メロトロン のレビュー

BIG BIG TRAIN / Grimspound

2017,UK

BIG BIG TRAINの10thアルバムGrimspound。
ここ数作のリリース間隔が1年毎というところにバンドの良好なコンディションが想像される。

ヴァイオリンやチェロがフォークロアやクラシカルな装いを付加、オルガンが牽引する緊張感とドラマティックが混在するインスト・パートを持つ現在のBIG BIG TRAINを象徴するシンフォニック・ナンバー#1。
リード楽器が次々にテーマを提示し緊張と緩和の緩急をつけるインスト・ナンバー#2。オルガンのミニマルなシーケンスがカンタベリー風でもある。
霧のようなシンセ・ストリングスに導かれる抒情的な序盤から、ボーカル・インするとGENESISスタイルの英国風味を醸し出す#3。GENESISならシンセで奏でていたフックのメロディーをストリングス・セクションに置換するところにBIG BIG TRAINらしさを発揮している。
タイトル通り、牧草地ののどかな風景が広がるジェントルなアコ-スティック・ナンバー#4。
英国のダートムーア国立公園にある史跡をタイトルに戴く、捻りの効いた歌メロとが英国らしいムードのタイトル・トラック#5。
ジュディ・ダイブル(Vo)をゲストに招いたトラッド風ナンバー#6。郷愁を誘うメロディの魅力に負けじとエレクトリック・パート移行のダイナミズムやその後のシンセによる抒情モチーフなど器楽的要素も充実。
モダンで軽快な4拍子、スリリングな3拍子パート、ゆったりとしたメロウなパートなどリズムの起伏で場面転換していく15分超の長尺シンフォ#7。
モダンな音像に男女デュエットやフルート/ストリングスなどのオーガニックな音色が融合した#8。

トラッド/フォークロア路線を完成させる最後のピースとして伝説の歌姫ジュディ・ダイブルを起用。
コンスタントにこの路線を継続するのか、また新たな展開を見せるのか。

Track List

1. Brave Captain (12:37)
2. On The Racing Line (5:12)
3. Experimental Gentlemen (10:01)
4. Meadowland (3:36)
5. Grimspound (6:56)
6. The Ivy Gate (7:27)
7. A Mead Hall In Winter (15:20)
8. As The Crow Flies (6:44)

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FREQUENCY DRIFT / Letters To Maro

2018,GERMANY

幽玄なハープをフィーチュアしたドイツのプログレ/ポストロック・バンドFREQUENCY DRIFTの7thアルバム。

ドリーミーと情念の二面性を歌唱とアレンジで対比させた#1。
伸びやかで優美な歌唱と幽玄なハープのソロが耳を離さない#2。ゴシックなムードの中、エキゾチックな管楽器の音色がアクセントに。
コンテンポラリーなポップ性にハープや7拍子がもたらす幻想性や多層美声コーラスの清涼感を併せ持った本アルバムのベスト・トラック#3。
トリッキーなリズムで起伏を演出した#4。
抑えた美声から少々ラフな歌い回しまで様々な表情を見せる#5。
シンセによるシンフォニックなサウンドスケープ、ウィスパーなコーラスにゆったりとしたメロディが乗る#6。
オペラ風というかクラシカルというか、とにかく荘厳なメロディが強烈なフックとなった#7。中盤の弦をフィーチュアした幻想的なインスト・パートから一転してなだれ込む怒涛の終盤の数字のカウントアップがドラマティックな高揚感をもたらす。
ミュージカル風パートや格調高い美メロなど変幻自在の歌唱がバックのサウンドスケープにマッチした芸術度の高い#8。
性急なマリンバのリフがリード、静と動のアレンジに合わせたエモーショナルな歌唱が魅力的な#9。
印象的なメロディを軸に静謐から激情まで幅広く描き出す展開に引き込まれる#10。
神秘的な中に清涼感を含むサウンドスケープでアルバムを締めくくるインスト・チューン#11。

前作までどこか浮いた印象のあった中途半端にヘヴィなギターを大幅に削除したことが奏功。バンドの突出した個性であるハープを主軸にシンセやメロトロン、弦のサウンドで醸し出すダークでメランコリックなムードが増量している。
またもや交代となった看板女性シンガー。今作のIrini Alexia(Vo)はエンジェリック度は低いながらも前任者達の美声を継承しながら、ミュージカル風歌唱によるシアトリカルなアプローチがバンド・サウンドとの親和性が高く作品の世界観に深みを加えている。
起承転結が巧みなアレンジの向上と併せてドラマティック度が大幅にアップ。女性ボーカル メランコリック路線のトップに躍り出た。

Track List

1. Dear Maro (6:22)
2. Underground (5:02)
3. Electricity (4:52)
4. Deprivation (3:35)
5. Neon (6:09)
6. Izanami (5:09)
7. Nine (6:10)
8. Escalator (4:26)
9. Sleep Paralysis (6:03)
10. Who's Master? (9:16)
11. Ghosts When It Rains (3:05)

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SPOCK’S BEARD / Noise Floor

2018,USA

アメリカン・プログレッシブ・ロックバンドSPOCK’S BEARDの13thアルバムNoise Floor。
脱退したドラマーの穴をオリジナル・メンバーのニック・ディヴァージリオ(Dr)が埋めている。

メロトロンの掠れた音色やズ太いモーグ風シンセがレトロなムードを付加している快活な北米プログレ・ハード#1。
70年代サスペンス映画のテーマ曲のような趣の序盤からカラっと爽やかな中にメロウネスを含んだポップ・チューンに移行する#2。
アラン・モーズ(G)のアコギやハーモナイズさせたリード・ギターをフィーチュア。生の弦がクラシカルな色を添えるパワー・バラード#3。
シンセのテーマ・メロディがなんともSPOCK’S BEARDらしい#4。アコギとオルガンのリフレインが北米テイストを醸しながらテーマ・メロディを軸にした壮大なエンディングへと昇華する爽快なエピック・チューン。
クラシカルな弦セクションが効いている、BEATLESへの憧憬が顕著な甘酸っぱいバラード#5。
SPOCK’S BEARDらしいシンセのテーマがリードする#6。抑えた歌唱パートやエキサイティングなインスト・パートを擁し起伏を付けた展開で聴かせる。
清濁併せ持った展開でめくるめく進行、ピアノ、メロトロン、オルガン、シンセと鍵盤を総動員した奥本亮(Key)作によるインスト・チューン#7。
夕暮れの野外ステージが似合いそうなアリーナ・ロックの歌唱パートと予測不能なインスト・パートからなる#8。

SPOCK’S BEARDらしい突き抜け切らないイナたさは健在ではあるが、テッド・レオナルド(Vo)のストレートな歌唱を活かすためか、キメのインスト部などで少々小さくまとまり過ぎるきらいも。
もう少し大胆で変態なアレンジがあっても良いと思う。

Track List

1. To Breathe Another Day
2. What Becomes of Me
3. Somebody's Home
4. Have We All Gone Crazy Yet
5. So This Is Life
6. One So Wise" Ausmus
7. Box of Spiders
8. Beginnings

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ROINE STOLT’S THE FLOWER KING / Manifesto Of An Alchemist

2018,SWEDEN

THE FLOWER KINGSのロイネ・ストルト(G)が凄腕たちのスーパー・バンドTHE SEA WITHINの作品に続いてリリースした新作。トマス・ボ-ディン(Key)が不参加なこともあってか、名義はROINE STOLT’S THE FLOWER KINGとなっている。

呪文のようなコーラスを繰り返す神秘的なインスト小品#1。
オーガニックな響きのドラム、オルガン、ギター、ベースが一丸となって躍動する#2。スペイシーなシンセ及びネバりまくるギターと渋い歌唱がロイネ節全開。珍しくカラっとアメリカンなサビがありながらメロウなパートには往年のFLOWER KINGSサウンドが。
ロイネの抑えた歌唱とエモーショナルなギターが堪能できる物悲しいバラード#3。
冒頭2分弱のフュージョン風イントロの器楽要素、桃源郷的歌唱パート、シンフォニックなインスト・パートで構成されたエピック・チューン#4。
スリルとメロディが満載の前半から静かな中にうっすらメロトロンで包み込む中盤、シンフォニックな後半と展開するインスト#5。
どこか郷愁を誘うメロウなナンバー#6。
エレピが醸し出すミステリアスなムードにサックスが舞い踊るインスト#7。
アコギやマンドリンにローファイなエフェクトがかかった歌唱が乗る優しいボーカル・ナンバー#8。
#8のムードを継承するインスト#9。
アルバム随一のダークな要素を盛り込みながらも希望的なメロディも忘れないバランス感覚が秀逸な#10。

躍動感と小技の安定感が光るマルコ・ミンネマン(Dr)、フレットレスの独特なサウンドでお馴染みヨナス・レインゴールド(B)らが個性を発揮しながらもバックを支えオーガニックなムードを創出。そこに乗るロイネの歌唱とギターがもたらすファンタジックでスペイシーなサウンドは初期FLOWER KINGSに近く、楽曲の表情がよりストレートに迫ってくる。

Track List

1. Rainsong
2. Lost America
3. Ze Pawns
4. High Road
5. Rio Grande
6. Next to a Hurricane
7. The Alchemist
8. Baby Angels
9. Six Thirty Wake-Up
10. The Spell of Money

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OPETH / In Cauda Venenum

2019,SWEDEN

OPETHの13thアルバムIn Cauda Venenum。

メロトロンのクワイヤによる思わせぶりなイントロ#1。
いきなりの荘厳なコーラスが不条理リフに乗る衝撃の#2。静寂のメロウ・パートの質感は70年代そのもの。ハードなパートの歌メロはいつになくシンフォニックに洗練されており直後の不穏なメロディとのギャップを印象付けている。
ダイナミックなリズムの70年代風ハード・ロックにOPETHらしい捻ったメロディが乗る#3。キャッチーな中にも深遠さがあり、フレドリック・オーケソン(G)が弾きまくるギター・ソロもカッコ良い。
オルガンやアコギによる静とバンドによる動が対比する#4。ストリングスの荘厳かつエキゾチックなメロディが耳を引くアレンジも秀逸。
メランコリックな美バラード#5。切り返しからギター・ソロに突入する場面転換が見事。
性急なギター・リフにオルガンの奇妙なミニマル・リフなど典型的なOPETH要素てんこ盛りのヘヴィな#6。
えっOPETHと耳を疑う爽やかなストリングスや70年代風フォークの幻想的要素を盛り込んだ#7。
イントロでは何とリュートを使用、以降はジャジーなムードにミカエルのスキャットまで登場する暗黒ワルツ#8。
印象的なドラムとアコギがリードしスケールの大きなバンド・パートへと展開する#9。
アコギがたゆたうアンビエントな序盤からヘヴィなパートを経て、シンプルだが殺傷力抜群の大サビのメロディでリスナーを昇天に導くエピック・チューン#10。

シンフォニックなオケのアレンジはアルバムPale Communion時同様にHATFIELD AND THE NORTHBILL BRUFORDに在籍したデイヴ・スチュワートが行っており万全。デイヴ・スチュワートがOPETHの音楽についてどのように感じているか興味があるところだが。。
ミカエル・オーカーフェルトの70代ロック/フォーク好きは有名だが、Heritage以降の模索を経てようやくそれら懐古趣味にOPETHが従来持つ幽玄さや郷愁を誘う北欧フォークロア風味が融合。全編でメロディが耳に残り、クセになる不条理リフと合わせて何度も聴きたくなるアルバムだ。

Track List

1. Garden of Earthly Delights
2. Dignity
3. Heart in Hand
4. Next of Kin
5. Lovelorn Crime
6. Charlatan
7. "Universal Truth
8. The Garroter
9. Continuum
10. All Things Will Pass

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FLYING COLORS / Third Degree

2019,USA

スティーヴ・モーズ(G)、ケーシー・マクファーソン(Vo)、ニール・モーズ(Key)、デイヴ・ラルー(B)、マイク・ポートノイ(Dr)から成る5人組シンフォ・バンドFLYING COLORSの3rdアルバムThird Degree。

意表を突く転調からのサビのスケール感が強力なハード・ロック#1。
ミステリアスなリフがどことなくDEEP PURPLE風と思っていると終盤のニール・モーズによるシンセ・ソロもドン・エイリーっぽく聴こえる#2。
メロトロンやストリングスのアレンジ、テーマ・メロがSPOCK’S BEARD風な北米シンフォ・チューン#3。
7拍子を感じさせないマイルドな序盤、ハード・ポップなサビ、デイヴ・ラルーのベース・ソロをフィーチュアした解放感広がる中間部のインスト・パートなど意匠を変えながらポジティブなムードで展開する#4。
テーマ・メロディを各所に散りばめて展開する10分超えのエピック・チューン#5。
スウィング感が心地よいシンフォニックAORチューン#6。
ハート・ウォーミングなシンフォニック・バラード#7。
メロディ、コーラス、ビート等々、70年代ポップのテイスト満載で楽しい#8。
ドラマティックなギター・ソロが聴きどころ。長尺の随所でクラシカルなモチーフがベースになっており端正な印象を受ける#9。

ニール・モーズの色が出るとどうしてもSPOCK’S BEARDやTRANSATLANTICがチラつくが、ベテランらしく隙の無いアレンジと十二分にテクニカルな人達が楽曲第一のアンサンブルに徹する姿勢が清々しいアメリカン・ハード・シンフォ。

Track List

1. The Loss Inside
2. More
3. Cadence
4. Guardian
5. Last Train Home
6. Geronimo
7. You Are Not Alone
8. Love Letter
9. Crawl

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CONCEPTION / State Of Deception

2020,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・メタル・バンドCONCEPTIONの5thアルバムState Of Deception。
2018年のバンド再始動後23年ぶりのフルレンス・アルバム。

徐々に盛り上がるオーケストレーションが壮大なイントロ#1。
執拗に反復するリフにダーティなオルガンが絡む緊張感の高いヘヴィ・チューン#2。
リフとシンセのオーケストレーションを軸にヘヴィかつ深遠に展開するバックにロイ・カーン(Vo)の様々な表情を見せる歌唱が乗るミッド・テンポの#3。
要所でシュレッドを爆発させるトゥーレ・オストビー(G)のギター・ソロ、躍動感と妖しいエキゾチックさが往年を彷彿させるCONCEPTION流プログ・メタル・チューン#4。
メランコリックな中にも希望的な優しいメロディがたゆたうパワー・バラード#5。ロイ・カーンによる情感あふれる歌唱、ゲスト参加のエリーゼ・リード(AMARANTH)のフェミニンな美声など、胸に染み入る要素が満載の#5。
一聴するとオールド・スクールなブルース風リフだがメロトロンの響きを纏うことでクールかつビッグなスケールに仕上がった#6。オクターヴァーを使用した硬質なソロも面白い。
バラード・パートの静とヘヴィネス・パートの動によるコントラストを演出するメロトロンが効いている#7。
CONCEPTIONらしいグルーヴィなスパニッシュ・メタル・リフをベースにメロディアスなサビに展開する#8。トゥーレ・オストビー(G)によるディ・メオラばりのシュレッド・ソロも健在。
5拍子を自然な流れで聴かせて印象に残すアレンジが秀逸な儚くも美しいバラード#9。

ゲストの女性シンガー オーロラ・アマリー・ヘイムダルがバック・ボーカルだけでなく#2や#8のソング・ライティングにも参加、その他にも鍵盤奏者などゲストによるスパイスが散漫にならない程度に程よく多彩さを醸成。各楽曲がコンパクトに構築されておりアルバム総尺40分程度ではあるが、漲る緊張感からすると丁度良い。緊張感と美メロの解放感の対比がクセになり、何回も聴きたくなる感じ。

Track List

1. in: Deception
2. Of Raven and Pigs
3. Waywardly Broken
4. No Rewind
5. The Mansion
6. By the Blues
7. Anybody Out There
8. She Dragoon
9. Feather Moves

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OPIUM CARTEL / Valor

2020,NORWAY/SWEDEN

WHITE WILLOWのヤコブ・ホルム・ルポ(G/Key/Vo)を中心としたプロジェクトOPIUM CARTELの3rdアルバムValor。

ゆったりとした7拍子に乗るドリーミー・フォーク#1。
優しい歌唱の温かみと枯れた味わいのギターによる寂寥感が不思議なムードを醸し出す#2。
ミュンミュンしたポルタメントたっぷりのシンセがリードする浮遊インストゥルメンタル#3。
快活なエレクトロ・ポップ・チューン#4。
シンセやギターによる霧のようなサウンドスケープに時折ダークな色彩も挿入したミステリアスな#5。
80年代風が逆に新鮮なポップ・チューンの前半から後半は思索系インストへと展開する#6。
生のストリングスとシンセやエフェクトが融合し、神々しさも漂うシンフォニック・フォーク#7。
AIRBAGのBjørn Riis(G)の哀愁ギターにメロトロンが絡むメランコリックなインストゥルメンタル#8。
どこかで聴いたサビだと思ったらLAメタル・バンドRATTの4thアルバム収録の楽曲カヴァーだった#9。RATTとしては駄曲だったが、ニューロマンティック風にアレンジした本作はなかなか良くできている。

Silje Huleboer (#1,#2,#5,#6)の可憐な歌唱を中心に、明るくてもどこか陰りを感じさせる北欧感とレトロ感に満ちたドリーム・ポップ。

Track List

1. In the Streets
2. Slow Run
3. A Question of Re-entry
4. Nightwings
5. Fairground Sunday
6. Under Thunder
7. The Curfew Bell
8. A Maelstrom of Stars
9. What’s It Gonna Be

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THE FLOWER KINGS / Islands

2020,SWEDEN

前作Waiting For Miracles同様、ザック・カミンス(Key)、ミルコ・ディマイオ(Dr)を含むラインナップでの2作目。カヴァー・アートはついにロジャー・ディーンが担当。

躍動感とロイネ・ストルト(G/Vo)の渋い歌唱で期待が高まるオープニング・チューン#1。
リラックスした7拍子でカラフルな桃源郷感を醸し出す#2。
ペーソス溢れるメイン・メロディを中心にQUEEN風ハーモナイズ・ギターも登場するシアトリカルな#3。
ロイネ・ストルトのジェントルな歌唱が味わえるほのぼの爽やかチューン#4。
ポジティブなムードに包まれたノリノリの5拍子プログレ・ポップ#5。
メランコリックなシンフォニック・バラード小品#6。
カッコ良いジャズ・ロック・インストゥルメンタル小品#7。
グルーヴィなシンフォニック・フュージョン#8。
中間部にプログレ然としたアナログ・シンセ・ソロやファンタジックなインスト・パートを配しつつも、クールネスと哀愁を兼ね備えた歌唱パートで聴かせる#9。
ロイネの粘る歌唱とギターをフィーチュアした穏やかなナンバー#10。
ワウ・ギターが歌いまくるインストゥルメンタル#11。

ヨナス・レインゴールド(B)のメロディアスなベース・ライン、ハッセ・フロベリ(Vo)の溌溂とした歌唱がリード。感傷的なサビを持つ#12。
ザック・カミンスのオルガンがELPのタルカスばりにグイグイ迫り、ミステリアスなムードで進行するインストゥルメンタル#13。
メロトロンを薄っすらと使用するセンスが洒落たプログレ・AOR・チューン#14。
スリリングなプログレ・ジャズ・ロック・インスト#15。
ゲストのロブ・タウンゼント(Sax)のソプラノ・サックスをフィーチュアした#16。
ロイネ・ストルトのコシのある・ギター・トーンとメランコリックなフレージングが楽しめる#17。
ギター・ソロのロングトーンがむせび泣くメランコリックな#18。
ベースがグルーヴをリードするAORチューン#19。
シンフォニックにデコレートされたポップ・チューン#20。
スライド・ギターが幻想的ムードを醸し出す#21。

ジャケット・カヴァーのファンタジックな印象から往年のYESのような超大作をイメージするも、内容は短尺歌モノ中心で随所に印象的なフックを配しながらじっくり聴かせるタイプの落ち着いた楽曲集。DISC1は特にロイネ色が強く、往年のテイストが感じられる。
各種鍵盤を操るザック・カミンスはインスト曲などで時折スゴ腕を見せるものの、全般的にアンサンブルに合わせた堅実な仕事。もっと暴れてもらって長尺曲で緊張と緩和のドラマを作ってくれても大歓迎なんですが。

Track List

DISC 1
1. Racing with Blinders On (4:33)
2. From the Ground (4:11)
3. Black Swan (5:58)
4. Morning News (4:06)
5. Broken (6:48)
6. Goodbye Outrage (2:25)
7. Journeyman (1:49)
8. Tangerine (4:13)
9. Solaris (9:32)
10. Heart of the Valley (4:42)
11. Man in a Two Piece Suit (3:29)

DISC 2
12. All I Need Is Love (5:54)
13. A New Species (5:56)
14. Northern Lights (5:45)
15. Hidden Angles (0:52)
16. Serpentine (3:53)
17. Looking for Answers (4:45)
18. Telescope (4:52)
19. Fool's Gold (3:18)
20. Between Hope & Fear (4:42)
21. Islands (4:15)

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WOBBLER / Dwellers of the Deep

2020,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンド WOBBLERの5thアルバム。

オルガンを中心にメロトロンやピアノでリードする鍵盤を軸に、オルガンのリフに絡みつくようなギターをはじめバンド全体がタイトに進行する#1。
厳かなオルガンとコーラスで幕を開け、躍動する歌唱パート、オルガンとギターのスリリングなハーモニーなど、疾走感がカッコよい#2。
穏やかなアコギに妖しいメロトロンの白玉がアクセントで効いたまどろみフォーク#3。
エキゾチックなミステリアスさを湛えたメロディを緩急交えたアンサンブルで支え、不穏なムードを演出する大曲#4。

縦横無尽なアナログ楽器の薫りと緻密な演奏アンサンブルから硬質な印象を受けるが、#1後半にみられる北欧フォークロア風メロディや垢抜けない歌唱で中和してWOBBLER独特のヴィンテージ・サウンドを展開している。

Track List

1. By the Banks (13:49)
2. Five Rooms (8:28)
3. Naiad Dreams (4:24)
4. Merry Macabre (19:00)

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TRANSATLANTIC / Abusolute Universe

2021,USA,UK,SWEDEN

TRANSATLANTICの5thアルバムAbusolute Universe。

アルバム各所に織り込まれたモチーフを織り込んだ序曲#1。
軽快なイントロからあまりお上手とは言えない歌唱が飛び出す#2。サビでのニール・モーズ(Key/Vo)による歌唱が力強くさすがの上手さだけに落差が残念。
ロイネ・ストルト(G/Vo)の味わい深い歌唱とシンフォニックなオブリガード、サビのコーラスが印象的な#3。
エキゾチックなテーマ・メロディや全体のムードがロイネ主導と思われるFLOWER KINGS風桃源郷シンフォ#4。
変拍子とコード・チェンジで展開する熟練のインスト・パートを内包。#3のモチーフをメジャーに変換したメロディに導かれる開放的フォーク#5。
3連のリズムに乗せた英国風ロカビリー#6。
BEATLESやGENESISを彷彿させる端正で甘酸っぱいポップ・チューンにアルバムのテーマ・メロディを巧みに挿入した#7。
ハードボイルドなベース・ラインがリードする#8。
掻き鳴らしギター・ロック風イントロ、変幻自在なドラムがリードするインスト・パート、メロディアスな歌唱パート等からなる9分超の大作#9。
#2の別バージョンのような躍動感ある#10。
アコースティックな小品#11。
ミステリアスなムードとスリリングな切り替えしにロイネ色が濃い#12。
感傷的なバラードから入り、テーマ・メロディを交えて壮大に展開する#13。
#2のテーマの変奏で織り込まれた#14。
#16のイントロ的歌モノ小品#15。
よりスポンティニアスなインスト・パートで再構成した#8のリプライズ#16。
オルガンが躍動するトリッキーな変拍子パート、GENTLE GIANT風コーラス・パートを配し、アルバムのテーマをおさらいのように奏でる#17。
アルバムのメイン・テーマを雄大かつ壮大に聴かせて幕を閉じる#18。

ギターとシンセのフレージングが微妙にズレて各人の個性を演出しニヤリとさせるユニゾン・パート、ポップ・バンドのようなキャッチーなコーラス・ワークなどTRANSATLANTICらしい余裕と、一部で素人臭い歌唱が音楽の旅からリスナーを現実世界に引き戻す民主・平等路線の弊害が共存するお馴染みの作風。
ではありながら、要約版(モーズ、トレワヴァスが賛成)、拡張版(ストルト、ポートノイが賛成)、究極版と、収録楽曲及び全体の尺や歌唱者などが異なる3つのバージョンでリリースしてしまうところに絶対的リーダーが居ない不安も感じさせるが、この緩さもまた彼ららしさなのかもしれない。
いくつかのテーマが各楽曲を往来しながら最終的に大団円を迎える、というコンセプト・アルバムの典型パターンではあるが、弱いテーマ・メロディの繰り返しによるくどさ、この手法に対するリスナーの慣れもあってか爽快感はそれほどでもない。

Track List

1. Overture
2. Heart Like a Whirlwind
3. Higher Than the Morning
4. The Darkness in the Light
5. Swing High, Swing Low
6. Bully
7. Rainbow Sky
8. Looking for the Light
9. The World We Used to Know
10. The Sun Comes Up Today
11. Love Made a Way (Prelude)
12. Owl Howl
13. Solitude
14. Belong
15. Lonesome Rebel
16. Looking for the Light (Reprise)
17. The Greatest Story Never Ends
18.Love Made a Way

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