another Kind。

Huxflux Nettermalm(Dr)のロックなドラミングやヘヴィなグルーヴ、サビの変拍子がカッコいい#1。フェイザーをかけたエレピやフィードバック音を挿入するセンスが秀逸です。
ジャジーなサビを持つ暗鬱バラード#2ではPetronella Nettermalm(Vo)がしっとりと歌い上げます。
トレモロ・ギターに導かれ、暗鬱な中にも仄かな明かり射す#3は、サビメロが醸し出す炭火のような暖かさを是非感じて欲しいですね。メロトロンも切り込んできて何度聴いても感動でジーンとします。
吐息すらエフェクティブに使用するセンスと徐々に切り込むメロトロンが素敵で、静と動の対比が見事なコントラストを見せるクールな佳曲#4。
優しいボーカルに絡みつくコーラスが癒し効果抜群の序盤から一転、サビでは激情を迸らせる最高にロックなヒーリング・ミュージックの#5。打ち込みのSE風小曲#6。
一瞬カーディガンズ?と思っちゃうようなオシャレでPOPな曲調ながら、サビで「奇跡なんて起こらないわ」と絶望を歌う#7。ジャズのテクニックでロックなフレーズを爆発させるドラムが最高にカッコ良いです。
実質のラスト曲#8ではゲストのヴァイオリンやバリトン・サックスがメロトロンと共に盛り上がる暗黒バラード。胸が締め付けられて苦しい程に感動します。
アルバムを締めくくるSEの#9がナイスな余韻を与えてくれます。

暗鬱なのに何故か暖かさを感じさせ、ジャズのクールさとロックの熱さが共存。テクノロジーを活用しつつもオーガニックな優しさを併せ持つ、より完成度を高めたPAATOS流プログレッシブ・ワールドが一瞬のムダも無く展開された最高のアルバムです。

Track List

1.Shame
2.Your Misery
3.Falling
4.Still Standing
5.Is That All?
6.Procession Of Fools
7.There Will Be No Miracles
8.Not A Sound
9.Silence Of Another Kind

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PAATOS / Sensors

2007,SWEDEN

PAATOSの2007年発売のライブ・アルバムSensors。

限定500枚のアナログ・ヴィニール盤。ベースのステファンが経営するレコード店のレーベルMellotronenよりリリース。ライヴなので当たり前だが、オーバーダブ無しのシンプルなアンサンブルが奏功。このバンドにしか出せない独特の寂寥感がスタジオ・ヴァージョンを遥かに凌ぐ勢いで迫ってきます。見開きダブル・ジャケット仕様で7曲収録。

Track List

1. Happiness
2. Your Misery
3. Gasoline
4. Téa
5. Hypnotique
6. Absinth Minded
7. Sensor

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PAATOS / Breathing

2011,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAATOSの4thアルバムBreathing。

2006年の前作Silence of Another Kind以降、ライブ・アルバムSensorsをベースのStefan Dimleが経営するレコード・ショップ/レーベルのMellotronenからアナログでリリース(2008年)、ギタリストのPeter NylanderにRicard Huxflux Nettermalm(Dr)、Petronella Nettermalm(Vo)夫妻が参加した新ユニットELEPHANT CULTURE結成と、新作のリリースこそ無いものの順調に見えたPAATOSでしたが、2008年11月に衝撃が。

何と、オリジナル・メンバーのStefan DimleとJohan Wallén(Key)の脱退がMyspaceのブログで発表されたのだ。
しかも、この記事がしばらくすると削除されてしまうという不可解な状況もあり、遠く極東の1ファンとしては一体何がPAATOSに起こっているのか解る術も無く前途が心配された状況が続きました。
そして2009年4月に改めてブログで2人の離脱を報告、と共に新作に向けて作業を開始しているという嬉しいニュースも。
しかしバンドはここからさらに沈黙。
しばらくの間オフィシャル・サイトまでもが「工事中」で閲覧できず。でもこれは、新作リリースと同時にサイトをリニューアルするのだな、と好意的に受け取ることもできた。

そしてようやく2010年末、新作が2011年初頭リリースであることがアナウンスされた。
レーベルは良質なプログレ・バンドを多数要するドイツのInsideOut MusicからオランダのGlassville Recordsに移籍。このあたりの契約問題もブランクが長かった要因かも。
メンバーは残った3人に新メンバーUlf Rockis Ivarsson(B)を加えた4人体制。
ジャズのバンドや映画音楽の制作などマルチな才能を発揮するPeter Nylanderが鍵盤にトロンボーン、はたまたバンスリ・フルートなる民族楽器までプレイし、専任鍵盤奏者の不在をカバーしています。意外な所ではゲストのチェロ奏者として、イングヴェイ・マルムスティーンのバンドに在籍したこともあるスヴァンテ・ヘンリソンもクレジットされています。

白夜を思わせる醒めた高揚感とメロトロンが絡むサビのメランコリックな叙情が交錯する#1。
マイナー調なのにPetronellaの歌唱が炭火のような温かさをもたらす#2。
穏やかなフォークから、サビとインスト・パートでは一転して悲哀に転ずる#3。
Petronellaの澄んだ美声が楽しめるPAATOSらしいメランコリック・チューン#4。
ピアノ、管、スキャット、チェロなどが断片的なフレーズを絡ませるインスト小品#5。
Ricardの鮮烈なドラミングをフィーチュアした新機軸のプログレッシブ・チューン#6。
ミステリアスなインスト・パートを内包したメランコリックなタイトル・ナンバー#7。
物悲しいフレーズを奏でるアンビエントなピアノを中心としたサウンドスケープをバックに、スウェーデン語で切々と歌われる#8。
意外性のある洒落たコード進行に乗って、瑞々しいメロディが次々に展開していく#9。
オルゴールの小品#10。
Petronellaがチェロでもがんばる、#2同様にマイナーな中に温かみを感じさせる#11。
PAATOSが時折聴かせるスピード感のあるカッコ良いナンバー#12。

長いブランクで心配された音楽性の変化もさほど無く、それどころかバンドが影響を受けたPORTISHEADやBJÖRKなどのテイストをメランコリックな世界に巧みに消化・昇華したお馴染みのPAATOSらしさに、#6や#9など新たなテイストも加えた会心作ですねこれは。
悲哀の中の醒めた感触(あるいはその逆も)とでも表現したらよいのか、彼らにしか成し得ない独特の個性にますます磨きの掛かったアルバムです。

美声ボーカル・ファン、女性ボーカル・ファン必聴作。

Track List

1. Gone
2. Fading Out
3. Shells
4. In That Room
5. Andrum
6. No More Rollercoaster
7. Breathing
8. Surrounded
9. Smärtan
10. Ploing My Friend
11. Precious
12. Over and Out

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PAATOS / V

2012,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAATOSの5thアルバムV。
前作Breathingより約1年半のインターバルは異例の早さ。Mikael Nilzén(Key)が加わり5人編成が復活。

Ricard Huxflux Nettermalm(Dr)のドラミングがカッコ良い、へヴィロックな質感を持つ#1。
邪悪なギター・リフにミステリアスなボーカルメロディが呼応する#2。
軽快なリズムに乗ったキャッチーなメランコリック・ナンバーの#3。淡い叙情メロディはメインストリームでも通用するポテンシャル。サビの「This cold, cold war」の部分でのPetronella Nettermalm(Vo)の歌唱に悶絶。
Ricardのパーカッシブなドラミングが躍動し、エキゾチックなテイストがフックとなった、明るく開放的なナンバー#4。
以上のアルバム前半が新曲。#1,#2,#4など、11月からのヨーロッパツアーを控え、これまでのレパートリーに無かった要素を補完するような新機軸が目立つものの、随所にどこか悲哀を醸すPAATOS節は健在。
ただ、魅惑のウィスパー・ヴォイス率は低下し、従来の作品に漂っていた儚さや非日常感が若干希薄になった印象も。
後半は過去4作品から1曲づつピックアップし新たなアプローチで表現したアンプラグド及びリミックス。
Peter Nylander(G)の深い音楽的素養に裏打ちされたセンス良いアコギのアレンジが光る、アコギとボーカルのアンプラグド・デュオ#5。メロトロン有りの原曲のドラマティックさも素晴らしかったが、素朴な中にもジーンとくるこのシンプルなバージョンもなかなかの出来。
Ricardのミュージカル・ソー(ノコギリ)が幽玄なSEでアクセントとなった#5同様のアコギとボーカルのデュオ#6。
無機質なリズムマシンのビートに、Peterのバンスリ・フルートオーガニックなアナログ楽器の哀愁が融合した#7。
Ricardの個人プロジェクトPucksponyのテイストを反映したエレクトロニカなリミックスが、原曲の沈み込む感じとは打って変わってアッパーなのにボーカルは鬱系というギャップがおもしろい#8。

バンドのキャリアを総括すると共に、漸くメンツも固まり漲る創作意欲を抑えきれない充実感が感じられる、ツアーに向けた嬉しいプレゼンテーション。
この熱とツアーで得られたインスピレーションで、完全な新作を早期に制作して欲しいところです。

Track List

1. Feel
2. Desire
3. Cold War
4. Into The Flames
5. Tea(revisited)
6. In Time(revisited)
7. Precious(remixed)
8. Your Misery(remixed)

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