ABWHと権利上の本家YESが合体し、8人YESとしてリリースされたアルバムUNION。
無垢で気まぐれなジョン・アンダーソン(Vo)の行動に、金の匂いを嗅ぎつけたレコード会社やプロモーター等ビジネス面が乗った結果、複数のプロデューサー、スタジオミュージシャン(中にはスティーヴ・ポーカロのような大御所も)が入り乱れ、タイトルのUNIONに反してバンド・メンバーの体温が伝わってこない散漫なアルバムに。
特に、ギターやキーボードの大部分をバンドメンバー以外の演奏に頼ったのがまずかった。
ジョン・アンダーソンの声が唯一らしさを発揮するだけで、サウンドの鍵の部分がこれではバンドっていう感じが乏しいのも仕方が無い。これはバンド・メンバーの不和に端を発したプロデューサー苦肉の策らしい。
しかし、個々の楽曲には光るものもあり、さすがと唸らせます。
スティーヴ・ハウ(G)のガチャガチャしたギター、カラフルなキーボード群、重層コーラスなど、YESらしいパーツをふんだんに盛り込んだポップな#1。
重厚なリズムにブルーズ・ロック風リフが乗る#2。勿論、ジョン・アンダーソンのモード旋律に沿った歌唱と各種オブリガートによりドロ臭さは皆無。流麗なギター・ソロはスティーヴ・ハウっぽく無いのでもしかしたらゲスト・プレイヤーか。
スティーヴ・ハウのアコギ・ソロ小品#3。
トレヴァー・ラビン(G)によるメカニカルかつスピーディなパッセージのリフがカッコ良い、ゴージャスなハード・プログレ・ポップの#4。
メランコリックで静かな前半部分、9拍子の緊張感あるサビが印象的な後半部分から成る#5。
レゲエ風グルーヴを取り入れたポップな#6。
オルガンやマンドリンによる変拍子リフがギターのミニマルなリフと絡む、緊張感とポピュラリティを兼ね備えた#7。
変拍子が心地良いズレを生む#8。
思索バラードの#9。
神秘的な#10。
トニー・レヴィン(B)のパーカッシブなベースがリードするリズムコンシャスな#11。
エキゾチックなビートを織り交ぜた#12や#14。
シリアスで変拍子を中心とした迷彩を施しながらも意外とポップなABWH陣営、ゴージャスでポップな本家YES陣営。
ともに楽曲はそれぞれの特長を発揮して面白いだけに、演奏にロック・バンドそしての温度が感じられないのが惜しい。