メロトロン のレビュー

AGENTS OF MERCY / Dramarama

2010,SWEDEN

ロイネ・ストルト(G)とナッド・シルヴァン(Vo)のプログレ・プロジェクト・バンドAGENTS OF MERCYの2010年2ndアルバムDramarama。

一発で耳に残る奇妙なメロディのリフレインや、GENESISっぽい7拍子が初期FLOWER KINGSを思わせる、ロイネ・ストルトが得意なタイプの典型的プログレッシブ・チューン#1。
メロトロンが哀愁を呼び起こす、メロディアスなシンフォニック・バラード#2。
ハモンドB3のバッキング・リフが印象的な#3。
ラレ・ラーション(Key)がシンセを弾き捲くる凄まじいソロをフィーチュアした神秘的なムードの#4。
フレットレス・ベースのまろやかな音色がリードする、FLOWER KINGSの桃源郷テイスト漂う#5。
SUPERTRAMPっぽいウーリッツァーの音色がペーソス感を、ストリングスのオブリガードがELOを想起させる#6。勿論メロトロンも効いてます。
ちょっとセンチメンタルなフォークロア風サビを持つ透明感あるプログレッシ・フォークの#7。
アコギとスライド・ギター中心のシンプルなアレンジの#8。
ウクレレとウーリッツァーのパーカッシブなバッキングに乗せてナッドの歌唱が物語を紡ぐ#9。
メロトロンによる大仰なオープニングから一転して、軽く歪んだエレピをバックにシンフォニックなパートも含めて展開する#10。
コーラス・パートや重層的なシンセによるシンフォニック・パートがGENESISっぽいテイストの#11。
壮大でメロディアスなバラード#12。

60年代末から70年代初頭のサウンドやヴァイブを再発見するというコンセプト通り、メロディアスでレトロなムードのプログレッシブ・ロックが展開されているのは前作と同様ですが、今回はヨナス・レインゴールド(B)、ラレ・ラーションら脇を固めるメンツもライブを通して固定され、よりバンドらしくまとまってきました。
と同時に、各人の個性も浮かび上がってきました。特にナッド自ら作曲した、とぼけたムードの歌唱を活かしたキャッチーな歌モノの連作#6,#7,#8,#9における、英国っぽい叙情性が最高。全体的にはロイネ色の濃い楽曲とアレンジが目立つ中で、良いアクセントになっています。

Track List

1. The Duke Of Sadness
2. Last Few Grains Of Hope
3. Peace United
4. Journey
5. Gratitude
6. Meet Johnnie Walker
7. Cinnamon Tree
8. The Ballad Of Mary Chilton
9. Roger The Tailor
10. Conspiracy
11. We Have Been Freed
12. Time

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CATHEDRAL / The Guessing Game

2010,UK

英国のメタル/プログレッシブ/エクスペリメンタル・バンドCATHEDRALの2010年9thは怒涛のCD2枚組。

前作The Garden of Unearthly Delightsから顕著になりだしたプログレッシブ&サイケ風味が、いよいよアルバム全体を覆ってきました。もはや出自のドゥームやヘヴィネスも彼らにとっては音楽性の単なる一要素となり、BLACK SABBATH同様に(っていうか本家をマネて)これまでアルバム中の1~2曲で見せてきたメロウであったりグルーヴィであったり70年代風であったり、という実験的なテイストを各楽曲に練りこんだ芳醇な作りになっております。
勿論御大リー・ドリアン(Vo)のヘタウマ歌唱の限界もありますが、そこは、コーラスでDISC1#2及びDISC1#7に参加したMELLOW CANDLEのアリソン・オドネル(Vo)をはじめとした弦やシタール奏者などのゲスト陣、70年代マニアのレオ・スミー(B)のプレイするモーグ・タウラス、ARP、コルグPoli Six等ヴィンテージ・シンセの豊かなサウンドでカヴァー。
さらに、現代のリフ・マスター ギャズ・ジェニングス(G)のリフ・ワークもかなりの冴えを見せており、ヘヴィにドライヴするDISC1#2、引き摺るDISC1#6、典型的CATHEDRALタイプのDISC2#2、抜けの良いコード・ストロークがシャープなDISC2#3、ドゥーミーなDISC2#5、などなどバラエティに富みつつも強力なフックとなる逸品揃い。
又、ヘヴィなリフが溶け合ったDISC1#4、オートハープ等を隠し味にしつつ楽曲全体をリードするインストゥルメンタルDISC1#5などメロトロンも枯れた良い味を出しています。

売れ線狙いとは真逆の、ロックが最高にカッコ良かった70年代の「何やってもOK!」なムード満載のアルバムです。
ジャケット・アートはお馴染みデイヴ・パチェット。12面折のブックレットを広げると、いつもと同様の美しくも妖しく奇妙な異形の世界が広がります。

Track List

DISC 1
1. Immaculate Misconception
2. Funeral Of Dreams
3. Painting In The Dark
4. Death Of An Anarchist
5. The Guessing Game
6. Edwige's Eyes
7. Cats, Incense, Candles & Wine
DISC 2
1. One Dimensional People
2. Casket Chasers
3. Ghost Galleon
4. The Running Man
5. Requiem for the Voiceless
6. Journeys Into Jade

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KULA SHAKER / Pilgrims Progress

2010,UK

復活KULA SHAKERの2010年通算4thアルバムPilgrims Progress。

アロンザ・ベヴァン(B)がベルギーの森の中に所有する納屋をスタジオに改装し、そこでレコーディングされました。

チェロを導入したメランコリックな#1。
マンドリンとリコーダーの素朴でかわいい音色が印象的な、どこか懐かしい感じのする#2。ハーモニカのソロもいい感じです。
従来よりちょっとレイドバックしてますが、典型的なKULA SHAKER風サイケでグルーヴィな#3。
牧歌的フォークからサイケ・ロックに展開する#4。
シタールとタブラをフィーチュアしたエキゾチックなフォーク#5。
クリスピアン・ミルズ(G/Vo)の生々しい歌唱が冴えるフォーク#6,#7。
テープ逆回転SEから始まるインド風味のサイケ・ポップ#8。
リバーヴの感じが60年代ビート・ポップっぽい#9。
冒頭のハープあるいはオートハープのような不思議な音色が印象的なインストゥルメンタル#10。エレキ・ギターが入ると西部劇のサントラみたいな雰囲気になって、これもちょっと懐かしい感じ。
マンドリンの音色が神秘的に響くミステリアスなナンバー#11。
モジュレーションを掛けたギターの浮遊感と、メロトロンか足踏みオルガンのようなサイケなトーンが耳に残るフォーク#12。終盤はチャーチ・オルガンが荘厳に物悲しいフレーズを提示。このフレーズがリフレインし、ドラマティックにアルバムの幕を引きます。

グルーヴィに弾けるロック・チューンやお馴染みインド風味がほとんど無くなり、欧風フォークロアなアコースティック路線の楽曲が多く収録されているのは、喧騒から遮断されたレコーディング環境にもあるのかもしれません。
今まで派手な楽曲の陰に隠れがちながらも確かに存在した、KULA SHAKERが持つアナザー・サイドに焦点を当てた作風で、フォーク&トラッドなテイストの3rdアルバムをウェールズのコテージで作曲したというLED ZEPPELINのエピソードを想起させます。クリスピアンによると次回作は思いっきりインド風味にする(こればっか訊かれる事にイヤになっての逆に皮肉かもしれませんが・・・)とのことですが、本アルバムもなかなか味があって良いですよ。

Track List

1. Peter Pan RIP
2. Ophelia
3. Modern Blues
4. Only Love
5. All Dressed Up
6. Cavalry
7. Ruby
8. Figure It Out
9. Barbara Ella
10. When A Brave Meets A Maid
11. To Wait Till I Come
12. Winters Call

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MOON SAFARI / Lover’s End

2010,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドMOON SAFARIの3rdアルバムLover’s End。

煌くピアノとどこかセンチメンタルなハーモニカに導かれて一点の曇りも無い爽快なボーカル・メロディが登場するオープニング・ナンバー#1。ちょっとくすんだトーンのメロトロン・フルート(?)が良い感じです。

序曲風の#1のエンディングから溌剌と劇的に幕を開ける#2。FLOWER KINGSを彷彿させるシンフォニックな冒頭、YESのような疾走感あるインスト・パートを内包した14分近くの大作ながら、適度な起伏と数々の素晴らしいフックの存在が長尺である事を一切感じさせません。コーラスのメロディを引き継いでアナログ・シンセ~ギター・ソロと続く中間部は何度聴いてもトリ肌の快感。
重層的なコーラスとピアノによる透明感あるバラード#3。
素直な美メロを奏でるピアノがリードする#4。ここでもボーカル・メロディの反復からインプロヴァイズに移行するシンセ・ソロ、という楽曲のメロディを印象付ける素晴らしいアレンジが施されています。
キャッチーなボーカル・パートにプログレ由来の変拍子シンセ・パートが自然に溶け込んだ、ウルトラ・ポップ・ナンバー#5。
冒頭のメロトロンとシンセによる変拍子インスト・パートがGENESISを彷彿させるアルバム中最もプログレ的な#6。ギターとシンセのユニソン・フレーズを中心に展開していく中間部はシンフォニック・プログレ・ファンなら大興奮間違い無し。
重層コーラスをフィーチュアした#7。北欧フォークロア風なメロディを奏でる3拍子+2拍子のシンセ・パートが印象的。
甘酸っぱい余韻を残し、再び最初からのリプレイを誘う#8。

親しみやすい明るくキャッチーなメロディと、FLOWER KINGSから屈折パートやダークな部分などを取り除いた結果残った希望溢れる桃源郷サウンドで綴る爽快なプログ・ポップ。

ピアノ、オルガン、アコギ、NORDのアナログ風・シンセ、メロトロンなどを必要以上に重ねないシンプルなサウンドでボーカル・ハーモニーを引き立てつつ、インスト・パートでは自然な変拍子やプログレ然とした節回しのシンセ・ソロが耳を楽しませてくれる職人的なアレンジも見事。これでメンバー全員が昼間は別の職業に就いているパート・タイム・ミュージシャンだとは・・・。

Track List

1. Lover's End Pt. I
2. A Kid Called Panic
3. Southern Belle
4. The World's Best Dreamers
5. New York City Summergirl
6. Heartland
7. Crossed the Rubicon
8. Lover's End Pt. II

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SPIRITUAL BEGGARS / Return to Zero

2010,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いるスウェーデンのハード・ロック・バンドSPIRITUAL BEGGARSの2010年7th。

脱退したJBに代わり元FIREWIND、TIME REQUIEMのアポロ・パパサナシオ(Vo)が加入。前任者に負けず劣らずパワフルな歌唱からディープ・ヴォイスまで幅広くこなす実力者で、SPIRITUAL BEGGARSのオールド・スクールなタイプの音楽性にもぴったり。ペル・ヴィバリ(Key)の物悲しいモーグ風シンセをフィーチュアした静かなオープニング小品#1から、重くブルータルなリフの#2へ。定番の展開でありながらも、やはり心躍るものがありますね。ゆったりした流れに堂々としたアポロの歌唱が響き、中間部の厳かなペルのオルガンからワウを掛けた官能的トーンのギター・ソロに至る流れも感動的。アポロのプレゼンとしては申し分ない楽曲に仕上がってます。キャッチーなリフにリズムのフックを取り入れた#3。9thコードがクール。前作制作時から暖めていたアイディアに、マイケルの妻アンジェラ・ゴソウが作詞で協力して完成したという#4。ドゥーミーな単音リフがのたうつ超ヘヴィな前半、アップテンポにギアチェンジしカッコ良くドライヴする後半と、2度楽しめます。オーディエンス・ノイズを被せたライヴ向きのシンプルなシャッフル・ナンバー#5。トライバルなパーカッションとクリーンなギターをバックに、アポロの表現力の広い歌唱が郷愁を誘う異色のインディアン風ナンバー#6。UFOのDoctor Doctorを想起させる3連グルーヴの#7と、リフのネタ元がMSGのDesert Songであることが明白な#8。この辺はマイケル・シェンカー・タイム!終盤のギター・ソロではMSGのLet Sleeping Dogs Lie風フレーズまで登場。ワウ掛けてこのテンポで良い気分で浸って弾いていると勝手に出てきちゃうんでしょう。もう指が覚えてて。ジミヘン風グルーヴを持つメロディアスなナンバー#9。バッキングとソロでオルガンが効いてます、レズリーの回転数切り替えもバッチリ。デイヴィッド・カヴァーデールを彷彿させるアポロの歌唱に、サビのコード進行やメロディ、ペルが弾くジョン・ロードっぽいピアノやオルガンが70年代WHITESNAKEのヴァイブを感じさせる#10。ブルージーな#11、ピアノとメロトロンをフィーチュアしたバラード#12、とアルバム終盤はメランコリックに締めてます。70年代ハード・ロックの旨味を自分達流に消化する手法は相変わらず巧くて、もう感心してしまいますね。今回はいつにも増してモロなマイケル・シェンカー風もありますが、楽しんで作った結果として滲み出たものだと思うので微笑ましいです。ARCH ENEMYが売れて、SPIRITUAL BEGGARSの活動に割く時間がなかなか取れないようですが、次も期待しちゃいますね、これは。

Track List

1. Return to Zero
2. Lost in Yesterday"
3. Star Born
4. The Chaos of Rebirth
5. We are Free
6. Spirit of the Wind
7. Coming Home"
8. Concrete Horizon
9. A New Dawn Rising
10. Believe in Me
11. Dead Weight
12. The Road Less Travelled
13. Time to Live

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AGENTS OF MERCY / The Black Forest

2011,SWEDEN

活動休止中のTHE FLOWER KINGSに代わり、もはやロイネ・ストルト(G)のメイン・バンドとの感もあるスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドAGENTS OF MERCYの3rdアルバム The Black Forest。

日常に潜む不穏な事象を、”漆黒の森”に喩えたコンセプト・アルバム。

期待感と高揚感を煽るイントロから11分に渡って繰り広げられるシンフォニックな序曲#1。耳を捉えて離さないシンセとギターのユニゾンで奏でられる奇妙なメロディ、静寂と喧騒の対比や緩急を活かしたアレンジが冴えるドラマティックなナンバー。
ダークなムードの中、ファンキーに進行する#2。突如突き抜けるシンフォニック感覚にハッとさせられるニクいアレンジ。バッキングでのダーティなオルガン、インスト・パートでの7色のシンセと鍵盤群を変幻自在に操るラレ・ラーション(Key)のプレイが見事。
超絶シンセ・ソロをフィーチュアした、ヘヴィなギターとダーティなオルガンのリフがリードする#3。
タイトル通りの悲痛なメロディが胸に突き刺さるメランコリックなバラード#4。ロイネ・ストルトのストレートな泣きのギター・ソロが素晴らしいです。
THE FLOWER KINGSを思わせる桃源郷的シンフォに、ダークなテイストを内包したロックなサビを持つ歌唱パートが融合した#5。
メロトロンをうっすらと絡めたバックにロイネ・ストルトがメインのボーカルを取る#6。独特の苦味がある歌唱とセンス良いギターのオブリガードといったロイネ・ストルトの個性が、フック満載のアレンジとあいまった初期FLOWER KINGSのような趣のナンバー。
不穏なムードのSEを配した序盤から、ナッド・シルヴァンとロイネ・ストルトが掛け合いで歌う中近東風メロディをアクセントに使用した歌唱パートに移行する#7。ヘヴィなパートとゴスペル風コーラスをあしらった中間部のメロウなパートの起伏が楽曲にダイナミクスを生み出している。
序盤のまろやかなシンセ、霧のようなメロトロン、ギターの繊細なアルペジオが神秘的なムードを演出する#8。短いボーカル・パートを受け継ぎ、徐々に盛り上がる叙情的なバッキングに乗った2分半に及ぶエモーショナルなギター・ソロでアルバム56分の旅を締めくくるロイネ ファン感涙のメランコリックなナンバー。

前作でナッド・シルヴァンが見せた軽妙な英国風ポップを今回は封印、YESGENESISよりはむしろBLACK SABBATHLED ZEPPELIN寄り、と本人達が言うように、適度にエッジの立ったヘヴィネスやダークな色合いを増量。
そしてそれらが従来のシンフォニックなサウンドやプログレッシブな曲展開に見事に融合し、コンセプトの元にアルバム通して一分の隙も無い作品を作り上げました。

桃源郷サウンドがあまりにも緩く拡散してしまった近作のFLOWER KINGSよりも、むしろ初期THE FLOWER KINGSに近いドラマティックな起伏とロイネ・ストルトの存在感が楽しめるAGENTS OF MERCY。
来年あたりTHE FLOWER KINGSの活動再開もあるようですが、ロイネ節を期待するならAGENTS OF MERCYの方が良い様な気がします。

Track List

1. The Black Forest
2. A Quiet Little Town
3. Elegy
4. Black Sunday
5. Citadel
6. Between Sun & Moon
7. Freak Of Life
8. Kingdom Of Heaven

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OPETH / Heritage

2011,SWEDEN

OPETHの10thアルバムHeritage。

リリース前の試聴会からの噂が、グロウル・ヴォイスやブルータルなリフが無いアルバムという事で密かに期待していたが、やってくれましたよミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)。
ミカエルが70年代ロックのコレクターであることは有名で、これまでのアルバムでも幽玄なアコギ・パートなどにヴィンテージ・ロックの薫りを漂わせてはいましたが、それをアルバム単位でやってしまったという感じ。
この路線、メロウかつ暗鬱なアルバムDamnationと似てはいますが、もっとバラエティに富んでいて躍動感もあるしロックしてもいる。何というか70年代ロック風なゴッタ煮感が良い。

メロウなピアノのソロ#1で静かに幕を開け、ガツーンと来るだろうなという予想通りの#2ではありますが、以前のような無慈悲で怜悧なリフでは無く、歪んだオルガンを絡めたオールド・スクールなテイスト。ギター・リフも相変わらず不条理系の奇妙な音使いですが、サウンドも今風なディストーションというよりはもっとウォームな感じ。幽玄パートやサイケ風なパートも絡めての起伏に富んだアレンジはさすがOPETH。
メロトロンの白玉とアコギをバックにミカエルの艶やかな美声が乗るメロウな序盤から、ヘヴィなパートを交えつつ神秘的なムードで展開する#3。
DEEP PURPLE風な#4は(多分)シングル・コイルの単音バッキングがまんまリッチー・ブラックモアな疾走チューン。OPETHらしい音使いのリフがアクセントになり、オールド・スクールな曲調に見事に融合しています。アコギ・パートに突入してそのままフェード・アウトする意外な展開はBLACK SABBATHのようでもあります。
マーティン・アクセンロット(Dr)のゴースト・ノートを活かしたグルーヴィなドラミング、ペル・ヴィヴァリ(Key)によるエレピのリフ、エキサイティングなフレドリック・オーケソン(G)のソロなど、ジャム的な要素をフィーチュアした不思議な浮遊感を持った#5。
静謐でメランコリックな序盤からメロトロンとアコギをバックに7拍子の歌唱パートに移行するプログレッシブ・フォーク#6。間を有効活用した枯れたギター・ソロも又絶品。現存するバンドでこのサウンドを出せるのはOPETHだけでしょう。
静かな序盤から独特の音使いによるリフを境にバンド・インする#7。妖しいパーカッションや吹き散らすフルートが70年代風暗黒ムードたっぷり。
マーティン・メンデス(B)のベースがリードする#8。メロトロンにフェンダー・ローズなどヴィンテージ・キーボード、テルミン風SEを要所に散りばめたコンパクトながら起伏あるナンバー。
OPETH風暗黒エレクトリック・フォークから、メロウなアコギ・パートを経て、抑えた泣きのギター・ソロで締める#9。
アコギのアルペジオをバックにしたマイルドなツイン・リードのハーモニーが美しい#10。

はっきり言って70年代風テイストはOPETHのオリジナルでは無いし、新鮮なアイディアというわけでも無い。
それでもこのアルバムが素晴らしいのは、そういった先人達のアイディアを吸収し我が物とした上でしっかりとOPETHの持ち味に融合させてしまっているところ。
特に、何でも詰め込み過ぎの昨今の音楽シーンにあって、「無音」を活かした音作りが巧み。
このあたりはミックスを担当したスティ-ヴン・ウィルソンからの影響かも。

ジャケット・アートはお馴染みのトラヴィス・スミス。サイケな色調が珍しいですね。右下の落ちかかった顔は本アルバムがラストとなるペル・ヴィヴァリでしょうか。ここ数作で良い仕事をしていただけに残念です。

Track List

1. Heritage
2. The Devil's Orchard
3. I Feel The Dark
4. Slither
5. Nepenthe
6. Häxprocess
7. Famine
8. The Lines In My Hand
9. Folklore
10. Marrow Of The Earth

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PAATOS / Breathing

2011,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドPAATOSの4thアルバムBreathing。

2006年の前作Silence of Another Kind以降、ライブ・アルバムSensorsをベースのStefan Dimleが経営するレコード・ショップ/レーベルのMellotronenからアナログでリリース(2008年)、ギタリストのPeter NylanderにRicard Huxflux Nettermalm(Dr)、Petronella Nettermalm(Vo)夫妻が参加した新ユニットELEPHANT CULTURE結成と、新作のリリースこそ無いものの順調に見えたPAATOSでしたが、2008年11月に衝撃が。

何と、オリジナル・メンバーのStefan DimleとJohan Wallén(Key)の脱退がMyspaceのブログで発表されたのだ。
しかも、この記事がしばらくすると削除されてしまうという不可解な状況もあり、遠く極東の1ファンとしては一体何がPAATOSに起こっているのか解る術も無く前途が心配された状況が続きました。
そして2009年4月に改めてブログで2人の離脱を報告、と共に新作に向けて作業を開始しているという嬉しいニュースも。
しかしバンドはここからさらに沈黙。
しばらくの間オフィシャル・サイトまでもが「工事中」で閲覧できず。でもこれは、新作リリースと同時にサイトをリニューアルするのだな、と好意的に受け取ることもできた。

そしてようやく2010年末、新作が2011年初頭リリースであることがアナウンスされた。
レーベルは良質なプログレ・バンドを多数要するドイツのInsideOut MusicからオランダのGlassville Recordsに移籍。このあたりの契約問題もブランクが長かった要因かも。
メンバーは残った3人に新メンバーUlf Rockis Ivarsson(B)を加えた4人体制。
ジャズのバンドや映画音楽の制作などマルチな才能を発揮するPeter Nylanderが鍵盤にトロンボーン、はたまたバンスリ・フルートなる民族楽器までプレイし、専任鍵盤奏者の不在をカバーしています。意外な所ではゲストのチェロ奏者として、イングヴェイ・マルムスティーンのバンドに在籍したこともあるスヴァンテ・ヘンリソンもクレジットされています。

白夜を思わせる醒めた高揚感とメロトロンが絡むサビのメランコリックな叙情が交錯する#1。
マイナー調なのにPetronellaの歌唱が炭火のような温かさをもたらす#2。
穏やかなフォークから、サビとインスト・パートでは一転して悲哀に転ずる#3。
Petronellaの澄んだ美声が楽しめるPAATOSらしいメランコリック・チューン#4。
ピアノ、管、スキャット、チェロなどが断片的なフレーズを絡ませるインスト小品#5。
Ricardの鮮烈なドラミングをフィーチュアした新機軸のプログレッシブ・チューン#6。
ミステリアスなインスト・パートを内包したメランコリックなタイトル・ナンバー#7。
物悲しいフレーズを奏でるアンビエントなピアノを中心としたサウンドスケープをバックに、スウェーデン語で切々と歌われる#8。
意外性のある洒落たコード進行に乗って、瑞々しいメロディが次々に展開していく#9。
オルゴールの小品#10。
Petronellaがチェロでもがんばる、#2同様にマイナーな中に温かみを感じさせる#11。
PAATOSが時折聴かせるスピード感のあるカッコ良いナンバー#12。

長いブランクで心配された音楽性の変化もさほど無く、それどころかバンドが影響を受けたPORTISHEADやBJÖRKなどのテイストをメランコリックな世界に巧みに消化・昇華したお馴染みのPAATOSらしさに、#6や#9など新たなテイストも加えた会心作ですねこれは。
悲哀の中の醒めた感触(あるいはその逆も)とでも表現したらよいのか、彼らにしか成し得ない独特の個性にますます磨きの掛かったアルバムです。

美声ボーカル・ファン、女性ボーカル・ファン必聴作。

Track List

1. Gone
2. Fading Out
3. Shells
4. In That Room
5. Andrum
6. No More Rollercoaster
7. Breathing
8. Surrounded
9. Smärtan
10. Ploing My Friend
11. Precious
12. Over and Out

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STEVEN WILSON / Grace For Drowning

2011,UK

STEVEN WILSONの2ndソロ・アルバム Grace For Drowning。

制作が一連のKING CRIMSON旧譜リマスター作業と期間が被っていたようで、完全に思考及び嗜好モードがCRIMSONだったのでしょう。
メランコリックな歌メロ~不条理リフへの展開が明らかにKING CRIMSONのCirkusからの影響モロ出しのDisc2 #4をはじめ、全体の雰囲気はLIZARD~ISLANDS期KING CRIMSONのような静謐な美しさに溢れています。
主にピアノで作曲したという収録曲はリフ的な構造よりもメロディに主眼が置かれているようで、ジャズ系ミュージシャンを使用したバックの演奏も落ち着いた感じ。

Disc1 #3等でのメロトロンの叙情、Disc1 #2のホールトーン(全音音階)の緊張感(RED)、Disc1 #7,Disc2 #4の数学的メカニカルなリフ(DISCIPLINE)、とKING CRIMSONの全キャリアのエッセンスを忍ばせつつ、得意のブレイク・ビーツやエフェクトによるサウンド・スケープなど現代的な手法と、端整なストリングス、生々しく時にインテンスなサックスやDisc2 #5のファンタジックなオートハープによる装飾などオーガニックなトーンが溶け合い、メロディ・構造・構築性・サウンド、全てが美の元に収斂し、唯一無二のSTEVEN WILSONワールドを醸成。

自身の作品に似ているかどうかの感想を求められたロバート・フリップが、「私にはスティーヴン・ウィルソンにしか聴こえない」と答えたのも、これら影響を飲み込んだ上で個性を発揮してのけたスティーヴン・ウィルソンに対する賛辞でしょう。
まさに傑作。

Track List

Disc 1: Deform to Form a Star
1. Grace for Drowning
2. Sectarian
3. Deform to Form a Star
4. No Part of Me
5. Postcard
6. Raider Prelude
7. Remainder the Black Dog

Disc 2: Like Dust I Have Cleared from My Eye
1. Belle de Jour
2. Index
3. Track One
4. Raider II
5. Like Dust I Have Cleared from My Eye

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THE WATCH / Timeless

2011,ITALY

イタリアのGENESISフォロワー プログレッシブ・ロック・バンド THE WATCHの5thアルバム Timeless。

アルバム各所に登場するテーマ・メロディを提示する序曲的な#1。12弦アコギにメロトロン、クセのあるボーカル、と既に全開。
不穏なムードで#1を継承し、比較的アップテンポに飛ばすロック・ナンバー#2。ワウを掛けたギター、オルガンのアルペジオ、シンフォニックなシンセと場面ごとに印象的なフックが盛りだくさん。
コード進行とくぐもった足踏みオルガンの音色が神秘的でファンタジックなムードを醸し出す#3。ギターの切り返しとシンセ・ソロのフレージングも良い。
#1のテーマ・メロディをサビに配したポップな#4。明るい雰囲気の中に巧みに翳りを織り交ぜて英国的に仕上がってます。
12弦アコギとフルートをイントロに配したファンタジックなバラード風の#5。後半のメロトロン・パートがドラマティック。
オルガンのリフとドラムが生み出す快活なリズムのヴァースとメロトロンによるメランコリックなパートが対比した#6。
タイトルにそぐわないのどかな序盤のボーカル・パートから、フィルターがミュンミュンするシンセ・パートで徐々に妖しく展開していく#7。
起伏を持たせた展開でラストに#1のテーマが登場、壮大なフィナーレとなる#8。
引き続きテーマ・メロディをピアノでリフレインする小曲#9。

GENESISのカヴァーをやっているうちに(#3,#4,#6はカヴァー)、オリジナル曲のテイストももはやGENESIS以外の何者でも無いという体質になってしまった所謂トリビュート・バンド。
芝居がかった歌唱、メロトロンやギターのサウンド、ちょっと奇妙なコード進行、コンパクトなポップ感覚、などなど各楽曲の至る所にガブリエル期GENESISのエッセンスを滲み出させつつも、メロディアスかつ印象的なフック満載の素晴らしいアルバム。
聴き終わった後、無性にGENESISを聴きたくなってしまうのは、THE WATCHにとって失礼なことなのか。それとも賛辞と受け取ってくれるんでしょうか?

Track List

1. The Watch
2. Thunder Has Spoken
3. One Day
4. In The Wilderness
5. Soaring On
6. Let Us Now Make Love
7. Scene Of The Crime
8. End Of The Road
9. Exit

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WHITE WILLOW / Terminal Twilight

2011,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの5年ぶりとなる6thアルバムTerminal Twilight。

2nd~4thアルバムに参加していた美声のシルヴィア・エリクセン(Vo)が復帰。サウンドも前作のコンテンポラリー・ポップス路線から、メロディックなプログレ・フォークに素朴で時にダークかつ混沌とした要素を溶け込ませた初期のイメージに近いものに回帰。

シンセによるゆったりとしたアルペジオが神秘的で妖しいムードを醸し出すオープニングや屈折した歌メロが初期のテイストを想起させる#1。終盤にようやくポジティブなメロディの木漏れ日が差し込み、ここまでの暗鬱と対比。
シルヴィアの可憐なボーカルをフィーチュアしたキャッチーなコンテンポラリー・フォーク#2。
色んなところに客演しているゲストのティム・ボウネス(NO-MAN)とバンドの共作でティム自ら枯れた哀愁の歌唱を聞かせるメランコリックなフォーク#3。
シンセの重層的なアンサンブルでシンフォニックに高揚するインスト・パートが圧巻。ボーカル・パートではシルヴィアの素朴で可憐な歌声が楽しめるアルバム前半のハイライト#4。
シンプルなアルペジオにフルートやシンセが絡むイントロ~ボーカル・パートのポジティブなドリーミー感、ヴィンンテージ風オルガンとシンセで少々アヴァンな不条理パートを盛り込みつつも仄かな叙情を感じさせるインスト・パートの対比が見事なプログレ・フォーク#5。
北欧フォークロア風メロディを紡ぐ掠れたメロトロン、シンセを中心としたアンサンブルによるドラマティックなインストゥルメンタル#6。
ドリーミー、叙情、暗鬱と様々な表情を見せるボーカル・パートを、ロックなドラムとメロトロンを始めとした鍵盤群のバックが支える#7。フルートとギターのアルペジオによる寂寥パートから、オルガンのグリッサンドと共になだれ込む激情パートへのドラマティックな場面転換など、起伏に富んだ13分超の長尺曲。
12弦アコギのアルペジオがGENESISっぽい、爽やかでどこか神秘的な余韻でアルバムを締めくくるインスト#8。

優しいメロディがもたらす全体的な暖かみや大作#5,#7でのインスト・パートの構成力、巧みなシンセの音使いなど、垢抜けたメジャー・クラスのアレンジとサウンドに独特の屈折テイストを絶妙に配合したキャリアの集大成にして最高傑作。

Track List

1. Hawks Circle the Mountain
2. Snowswept
3. Kansas Regrets
4. Red Leaves
5. Floor 67
6. Natasha of the Burning Woods
7. Searise
8. A Rumour of Twilight

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WOBBLER / Rites at Dawn

2011,NORWAY

ヴィンテージ楽器のみで勝負するノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンド WOBBLERの3rdアルバムRites at Dawn。

神秘的なイントロダクションの#1。
硬質でクールな7拍子リフに絡むメロトロン、YESの躍動感やGENTLE GIANT風コーラスなど70年代プログレの薫りを纏いつつ、各楽器が緻密に絡みつくアレンジとタイトな演奏力に現代的なインテリジェンスとテクニックも感じさせる#2。
ドライブするベース、シンセとギターのハーモニー、エレピやオルガン、シンセなど場面ごとに異なる多彩な鍵盤など、アンサンブルの妙を緩急と静動の起伏を付けた絶妙の展開で活かした12分超のプログレ大作#3。
アコギの7拍子アルペジオにフルートやメロトロンが絡む幽玄なパート、ピアノがリードするクールなジャズ風リフ、軋んだメロトロンがANGLAGARDANEKDOTENを彷彿させる北欧的慟哭激情メランコリー・パートなど、異質な要素を巧みに切り替えるドラマティックな#4。
トレモロ効果を持つ骨董楽器マクソフォンを使用した静かなイントロからメロトロンが唸る疾走パートに移行する#5。
ギター、ベース、サックスによる怒涛のユニゾン、メロトロンがむせび泣くメロウなパート、開放感あるテーマ・メロディ及びドラマティックなサビを持つ感動的な#6。
グロッケンをフィーチュアした神秘的なアウトロで#1に繋がる#7。

様々に展開しながらもやりっ放しで終わらず、きっちりと落とし所を用意した考え抜かれたアレンジ、それを可能にするプレイヤーの技量、ヴィンテージ・キーボードを活かしたダイナミクスある楽曲展開が魅力的なヴィンテージ・タイプのプログレ。
ボーカルはジョン・アンダーソン風なところもあるが、平坦で無機質なため表現力という部分では若干マイナスも、そのB級感が故の70年代っぽさで逆に奏功している。

Track List

1. Ludic
2. La Bealtaine
3. In Orbit
4. This Past Presence
5. A Faerie's Play
6. The River
7. Lucid Dreams

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ANGLAGARD / Viljans Öga

2012,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドANGLAGARD 18年ぶりのスタジオ3rdアルバムViljans Öga。ギターが一人抜けて5人となり、一部ゲストも参加している。

フルートを全面的にフィーチュア。感情移入できるリード楽器としてギター以上にメイン・メロディを奏でる機会が多く、メロトロンをバックにした静寂パートでの儚さ、ヘヴィな暗黒不条理リフと絡んだ時の狂気、など、起伏に満ちた楽曲のその時点での立ち位置を雄弁に表現。全曲インストゥルメンタルにもかからわず、聴き手のイマジネーションを刺激してきます。
ゲストのチェロや各種管楽器を交えた部分でのクラシカルな響きから、アヴァンギャルドというよりは北欧ならではの凍てついたエキゾチックさを漂わせた妖しい場面まで、それぞれ12~16分の長尺全4曲ながら、音楽的アイディアのレンジも広く予測不能の展開で全く飽きさせない。

楽器群は、リッケンバッカーと思しきバキバキなベース、幽玄なメロトロン、グリッサンドが唸るオルガン、そしてギターに管弦とオーガニックな響きがヴィンテージかつ時代を超越した不思議なムードを醸し、ANGLAGARDならではの独特の世界観が成立。
白眉は不条理リフでヘヴィかつスリリングに進行しながらチェロを交えた耽美なパートを織り交ぜ、一転してメランコリックなクライマックスを用意した#3。
KING CRIMSONのStarlessを想起させる暗黒的ドラマティックさに悶絶必至の名曲です。

Track List

1. Ur Vilande
2. Sorgmantel
3. Snårdom
4.Längtans Klocka

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カテゴリー: ANGLAGARD

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BIG BIG TRAIN / English Electric (Part One)

2012,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンドBIG BIG TRAINの7thアルバムEnglish Electric (Part One)。

緊張感あるギターのアルペジオ・リフから、小刻みなリズムをフックとするブリッジを経て開放的なサビに移行する#1。モチーフのメロディをベースにした終盤のシンセ・ソロがプログレの王道を行きつつ、フルートの陰影や重厚なストリングス・セクションが随所で効いた素晴らしいシンフォニックなオープニング・ナンバー。
リコーダーやバンジョーなどがもたらすほのぼのとした雰囲気に、かすかなペーソスを織り込んだ田園フォーク風ナンバーの#2。ボーカル・パート冒頭の歌い回しをはじめ、全体的にGENESISの小品っぽい上品な英国風味に仕上がってます。
ロマンティックなフルートにジャジーでクールなヴァース、一転してサビはストリングス・セクションをバックに叙情で覆い尽くす#3。清楚でリリカルなフルートからギター・ソロへ徐々に盛り上がるインスト・パートもドラマティック。
3+3+3+2、3+3+3+4に続き3+2、そしてサビは3拍子に移行。テンポは変わらずも、拍子の変化で緩急を付けた頭脳的なナンバー#4。ロジカルな構造に反して、親しみやすいボーカル・メロディ、中間部の叙情フルート、後半のドラマティックな盛り上がりなど、エモーショナルな聴感を残すあたり、ソングライティングはもはや名人芸。
ピアノにヴァイオリンが絡む清楚なヴァース、メロトロンをバックにした希望的なサビ、ニック・ディヴァージリオ(Dr)のドラミングが牽引する熱いパート、トランペットをはじめ金管がまろやかな印象を残す終盤など、起伏に富みつつも落ち着いたトーンで静かな感動を呼ぶ#5。
アコギのアルペジオ、バンジョーに滑らかなフィドル、アコーディオンなどによる淡い色調のフォーク・ナンバー#6。
#2の主人公(元炭鉱夫のジャックおじさん)が再登場し若い頃の経験を語る#7。テンポアップしたインスト・パートでのスタイリッシュなヴァイオリン・ソロがカッコ良い。
弾むようなパートと、メロトロンが軋むスリリングなインスト・パートに続く叙情ヴァイオリンによる明暗のコントラストが最高な#8。

近代の実話や身近な人物の逸話などをテーマに、ジェントルな重層コーラスや豊富な管弦ゲスト陣を活用してのドラマティックでシンフォニックなアレンジを施した英国テイスト満載の逸品。
暗くて湿っぽい工業地帯やのどかな田園風景など、英国の様々な情景が広がってきます。

Track List

1. The First Rebreather
2. Uncle Jack
3. Winchester From St Giles' Hill
4. Judas Unrepentant
5. Summoned By Bells
6. Upton Heath
7. A Boy In Darkness
8. Hedgerow

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FLOWER KINGS / Banks Of Eden

2012,SWEDEN

ドラマーにフェリックス・レーマン(Dr)を迎えた再始動FLOWER KINGSの5年ぶりとなるアルバムBanks Of Eden。

25分超の大作#1から往年のFLOWER KINGS節が炸裂。
モーダルでミステリアスなメインの歌メロを終盤にはメジャー調に変化させる心憎い演出に加え、ロイネ・ストルト(G/Vo)やトマス・ボーディン(Key)のオルガンなど楽曲のカラーを決定する楽器群のトーンがオーガニックで生々しく、適度な空間的余裕とあいまって演奏そのものを純粋に楽しめるアレンジが素晴らしい。
エンディングはメロディをあえて解決する音で終わらせず、余韻を残して伏線を匂わせます。
イントロのプログレ然とした上り詰めるようなシンセの単音リフにギターが絡み、スペイシーなムードのボーカル・パートに移行する#2。ギター・ソロではナチュラル・ディストーションのトーンが活き活きしています。
ミステリアスなムードで7拍子中心に進行する#3。
シンセとギターによるメイン・リフ、ロイネの深みある歌唱とエモーショナルなギター・ソロなど、随所に顔を出す叙情的メロディと静動の起伏でドラマティックに仕上がった初期の叙情を彷彿させる#4。
#1のメイン・メロディを今度はマイナー調に変化させ壮大なスケールで展開する#5。#1の伏線をここで解決するというよくあるパターンながら、これだけのクオリティでやられると誰からも文句は出ないでしょう。

ボーナス・ディスクはシリアスな新作のカラーとは違った4曲を収録。
FLOWER KINGSらしいバラエティに富んだ秀作揃いで、歌にギターにロイネのカラーが前面に出ているのが嬉しく、大いに楽しめます。

ロイネの苦味を抑えた歌唱がイイ感じの、伸びやかなシンフォニック・ポップ#1。
リズムのアクセントを巧みに使ったキャッチーな#2。
メロウなインストゥルメンタル#3。
ジミヘン・スタイルなリフを軸にしたレトロなロックの意匠とメロトロンなどプログレな要素が融合した#4。

待望の新作は全体的にロイネのカラーが濃く、新加入のフェリックス・レーマンのドラミングも軽やかなフィルやボーナス#2冒頭の3拍子で4連を叩く意外性のあるフレージングなど、他メンバーを触発するバンドのエンジン役として貢献。

Track List

1. Numbers
2. For The Love Of Gold
3. Pandemonium
4. For Those About To Drown
5. Rising The Imperial

Bonus Disc
1. Fireghosts
2. Going Up
3. Illuminati
4. Lo Lines

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MOON SAFARI / The Gettysburg Address

2012,SWEDEN

スウェーデンのポップなプログレッシブ・ロックバンド MOON SAFARIのライブ盤 The Gettysburg Address。
2011年5月20日Rosfestでの模様を収録したCD2枚組。
ブレイクした3rdアルバムを中心に1st,2ndからも選曲され、現時点でのベスト・アルバム的なラインナップ。

MOON SAFARIについてはオフィシャルサイトも(2012年2月現在は)適当な感じでなかなか情報が入ってこないため、スタジオ・プロジェクトのような印象を持っていましたが、そこそこライブ活動も行っているようで、収録されている演奏もコーラス・ワークから伸びやかなボーカル、複雑なアンサンブルも完璧!
特にスタジオ盤ではシンセとユニゾンでメインのメロディを奏でる場面の多いギターが、ミックスの関係で良く聴こえ、想像以上に随所でキーボード的なパッセージを弾いている事が判明。サーカスのようなテクニックを使う訳では無いですが、相当大変ですよこれは。

また、改めて感じたのが、MOON SAFARIが使用している楽器音の種類が意外な程少ないと言うこと。
素晴らしいメロディとアレンジに耳を奪われてカラフルな印象を持ってましたが、エレキ、アコギ、ピアノ、アナログ風単音シンセ、メロトロン、オルガン、ベース、ドラム、とシンプルなものばかり。まぁ勿論、メロトロンやシンセ系はライブではMIDIのサンプル音源使用でしょうが。
これでここまでバラエティに富んだ楽曲を構築できるとは驚きです。

まさにライブを見据えたかのような楽器構成なので本作でも再現性はバッチリ。個人的に21世紀のNo.1キャッチー&プログレ・チューンと感じている#7で聴かせる一糸乱れぬ完璧なアンサンブルには惚れ惚れしますね。且つ、キャッチーにまとめるセンス・・・・。
素晴らしすぎます。

今後も今まで同様の楽器構成で行くのか、それとも新機軸を打ち出してくるのか?
4thアルバムが待ち遠しいです。

Track List

DISC.1
1. Moonwalk
2. Lovers End Pt.1
3. A Kid Called Panic
4.Yasgurs Farm
5. The Worlds Best Dreamers
6. Dance Across The Ocean

DISC.2
7. Heartland
8. New York City Summergirl
9. Other Half Of The Sky
10. Doorway

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MOON SAFARI / Lover’s End Pt.III Skellefteå Serenade

2012,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドMOON SAFARIのEP Lover’s End Pt.III Skellefteå Serenade。
アルバムLOVER’S END収録のパート1、パート2の続編にして完結編。

パート1、パート2の爽やかで甘酸っぱいムードはそのままに、珍しく少々ダークなパートや思いっきりエモーショナルなギターを付加。
お馴染みのテーマ・メロディの変奏でニヤリとさせ、壮大なスケール感、より巧みになった場面転換で駆け抜ける24分。
四季の移ろいを想起させる起伏に満ちた瑞々しい表現力は益々磨きがかかり、一人ひとりのキャラが個性的な多層コーラスも絶好調。
7分中盤のダークなムードからメジャーに移行する開放感。雫のようなピアノからの爽やかで疾走感あるボーカル・パート。
11分中盤からはお待ちかねアナログ・シンセのリフがリードするプログレ・パート。畳み掛ける展開の中、構築度の高い天駆けるギター・ソロ、そしてシンセのリフにギターがユニゾンで加わる部分のスリル。
19分中盤からはいよいよ名残惜しさを増幅する壮大なラス前の大盛り上がり。
ディレイが掛かったギター・ソロが泣きまくり。特に21分06秒からのスライドでポジションをハイに移動する部分が絶品。まるで涙を拭うかのようなタメが、胸を締め付けるセンチメンタルなメロディと相まって最高の感動をもたらします。

もはや完璧。
もしiPhoneに3曲しか入れてはいけないという法律ができたとしても確実に入れます。名曲。

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BIG BIG TRAIN / English Electric (Part Two)

2013,UK

英国のプログレッシブ・ロック・バンド BIG BIG TRAINの8thアルバムEnglish Electric (Part Two)。

スリリングなパートとゆったりとした叙情パートの緩急がドラマティックな15分超の#1。後半、徐々に盛り上がる5拍子のリフレインが壮大なシンフォニック。美しいコーラスや甘美なストリングス、まろやかなブラス・セクションが英国らしい気品を湛えています。
柔らかな管が暖かく響く、センチメンタルな序盤から仄かな明るさを持つサビに移行する#2。
構築度の高いギター・ソロが印象に残る、GENESISの小品のような英国情緒を纏った#3。
どこかオリエンタルなムードに翳りを伴ったヒネリを加え、短い中にドラマを凝縮した#4。
バンジョーやフィドルによる軽快なフォークロア風味と叙情シンフォニックが融合した#5。
Part One 1曲目The First Rebreatherではボーカルやシンセによって奏でられたメロディを管弦の優しいタッチに趣を変えて挿入された#6。
静かなバラードからドマラティックに展開していく#7。アルバム2枚のラストを飾るに相応しい感動のリフレインが胸を熱くします。

前作のEnglish Electric (Part One)同様、蒸気機関車、造船業者、修道院の廃墟を保全する人、蝶の研究家など、近代~現代イギリスにまつわる実話や普通の人々をテーマにした楽曲で構成。管弦を導入した端正な音像と美しいメロディライン、ジェントルな歌唱から、それらの事象や人々にする優しい目線が感じられます。

Track List

1.East Coast Racer
2.Swan Hunter
3.Worked Out
4.Leopards
5.Keeper of Abbeys
6.The Permanent Way
7.Curator of Butterflies

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CATHEDRAL / The Last Spire

2013,UK

既に解散を表明していたCATHEDRALのラスト・アルバム。

嵐、カラスの鳴き声、鐘の音にノイズを加えた不気味極まりないオープニングSEの#1。
超スローなヘヴィ・リフをベースにしたドゥーム・メタルを軸に、女性コーラスや何とも煮え切らない微妙なアコギ・ソロなどの静、テンポアップしての躍動パートによる動を配したCATHEDRALらしい12分超の大作#2。
ギャズ・ジェニングス(G)が次々と繰り出すリフがリードするオーソドックスなCATHEDRALチューンの#3。突如現れるヴィブラフォンのパートが絶妙のアクセントに。
ハイハットのカウントに乗った単音リフのイントロが熱いミディアム・スローの#4。ディレイを掛けたサビがフックとなり印象に残る。
重遅ドゥーム・メタルに幽玄なアコギ・パートと躍動パートを挿入した9分超の#5。
重遅ドゥームにチェロを絡めた前半、適当に弾いているとしか思えないシンセに掠れたメロトロン、更には妖しい女性コーラスも絡む変態プログレ・チューンと化す後半からなる#6。この、まとまりは無いがやりたいことを目いっぱい放り込んだ感じが、懸命にオリジナリティを模索していた70年代B級バンドのようなムードで良い。
#8のイントロSE的な#7。
叙情アコギからのメロウなツイン・リード、儚げなメロトロンなどの静寂パートを挿入した#8。

弦を微妙にベンドしての音程の不安定感により不穏で禍々しい空気を醸成する、ギャズ・ジェニングスの引き摺るようなヘヴィ・リフとブライアン・ディクソン(Dr)の重いグルーヴがアルバム全体をリードし、最初期のようなドゥーム・メタル感が満載。
そこに、70年代ロック・マニアでもあるリー・ドリアン(Vo)の嗜好を反映した、ここ数作共通のアプローチである70年代グルーヴをブレンド。キャリアの集大成とも言える内容になっている。

Track List

1. Entrance to Hell
2. Pallbearer
3. Cathedral of the Damned
4. Tower of Silence
5. Infestation of Grey Death
6. An Observation
7. The Last Laugh
8. This Body, Thy Tomb

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カテゴリー: CATHEDRAL

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MOON SAFARI / Himlabacken vol.1

2013,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド MOON SAFARIの4thアルバムHimlabacken vol.1。

トレードマークのコーラス・ワークを活かしたコンパクトながら壮大でファンタジックな序曲#1。
MOON SAFARIがおそらく最も得意とするタイプの、変拍子入り爽快でキャッチーな実質オープニング・チューン#2。構築度の高いテクニカルなギター・ソロがカッコ良い。
QUEENのようなオペラティックなコーラス、何故かキダ・タローのプロポーズ大作戦のテーマを想起してしまったヒネリのあるパート、ダークなパートでのシンセやピアノの合いの手オブリガード、そして序盤は静かな4拍子で提示されたサビをドライブ感と高揚感溢れるアップテンポ3連のパートでリプライズする#3。フック満載で展開していく各パートや伏線からの解決がパーフェクト。エンディングをあっさり終わらせる潔さも何か清々しい感じ。
ヘヴィなリフと曇天のようなメロトロンがダークなムードを醸す序盤と対比するかのように歌唱パートはバラードのように甘い#4。スライド・ギターとELOのようなコーラスが感傷的なアクセントになっている。
静かな序盤からサビで一気にシンフォニックな広がりを見せるバラード#5。
ギター1本だけで歌う#6。幼い息子に対する父親の優しい目線が感じられるほのぼのとした小曲。
仄かに北欧フォークロアをまぶしたモチーフをキラキラしたピアノ、ギター、シンセなどで次々に提示する長めのイントロが既に名曲の#7。クラシカルなコード進行のサビやプログレ然とした器楽パートなどをコンパクトに内包させるアレンジも巧み。
じわじわと盛り上げるドラマティックな#8。3分半からはギターとシンセの絡むインスト・パートと爽やかに疾走する歌唱パートを配置。終盤のマイナー調パートが美しくも透明感があり、余韻を持たせてアルバムを締めくくります。

すっきりキャッチーなプログレを確立した前作やEPの流れを継続してファンの期待に応えつつ、往年のプログレを彷彿させる展開しまくり(ただしパーツはキャッチー)の#3で驚きをも提供。MOON SAFARIの代表曲となるであろう#3はアナログの時代ならA面ラストとかに配置するべき勝負曲のはずだが、あえてアルバム序盤のこのポジションに置くということは、他の曲にも自信があるからだろう。
まだまだアイディアには枯渇しないようだ。vol.1ということで続編にも期待大です。

Track List

1. Kids
2. Too Young To Say Goodbye
3. Mega Moon
4. Barfly
5. Red White Blues
6. My Little Man
7. Diamonds
8. Sugar Band

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