プログレ のレビュー

THE WATCH / Seven

2017,ITALY

イタリアのGENESISフォロワーTHE WATCHの7thアルバムSeven。

ギター・ソロにおけるのっぺりしたトーンとシーケンス・フレーズがスティーヴ・ハケット本人かと思うほど特徴をコピー。奇妙なコード進行を持つ幽玄かつ抒情的な#1。
歌唱、歌メロ、バッキングのシンセ等、全てが怪しく進行しつつ、コーラスがどこか儚げなムードを演出する#2。
シンプルな歌モノにハケット風なエッジの立ったギターとメロトロンが加わり一気にGENESIS度が上がる#3。中盤のギター・ソロを経て終盤にシンフォニックにスケール・アップするアレンジも良い。
フルートとメロトロンの静謐パート、くぐもったエレピの音色のせいか軽快だが陰鬱なヴァース、シンセ中心の畳みかけ、等々ドラマティックに場面転換するシンフォニック・チューン#4。
アコギのカッティングをバックにしたメロウなナンバー#5。パーカッションやストリングス系シンセの使い方が上手く、シンプルだが単調にならない。
緩急や明暗でドラマティックな演出を施した#6。
何とご本人が12弦アコギでゲスト参加。スティーヴ・ハケットの1stソロVoyage of the Acolyte収録曲のカヴァー#7。終盤にシンセが入ってくる辺りはシンフォニック度マックスで感動的だが、意外とあっさりと終了するのも”らしい”感じ。
牧歌的なアコースティック・パートとエレクトリックなシンフォ・パートが同居する#8。7拍子のインスト・パートは元祖やフォロワーがさんざんやってきたパターンだが、THE WATCHがやると深みと説得力が一味違う。

最初の2,3回はそのあまりのアクの強さでアレルギーを起こしそうになるが、耳に馴染むとともに屈折したメロディや独特のコード進行がフックとなって耳から離れない。
GENESISを絶対的なルーツとしながらも独自路線を伺わせた前作から一転、再びピーター・ゲイブリエル在籍期GENESISの英国的な妖しい世界を再現。体に染みついてもうGENESISしかできなくなってしまったかのような、作曲、演奏、唱法。
もしGENESISがそのままの音楽性で存続していたらこんなアルバムを作っていた、と思わせるところが単なるモノマネを超越した職人バンドの矜持なのだろう。

Track List

1. Blackest Deeds
2. Disappearing Act
3. Masks
4. Copycat
5. It's Only a Dream
6. Tightrope
7. The Hermit
8. After the Blast

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STEVEN WILSON / To The Bone

2017,UK

現代プログレ界の重要人物スティーヴン・ウィルソン(Vo/G/B/Key)の5thアルバムTo The Bone。

ファンキーなグルーヴが珍しいギター・ロックからスティーヴン・ウィルソンらしい深遠なサウンドスケープに移行する#1。
流れるようなサビ、爽やかなスライド・ギター、コンパクトながらメロディアスに展開するインスト・パートとフック満載のポップ・チューン#2。
ハスキーな歌声でエモーショナルな歌唱を聴かせる女性シンガー ニネット・タイブ(Vo)とのデュエットによるバラード#3。神々しいメロトロンが押し寄せるインスト・パートが圧巻。
ジャキジャキしたギターと意外性のあるファルセットを軸にゆったりたゆたうポップ・チューン#4。感動的なストリングスとギターに合わせたスキャットのフックが印象的。
スペイシーなソリーナや郷愁を誘うハーモニカなどを上手くアレンジに取り入れるセンスがさすが。抒情を湛えた神秘的ナンバー#5。
いかにも英国的なポップ・チューンという雰囲気のメロディ、サビの解放感が気持ち良いアップ・テンポの#6。
再びニネット・タイブとデュエットのプログレ・フォーク小品#7。
捻りを加えたコード進行が耳に残る、掻き鳴らしギターがリードするロック・ナンバー#8。
ソフィ・ハンガー(Vo)とのデュエットによるダークでファンキーなナンバー#9。中近東風な隠し味を加えたストリングスが映画のサウンド・トラックのような説得力で迫る。
静謐にエレクロニカ、そしてスリリングなヘヴィネスと、独自の音楽性を9分超に凝縮した#10。テーマ・メロディを自然にリスナーの脳裏に刷り込む手腕がさすが。個人的に中間部のパーカッションとギターのカッティングが入る神秘パートにKAJAGOOGOOを想起したが、ニック・ベッグス(B)は関与していなかった。
感動的で深遠なサウンド・スケープに浸れるシンフォニックなバラード#11。

ここ2作をほぼ固定メンバーのバンド形態で制作してきたのに対し本作To The Boneは、ニック・ベッグスが#6に参加したのみで他はソロ全作でアレンジ等で関与する元HATFIELD AND THE NORTHNATIONAL HEALTHでストリングス・アレンンジのデイヴ・スチュワートをはじめとして、全曲でサポートするアダム・ホルツマン(Key)、FROSTなどで活動するクレイグ・ブランデル(Dr)らを楽曲ごとに使い分けて制作。

テオ・トラヴィスやガスリー・ゴーヴァンらのプレイが聴けないのは寂しいが、耳障りの良いキャッチーなメロディの影にスティーヴン・ウィルソン個人の色を濃く反映した内省的なカラーが絶妙に配合され、独自のプログレッシブ・ポップを展開。ロックなギター・カッティングやパーカッシブな#7のギター・ソロなど、スティーヴン・ウィルソン本人のギター・プレイもルーツに戻ったかのようなシンプルかつストレートでいながらエネルギーに満ち溢れ、アルバム全体のソロ色を濃くしている。

Track List

1.To the Bone
2.Nowhere Now
3.Pariah
4.The Same Asylum as Before
5.Refuge
6.Permanating
7.Blank Tapes
8.People Who Eat Darkness
9.Song of I
10.Detonation
11.Song of Unborn

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WOBBLER / From Silence to Somewhere

2017,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンド WOBBLERの4thアルバム。

フォークロアなテイストやメロトロンがフックとなる抒情~激情歌唱パートを中心に、木管までもが唸りを上げる攻撃的器楽パートを内包したエピック・チューン#1。
ダークな抒情インストゥルメンタル小品#2。
エナジードリンクを注入したYESのようなアグレッシブなバンド一体器楽パートで度肝を抜く序盤から、メランコリックな歌唱パートではパーカッシブなオルガンが静かに、盛り上がるにつれファズを効かせたギターやベースという具合に各楽器がテーマを継承して起伏を演出する#3。勿論、白玉メロトロンはダダ漏れ。
アコギやグロッケン、木管等で静かに紡ぐアンサンブルが幽玄からドリーミングまで様々な表情を醸し出し、エレクトリック楽器がパワーを付加してそれを継承。北欧フォークロアも薫る#4。

Hammond C3, Mellotron, Minimoog Model D, Chamberlin, Hohner clavinet, Rhodes MKII, spinet, ARP Axxe/Pro Soloist, Solina String Ensemble, optigan, Wurlitzer 200, Marxophone, grand piano等のヴィンテージ楽器を惜しげもなく動員し、YES風の硬質アンサンブルを聴かせる。
普遍的なメロディの質が不足しているところは特徴的な土着メロディで補いつつ独自性を出しており、ヴィンテージ楽器のトーンとの相乗効果で強く印象に残る。

Track List

1. From Silence to Somewhere (20:59)
2. Rendered in Shades of Green (2:05)
3. Fermented Hours (10:10)
4. Foxlight (13:19)

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BAROCK PROJECT / Detachment

2017,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの5thアルバムDetachment。

ピアノによる軽やかで抒情を湛えたイントロ#1。
#1からシームレスに繋がり、シンフォニックなシンセ、優雅なストリングス、ズ太いアナログ・シンセ、ダーティなオルガンなど多彩な鍵盤群をはじめ、躍動するバンド各パートの見せ場も用意し、さながらインスト隊のプレゼンの趣。ポップなヴァースから抒情をまぶしたメロディアスなサビへという楽曲展開とも相まってアルバムへの期待感が膨らむ#2。
ベタなラテン系抒情と気品漂うクラシカルなメロディが高度に融合、3連系リズムにチェンジしてのフォークロア・パートをも擁し、PFMの系譜を継ぐ傑作シンフォニック・ロックの#3。
エンジニアリングも担当するバンドの頭脳ルカ・ザッビーニ(Key/Vo/G)の爪弾く美麗でもの悲しいアコギに導かれる#4。ラテンの陰陽が表裏一体となりクラシカルなフレーバーを纏ったシンフォニック・チューン。
モダンなフォークロアから爽快なサビに発展する#5。
ゲストのピーター・ジョーンズが歌う#6。情感あふれる歌唱が場面転嫁しながら徐々に盛り上がる楽曲に絶妙にマッチ、まるでミュージカルを見ているかのような高揚感をもたらし9分超の長尺を感じさせない。
スパニッシュ風味のアコギがフックとなったミステリアスな小品#7。
再びピーター・ジョーンズ歌唱によるアーバン・テイストなピアノ・バラード#8。
コンテンポラリーなムードに変拍子が自然に溶け込むポップ・チューン#9
アコギのアルペジオにピアノやストリングスが絡む美しいフォーク調の前半からスケールの大きなシンフォニック・ロックに移行する#10。
打ち込みっぽいシンセやリズムのシーケンスを印象的に配置したキャッチーな#11。
おおらかなムードのフォークにダイナミックなロック・パートが融合した北米プログレ・ハード風ナンバー#12。
ゆったりとした中にスリリングなパートを包含した#13。

抒情やフォークロアにPFMのような地中海テイストを感じさせながら、クラシカルな装いで纏め上げるのがBAROCK PROJECT流。しかしながら今回は、クラシカルなテクニックで圧倒する若々しさは影を潜め、高い音楽性に裏打ちされた引き出しの中から微妙な陰影を描き出す方向にシフト。
尺の長尺を問わずメロディアスでいながら意外性もある楽曲展開でリスナーをグイグイ引き込む豊富なアイディアが秀逸。
2017年6月にBAROCK PROJECTとのカップリングで来日公演を行うSWEDENのMOON SAFARIが青春の甘酸っぱさとすれば、BAROCK PROJECTは甘さの中にもビターな大人の味わいといったところ。

Track List

1. Driving Rain 1:03
2. Promises 5:05
3. Happy to see you 7:37
4. One day 7:23
5. Secret therapy 5:37
6. Broken (ft. Peter Jones) 9:10
7. Old Ghosts 4:07
8. Alone (ft. Peter Jones) 3:14
9. Rescue Me 4:55
10. Twenty years 6:06
11. Waiting 5:43
12. A New tomorrow 7:39
13. Spies 7:23

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WHITE WILLOW / Future Hopes

2017,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの7thアルバムFuture Hopes。
2015年にシングルとしてリリースされたSCORPIONSのカバーAnimal Magnetism(本作の#6)でフィーチュアされたベンケ・ナッツソン(Vo)を新たな歌姫として迎え、楽器隊は、ヤコブ・ホルム・ルポ(G/B/Syn)、ラース・フォレデリク・フロイスリー(Syn)、マティアス・オルセン(Dr)らを中心とする今や北欧プログレの手練れ達で前作Terminal Twilight時のメンツと同様。

冒頭のミステリアスでダークなエレクトロニカから、ボーカル・パートに入ると光が射し込む、ドリーミーなシンフォニック・フォーク#1。
ベンケ・ナッツソンによるウィスパー気味の可憐な歌唱が光る美しい儚げフォーク#2。チープだが味のあるサウンドのヴィンテージ風シンセ・ソロが印象的でボーカルのオーガニックな美しさを引き立てている。
無機的なシンセのシーケンス・サウンドに浮遊するボーカルが乗るドリーミー・パート、ハード・エッジなギターも絡む抒情的なパート、寂寥感や屈折した表情を持つインスト・パートから構成される#3。メロトロンも交えたダークな屈折感はANGLAGARDを想起させる。
メロトロンやノイズによる嵐の中を物悲しいギターが漂うダークなウンドスケープ#4。
フォーキーな微睡み歌唱パート、様々な音色を多層で重ねたスペイシーなシンセのオーケストレーションからなる18分超えのシンフォニック・ナンバー#5。シンセやメロトロンに加えギターやオルガンも登場する中間部の長尺インスト・パートは、木漏れ日ムードから哀愁を経て神秘性までドラマティックに展開。
エレクトロニカとアンニュイな女性ボーカルによるアレンジが斬新な前述の#6と独特のアンビエント感が郷愁を誘う屈折抒情メロディを持つピアノ・ソロの佳曲#7はボーナス・トラック。

普遍的なメロディアスさは可憐なボーカル・パートに残しつつ、インスト・パートでは初期のダークなムードも健在。ただ、ヴィンテージ・シンセを駆使したであろう深遠なオーケストレーションや構築性の高いシーケンス・パターンなど手法はより熟練度を増しており、各人がそれぞれのプロジェクト(KAUKASUSNECROMONKEYWOBBLER等)で得た経験がフィード・バックされているようだ。
ベンケ・ナッツソンの歌声は柔らかいシンセや繊細なアコギとの相性が抜群。次作があれば、続投を切に望む。
アルバム・カヴァー・アートはロジャー・ディーンによるもの。一見してわかる程のさすがの記名性だが、YES用に製作した没バージョンのようでもありWHITE WILLOW音楽性には合っていない。

Track List

1. Future Hopes (4:30)
2. Silver and Gold (4:04)
3. In Dim Days (11:04)
4. Where There Was Sea There Is Abyss (1:59)
5. A Sacred View (18:16)
6. Animal Magnetism (CD/Digital bonus track) (7:15)
7. Damnation Valley (CD/Digital bonus track) (3:16)

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BIG BIG TRAIN / Grimspound

2017,UK

BIG BIG TRAINの10thアルバムGrimspound。
ここ数作のリリース間隔が1年毎というところにバンドの良好なコンディションが想像される。

ヴァイオリンやチェロがフォークロアやクラシカルな装いを付加、オルガンが牽引する緊張感とドラマティックが混在するインスト・パートを持つ現在のBIG BIG TRAINを象徴するシンフォニック・ナンバー#1。
リード楽器が次々にテーマを提示し緊張と緩和の緩急をつけるインスト・ナンバー#2。オルガンのミニマルなシーケンスがカンタベリー風でもある。
霧のようなシンセ・ストリングスに導かれる抒情的な序盤から、ボーカル・インするとGENESISスタイルの英国風味を醸し出す#3。GENESISならシンセで奏でていたフックのメロディーをストリングス・セクションに置換するところにBIG BIG TRAINらしさを発揮している。
タイトル通り、牧草地ののどかな風景が広がるジェントルなアコ-スティック・ナンバー#4。
英国のダートムーア国立公園にある史跡をタイトルに戴く、捻りの効いた歌メロとが英国らしいムードのタイトル・トラック#5。
ジュディ・ダイブル(Vo)をゲストに招いたトラッド風ナンバー#6。郷愁を誘うメロディの魅力に負けじとエレクトリック・パート移行のダイナミズムやその後のシンセによる抒情モチーフなど器楽的要素も充実。
モダンで軽快な4拍子、スリリングな3拍子パート、ゆったりとしたメロウなパートなどリズムの起伏で場面転換していく15分超の長尺シンフォ#7。
モダンな音像に男女デュエットやフルート/ストリングスなどのオーガニックな音色が融合した#8。

トラッド/フォークロア路線を完成させる最後のピースとして伝説の歌姫ジュディ・ダイブルを起用。
コンスタントにこの路線を継続するのか、また新たな展開を見せるのか。

Track List

1. Brave Captain (12:37)
2. On The Racing Line (5:12)
3. Experimental Gentlemen (10:01)
4. Meadowland (3:36)
5. Grimspound (6:56)
6. The Ivy Gate (7:27)
7. A Mead Hall In Winter (15:20)
8. As The Crow Flies (6:44)

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MAGENTA / We Are Legend

2017,UK

MAGENTAの7thアルバムWe Are Legend。

シンセによるまろやかなサウンドスケープを切り裂いて不安を煽るかのようなスリリングなテーマ・メロディに移行する#1。
パーカッシブなブリッジを経てのボーカル・パートはクリスティーナ・ブース(Vo)のフェミニンな歌唱を活かした抒情テイストでフックとしても充分。その後もベテランらしいスケール感やメロディアスなパートを織り重ねて展開。それぞれのパートのクオリティはさすがのロブ・リード(G/Key)印ながら、各ピースを繋ぎ合わせて長尺26分超の大曲として昇華させるだけの大団円の魅力に乏しく結果的に散漫な印象。
コンテンポラリーでクールな感覚とドラマティックなサビのギャップでリスナーの心を掴む#2。
枯れたギターやくすんだオルガンによるインスト・パートが英国ロックのクラシックに則った手法でクリスティーナのエモーショナルな歌唱とも相性良好。#1とは逆に世界観やムードが一貫しており、楽曲が紡ぐストーリーに引き込まれる。
ギターによる少々ベタな抒情テーマ・メロディや静謐パートが名作Sevenを彷彿させる#3。
シンセの無機的なシーケンス・フレーズと繊細なタッチのピアノがドラマティックな対比を生んでいる。

長尺3曲収録ながら全体の尺は50分を切っており、非常に聴きやすい構成になっている。
特に#2と#3は、展開が巧みで10分超であることを感じさせない充実度。病気からの復帰作としては先にソロThe Lightをリリースしていたクリスチーナもブランクを感じさせない歌唱を聴かせている。

Track List

1. Trojan (26:09)
2. Colours (10:47)
3. Legend (11:32)

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LONELY ROBOT / The Big Dream

2017,UK

IT BITESFROSTで活躍するジョン・ミッチェル(G/Vo)によるソロ・プロジェクト2ndアルバム。
FROSTの同僚クレイグ・ブランデル(Dr)やゲストの女性ボーカル以外のパートは自らプレイ。

スペイシーなイントロ#1。
イントロを継承するスペイシーかつドラマティックなミディアム・スロー・ナンバー#2。クレイグ・ブランデルの叩き出すヘヴィなビートが底辺をがっちりと支えている。
#2と同じようなテンポながらポップ・ソングの定番進行でよりキャッチーな#3。深遠さを垣間見せるインスト・パートでもクレイグ・ブランデルの小技が効いている。
サビにおける女性ボーカルのユニゾンが柔らかい印象を付加。神秘的でありながらキャッチーにまとめられたバラード#4。
ズ太いシンセが加わればFROSTの楽曲になりそうなリフを持つコンパクトなモダン・シンフォ#5。
サビに仄かな抒情を含んだメジャーセブンスが爽やかで洒落たポップ・チューン#6。
#6を継承するメジャーセブンスに頭打ちのリズム、ギターソロでのワーミーペダルの使用や構築度の高いスリリングなフレーズが印象的な#7。
ウーリッツアー風のエレピがどこか郷愁を誘う希望的メロディのバラード#8。
ナレーションが好奇心を掻き立てる深遠かつ壮大なインストゥルメンタル#9。
マシンのクールなビートによる寂寥感が男女ユニゾン・ボーカルのオーガニックさを引き立てるバラード#10。
アイリッシュ・ホイッスルによるエキゾチックなメロディが印象的なエピローグ#11。

ドラムを除く全パートが自身による演奏なので当然だが、ジョン・ミッチェルが意図したアレンジを忠実なアンサンブルで表現。全体のスペイシーな音像やムードも統一されており、楽曲やアルバム通してのストーリー展開に自然に引き込まれる。
ダミ声にもかかわらず爽やかな独特の声質や自在のタッチで様々なトーンを弾き出すギターも記名性に溢れ、改めてIT BITESやFROSTにおけるジョン・ミッチェルの存在感を思い知らされる。

Track List

1. Prologue - Deep Sleep (2:12)
2. Awakenings (5:10)
3. Sigma (5:06)
4. In Floral Green (5:08)
5. Everglow (4:58)
6. False Light (5:33)
7. Symbolic (5:06)
8. The Divine Art Of Being (5:38)
9. The Big Dream (8:02)
10. Hello World, Goodbye (3:52)
11. Epilogue - Sea Beams (2:48)

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KINO / Radio Voltaire

2018,UK

フランシス・ダナリーに代えてジョン・ミッチェル(G/Vo)をフロントに据えた再結成IT BITESのプロトタイプとなった2004年結成プロジェクトKINOの2ndアルバムRadio Voltaire。

内省的なムードがジョン・ミッチェル個人プロジェクトLONELY ROBOTに近いメロウな#1。ダイナミックかつテクニカルなドラムを聴かせるのはFROST等でのジョン・ミッチェルのバンド・メイトであるクレイグ・ブランデル(Dr)。
ダークだがどこかユーモラスなギター・リフとピッチ・ベンドやポルタメントを駆使したジョン・ベック(Key)らしいカラフルなシンセが印象的な#2。
ジョン・ミッチェルの切々とした歌唱をフィーチュアした美バラード#3。
アンニュイなサビのコーラスに英国的ペーソスを含むキャッチーなバンド・チューン#4。
シンセのシーケンスがリードするモダン・ポップ・チューン#5。
爽やかで繊細なアコギ・バラード#6。
古き良きテイストの歌唱パートと対比するシンフォニックな中間インスト部を持つ#7。
ピアノとサウンドスケープをバックに配したバラード小品#8。
5拍子に乗せた奇妙なメロディからカッコ良い怒涛のサビに移行するプログレ・ポップ#9。
深みのあるメロディが染みるバラード#10。メロトロン風シンセの浮遊感やインスト・パートの壮大なオーケストレーションも良い。
神秘性を持った静寂の序盤から分厚い音像のインスト部に展開する#11。

テクニカルなモダン・プログに90年代風カラフルなシンセをコーティングしたIT BITESタイプでありながら、全体的にリラックスしたテイストで刺々しい緊張感は皆無。シリアスで緻密なIT BITES、モダンかつスタイリッシュなFROST、スペイシーで抒情的なジョン・ミッチェル個人プロジェクトLONELY ROBOTと意識的に差別化を図りKINO=プログ・ポップ・バンドとしての独自テイストを演出。

ジョン・ベックはゲスト扱いのため、今作ではユニークなサウンドの一端にその面影が浮かぶ程度でアレンジなどは予めジョン・ミッチェルがほぼほぼ作りこんでいたのではないかと思われる。
メンバー各人が色々と掛け持ちで忙しい人達なのでパーマネントな活動は難しそうだが、次があれば個人的にはジョン・ベックに昔のようなトンがったシンセ・サウンド及びプレイを期待したい。

Track List

1. Radio Voltaire
2. The Dead Club
3. Idlewild
4. I Don't Know Why
5. I Won't Break So Easily Any More
6. Temple Tudor
7. Out of Time
8. Warmth of the Sun
9. Grey Shapes on Concrete Fields
10. Keep the Faith
11. The Silent Fighter Pilot

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カテゴリー: KINO

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FREQUENCY DRIFT / Letters To Maro

2018,GERMANY

幽玄なハープをフィーチュアしたドイツのプログレ/ポストロック・バンドFREQUENCY DRIFTの7thアルバム。

ドリーミーと情念の二面性を歌唱とアレンジで対比させた#1。
伸びやかで優美な歌唱と幽玄なハープのソロが耳を離さない#2。ゴシックなムードの中、エキゾチックな管楽器の音色がアクセントに。
コンテンポラリーなポップ性にハープや7拍子がもたらす幻想性や多層美声コーラスの清涼感を併せ持った本アルバムのベスト・トラック#3。
トリッキーなリズムで起伏を演出した#4。
抑えた美声から少々ラフな歌い回しまで様々な表情を見せる#5。
シンセによるシンフォニックなサウンドスケープ、ウィスパーなコーラスにゆったりとしたメロディが乗る#6。
オペラ風というかクラシカルというか、とにかく荘厳なメロディが強烈なフックとなった#7。中盤の弦をフィーチュアした幻想的なインスト・パートから一転してなだれ込む怒涛の終盤の数字のカウントアップがドラマティックな高揚感をもたらす。
ミュージカル風パートや格調高い美メロなど変幻自在の歌唱がバックのサウンドスケープにマッチした芸術度の高い#8。
性急なマリンバのリフがリード、静と動のアレンジに合わせたエモーショナルな歌唱が魅力的な#9。
印象的なメロディを軸に静謐から激情まで幅広く描き出す展開に引き込まれる#10。
神秘的な中に清涼感を含むサウンドスケープでアルバムを締めくくるインスト・チューン#11。

前作までどこか浮いた印象のあった中途半端にヘヴィなギターを大幅に削除したことが奏功。バンドの突出した個性であるハープを主軸にシンセやメロトロン、弦のサウンドで醸し出すダークでメランコリックなムードが増量している。
またもや交代となった看板女性シンガー。今作のIrini Alexia(Vo)はエンジェリック度は低いながらも前任者達の美声を継承しながら、ミュージカル風歌唱によるシアトリカルなアプローチがバンド・サウンドとの親和性が高く作品の世界観に深みを加えている。
起承転結が巧みなアレンジの向上と併せてドラマティック度が大幅にアップ。女性ボーカル メランコリック路線のトップに躍り出た。

Track List

1. Dear Maro (6:22)
2. Underground (5:02)
3. Electricity (4:52)
4. Deprivation (3:35)
5. Neon (6:09)
6. Izanami (5:09)
7. Nine (6:10)
8. Escalator (4:26)
9. Sleep Paralysis (6:03)
10. Who's Master? (9:16)
11. Ghosts When It Rains (3:05)

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SPOCK’S BEARD / Noise Floor

2018,USA

アメリカン・プログレッシブ・ロックバンドSPOCK’S BEARDの13thアルバムNoise Floor。
脱退したドラマーの穴をオリジナル・メンバーのニック・ディヴァージリオ(Dr)が埋めている。

メロトロンの掠れた音色やズ太いモーグ風シンセがレトロなムードを付加している快活な北米プログレ・ハード#1。
70年代サスペンス映画のテーマ曲のような趣の序盤からカラっと爽やかな中にメロウネスを含んだポップ・チューンに移行する#2。
アラン・モーズ(G)のアコギやハーモナイズさせたリード・ギターをフィーチュア。生の弦がクラシカルな色を添えるパワー・バラード#3。
シンセのテーマ・メロディがなんともSPOCK’S BEARDらしい#4。アコギとオルガンのリフレインが北米テイストを醸しながらテーマ・メロディを軸にした壮大なエンディングへと昇華する爽快なエピック・チューン。
クラシカルな弦セクションが効いている、BEATLESへの憧憬が顕著な甘酸っぱいバラード#5。
SPOCK’S BEARDらしいシンセのテーマがリードする#6。抑えた歌唱パートやエキサイティングなインスト・パートを擁し起伏を付けた展開で聴かせる。
清濁併せ持った展開でめくるめく進行、ピアノ、メロトロン、オルガン、シンセと鍵盤を総動員した奥本亮(Key)作によるインスト・チューン#7。
夕暮れの野外ステージが似合いそうなアリーナ・ロックの歌唱パートと予測不能なインスト・パートからなる#8。

SPOCK’S BEARDらしい突き抜け切らないイナたさは健在ではあるが、テッド・レオナルド(Vo)のストレートな歌唱を活かすためか、キメのインスト部などで少々小さくまとまり過ぎるきらいも。
もう少し大胆で変態なアレンジがあっても良いと思う。

Track List

1. To Breathe Another Day
2. What Becomes of Me
3. Somebody's Home
4. Have We All Gone Crazy Yet
5. So This Is Life
6. One So Wise" Ausmus
7. Box of Spiders
8. Beginnings

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THE SEA WITHIN / The Sea Within

2018,SWEDEN,GERMANY,USA

ロイネ・ストルト(G)、ダニエル・ギルデンロウ(Vo)、ヨナス・レインゴールド(B)、マルコ・ミンネマン(Dr)、トム・ブリスリン(Key)によるプログレ/シンフォ・プロジェクト・バンドTHE SEA WITHINの1stアルバム。

シンセによる深海のようなSEからドラマティックに幕を開ける#1。ダニエルの魂の歌唱が印象付けるシリアスでダークなテイストにゲストのサックスがアクセントを加えている。
仄暗い思索系ムードの中にオーガニックな温かみを感じさせる#2。
アコギの静謐なアルペジオ、微妙にデチューンさせたシンセのソロが神秘性を醸し出す#3。
アップテンポのロック・ナンバーにジャジーなピアノ・ソロを内包した#4。
グルーヴィな7拍子に乗せたプログレッシブAORナンバー#5。
柔らかいフレットレス・ベースが印象的なエキゾチックなインスト・ナンバー#6。
古き良き英国ポップを想起させる序盤、FLOWER KINGS的桃源郷ムードのインスト部とYESの大曲風神秘セクションを持つ中盤、余韻たっぷりの終盤と音楽の旅にどっぷり浸れる#7。
ポジティブな空気を纏ったメロディアスなボーカル・ナンバー#8。

FLOWER KINGSやライヴでのTRANSATLANTICで共演歴が長いロイネの粘っこいギターとPAIN OF SALVATION同様に憑かれたような独特の表現力で圧倒するダニエルの歌唱は相性が抜群。ただ、ダニエルのアクが強い分アルバム全体のトーンはダーク寄り。
どの楽曲も単純なカテゴライズが難しく、とっつきやすいポップ性の中に多彩な音楽性を自然に溶け込ませる各メンバーの音楽的懐の深さが驚異的。

Track List

1. Ashes of Dawn
2. They Know My Name
3. The Void
4. An Eye for an Eye for an Eye
5. Goodbye
6. Sea Without
7. Broken Cord
8. The Hiding of the Truth

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ROINE STOLT’S THE FLOWER KING / Manifesto Of An Alchemist

2018,SWEDEN

THE FLOWER KINGSのロイネ・ストルト(G)が凄腕たちのスーパー・バンドTHE SEA WITHINの作品に続いてリリースした新作。トマス・ボ-ディン(Key)が不参加なこともあってか、名義はROINE STOLT’S THE FLOWER KINGとなっている。

呪文のようなコーラスを繰り返す神秘的なインスト小品#1。
オーガニックな響きのドラム、オルガン、ギター、ベースが一丸となって躍動する#2。スペイシーなシンセ及びネバりまくるギターと渋い歌唱がロイネ節全開。珍しくカラっとアメリカンなサビがありながらメロウなパートには往年のFLOWER KINGSサウンドが。
ロイネの抑えた歌唱とエモーショナルなギターが堪能できる物悲しいバラード#3。
冒頭2分弱のフュージョン風イントロの器楽要素、桃源郷的歌唱パート、シンフォニックなインスト・パートで構成されたエピック・チューン#4。
スリルとメロディが満載の前半から静かな中にうっすらメロトロンで包み込む中盤、シンフォニックな後半と展開するインスト#5。
どこか郷愁を誘うメロウなナンバー#6。
エレピが醸し出すミステリアスなムードにサックスが舞い踊るインスト#7。
アコギやマンドリンにローファイなエフェクトがかかった歌唱が乗る優しいボーカル・ナンバー#8。
#8のムードを継承するインスト#9。
アルバム随一のダークな要素を盛り込みながらも希望的なメロディも忘れないバランス感覚が秀逸な#10。

躍動感と小技の安定感が光るマルコ・ミンネマン(Dr)、フレットレスの独特なサウンドでお馴染みヨナス・レインゴールド(B)らが個性を発揮しながらもバックを支えオーガニックなムードを創出。そこに乗るロイネの歌唱とギターがもたらすファンタジックでスペイシーなサウンドは初期FLOWER KINGSに近く、楽曲の表情がよりストレートに迫ってくる。

Track List

1. Rainsong
2. Lost America
3. Ze Pawns
4. High Road
5. Rio Grande
6. Next to a Hurricane
7. The Alchemist
8. Baby Angels
9. Six Thirty Wake-Up
10. The Spell of Money

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RIVERSIDE / Wasteland

2018,POLAND

RIVERSIDEの7thアルバム。

物語に誘う深遠な独唱のイントロ#1。
#1でマックスに盛り上げてからクールに一転、ザクザクしたギターの変拍子リフとじわじわ押し寄せる抒情的なサビが印象に残る#2。
クールなリフから寂寥感あるサビへ、さらにユニゾンするヘヴィ・パートを経てドラマティックに展開する#3。
アコギのリフが全体の透明感あるトーンを決定。語りかけるような歌唱に引き込まれる#4。
ギター+オルガンのヘヴィなバッキングに乗る清廉なボーカルが宗教儀式のような荘厳なイメージの#5。
不条理感漂うミニマルなリフで紡がれていく序盤からギターやシンセのインプロビゼーションなどスリリングに展開するKING CRIMSON風インスト#6。
モダンな中にフォークロア風味を織り込んだメランコリック・チューン#7。
プログレッシブ・フォーク、リフがけん引するヘヴィ・パート、フォークロア・パートなどから構成される#8。
ピアノに乗せた独唱がアルバムをしっとりと締めくくる#9。

耳に残るフック満載のメロディやアレンジを彩るメロトロン、ローズやハモンドなど説得力あるキーボード群。テルミン、バンジョーやゲストによるヴァイオリンなど意外な楽器も無国籍な神秘性の醸成に効いている。そこに寂しさを湛えつつ仄かな温もりも感じさせるクリーンな歌唱が加わり、ヘヴィネスとメランコリックが抜群のさじ加減で同居したRIVERSIDEの世界が完成している。

Track List

1. The Day After
2. Acid Rain
3. Vale of Tears
4. Guardian Angel
5. Lament
6. The Struggle for Survival
7. River Down Below
8. Wasteland
9. The Night Before

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DREAM THEATER / Distance Over Time

2019,USA

DREAM THEATERの14thアルバム Distance Over Time。

レーベルをINSIDEOUT MUSICに移籍しての第一弾。
アルバムごとに明確なテーマを持って制作にあたるDREAM THEATERらしく、前作の長編コンセプト・アルバムから一転して今作はトータル60分程度の尺にするというのが一つの意図だった模様。

メロウなアルペジオから畳みかける無慈悲なメタル・リフに場面転換するダークな#1。
ミステリアスな中にも微妙な音遣いでインテリジェンスを感じさせ、サビでは普遍的なメロディで感動を提供する#2。
オールドスクールなリフからスラッシーに移行しつつ、後半のギター・オーケストレーションではベタな泣きが意外な#3。
RUSHを彷彿させるカラっとした北米プログレ・ハードの序盤から、構築美とエモーションが融合したギターソロを含むメロウな後半へ展開する#4。
トライバルで粗暴なムードのリズムが目新しい#5。
バンド一体となって変拍子で押しまくるパートとメロディアスなサビが融合した#6。
どこかオリエンタルなムードのモチーフを執拗に繰り返す超絶変態プログレ・ナンバー#7。かといってゴリゴリ一辺倒ではなくメロディアスなサビや後半のエモーショナルなインスト・パートにキャッチーさを残すのもDREAM THEATERらしい。
ピアノとメロウなギターがリードする静謐な美バラード#8。
何かが起こりそうな序盤から漂う大作ムードはそれなりだが、アルバム総尺60分の縛りからか、展開していく各要素が収束するカタルシスが彼らにしてはイマイチな#9。
第2期DEEP PURPLE風をダウン・チューニングで再現したかのようなパーティ・ナンバー#10。

坂本龍一が所有していた郊外のスタジオにメンバーが集合。半ば合宿のような感じで作曲を進めたとあって、リフの元ネタやアレンジに各メンバーのアイディアが民主的に取り入れられているらしい。前作では2枚組の長編ストーリーをほぼジョン・ペトルーシ(G)一人で書き上げた事を考えると方向性は真逆で、緻密なDREAM THEATERらしさの中に生々しいライブ感がいつになく増量されているのもバンドとしての絆がより深まったことの結果であろう。
アルバムのプロモーションにSNSを積極的に利用し、楽曲の背景を垣間見せる手法もインテリジェントなバンドらしく、より深堀りしたいファンの特性にマッチ。アルバムを引っ提げてのツアーではリリース20周年となるMetropolis PT2 : Scenes from a Memoryのアルバム全曲再現をアナウンスするなど、商売とファン・サービスが見事に融合している点も見逃せない。

Track List

1. Untethered Angel
2. Paralyzed
3. Fall into the Light
4. Barstool Warrior
5. Room 137
6. S2N
7. At Wit's End
8. Out of Reach
9. Pale Blue Dot
10. Viper King

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OPETH / In Cauda Venenum

2019,SWEDEN

OPETHの13thアルバムIn Cauda Venenum。

メロトロンのクワイヤによる思わせぶりなイントロ#1。
いきなりの荘厳なコーラスが不条理リフに乗る衝撃の#2。静寂のメロウ・パートの質感は70年代そのもの。ハードなパートの歌メロはいつになくシンフォニックに洗練されており直後の不穏なメロディとのギャップを印象付けている。
ダイナミックなリズムの70年代風ハード・ロックにOPETHらしい捻ったメロディが乗る#3。キャッチーな中にも深遠さがあり、フレドリック・オーケソン(G)が弾きまくるギター・ソロもカッコ良い。
オルガンやアコギによる静とバンドによる動が対比する#4。ストリングスの荘厳かつエキゾチックなメロディが耳を引くアレンジも秀逸。
メランコリックな美バラード#5。切り返しからギター・ソロに突入する場面転換が見事。
性急なギター・リフにオルガンの奇妙なミニマル・リフなど典型的なOPETH要素てんこ盛りのヘヴィな#6。
えっOPETHと耳を疑う爽やかなストリングスや70年代風フォークの幻想的要素を盛り込んだ#7。
イントロでは何とリュートを使用、以降はジャジーなムードにミカエルのスキャットまで登場する暗黒ワルツ#8。
印象的なドラムとアコギがリードしスケールの大きなバンド・パートへと展開する#9。
アコギがたゆたうアンビエントな序盤からヘヴィなパートを経て、シンプルだが殺傷力抜群の大サビのメロディでリスナーを昇天に導くエピック・チューン#10。

シンフォニックなオケのアレンジはアルバムPale Communion時同様にHATFIELD AND THE NORTHBILL BRUFORDに在籍したデイヴ・スチュワートが行っており万全。デイヴ・スチュワートがOPETHの音楽についてどのように感じているか興味があるところだが。。
ミカエル・オーカーフェルトの70代ロック/フォーク好きは有名だが、Heritage以降の模索を経てようやくそれら懐古趣味にOPETHが従来持つ幽玄さや郷愁を誘う北欧フォークロア風味が融合。全編でメロディが耳に残り、クセになる不条理リフと合わせて何度も聴きたくなるアルバムだ。

Track List

1. Garden of Earthly Delights
2. Dignity
3. Heart in Hand
4. Next of Kin
5. Lovelorn Crime
6. Charlatan
7. "Universal Truth
8. The Garroter
9. Continuum
10. All Things Will Pass

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FLYING COLORS / Third Degree

2019,USA

スティーヴ・モーズ(G)、ケーシー・マクファーソン(Vo)、ニール・モーズ(Key)、デイヴ・ラルー(B)、マイク・ポートノイ(Dr)から成る5人組シンフォ・バンドFLYING COLORSの3rdアルバムThird Degree。

意表を突く転調からのサビのスケール感が強力なハード・ロック#1。
ミステリアスなリフがどことなくDEEP PURPLE風と思っていると終盤のニール・モーズによるシンセ・ソロもドン・エイリーっぽく聴こえる#2。
メロトロンやストリングスのアレンジ、テーマ・メロがSPOCK’S BEARD風な北米シンフォ・チューン#3。
7拍子を感じさせないマイルドな序盤、ハード・ポップなサビ、デイヴ・ラルーのベース・ソロをフィーチュアした解放感広がる中間部のインスト・パートなど意匠を変えながらポジティブなムードで展開する#4。
テーマ・メロディを各所に散りばめて展開する10分超えのエピック・チューン#5。
スウィング感が心地よいシンフォニックAORチューン#6。
ハート・ウォーミングなシンフォニック・バラード#7。
メロディ、コーラス、ビート等々、70年代ポップのテイスト満載で楽しい#8。
ドラマティックなギター・ソロが聴きどころ。長尺の随所でクラシカルなモチーフがベースになっており端正な印象を受ける#9。

ニール・モーズの色が出るとどうしてもSPOCK’S BEARDやTRANSATLANTICがチラつくが、ベテランらしく隙の無いアレンジと十二分にテクニカルな人達が楽曲第一のアンサンブルに徹する姿勢が清々しいアメリカン・ハード・シンフォ。

Track List

1. The Loss Inside
2. More
3. Cadence
4. Guardian
5. Last Train Home
6. Geronimo
7. You Are Not Alone
8. Love Letter
9. Crawl

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IQ / Resistance

2019,UK

英国の重鎮ポンプ・バンドIQの2019年作Resistance。

ズッシリしたリフに乗せた緊張感あるパートからシンセが唸りを上げるサビで一気にシンフォニックなカタルシスを味わえる#1。
内省的な序盤から次第にヘヴィかつスペイシーな広がりへと展開するシリアスな#2。
霧のような白玉シンセにピアノやアコギのアルペジオで繊細なムードを演出する前半から、リズム隊も加わり重厚なシンフォに移行する#3。
厚いシンセのサウンドスケープにエキゾチックな管楽器風のアクセントを加えたミステリアスな前半とギターとヴォーカルをフィーチュアした後半からなる#4。
メロトロンの雲の上に切々とした歌唱が乗るシンフォ・バラード#5。
パッド系シンセとまろやかなベースをバックにしたマイルドなナンバー#6。
どこか郷愁をそそりながらユーモラスでもある足踏みオルガン風のサウンドと幽玄なアレンジが浮遊感を演出する序盤、起承転結を持つギター・ソロをフィーチュアしテンポを上げた中盤を経て、解放感とポジティブなムードに包まれた終盤へと展開する15分超えの#7。
シンセと手数の多いドラムがリードする変拍子リフレインを軸にその変奏や緊張と緩和による緩急で21分超えをドラマティックに描く#8。
エモーショナルなギター・ソロを配したバラード#9。
攻撃的なオルガンと抑制されたギターが対比する#10。
浮遊するシンセをバックにしたドリーミーなバラード、スリリングなバンドの器楽パート、スペイシーなシンフォパート等からなる#11。

スロー~ミディアム・テンポの曲調にシンセの白玉アレンジが多く、アルバム全体に統一した抒情的ムードはあるものの、楽曲ごとの強烈な個性に欠ける印象。そんな中、ズ太いトーンと派手なポルタメントで楽曲に印象的なフックをもたらすIQ加入後2作目となるニール・デュラント(Key)がアレンジ面で気を吐き、ピーター・ニコルズ(Vo)の耳馴染みの良い歌唱で長尺かつ重厚な楽曲群を聴かせきってしまう大御所の貫禄。

Track List

Disc1
1. A Missile
2. Rise
3. Stay Down
4. Alampandria
5. Shallow Bay
6. If Anything
7. For Another Lifetime

Disc2
1. The Great Spirit Way
2. Fire And Security
3. Perfect Space
4. Fallout

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カテゴリー: IQ

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THE FLOWER KINGS / Waiting For Miracles

2019,SWEDEN

FLOWER KINGSとしては6年ぶりとなる13thアルバムWaiting For Miracles。

徐々に煌びやかさを増していく静かなピアノがアルバム全体と続く#2のイントロとなっているインストゥルメンタル小品DISC1 #1。
希望的メロディとアナログ・シンセ、ロイネ・ストルト(G/Vo)の味わい深い歌唱、演劇的なフックのあるインスト・パートとTHE FLOWER KINGSらしさの詰まったDISC1 #2。
メインのモチーフを中心に軽快なオルガンをはじめとた鍵盤群が色を添え、幻想的ムードを掻き立てるインスト・パートを絡めて場面転換していく10分超のエピック・チューンDISC1 #3。
シンセのミニマルなシーケンスとヨナス・レインゴールド(B)のフレットレス・ベースの甘いトーンが幻惑的ムードを醸し出す序盤から、少々センチメンタル要素をまぶした桃源郷サウンドがゆったりと進行するDISC1 #4。
ハッセ・フロベリ(Vo)とロイネ・ストルト2人の歌唱で綴るバラードDISC1 #5。
映画のサウンドトラックのような幻想的インストゥルメンタルDISC1 #6。
オーソドックスなポップ・チューンDISC1 #7。
冒頭にジャケット・アートの象を思わせる鳴き声を配置、ギターとシンセがリードするインストゥルメンタルDISC1 #8。
印象的でドラマティックなイントロから抒情的な歌唱パートに移行するDISC1 #9。
ロイネによる粘っこいギターと枯れた味わいの歌唱をフィーチュアしたDISC1 #10。

DISC1 #1をより元気にシンフォニックにしたリプライズDISC2 #1。
シンセによるサウンドスケープやDISC1 #3の歌唱パートのサンプル素材のコラージュからなるDISC2 #2。
タイトルから受けるSF的要素よりもメロウな抒情が際立つDISC2 #3。
躍動感あるリズムに希望的サウンドが乗るDISC2 #4。
アウトロとなるインスト小品DISC2 #5。

ROINE STOLT’S THE FLOWER KING名義のアルバムManifesto Of An Alchemistがロイネ・ストルトの魅力を前面に打ち出した事で初期FLOWER KINGSを彷彿させる佳作になった反面、THE FLOWER KINGS名義の今作Waiting For Miraclesは、長らく鍵盤パートを担っていたトマス・ボディンの不在で、良くも悪くもトマス・ボディンの持っていた多彩な音色や意外性のあるフレーズといったアクの強さがFLOWER KINGSには不可欠なのだと逆説的に知らしめる結果となってしまった。随所にヨナスやハッセが個性を発揮する場面はあるものの、バンドFLOWER KINGとしての個性にまで昇華していないのが少々残念。

Line-up / Musicians
– Roine Stolt / electric & acoustic guitars, keyboards, lead vocals
– Jonas Reingold / bass, fretless bass
– Hasse Fröberg / lead & backing vocals
– Zach Kamins (An Endless Sporadic) / guitar, keyboards
– Mirko DeMaio (Mind Key) / drums, percussion

With:
– Michael Stolt / bass, vocals
– John “Zach” Dellinger / viola
– Paul Cartwright / violin

cover art created by US artist Kevin Sloan

Track List

Disc 1:
1.House Of Cards
2.Black Flag
3.Miracles For America
4.Vertigo
5.The Bridge
6.Ascending To The Stars
7.Wicked Old Symphony
8.The Rebel Circus
9.Sleep With The Enemy
10.The Crowning Of Greed

Disc 2:
1.House Of Cards Reprise
2.Spirals
3.Steampunk
4.We Were Always Here
5.Busking At Brobank

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BAROCK PROJECT / Seven Seas

2019,ITALY

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンドBAROCK PROJECTの6thアルバムSeven Seas。

ストリング・セクションを絡めて静と動を行き来するスケールの大きなシンフォニック・ロック・チューン#1。
ジャキジャキした7拍子のギター・リフがリードするキャッチーな北米プログレ・ハード風ナンバー#2。
一転してロマンティックなピアノが主導するヨーロピアン・テイストの#3。抒情的かつ印象的なモチーフを彩りを変えながら巧みに展開。シンセやオルガンによるスリリングな・インスト・パートを内包した構成力も見事。
徐々に盛り上がるドラマティックな構成にロックのダイナミズムとクラシックの端正さを融合したエピック・チューン#4。
バロック調のアコギとストリングスが端正な彩を加え、感傷的な中にも炭火のような温かさを持つ歌メロをフィーチュアした小品#5。
瑞々しいサウンドスケープから内省的な歌唱パートやアナログ風シンセが唸るインスト・パートを経て美しく感動的にエンディングへと展開する11分超の#6。
アコギをバックにしたジェントルな弾き語りからロック・パートに移行、スペイシーなシンセを交えて空間的な広がりを見せたかと思うとギター/シンセ/ベースのユニゾンで早いパッセージを聴かせる超絶パートで度肝を抜く#7。
イタリアらしい歌心ある美メロをアコギやピアノ、ストリングスがドラマティックに支えるバラード#8。
地中海的な明るさを持つポップ・チューン#9。
シンセを中心にエレクトリック楽器がリードするコンテンポラリーなロック・チューン#10。
アルバムのラストを飾る感動的なバラード#11。

冒頭の2曲を聴いた段階でだいぶ作風が変わったか?と思わせるも、#3以降からお馴染みのBAROCK PROJECT節が炸裂。トータルで見た場合、音楽性やスケールがさらに拡張していることに唸らされる。
クラシックの端正さや構築美に豪放なロックをモダンなセンスで融合し独自のプログレを推進。一人でピアノ・リサイタルもやっちゃう位の本物の音楽家ルカ・ザッビーニの才能に驚きっ放し。

– Luca Zabbini / keyboards, acoustic guitar, vocals
– Francesco Caliendo / bass
– Marco Mazzuoccolo / electric guitars
– Eric Ombelli / drums, percussion
– Alex Mari / lead vocals, acoustic guitar

Track List

1. Seven Seas
2. I Call Your Name
3. Ashes
4. Cold Fog
5. A Mirror Trick
6. Hamburg
7. Brain Damage
8. Chemnitz Girl
9. I Should Have Learned To
10. Moving On
11. The Ones

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