PORCUPINE TREE のレビュー

PORCUPINE TREE / The Incident

2009,UK

スティーヴン・ウィルソン(G/Vo)率いる英国のプログレッシブ・ロック・バンドPORCUPINE TREEの10thアルバムは2枚組のThe Incident。

ディスク1は、コンセプト・アルバムでは無いものの、フィクションを含めスティーヴン・ウィルソン自身や世の中で起こっている様々な「出来事」をテーマにした14の組曲。
以前同様静動の対比が生み出すレンジの広さがある種の聴き所であるのに加え、今回は轟音リフのヘヴィネスとフォーキーなアコギのカッティング、パワフルな生身ビートとエレクトロニックな無機質ビート、といった相反する要素が小曲単位で巧みに配され、各曲が切れ目無く繋がっていることも相まって、14曲を一気に聴かせる手腕がますます冴え渡っています。
歌メロが一貫して不思議なねじれ感を持った独特の暗くクールなテイストで紡がれており、「出来事」を受け入れるしかない不条理な様を表現しているようでもあります。
ハイライトは11分超の#9。アコギのカッティングをメインのモチーフとしながら、中間部ではダークなギターのアルペジオにフィードバック寸前のギターのロングトーンがうねるスペイシーな思索/トリップ・パートを配した得意のパターン。カッティングにボーカルが被さる部分が、プロデュースなどで交流のあるOPETHの雰囲気に何となく似ているのが興味深い所。
そして再び#1のリフが登場する#10と来て、メロトロンも交え暗い叙情で余韻を残して締める#14、というトータルの構築性も見事。

ディスク2も単なるアウトテイクに終わるはずも無く、ゆったりしたモダン・サイケな#1、ギター・リフのヘヴィネスやローファイ・エフェクトの使用などアイディアが盛り沢山の#2、くすんだエレピがリードする浮遊ポップ・ナンバー#3、心地良いキャッチーな歌メロ・パートとヘヴィなパートを対比させた#4など、ディスク1とは全く異なるムードでいながらそれぞれ個性的な楽曲に纏め上げています。

スティーヴン・ウィルソンの底知れぬ才能と創造性を見せ付けた充実作です。

Track List

DISC 1
1. Occam's Razor
2. The Blind House
3. Great Expectations
4. Kneel and Disconnect
5. Drawing the Line
6. The Incident
7. Your Unpleasant Family
8. The Yellow Windows of the Evening Train
9. Time Flies
10. Degree Zero of Liberty
11. Octane Twisted
12. The Seance
13. Circle of Manias
14. I Drive the Hearse

DISC 2
1. Flicker
2. Bonnie the Cat
3. Black Dahlia
4. Remember Me Lover

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カテゴリー: PORCUPINE TREE

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