メロトロン のレビュー

KING CRIMSON / The Night Watch

1997,UK

Starless And Bible Blackの元ネタとなった1973年11月23日アムステルダムでのライブThe Night Watch。
BBCの放送用音源だったこともあり、長年ブートが出回っていた。

インプロビゼーションのDISC1 #6, DISC2 #1の他、Starless And Bible Blackではイントロのみ採用されたDISC1 #5のボーカル・パート以降の本来の姿が聴けるなど、資料的価値が高い。
後にデヴィッド・クロス(Vln/Key)がバンドを去る原因となったインプロビゼーションでの大音量もここでは適度に保たれており、徐々にクレイジーになっていくDISC2 #4でもノイジーなギターに対抗しヴァイオリンでアグレッシヴにプレイしています。
ロバート・フリップ(G/Mellotron)、ジョン・ウェットン(B/Vo)、ビル・ブラッフォード(Dr)、デヴィッド・クロスという最強メンツで演奏されるDISC2 #6も、ヴァイオリンがもたらす新鮮なフレイバーや抜群の呼吸でインプロビゼーション・パートを仕切るリズム・セクションなども興味深いものがあります。

Track List

Disc 1
1. Easy Money
2. Lament
3. Book of Saturday
4. Fracture
5. The Night Watch
6. Improvisation: Starless and Bible Black

Disc 2
1. Improvisation: Trio
2. Exiles
3. Improvisation: The Fright Watch
4. The Talking Drum
5. Larks' Tongues in Aspic (Part II)
6. 21st Century Schizoid Man

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SPOCK’S BEARD / The Kindness Of Strangers

1998,USA

アメリカのプログレッシブ・ロック・バンドSPOCK’S BEARDの3rdアルバムThe Kindness Of Strangers。

シンセストリングスとチェロによるスペイシーかつ厳かなイントロを配した#1。様々な音色のオルガンやギターで彩られたインスト・パートがやがて激しさを増し、アコースティック・ギターのカッティングからアメリカンなムードのチャッチーなボーカル・パートへ展開。メロトロンやチェロが絶妙に配置され、どこか郷愁を誘う歌メロを引き立てている。
奇妙なシンセ音による掛け合いで提示されたユーモラスなテーマが印象的な#2。メロトロンが入ってムードを変化させたりとコンパクトな中にもアイディアが詰め込まれています。
ウラから入るピアノのリフレインがトリッキーな#3。
アコギとコーラスワークで聴かせるフォーク・タッチのバラード#4。
メロトロンのクワイヤが唸る#5。ギターのオブリガードや足踏みオルガンのバッキングなど細部にもこだわりのアレンジが施されています。
プログレ然とした大仰なイントロ、ボーカルが入ってからの静かに浮遊するメロトロンがファンタジックな序盤、7拍子に乗って軽快に疾走する中盤、テンポを落として感動のフィナーレを迎えるエンディングと、ドラマティックな#6。
SPOCK’S BEARD節とも言えるミュージカルのような場面転換の連続で進行する#7。ユーモラスなテーマのリフレインで統一感を持たせると同時に、ハイライトとなるパートやクライマックスもキッチリ用意。彼らのソングライティング能力の高さを示す、3部構成15分超の大作。

長尺や小品問わず、ボーカル・パートはストレートにロックする場面が増え、キャッチーな歌メロとあいまってまさにアメリカンなシンフォニック・プログレを展開。
そんな中で、大量に使用されたメロトロンがもたらす深遠さがアメリカンな快活さの中にヨーロピアンな深みを与えています。

Track List

1. The Good Don't Last
I. Introduction
II. The Good Don't Last
III. The Radiant Is
2. In the Mouth of Madness
3. Cakewalk on Easy Street
4. June
5. Strange World
6. Harm's Way
7. Flow
I. True Believer
II. A Constant Flow of Sound
III. Into the Source

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WHITE WILLOW / Ex Tenebris

1998,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの2ndアルバムEx Tenebris。

12弦アコギのアルペジオにシンセが絡む穏やかでドリーミーなイントロで始まる#1。残念なのはボーカルインしてからのメロディとヘボな男性ボーカル。ボーカルの空間処理もさほどされていないので粗が目立つ。楽曲はその後、シンフォニックなインスト・パートに展開するだけに惜しい。
こちらも男性ボーカルがメインながら、繊細なアコギのアルペジオと美麗な女性ボーカルのハーモニーに救われた感のある#2。フルートのソロやメロトロンの優しい装飾も良い感じです。
アコギとピアノで紡ぐメランコリックなメロディが胸を打つイントロから厳かなオルガンのパートを経て、清廉なソプラノ女性ボーカルが登場する神秘的で美しい#3。テイストは違いますが、RENAISSANCEのSistersを連想しました。
美しい女性ボーカルとピアノで綴る静かなフォークに、屈折した不条理インスト・パートを内包した9分超の大作#4。
アコギと女性ボーカルで切々と展開するメランコリックなフォーク#5。
バスドラのビートがトライバルなムードを醸し出す、オルガンやブ厚いパッド系シンセによるインスト#6。
少々屈折したインスト・パートとドリーミーな美声ボーカル・パートが対比した#7。ダークな中間部ではメロトロンが大活躍。

普遍的な美しいメロディの比率が高まり、新歌姫シルヴィア・エリクセン(Vo)の柔らかく透明感のある美声や聴かせ所をはっきりさせたアレンジと相まってバンドがスケールアップ。
特に#2,#3,#5あたりのコンパクトな楽曲は印象的なメロディが多くクオリティが高い。
後は男性ボーカルをやめて、時に冗長になる無意味なインスト・パートが整理されればメジャー級なんですが…。

Track List

1. Leaving the House of Thanatos
2. The Book of Love
3. Soteriology
4. Helen and Simon Magus
5. Thirteen Days
6. A Strange Procession...
7. A Dance of Shadows

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FLOWER KINGS / Flower Power

1999,SWEDEN

FLOWER KINGSの1999年4thアルバムFlower Power。2枚組。

DISC 1冒頭から約60分の組曲#1で聴き手を圧倒。得意の5拍子によるスリリングなパートや心地良いメロディ、往年のプログレを彷彿させるオルガンの響き、エキゾチックな要素、そしてユーモア・・・この組曲だけで十二分にFLOWER KINGSを味わえる。
DISC 2はバラエティに富んでます。緊張感あふれる7拍子でのサビがカッコ良い、エキゾチック&ドラマティックな#1。
定番のエキゾチックでPOPな#2。
オルガンが牽引する7拍子のプログレッシブPOP、#3。
トマス・ボ-ディン(Key)のオルガンが荘厳にしてセンチメンタルな#4。
POPなサビとドラマティックなインスト・パートの融合が見事な#5。
ミステリアスな#6。
メロディと左Chのメロトロンが印象的で美しい#7。
プログレッシブ&ドラマティックなイントロから一転して美しいサビを持つ思索ナンバー#8。
大仰なイントロで幕を開け様々な要素を内包しながら展開していく#9。
ポジティブなムードでシンフォニックに締めくくる#10。
等々、全体的に上手くまとめた印象です。

Track List

DISC 1
1.Garden Of Dreams
2.Captain Capstan
3.IKEA By Night
4.Astral Dog

DISC 2
1.Deaf, Numb and Blind
2.Stupid Girl
3.Corruption
4.Power of Kindness
5.Psychedelic Postcard
6.Hudson River Sirens Call
7.Magic Pie
8.Painter
9.Calling Home
10.Afterlife

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ANEKDOTEN / From Within

1999,SWEDEN

スウェーデンの鬱系プログレANEKDOTENの1999年3rdアルバムFrom Within。

バンドが一体となってのヘヴィ・グルーヴで迫るインストゥルメンタル・パートとヴィブラフォンを効果的に使用したクールなボーカル・パートの対比がダイナミズムを生む#1。
メロトロンとギターによる重厚なユニゾン・リフが印象的な#2。
中間部での軋むギターがKING CRIMSONを彷彿させる#3。
ニクラス・ベルグ(G/Vo)とピーター・ノルディンス(Dr)がLANDBERKのメンバーと組んだ、ホラー映画のサントラを題材にしたプロジェクトMORTE MACABREのような不気味な迫力のメロトロンがのっけから全開の#4。ボーカル・パートはヴィブラフォンが神秘的なムードを付加し、陰鬱かつ静かに展開。不条理系メタリックなリフに不安感を煽るメロトロンが絡む#5。
リズムにトリッキーなトラップを仕込んだ暗鬱ギター・リフが淡々とリード、メロトロンがアクセントとなった#6。
コード=Aで延々展開するダークでクールなベース・リフ上をメロトロンやアンナ・ソフィ(Key)のチェロが不気味に浮遊するインストゥルメンタル#7。
叙情的なアコギのアルペジオをバックに儚く美しく紡がれた小品#8。

極北の暗く長い冬の夜を想起させる静かなダークネスの中に、炭火のような暖かさも感じさせるオーガニックなサウンド。
主に中音域で鳴らされるメロトロンがヘヴィなギターやベースと一体となり、独特のダークなうねりを醸成しています。

Track List

1. From within
2. Kiss of life
3. Groundbound
4. Hole
5. Slow fire
6. Firefly
7. The sun absolute
8. For someone

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TOMAS BODIN / An Ordinary Night In My Ordinary Life

1999,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンド FLOWER KINGSのキーボード奏者トマス・ボディンの1stソロ・アルバムAn Ordinary Night In My Ordinary Life。

FLOWER KINGSのメンバーが全面バック・アップ。
全曲インストながら、特にロイネ・ストルトのギターが絡む#3,#7あたりの叙情性は抜群。勿論主人公のトマスも全編にわたりハモンド、ローズ、メロトロン、シンセと大活躍。パワフルに、クラシカルに、アバンギャルドに、そして清楚に・・・音楽性も特に何と限定できないごった煮風ですがカラフルに楽しませてくれます。
FLOWER KINGSでもそうですが、この人の音色セレクトは見事の一言。微妙にヴィブラートした笛のようなシンセ等の作った音も素晴らしいし、楽曲ごとのテイストや場面に応じたサウンド・メイキングのセンスが秀逸で聴いていてハッとさせられます。
中には趣味に走った退屈なテクノ風楽曲やほとんどがFX(効果音)の曲もありますが、それすらアルバム通して聴くと場面転換の繋ぎのようにも感じられ、それはそれで良くできてるなぁーと変に感心したりして。
前述の#3,#7に加え、チャーチ・オルガンの荘厳な調べ#4、軽快なフュージョン#5、3部構成の組曲#10あたりが好きですね。
#10中間部のピアノが奏でるメロディとその後のレズリーかけまくりのハモンドをバックに泣きまくるロイネのギターときたら・・・それはもう絶品です。

Track List

1,Entering the Spacebike
2,Into the Dreamscape
3,The Ballerina From Far Beyond
4,Daddy in the Clouds
5,Speed Wizard
6,An Ordinary Nightmare in Poor Mr. Hope's Ordinary Life
7,In the Land of the Pumpkins
8,The Magic Rollercoaster
9,The Gathering
10,Three Stories

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カテゴリー: TOMAS BODIN

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FLOWER KINGS / Alive on Planet Earth

2000,SWEDEN

2000年発表の2枚組ライブAlive on Planet Earth。

DISC1は1998年の北米ツアー、DISC2は1999年の日本公演を収録。
DISC1では正式メンバーのトマス・ボーディン(Key)の代打でロバート・エングストランドがプレイ。微妙なシンセのポルタメント感が違うので名曲#1のイントロに若干の違和感も。突き抜け感が微量だが少ないんですよ。
それはともかく初期の代表曲がセレクトされており、満足です。
GENESISのカヴァー#5は面白いですが、カヴァー入れるなら他にもっとライブで聴きたいオリジナル曲があるのになー。この辺りの評価は人それぞれでしょうか。

トマス・ボーディンのダーティなオルガンが活躍するDISC2は圧巻。
特にDISC2の#4はライブ向きの良い曲ですね。それに何と言ってもロイネ・ストルト(G/Vo)のギター・トーンが素晴らしい。官能的なトーンによるインプロビゼーションが生々しく味わえるのはライブならではです。

Track List

DISC 1
1. There Is More to This World
2. Church of Your Heart
3. Judas Kiss
4. Nothing New Under the Sun
5. Lamb Lies Down on Broadway

DISC 2
1. Big Puzzle
2. Sounds of Violence
3. Three Stories
4. In the Eyes of the World
5. Flower King
6. Stardust We Are, Pt. 3

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SPIRITUAL BEGGARS / Ad Astra

2000,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いる70年代ロックのグルーヴとフレイヴァーを持ったスウェーデンのバンドSPIRITUAL BEGGARSの2000年4th。

本作よりペル・ヴィバリ(Key)がメンバーとして正式にクレジットされており、オールド・スクールなオルガン・サウンドを中心にフェンダー・ローズ、メロトロンなども駆使し、リフ、バッキング、ソロと全編で活躍しております。ギターとオルガンによるグルーヴィなリフで早くも独特の音世界に引きずり込む#1。現代的ブルーズ・ロックをベースに、ギター・ソロではマイケルの官能的なフレーズを聴かせる#2。性急なリフから一転し、ユニークなコードを使ったバッキングが新鮮な#3。轟音リフとメロウなアルペジオ&コーラス・パートのコントラストにハッとする#4。ヘヴィなリフとクラシックHRのテイストが融合した#5。空間を活かしたリフからのメロディアスな展開が秀逸な#6。グルーヴィなシャッフルをベースにTHIN LIZZY風なギターのオブリガードがニヤリとさせる#7。ディレイを使用したSEによるトリップ感と広がりのあるサビでスケールの大きさを感じさせるミディアム・テンポの#8。BLACK SABBATH風なうねるリフを持ちながらも、カラフルかつキャッチーに展開する#9。ルディック・ヴィット(Dr)の叩き出す様々なビートがリードする#10。サビのハンド・クラップも良い感じです。バンドが一体となって音塊をぶつけ、ハード・ロックの醍醐味を体現した#11。トレモロを効かせたローズでメロウに進行しオルガンやメロトロンで陰影を加えた前半から、ブ厚いリフの登場と共にギター・ソロとオルガン・ソロをフィーチャーしドラマティックな盛り上がりを見せる#12。ギターのエッジが立った現代的なサウンドで、クラシック・ロックのテイストを巧く消化した独自のハード・ロックが楽しめます。

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TRANSATLANTIC / SMPTe

2000,USA/UK/SWEDEN

ニール・モーズ(Key/Vo SPOCK’S BEARD)、ロイネ・ストルト(G/Vo FLOWER KINGS)、ピート・トレワヴァス(B/Vo MARILLION)、マイク・ポートノイ(Dr/Vo DREAM THEATER)によるプログレ・プロジェクトTRANSATLANTICの1st。
アルバム・タイトルのSMPTeは、メンバーのイニシャルを映像・音響機器で使用される同期信号に巧く引っ掛けたもの。
果たしてこの4人の同期具合はというと・・・

いきなり30分超の#1、メロディアスなバラード#2、変態捻くれプログレ#3は、ニール・モーズ主導で書かれた楽曲。とはいえ長尺の#1はロイネのアイディアも随所に感じられ、捻った劇的展開が持ち味のSPOCK’S BEARDと爽快に突き抜けるシンフォニックなFLOWER KINGSのテイストが巧く融合した感じで、ワクワクさせるスケールの大きなエピック・チューンに仕上がってます。
冒頭のストリングスが印象的な#4は、まさにロイネ節のメロディック・チューン。本家よりもこういったプロジェクトで往年の独特な歌唱とギター・プレイを聴かせる、近年のロイネの典型パターンですね。中盤でシンフォニックに盛り上がる部分の桃源郷っぷりはFLOWER KINGS以上かも。
PROCOL HARUMのカヴァー#5は割と原曲に忠実ながらも、元々こういった場面転換のある楽曲はSPOCK’S BEARDの得意なテイストなので違和感無いですね。ロイネのネバっこい歌唱とギター・プレイやPROCOL HARUMっぽいオルガン・パートで一部7拍子にアレンジしちゃったり、マイクのドラムが叩き捲くったりと楽しそうに料理してます。

忙しい人達がスケジュールの折り合いを付けて短時間で制作したものなので、バンドTRANSATLANTICとしての個性は希薄ですが、演奏はテクニック・フィーリング共に超一流だし、「おっSPOCK’S BEARDっぽいな」とか「ここってモロにFLOWER KINGSだな」、とか思いながら理屈抜きに楽しめば良いんじゃないでしょうか。

Track List

1. All of the Above
i)Full Moon Rising
ii)October Winds
iii)Camouflaged in Blue
iv)Half Alive
v)Undying Love
vi)Full Moon Reprise
2. We All Need Some Light
3. Mystery Train
4. My New World
5. In Held ('Twas) In I

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WHITE WILLOW / Sacrament

2000,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・フォーク・バンドWHITE WILLOWの3rdアルバムSacrament。

シルヴィア・エリクセン(Vo)のソプラノ女性ボーカルを軸にした清廉で神秘的なフォークの前半から、ダークな情念を帯びたインスト・パート中心の後半に移行するプログレッシブ・フォーク#1。
可憐なボーカルでキャッチーなメロディを綴るフォークだが、ピアノが提示したメイン・メロディをシンセが継承するイントロや中間部のシンセによるスペイシーな表現など、インスト・パートにも印象的なフックが配置された#2。
アコギ、フルート、リコーダーが織り成すクラシカルなタッチのパートを前半に配し、吹き散らしフルートを合図にアナログ・シンセのソロをフィーチュアしたダークな7拍子のプログレ・パートに展開するインストゥルメンタル#3。
アコギのアルペジオをバックに男女ボーカルのデュエットを聴かせる、素朴で温かい感じのフォーク#4。
メロトロンと翳りを帯びたメロディで暗い側面を演出した中間パートを内包した、ハートフルな優しいフォーク#5。
くすんだエレピのバッキングが楽曲に沈鬱な影を落とす静かなパートと、7拍子で繰り広げられるフルートやシンセが絡み合うミステリアスなパートを対比させ、ダイナミズムを生み出す#6。

煮え切らないアレンジからの脱却と素人臭い男性ボーカルを排除したことにより、普遍的な良質メロディ導入でメジャー感の出てきた前作からさらに一段と垢抜けた印象に。時折見られる屈折した不条理感はもはや個性へと昇華され、#5,#6など10分超の大作でのドラマティックな構成に上手に溶け込ませています。

Track List

1. Anamnesis
2. Paper Moon
3. The Crucible
4. The Last Rose of Summer
5. Gnostalgia
6. The Reach

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KAIPA / Notes from the Past

2002,SWEDEN

KAIPAの2002年復活作。通算7thアルバムNotes from the Past。
一応バンド名義ながら、実質はオリジナル・メンバーであるハンス・ルンディン(Key)を中心としたロイネ・ストルト(G)とのプロジェクトで、全曲をハンスが書いてます。その他は専任Vo含めゲスト扱い。
キ-ボードによるユートピアのようなシンフォニック・サウンドに北欧フォークロア風味の捻ったメロディが絡む様は往年のKAIPAそのものだし、何と言っても盟友ロイネによる酸いも甘いも噛み分けた円熟のプレイが光ってます。フレージングが醸し出す感情移入の度合いが、ややもすると自分のバンドFLOWER KINGSの同時期作品以上かも?と思えるほど熱いです。
新機軸として、プログレッシブ・バラードの#9でAleena Gibsonなる女性シンガーによるエモーショナルな歌唱もフィーチュアされてます。

ハモンド・オルガンやメロトロンによるくすんだ往年の味わいも残しつつ、デジタル・シンセによってアップデートされたクリアなサウンドでまとめた新世紀KAIPAの出発作です。

Track List

1.Notes From The Past - Part I
2.Night Bike-Ride (On Lilac Street)
3.Mirrors Of Yesterday
4.Leaving The Horizon
5.In The Space Of A Twinkle
6.Folke's Final Decision
7.The Name Belongs To You
8.Second Journey Inside The Green Glass
9.A Road In My Mind
10.Morganism
11.Notes From The Past - Part II

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SPIRITUAL BEGGARS / On Fire

2002,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いるスウェーデンのハード・ロック・バンドSPIRITUAL BEGGARSの2002年5th。

脱退したスパイス(Vo/B)の後任にGRAND MAGUSのJB(Vo)とTHE QUILLのロジャー・ニルソン(B)が加入。又、本作よりペル・ヴィバリ(Key)がメンバーとして正式にクレジットされており、オールド・スクールなオルガン・サウンドを中心にフェンダー・ローズ、メロトロンなども駆使し、リフ、バッキング、ソロと全編で活躍しております。不穏なサイレンのSEからダーティなオルガンが唸りを上げる爆裂ハード・ロックン・ロールに突入する#1。早くもJBのパワフルな歌唱がバンド・サウンドに完璧にフィットしております。超ヘヴィ・リフによるドゥームなイントロから、ザクザクした刻みのギターとオルガンがバックを固めるブルーズ・ベースのヘヴィ・ロックに展開する#2。ギターとオルガンによるキャッチーなリフを持つオールド・スクールなメロディアス・ハード・ロック#3。サウンドのスキ間を活かしたルディック・ヴィット(Dr)のドラミングが印象的です。ミディアム・テンポの中に様々なリズム・パターンを織り交ぜ、サビではメランコリックな表情を見せる#4。JBのディープでセクシーな歌唱がデイヴィッド・カヴァデールを彷彿させます。冒頭にモーグのスペイシーなソロを配したエピック・チューン#5。スケールの大きなリフは、ライブではオーディエンスによる「Oh~Ohhh~」で再現されるパターンですね、これは。間髪置かずに始まるBLACK SABBATH風のソリッドでコンパクトなリフがカッコ良い#6。SEとメロトロン、クリーンなギターが織り成すムーディなインストゥルメンタル小品#7。シンコペーションの単音リフがRAINBOWっぽい#8。ビッグな縦ノリのリフに思わずヘッド・バンギングしたくなる#9。ギターとオルガンの熱いバトルも聴き所です。アコギとパーカッションをバックにマイルドなシンセが浮遊するイントロの70年代っぽさと、ヘヴィなリフに雪崩れ込んでからのクールな展開が痺れる#10。マイケルのタメにタメたブルージーなフレージング、絶妙なトーン・コントロールによる感情表現が見事なソロ。そしてそれに続くペルのオルガン・ソロがまた良い感じのフィーリング。JBの歌唱を活かした哀愁のサビを持つハード・ロック#11。ワウを絡めて泣きまくるマイケルのソロがナイスです。随所でニヤリとさせる70年代クラシック・ロックのテイストを、現代的ヘヴィネスとの融合でアップデートしたハード・ロックの名盤です。

Track List

1. Street Fighting Saviours
2. Young Man, Old Soul
3. Killing Time
4. Fools Gold
5. Black Feathers
6. Beneath the Skin
7. Fejee Mermaid
8. Dance of the Dragon King
9. Tall Tales
10. The Lunatic Fringe
11. Look Back

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PAATOS / Timeloss

2002,SWEDEN

スウェーデンの鬱系アンビエント・プログレPAATOSの1stアルバムTimeloss。

メロディアスな女性ボーカルを中心に、KING CRIMSONのような静謐な詩情、現代的なアンビエント感、ジャジーなムード、サイケなテイストが渾然一体となった独特のサウンドが確立されてます。

オシャレなジャズかな?と思ったのもつかの間、ギターのカッティングからロック・モードに突入。叩きまくるロックなドラムがカッコいい#1。ギターとオルガンのトーンやフレーズがサイケなフィーリングも醸し出しておりナイスです。
#2は各パートの抑えた演奏とウィスパー気味のボーカルが暗鬱ながらも心温まるサウンドを醸成してます。枯れたGと影のようなメロトロン 、ゲストのフルートが良い。終盤はメロトロンを中心に大盛り上がり。
そして、Petronella(Vo)、Huxflux(Dr)夫妻の子供さんの名前を冠した#3は、スウェーデン語で切々と歌う静かでクールな前半と後半は激情メロトロン&スキャットに失神寸前の代表曲。
うっすらとしたメロトロン 、オフマイク気味のもやもやしたパーカッションに乗るウィスパー・ボーカルが心に染み渡る#4。
打ち込みエレクトロニック・ビートとオーガニックな熟練ミュージシャンのプレイが見事に融合した実験的な#5、
とデビュー作にして充実の内容。それもそのはず、中心メンバーのReine Fiske(G)、Stefan Dimle(B)の2人はスウェーデンの暗鬱土着プログレLANDBERKの元メンバー。

Track List

1.Sensor
2.Hypnotique
3.Téa
4.They Are Beautiful
5.Quits

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OPETH / Damnation

2003,SWEDEN

ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・デス・メタル・バンドOPETHの7thアルバムDamnation。

グロウル/デス・ヴォイス、ディストーション・ギター、ツーバス連打、といったヘヴィ・メタリックな要素を一切排し、OPETHの楽曲のそこかしこに散在するメロウな要素にフォーカス。いつも通りでヘヴィな前作Deliveranceと対になった作品。PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンが、引き続きプロデュース及びピアノ/エレピ/メロトロンといった鍵盤関係とバッキング・ボーカルでも貢献しております。

6/8拍子から4/4拍子への自然な変化で緩急を無理無く表現した#1。ミカエル曰く「色々とパクった(笑)」という中期KING CRIMSON風暗黒不条理リフレインから一転しての、むせび泣くギター・ソロへの展開が秀逸です。
イコライジングを施したようなダークで無機的な序盤から、メロトロンの洪水と共にエモーショナルにクサメロを歌い上げるサビに展開する#2。
ミステリアスなムードの#3。
奇妙な音使いのアコギによるカッティングとエレキによる単音リフ、パーカッションをバックに繰り広げられるエキゾチックかつ悪夢のようなパートがLED ZEPPELINのFriendsを想起させる#4。
不安感を煽りつつも何故か心地良い#4終盤の悪夢パートが急に途切れてクリーンなアルペジオが登場するメロウな#5、とドラマティックなアルバム構成にもぬかり無し。
メロトロンの幽玄な響きにミカエルのクリーン・ヴォイスが溶け込む暗鬱メロウ・チューン#6。
どことなく演歌っぽい(?)泣きメロを、マイルドなトーンのエレキで奏でるインストゥルメンタル#7。
スティーヴン・ウィルソンからの薫陶が明らかな、モジュレーションを掛けたエレピがミステリアスでトリップ感を誘う静謐な#8。

ある種の制約の中でどこまでOPETHらしい起伏ある楽曲展開が表現できるか、という凡人の杞憂を軽く吹き飛ばすがごとくミカエルの才能とセンスが爆発。いつもながら感心してしまう、ミカエルのクリーン・ヴォイスによる素晴らしい歌唱と歌心溢れるギター・ソロも大いに堪能できます。
素敵なジャケット・アートは勿論トラヴィス・スミス。

Track List

1. Windowpane
2. In My Time of Need
3. Death Whispered a Lullaby
4. Closure
5. Hope Leaves
6. To Rid the Disease
7. Ending Credits
8. Weakness

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SPIRITUAL BEGGARS / Demons

2004,SWEDEN

マイケル・アモット(G)率いるスウェーデンのハード・ロック・バンドSPIRITUAL BEGGARSの2004年6th。

脱退したロジャー・ニルソン(B)に代わりARCH ENEMYでマイケルと同僚のシャーリー・ダンジェロ(B)が加入。しかし既に、マイケルのリフ・センスと泣きのギター、ルディック・ヴィット(Dr)の”メロディアス”なドラム、JB(Vo)の猛々しくも巧いボーカル、ペル・ヴィバリ(Key)のヴィンテージ・キーボードが醸成するバンドとしてのフレーヴァーは確立されており、本アルバムで打ち出された強力な楽曲群のベクトルにはいささかのブレもありません。重厚なオープニング#1に続き、スローな叙情パートを織り交ぜアップテンポで飛ばす#2。豪快なリフを軸とワウを絡めたメロディアスなソロを聴かせる#3。歯切れ良いキャッチーなギター・リフと底辺を支えるベースのラインが融合して独特なグルーヴを生み出す#4。JBの深みある歌唱がダーティなオルガンに乗るブルージーな序盤から3連のグルーヴがTHIN LIZZYを彷彿させる後半へと展開する#5。シンプルなブルーズ・ベースのヘヴィ・ロックにメランコリックなムードを加えた#6。ワウとコード・ヴォイシングがジミヘン風なリフがリードしつつサビがメロディアスで印象的な#7。緊張感あるリフをアクセントにボーカル・パートではブルージーに展開する#8。#8のテーマ・メロディを軸にピアノやメロトロンで清廉かつ静かに、何となくアジアン・テイストなムードでリプライズした#9。B♭の重低音キーでアルバム随一のヘヴィで邪悪なリフがのたうつ#10。ユニークなリフと試走するボーカル・パートの起伏が面白い#11。歪んだエレピのソロをフィーチュアした、躍動するパートとメロウに聴かせるパートを持つ3連リズムの#12。厳かな中にもダーティに歪んだオルガンの白玉をバックに、JBのマイルドで深みのある歌唱がドラマティックなメロディを紡ぐ#13。70年代ハード・ロック・バンド達のリフやフレーズそのものを拝借するのでは無く、あくまでもオリジナルでいながら上手に先達が漂わせていたムードとかグルーヴを滲み出させるセンスが素晴らしいです。

Track List

1. Inner Strength
2. Throwing Your Life Away
3. Salt in Your Wounds
4. One Man Army
5. Through the Halls
6. Treading Water
7. Dying Every Day
8. Born to Die
9. Born to Die (Reprise)
10. In My Blood
11. Elusive
12. Sleeping with One Eye Open
13. No One Heard

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WHITE WILLOW / Storm Season

2004,NORWAY

ノルウェーの鬱系プログレッシブ・ロック・バンドWHITE WILLOWの2004年4th。

シルヴィア・エリクセン(Vo)嬢の可憐な女性ボーカルをメロトロン、ハモンド、モーグ、フェンダー・ローズ、ウーリッツァーといったヴィンテージ・キーボードやフルート、チェロといったアコースティック楽器が織り成す暗黒グルーヴによって包み込むメランコリックなサウンド。ヘヴィに迫る場面ではゴシック・メタルのようなムードも感じさせます。デジタル・シンセも効果的に使用されており、アコースティック楽器と絶妙のマッチングを見せています。木漏れ日フォークのような序盤から優しい歌唱をフィーチュアした#3。ディストーション・ギターとハモンドのリフに導かれヘヴィに展開する暗黒シンフォ#4。グロッケンがミステリアスなムードを醸し出すプログレッシブ暗黒チューン#5。7拍子に乗るオルガン・ソロやモーグによるシンセ・ソロを含むヘヴィな#7。等々、どれも暗鬱な静寂パートや屈折したインストパートが用意されており一筋縄ではいきません。

Track List

1. Chemical Sunset
2. Sally Left
3. Endless Science
4. Soulburn
5. Insomnia
6. Storm Season
7. Nightside of Eden

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PAATOS / Kallocain

2004,SWEDEN

スウェーデンの鬱系メランコリック・プログレPAATOSの2ndアルバムKallocain。

オリジナルメンバーで元LANDBERKのReine Fiskeが脱退し、Peter Nylander(G)が加入。レーベル(INSIDEOUT) ・メイトのスティーヴン・ウィルソンPORCUPINE TREE)がミックスを担当しています。

衝撃のヴァイオリン・ソロから7拍子中近東風リフが淡々と繰り返され、サビで爆発する緊張感抜群なオープニング・チューンの#1。
一転して、モーダルなチェロが印象的でサビ・メロとコーラスが胸に染み入る#2。
無機質な打ち込みビートにPetronella Nettermalm(Vo)のウィスパー・ヴォイスによる美メロが乗る、もの悲しくも爽やかで清涼感のある#3。サビの変拍子とメロトロンによる味付けが効いています。
ラジオ風エフェクトをかけたボーカルが生声になる瞬間がトリ肌の静かな#4。この曲も中盤以降のメロトロンが効いてます。
さりげなく自然で優しい7拍子の#5は、ボーカル・メロディやコーラス、中間部の展開も完璧で美しさの中に溶けて行きそうです。
絶望的な暗鬱感漂うイントロ~中間部から一転、後半にかけての場面転換で一瞬一筋の光が射したと思いきや超哀メロで畳み掛ける後半で涙する#6。でも、なんか暖かいんですよね。
続くジャジーな雰囲気の暗鬱バラード#7は切ないボーカル・メロディとサビが美しすぎます。後半にかけては超ド級の哀しいメロトロンが涙腺を攻撃。もう反則です。
3拍子系のリフ(エレピが良い!)から4拍子に入る定番なトリッキー・テクの罠にはまってハッとさせた後はエキゾティックなメロディから段々盛り上がり、哀メロのサビでメロトロンと一緒に泣ける#8。
ラストは何層も重ねた霧のようなボーカル・ハーモニーを中心に切々と紡がれるエンディングにピッタリな雰囲気の#9で締めています。

ジャズをも咀嚼したセンス抜群のミュージシャン達が紡ぐ、女性ボーカル、メロトロン、叙情メロディーをフィーチュアした現代的プログレの大推薦盤です。

Track List

1. Gasoline
2. Holding On
3. Happiness
4. Absinth Minded
5. Look At Us
6. Realty
7. Stream
8. Won't Be Coming Back
9. In Time

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RETROHEADS / Retrospective

2004,NORWAY

ノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンドRETROHEADSの1stアルバムRetrospective。

NASAの交信音SEに覆いかぶさる叙情的なメロトロン・ストリングスのイントロがプログ・ファンの心を鷲掴みにするオープニングナンバー#1。さらにメロトロン・フルートのレトロな音色によるアルペジオへと続き、男女混声ボーカルの優しく穏やかな歌メロパート、変拍子歌メロ、少々ダークなパート、スリルとトリップ感を味わえるスペイシーなインスト・パートなどめくるめく展開しのっけから度肝を抜きます。
一転して#2は爽やかなアコギ・リフのイントロがポップなナンバー。叙情的なボーカル・パートに続くインスト・パートではマイルドなヴィンテージ・シンセ・ソロをフィーチュア。
ミステリアスなムードの中、洒落た女声パートや女声スキャットのフックがカッコ良く決まる#2。中間部はフリーフォームな女声スキャットとサスティンの効いたスライド・ギターを配したPINK FLOYD風トリップ・パート。
イントロの繊細なピアノとジェントルな男声ボーカルでバラード・ナンバーかと思いきや、ジャジーな女声コーラスやメロトンをバックにしたモーグの滑らかなソロなどを盛り込み落ち着いたAOR風ナンバーに仕上げた#4。
ヴィンテージ・キーボード群が活躍する温かみのあるスペイシーなパートと変拍子ジャズ・ロックのインスト・パート、コンテンポラリー・ポップなボーカル・パートから成る#5。終盤はシンセの叙情シンフォニックで締める。
メランコリックなボーカル・パートを主軸に、その叙情をさらに盛り上げるメロトロン・クワイヤ、メロトロン・ストリングスが印象的な#6。
捻った7拍子不条理リフやキメの多いリズムに乗ったスリリングなヴァースからポップなサビに移行する#7。メロトロン・クワイヤをバックにしたギター・ソロの泣き具合も絶品。
美しく透明感溢れるバラードの序盤から、数種類のメロトロン・サウンドなどプログレ度が高いインスト・パートを含むプログレ・チューンに発展する#8。
全体的なポジティブ・ムードとどこか北欧的なメロディがFLOWER KINGSを想起させるプログレッシブ・インストゥルメンタル・チューン#9。

TVやラジオのCM音楽などを手掛けるトーレ・ボ・ベンディクセン(Vo/Key/G/B)が中心となり、メロトロン、ハモンドB3、アープシンセ、ミニモーグなど、ヴィンテージ・キーボードを使用しながら、音楽的にはジャズやポップの要素を盛り込んだ独自のコンテンポラリーなプログレッシブ・ロックを展開。
特に、随所で決まる洒落たジャジィな女声コーラスやスキャットが、他の70年代回顧バンドとの違いを明確にしている。

楽曲は良く言えば変幻自在、悪く言えばやりっ放し。曲の最初に提示したテーマを終盤にリプライズするようなありがちな展開が無く最初は戸惑うが、慣れればその整合感ギリギリの展開が快感になります。

Track List

1. Earthsong
2. Man
3. Judgement Day
4. Dreams
5. World Reveal
6. Starry Night
7. Urban Flight Delight
8. Taking my Time
9. The Fool

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MOON SAFARI / A Doorway To Summer

2005,SWEDEN

スウェーデンのポップなプログレッシブ・ロック・バンド MOON SAFARIの1stアルバム A Doorway To Summer。

プロデューサーは同郷のプログレッシブ・ロック・バンド FLOWER KINGSの鍵盤奏者トマス・ボーディン。

オープニングのピアノとアコギに絡むハーモニカが甘酸っぱい印象の#1。メロトロンやまろやかなシンセもオーガニックなサウンドに溶け合ってロマンティックなムードを醸成。終盤の転調7拍子インスト・パートでは一転してテクニカルなシンセ・ソロも聴かせ、プログレな出自も垣間見せます。
5拍子をここまでポップかつキャッチーに演奏してしまうのか!と驚愕のフォーク風プログレ・ナンバー#2。このあたりはFLOWER KINGSの影響もかなり受けている模様。シンセとギターの一糸乱れぬユニゾン・パートなど器楽的な聴き所も満載。
キャッチーな歌メロを中心としたバラード・ナンバー#3。インスト・パートではいくつものテーマ・メロディを様々に変奏し、楽曲の印象度を高める老獪なアレンジが秀逸。
長尺24分超の#4では5拍子をそれと感じさせない自然なアレンジ力と起伏に富んだ構成力も見せつつ、透明感あるアコギやヴィンテージ・シンセの滑らかなトーン、メロトロン・フルートなど音色選びのセンスも感じさせます。
歌うようにメロディアスなピアノの独奏を冒頭に配した、メロウな#5。

親しみやすい普遍的な良質メロディ、コーラスやシンプルな楽器音による暖かみのあるサウンド、確かな演奏技術、これらが高次元で融合したシンフォニック・ロックを展開。聴き終わった後にポジティブな印象を残す爽やかなアルバム。

Track List

1. Doorway
2. Dance Across the Ocean
3. A Sun of Your Own
4. We Spin the World
5. Beyond the Door

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OPETH / Ghost Reveries

2005,SWEDEN

OPETHの2005年8thアルバムGhost Reveries。

前作・前々作は自らの可能性の限界に挑戦するという実験的意味合いもあったのだろう。わざと制約を設ける中で持ち味のブルータルなアグレッションやメロウ・サイドの各々にさらに磨きをかけることに成功した彼らがそれらを全て混ぜ合わせて再構築することによって、既に完成の域にあった音楽性のさらなるステップ・アップを実現させている。
新たに正式参加したSPIRITUAL BEGGARSでお馴染みペル・ヴィヴァリ(Key)によるハモンド/エレピ/メロトロンが彩りを加え、もはや他者の追随を許さない孤高の域に達した感がある。

#1は21世紀最高のプログレッシブ・メタル楽曲だと言い切ってしまいくらい完成度が高い、OPETHの魅力が最高レベルで発揮された名曲。

Track List

1. Ghost of perdition
2. The baying of the hounds
3. Beneath the mire
4. Atonement
5. Reverie/Harlequin forest
6. Hours of wealth
7. The grand conjuration
8. Isolation years

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