IT BITESのジョン・ベック(Key)、MARILLIONのピート・トレワヴァス(B)、ARENAのジョン・ミッチェル(G/Vo)らによるプログレッシブ・ロック・バンドKINOの1stアルバム Picture。
スリリングなアップテンポのハード・ポップ#1。中間部のファンタジックでかわいらしいパートや各所のフック、まるでリード・シンセとも言っていいくらい独自のメロディを紡ぎながらアレンジの一部として出過ぎないキーボードなど、匠の技を結集し9分超をドラマティックに構築。
4音パターンのアルペジオ・シーケンスがにリードし、広がりのあるサウンドでシンフォニックに盛り上がる#2。ここでも右CHのシンセが大活躍。
マリンバ風のパーカッシブなシンセでクールにキメた#3。テーマ・メロディと美しいサビが非常に印象に残ります。
沈痛でメランコリックな序盤から壮大なスケールに展開する#4。
多層的なシンセとオルガンが有機的に絡み合ったシンフォニックなパートとハード・エッジなギターによるヘヴィなパートが起伏を生む#5。
ピアノやボーカルとシンセのユニゾンなどで繰り返すテーマ・メロディが美しすぎるバラード#6。
3拍子で進行する落ち着いたムードの#7、7拍子に乗せたキャッチーな#8、とアルバム構成にもアクセントが。
ギターのアルペジオとパッド系シンセによる繊細な前半、トリッキーなリズムを使用した中間部、印象的なリフレインを繰り返す後半とプログレッシブに構成された#9。
モーダルなメロディが独特の神秘的なムードを醸成する小品の#10。
2人のジョンは後にIT BITESを再結成することになるので、そのプロトタイプという見方もできますね。IT BITESでは意図的にフランシス・ダナリーに似せた歌唱を聴かせるジョン・ミッチェルもここでは自然体。
ジョン・ベックのカラフルなシンセは往年程の派手さは無いものの、相変わらずの音色センスとボーカル・メロディを引き立てる印象的なラインで地味ながらアレンジに溶け込ませているところが凄い。2000年代で80年代風キラキラ・シンセ音をここまでセンス良く使うのは彼ならではの技ですね。ジェフ・ダウンズあたりも見習って欲しいですね。
ボーカルやサウンド面でのアクの強さこそIT BITESに譲りますが、アメリカ人には到底作れない端整で胸を打つメロディで満たされた各楽曲はさすがベテラン達から成るバンドらしい英国の味そのものです。