トラヴィス・スミス のレビュー

OPETH / Still Life

1999,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・デス・ゴシック・メタルバンドOPETHの1999年4thアルバムStill Life。

バンドのブレイン ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)はもう天才と言っていいでしょう。パワフルかつ無慈悲なデス・ヴォイスと70年代英国ロック風なクリーン・ヴォイスの使い分け、リリカルでいて時に不気味で奇妙な旋律を奏でるアコギ、確かなテクニックに支えられたツボを得たメロディアスなギター・ソロと独自の個性的なディストーション・リフを吐き出すエレキ・ギター。これら清濁/静動の対比が複雑な曲展開と相まって自在に配されており、唯一無二の個性を完成させています。
各曲に必ず必殺の叙情テーマ・メロディが用意されており、時には歌唱、時にはギターでと表現手段を変えながら長尺曲の随所に完璧に配置され緊張感を持続させると共に、楽曲のアイデンティティを明確にする効果ももたらしています。基本はデス・メタルかもしれませんが、アコギ主体のフォーク #3での神秘的な叙情性をはじめ、楽曲の構築性など全体に流れるムードは70年代っぽいんです。素敵なジャケは勿論トラヴィス・スミスによるもの。

Track List

1. Moor
2. Godhead's Lament
3. Benighted
4. Moonlapse Vertigo
5. Face of Melinda
6. Serenity Painted Death
7. White Cluster

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OPETH / Black Water Park

2001,SWEDEN

OPETHの2001年5thアルバムBlack Water Park。

前作Still Lifeを非常に気に入ったという英国のプログレ・マニア PORCUPINE TREEのスティーブン・ウィルソンがプロデュースしてます。
不条理変態リフと叙情アコギ、そして#2のコーラス部に代表される英国的な雰囲気すら漂わせる歌メロ。全てが計算されつくされつつ複雑に構築されているので何回聴いても飽きないし、その都度新たな発見があります。
メロディの扇情度は歴代OPETH作品の中で一番かも。
2008年の初単独来日公演ではアンコールでプレイされた名曲#4のイントロは美しさとトリップ感を併せ持つ新感覚メロディだし。
12分の叙事詩的大作であるタイトル曲#8も長尺を感じさせない巧みな構成がカッコ良くて最高。
禍々しいリフ、清廉なアコギ等OPETHの魅力がバランス良く満載された名盤です。

Track List

1. Leper Affinity
2. Bleak
3. Harvest
4. Drapery Falls
5. Dirge for November
6. Funeral Portrait
7. Patterns in the Ivy
8. Blackwater Park

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OPETH / Deliverance

2002,SWEDEN

ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・デス・メタル・バンドOPETHの6thアルバムDeliverance。
前作Blackwater Parkに続き、PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンがプロデュース。

ディストーション・ギターの轟音で奏でられるメロディの深遠なメロウネスが新鮮な#1。
ツーバス連打の激烈リフ、グロウル・ヴォイス、ノーマル・ヴォイスによる7拍子のメロウなパート、など、次々に展開していく#2。
アコースティカルな装いの鬱で静かな叙情と、ヘヴィなパートでのクールにたぎる激情が共存した#3。
アコギとマイルドなエレキで綴った寂寥感漂うインストゥルメンタル#4。
威厳すら感じさせる禍々しいリフがリードする暗黒ヘヴィネスに、リズムのトリックや複雑な音使いの不条理リフを経たフォーキーな安息を挿入した#5。
デス・ヴォイスが咆哮をあげるエクストリームなパートとアコギの深遠なパートが対比する#6。歌心を感じさせるスムーズなギターのフレージングも見逃せません。

静動・美醜・硬軟、といった様々な要素を具現化した音楽的アイディアが散りばめられた作風は相変わらずですが、それら高品位な各パーツがますますカッコ良く、あるいはミステリアス/叙情的な魅力を増しています。
さらにOPETHが驚異なのは、並のバンドなら1曲できそうなそういった魅力的アイディアが、惜しげも無く1曲の中にいくつも贅沢にブチ込まれているところ。割とやりっ放しで、伏線を張ってテーマに戻るといった構築性に乏しいところもありますが、それこそが個性と言わんばかりにアイディアを泉のごとく放出するミカエル・オーカーフェルトの才能に畏怖すら覚えます。

Track List

1. Wreath
2. Deliverance
3. A Fair Judgement
4. For Absent Friends
5. Master's Apprentices
6. By The Pain I See In Others

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OPETH / Damnation

2003,SWEDEN

ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)率いるスウェーデンのプログレッシブ・デス・メタル・バンドOPETHの7thアルバムDamnation。

グロウル/デス・ヴォイス、ディストーション・ギター、ツーバス連打、といったヘヴィ・メタリックな要素を一切排し、OPETHの楽曲のそこかしこに散在するメロウな要素にフォーカス。いつも通りでヘヴィな前作Deliveranceと対になった作品。PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンが、引き続きプロデュース及びピアノ/エレピ/メロトロンといった鍵盤関係とバッキング・ボーカルでも貢献しております。

6/8拍子から4/4拍子への自然な変化で緩急を無理無く表現した#1。ミカエル曰く「色々とパクった(笑)」という中期KING CRIMSON風暗黒不条理リフレインから一転しての、むせび泣くギター・ソロへの展開が秀逸です。
イコライジングを施したようなダークで無機的な序盤から、メロトロンの洪水と共にエモーショナルにクサメロを歌い上げるサビに展開する#2。
ミステリアスなムードの#3。
奇妙な音使いのアコギによるカッティングとエレキによる単音リフ、パーカッションをバックに繰り広げられるエキゾチックかつ悪夢のようなパートがLED ZEPPELINのFriendsを想起させる#4。
不安感を煽りつつも何故か心地良い#4終盤の悪夢パートが急に途切れてクリーンなアルペジオが登場するメロウな#5、とドラマティックなアルバム構成にもぬかり無し。
メロトロンの幽玄な響きにミカエルのクリーン・ヴォイスが溶け込む暗鬱メロウ・チューン#6。
どことなく演歌っぽい(?)泣きメロを、マイルドなトーンのエレキで奏でるインストゥルメンタル#7。
スティーヴン・ウィルソンからの薫陶が明らかな、モジュレーションを掛けたエレピがミステリアスでトリップ感を誘う静謐な#8。

ある種の制約の中でどこまでOPETHらしい起伏ある楽曲展開が表現できるか、という凡人の杞憂を軽く吹き飛ばすがごとくミカエルの才能とセンスが爆発。いつもながら感心してしまう、ミカエルのクリーン・ヴォイスによる素晴らしい歌唱と歌心溢れるギター・ソロも大いに堪能できます。
素敵なジャケット・アートは勿論トラヴィス・スミス。

Track List

1. Windowpane
2. In My Time of Need
3. Death Whispered a Lullaby
4. Closure
5. Hope Leaves
6. To Rid the Disease
7. Ending Credits
8. Weakness

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OPETH / Ghost Reveries

2005,SWEDEN

OPETHの2005年8thアルバムGhost Reveries。

前作・前々作は自らの可能性の限界に挑戦するという実験的意味合いもあったのだろう。わざと制約を設ける中で持ち味のブルータルなアグレッションやメロウ・サイドの各々にさらに磨きをかけることに成功した彼らがそれらを全て混ぜ合わせて再構築することによって、既に完成の域にあった音楽性のさらなるステップ・アップを実現させている。
新たに正式参加したSPIRITUAL BEGGARSでお馴染みペル・ヴィヴァリ(Key)によるハモンド/エレピ/メロトロンが彩りを加え、もはや他者の追随を許さない孤高の域に達した感がある。

#1は21世紀最高のプログレッシブ・メタル楽曲だと言い切ってしまいくらい完成度が高い、OPETHの魅力が最高レベルで発揮された名曲。

Track List

1. Ghost of perdition
2. The baying of the hounds
3. Beneath the mire
4. Atonement
5. Reverie/Harlequin forest
6. Hours of wealth
7. The grand conjuration
8. Isolation years

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OPETH / The Roundhouse Tapes

2007,SWEDEN

OPETHの2006年11月9日ロンドン公演を収録したライヴThe Roundhouse Tapes、2007年リリース。

当日の模様がMCも含め忠実に再現されており臨場感抜群。Mikaelのクリーンとグロウルを見事に使い分けたヴォーカル・パフォーマンスが静と動を見事に表現し、Peterのナイスなギター・ワークが彼らの楽曲の複雑なアレンジをライヴでも破綻無く再現。
Perはディストーション・オルガンを中心としたKeyによるサポートとバッキングVoでもサウンドに厚みを持たせる事に多大に貢献している。
素晴らしくタイトな演奏はメンバーのミュージシャン・シップの高さとバンドの充実ぶりを伺わせる。しかし残念ながらPeterは既に脱退。この事が2008年春にリリースが予定されている新作にどう影響するか注目です。

Track List

Disc 1
1. When
2. Ghost of Perdition
3. Under the Weeping Moon
4. Bleak
5. Face of Melinda
6. The Night and the Silent Water

Disc 2
1. Windowpane
2. Blackwater Park
3. Demon of the Fall

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OPETH / Watershed

2008,SWEDEN

OPETHの2008年9thアルバムWatershed。

彼らの魅力は何と言ってもギャップ。
不条理暴虐リフと70年代サイケ&プログレッシブ風味の奇跡的な共存。デス声とクリーンなプログレ声。そして予測不能な曲展開とふいに見せる叙情性。これらに加え、KeyのPerによるメロトロン・ハモンド・エレピ・アコピによるセピアな彩りが、OPETHの孤高性をフォロワー達の追随を許さぬレヴェルにまで高めています。
実際、#3,#4,#5あたりでのキーボードの使用法は際立って個性的で、これらの曲を唯一無二の存在に。勿論、Mikaelのソング・ライティングもキレキレです。
OPETH風フォークな#1が意表を突きながらも、次に来る怒涛の展開を逆に予想させ聴き手を身構えさせる絶好のウォームアップとなっている所が憎いですねー。
そして変態アグレッション&プログレな#3。これは誰にもマネできませんね。
続く暗黒叙情フォーク?の#4の奇妙なコード進行はALL ABOUT EVEあたりを彷彿させます。サウンドやバンドの格といった部分での広がりと奥行きを感じさせるアルバムです。

Track List

1. Coil
2. Heir Apparent
3. Lotus Eater
4. Burden
5. Porcelain Heart
6. Hessian Peel
7. Hex Omega

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RIVERSIDE / Anno Domini High Definition

2009,POLAND

ポーランドの思索系メタル風味プログレRIVERSIDEの2009年4thアルバムAnno Domini High Definition。

ザクザクしたギター・リフによるメタルなテイストと、うねるズ太いアナログ風シンセ、オールドスクールな歪みのハモンド・オルガン、そしてクールなのに深遠な思索路線の楽曲構成というRIVERSIDE独自の世界が展開されています。
一筋縄ではいかない不条理系リフに巧くブレイクを絡ませるセンスもさすが。前述の通り鍵盤はハモンドがメインながら印象的なパートではアンビエントなピアノやテルミン(#5で大暴れしとります)まで使用し、曲のキャラを際立たせています。ヴィンテージな音色にプログラミングと思しきシーケンス・フレーズを違和感無く溶け込ませているあたり、MICHAL LAPAJ(Key)の現代的な手法でプログレスする姿勢も素晴らしいですね。
アレンジの向上でアルバム通してダレる部分が無くなり、適度な緊張感を保ちつつ一気に聴かせてしまう構成力にも成長を感じさせます。ジャケット・デザインは現代カヴァー・アートの巨匠、トラヴィス・スミス。音楽性にぴったりです。

Track List

1. Hyperactive
2. Driven To Destruction
3. Egoist Hedonist
4. Left Out
5. Hybrid Times

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OPETH / Heritage

2011,SWEDEN

OPETHの10thアルバムHeritage。

リリース前の試聴会からの噂が、グロウル・ヴォイスやブルータルなリフが無いアルバムという事で密かに期待していたが、やってくれましたよミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)。
ミカエルが70年代ロックのコレクターであることは有名で、これまでのアルバムでも幽玄なアコギ・パートなどにヴィンテージ・ロックの薫りを漂わせてはいましたが、それをアルバム単位でやってしまったという感じ。
この路線、メロウかつ暗鬱なアルバムDamnationと似てはいますが、もっとバラエティに富んでいて躍動感もあるしロックしてもいる。何というか70年代ロック風なゴッタ煮感が良い。

メロウなピアノのソロ#1で静かに幕を開け、ガツーンと来るだろうなという予想通りの#2ではありますが、以前のような無慈悲で怜悧なリフでは無く、歪んだオルガンを絡めたオールド・スクールなテイスト。ギター・リフも相変わらず不条理系の奇妙な音使いですが、サウンドも今風なディストーションというよりはもっとウォームな感じ。幽玄パートやサイケ風なパートも絡めての起伏に富んだアレンジはさすがOPETH。
メロトロンの白玉とアコギをバックにミカエルの艶やかな美声が乗るメロウな序盤から、ヘヴィなパートを交えつつ神秘的なムードで展開する#3。
DEEP PURPLE風な#4は(多分)シングル・コイルの単音バッキングがまんまリッチー・ブラックモアな疾走チューン。OPETHらしい音使いのリフがアクセントになり、オールド・スクールな曲調に見事に融合しています。アコギ・パートに突入してそのままフェード・アウトする意外な展開はBLACK SABBATHのようでもあります。
マーティン・アクセンロット(Dr)のゴースト・ノートを活かしたグルーヴィなドラミング、ペル・ヴィヴァリ(Key)によるエレピのリフ、エキサイティングなフレドリック・オーケソン(G)のソロなど、ジャム的な要素をフィーチュアした不思議な浮遊感を持った#5。
静謐でメランコリックな序盤からメロトロンとアコギをバックに7拍子の歌唱パートに移行するプログレッシブ・フォーク#6。間を有効活用した枯れたギター・ソロも又絶品。現存するバンドでこのサウンドを出せるのはOPETHだけでしょう。
静かな序盤から独特の音使いによるリフを境にバンド・インする#7。妖しいパーカッションや吹き散らすフルートが70年代風暗黒ムードたっぷり。
マーティン・メンデス(B)のベースがリードする#8。メロトロンにフェンダー・ローズなどヴィンテージ・キーボード、テルミン風SEを要所に散りばめたコンパクトながら起伏あるナンバー。
OPETH風暗黒エレクトリック・フォークから、メロウなアコギ・パートを経て、抑えた泣きのギター・ソロで締める#9。
アコギのアルペジオをバックにしたマイルドなツイン・リードのハーモニーが美しい#10。

はっきり言って70年代風テイストはOPETHのオリジナルでは無いし、新鮮なアイディアというわけでも無い。
それでもこのアルバムが素晴らしいのは、そういった先人達のアイディアを吸収し我が物とした上でしっかりとOPETHの持ち味に融合させてしまっているところ。
特に、何でも詰め込み過ぎの昨今の音楽シーンにあって、「無音」を活かした音作りが巧み。
このあたりはミックスを担当したスティ-ヴン・ウィルソンからの影響かも。

ジャケット・アートはお馴染みのトラヴィス・スミス。サイケな色調が珍しいですね。右下の落ちかかった顔は本アルバムがラストとなるペル・ヴィヴァリでしょうか。ここ数作で良い仕事をしていただけに残念です。

Track List

1. Heritage
2. The Devil's Orchard
3. I Feel The Dark
4. Slither
5. Nepenthe
6. Häxprocess
7. Famine
8. The Lines In My Hand
9. Folklore
10. Marrow Of The Earth

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RIVERSIDE / Shrine of New Generation Slaves

2013,POLAND

ポーランドのプログレッシブ・ロック・バンドRIVERSIDEの5thアルバムShrine of New Generation Slaves。

ギター、ベース、オルガンによる王道ユニゾンに痺れる#1。オルガンは時にレズリーの回転を変化させダーティなうねりを持つコード弾きにも変化。そのサジ加減が秀逸。
マリウス・デューダ(B/Vo)の味わいのある歌唱が映えるメロウなフォーク・ナンバー#2。アクセントとなるグロッケンシュピール、世界観に忠実なギター・ソロも良い。
ミディアム・テンポに乗ったヘヴィなユニゾン・リフのグルーヴが心地良い#3。オルガン・ソロが渋い。
ディレイを掛けたピアノが印象に残る切ないナンバー#4。
まろやかなトーンのシンセ・ソロが神秘的なムードを醸す幽玄な#5。終盤のサックスのソロがアーバンな寂寥感を演出。
メロトロン風な白玉、引き摺るヘヴィ・リフを内包する、一聴するとポップなメジャーキーの#6。
アルバム・ジャケットのビジュアル・イメージであろうタイトルの#7。淡々としたムードの序盤から、オルガンが唸りをあげてアップテンポに移行する4分後半からの3連シャッフル・パートでは、プログレなシンセ・ソロをフィーチュア。さらに終盤は6拍子+5拍子パターンのリフレインに深遠なコーラスへと変化する12分超の叙事詩。
#7のモチーフをアコギと歌唱で再演しタイトル通りのエンディング感を演出した#8。

前作のプログレ・メタル+思索エレクトロニック音響路線から一変、#1や#3等のクラシックなというかハッキリ言ってベタなブルーズロック風リフを軸にしたグルーヴィな展開に驚くが、これが極上のカッコ良さ。
さりげない拍子のトリックやメロウなパートへの巧みな展開、そしてマリウス・デューダの深みのある歌唱が加わり、単なる懐古趣味を余裕で超越した本物のムードが感じられます。
アルバム・カヴァー・アートはお馴染みのトラヴィス・スミス。

Track List

1. New Generation Slave
2. The Depth of Self - Delusion
3. Celebrity Touch
4. We Got Used To Us
5. Feel Like Falling
6. Deprived (Irretrievably Lost Imagination)
7. Escalator Shrine
8. Coda

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OPETH / Pale Communion

2014,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・メタル・バンドOPETHの11thアルバムPale Communion。

単音リフやダーティな音色のバッキングを奏でるオルガン、静かなピアノ、エンディングを神々しく飾るメロトロンなど、キーボードが場面転換をリードするOPETHではこれまでに無いテイストのオープニング・ナンバー#1。
ペダルポイント風単音リフに無国籍エスニックなメロディのサビが印象的な#2。
ミステリアスなパート、幽玄アコギ・パートなど様々に展開、後半はOPETHらしい邪悪な音使いのリフと叙情メロディのサビを巧みに融合した10分超の#3。
冷気漂うメロトロンの白玉にゾクゾクするダークなフォーク・チューン#4。
パーカッシブなエレピやオルガンなどキーボードが活躍するグルーヴィなインストゥルメンタル#5。
爽やかなフォークから始まり、2人のギタリストのバトル~メロディアスなツインリード、ヘヴィなリフにメロトロンと要素が盛りだくさんの#6。
ミステリアスなストリングスのリフがリードする深遠パートとヘヴィなリフのパートの対比で聴かせる#7。
KING CRIMSONのStarlessを想起させる、悲哀感たっぷりのストリングスをバックにミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)のエモーショナルな歌唱が乗るドラマティックな叙情ナンバー#8。

デス・ヴォイスを一切排除して70年代王道ロックのテイストに接近した前作Heritageの路線を推し進め、より耽美でマニアックな領域に。
不条理・無慈悲なアグレッションから静謐・神秘的な側面までがこれまでのOPETHの幅広い音楽性だとすると、Pale Communionではレンジの幅はそのままに軸足をより静謐・神秘方面に傾けさらにそこに70年代ヴァーティゴ系のくすんだオルガン・ロック風味を加味した作風。また、これまでも曲中で経過的には使用されていたメジャー・コードを楽曲の印象を決めるラストで使用するなど、斬新とも言える変化が見て取れる。アルバムの基準を測る上で重要なオープニング・チューン#1のボーカル第一声がメロウなコーラスというのも意表を突いており、ミカエル・オーカーフェルトからすると「してやったり」というところだろう。
ペル・ヴィバリの頃よりも歪み度を幾分下げたヨアキム・スヴァルベリ(Key)のオルガンは、グリッサンドを多用するロックでダイナミックな前任者よりもむしろCRESSIDA寄りと言っても良いくらい堅実かつ多彩なプレイ・スタイルで音楽性の変化に対応。
ミックスはかつてのOPETH作品でも制作に関わった、ユニットSTORM CORROSIONでのミカエルの僚友スティーヴン・ウィルソンが担当。KING CRIMSONやYESなどのリミックス・ワークを通じてプログレ界レジェンド達の奥儀に触れたスティーヴンの起用も今作の方向性にマッチしている。
ジャケット・アートは勿論トラヴィス・スミス。

Track List

1. Eternal Rains Will Come
2. Cusp of Eternity
3. Moon Above, Sun Below
4. Elysian Woes
5. Goblin
6. River
7. Voice of Treason
8. Faith in Others

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RIVERSIDE / Love, Fear and The Time Machine

2015,POLAND

ポーランドの薄暗プログレ/シンフォ・バンドRIVERSIDEの6thアルバムLove, Fear and The Time Machine。
ジャケットアートはお馴染みのトラヴィス・スミス。

オリエンタルなエキゾティックさを感じさせるモーダルなメロディによる新機軸#1。
クリーンなギターのアルペジオがリードし、浮遊感あるまろやかなシンセがアクセントとなる#2。終盤の叙情リフレインがシンプルながらもグッと来る。
リフレインとAメロに若干邪悪な音使いを絡めてフックとしながらも、全体としてはメランコリックなメロディで流れるように展開するキャッチーな#3。アコギとシンセによる幽玄なアウトロに何となく70年代B級プログレ臭が(良い意味で)あり秀逸。
7拍子の引っ掛かりと終盤のギターやシンセによる叙情的なシンフォ・パートが印象的な#4。
クールな7拍子と不条理系ヘヴィ・リフを巧みに融合させた#5。荒涼としたアンビエントから炭火のように暖かいメランコリックなメロディへの展開が見事。
オルガンとベースのみをバックに切々と歌われる、ダークでメランコリックなバラード#6。
リズミックなベースのリフがリード、トレモロをかけたギターやシンセがヴィンテージ風なフックとなり、コンテンポラリーなサビと対比している#7。
アコギのアルペジオがまどろみフォーク風の序盤から、OPETH風暗黒インスト・パートの後半に移行する劇的な#8。
終盤に叙情リフレインを配したアコギ・フォーク#9。
ミニマルなアルペジオとオルガンの白玉という相反する要素を持つクールなフォーク#10。

HM/HR系バンドにありがちな、リフありき→歌メロ後付けの楽曲制作パターンとは真逆のまずは歌メロありきと思えるメロディアスな楽曲が並ぶ。
一方インスト・パートは、テーマを変容させながらこれでもかと繰り返すことで聴き手の心に深い印象を残す手法を確立。
メロディとムードを優先する叙情的な方向性は、ダークなプログレの最先端を行くスティーヴン・ウィルソンに近いものがあるが、歌唱もジェントルかつクールで決してウェットに耽溺しない絶妙なバランス感覚はRIVERSIDE独自のものといえる。

Track List

1. Lost (Why Should I Be Frightened By a Hat?)
2. Under the Pillow
3. #Addicted
4. Caterpillar and the Barbed Wire
5. Saturate Me
6. Afloat
7. Discard Your Fear
8. Towards the Blue Horizon
9. Time Travellers
10. Found (The Unexpected Flaw of Searching)

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OPETH / Sorceress

2016,SWEDEN

OPETHの12thアルバムSorceress。

アコギにメロトロンやハープが絡む、ギリシャ神話に登場するゼウスの娘ペルセフォネをタイトルに戴く抒情インストゥルメンタル#1。
跳ねるリズムでオルガンが躍動する70年代風ヘヴィ・ロック#2。屈折したメロディのリフと終盤の静寂パートからの展開にOPETHの真骨頂を見せるも全体的には凡庸。
フレドリック・オーケソン(G)の弾きまくりソロをフィーチュアしたヘヴィなナンバー#3。中間部からはクリーンなパートで神秘性を演出。
ミカエル・オーカーフェルト(G/Vo)の表現力豊かな歌唱が際立つ、アコギの空気感が美しい絶品のフォーク・チューン#4。
インスト・パートにギターとオルガンのバトルを挿入した、スペイシーなシンセがアクセントとなった古典的ハード・ロック#5。中盤以降はメロウなパートに移行してガラっとムードを変化させるお得意の手法。
抒情的なアコギのアルペジオに対するモーダルな歌メロにセンスを感じさせるフォーク#6。
呪術的なパーカッションと中近東的エキゾチックなヒネリを交えたメロディがLED ZEPPELINのFriendsを彷彿させる暗黒フォークの前半から静謐フォークに劇的転換する#7。
従来のOPETHが持つエッセンスを70年代ロックの手法で再構築した、ムーディなメロウネスと屈折ヘヴィネスが融合した#8。
どこか郷愁を誘うアコギのメロディが印象的なイントロから薄明り射すサビに至る構成が見事なメロディアス・ナンバー#9。
アンビエントなピアノが#9を継承し寂寥感を漂わせるイントロから一転、アップテンポのハード・ロックに移行する#10。
再びアンビエントなピアノと女性のモノローグで締める#11。

バンドの70年代テイスト化を推し進めるミカエル・オーカーフェルトの試みは今作も継続。
特にアコースティック系楽曲において顕著で、良い意味で70年代のカビ臭い本格的なムードを感じる。
一方で、ハードな楽曲では以前は存在したエッジがますます減退。
OPETHならではの奇妙ではあるが冷たく深遠な暗黒ムードはもはや消滅。展開しまくりの奔放で豪快な楽曲構成が魅力の一つでもあったが、今作の各楽曲は尺がコンパクトになったのもあるが、方法論の70年代化とともに全体的に意外性に欠ける予定調和的な展開が目立つ。
結果的にメロウな部分での本格化と引き換えに、デス・ヴォイスをはじめ奇想天外なメロディや豪放な楽曲展開などOPETHの軸ともいえる特長が薄くなってしまった。
それでも本作が駄作かというとそうでも無く、#1、#4、#6、#7、#9など佳曲も多く、趣味を実益に反映させたミカエル・オーカーフェルトの手腕で統一感のある作品に仕上がってはいる。

音楽的な深化・進化は認める。認めるがしかし、幽玄かつ暗黒なメタル度の後退は少々寂しいものがある。。

Track List

1. Persephone
2. Sorceress
3. The Wilde Flowers
4. Will O the Wisp
5. Chrysalis
6. Sorceress 2
7. The Seventh Sojourn
8. Strange Brew
9. A Fleeting Glance
10. Era
11. Persephone (Slight Return)

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RIVERSIDE / Wasteland

2018,POLAND

RIVERSIDEの7thアルバム。

物語に誘う深遠な独唱のイントロ#1。
#1でマックスに盛り上げてからクールに一転、ザクザクしたギターの変拍子リフとじわじわ押し寄せる抒情的なサビが印象に残る#2。
クールなリフから寂寥感あるサビへ、さらにユニゾンするヘヴィ・パートを経てドラマティックに展開する#3。
アコギのリフが全体の透明感あるトーンを決定。語りかけるような歌唱に引き込まれる#4。
ギター+オルガンのヘヴィなバッキングに乗る清廉なボーカルが宗教儀式のような荘厳なイメージの#5。
不条理感漂うミニマルなリフで紡がれていく序盤からギターやシンセのインプロビゼーションなどスリリングに展開するKING CRIMSON風インスト#6。
モダンな中にフォークロア風味を織り込んだメランコリック・チューン#7。
プログレッシブ・フォーク、リフがけん引するヘヴィ・パート、フォークロア・パートなどから構成される#8。
ピアノに乗せた独唱がアルバムをしっとりと締めくくる#9。

耳に残るフック満載のメロディやアレンジを彩るメロトロン、ローズやハモンドなど説得力あるキーボード群。テルミン、バンジョーやゲストによるヴァイオリンなど意外な楽器も無国籍な神秘性の醸成に効いている。そこに寂しさを湛えつつ仄かな温もりも感じさせるクリーンな歌唱が加わり、ヘヴィネスとメランコリックが抜群のさじ加減で同居したRIVERSIDEの世界が完成している。

Track List

1. The Day After
2. Acid Rain
3. Vale of Tears
4. Guardian Angel
5. Lament
6. The Struggle for Survival
7. River Down Below
8. Wasteland
9. The Night Before

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OPETH / In Cauda Venenum

2019,SWEDEN

OPETHの13thアルバムIn Cauda Venenum。

メロトロンのクワイヤによる思わせぶりなイントロ#1。
いきなりの荘厳なコーラスが不条理リフに乗る衝撃の#2。静寂のメロウ・パートの質感は70年代そのもの。ハードなパートの歌メロはいつになくシンフォニックに洗練されており直後の不穏なメロディとのギャップを印象付けている。
ダイナミックなリズムの70年代風ハード・ロックにOPETHらしい捻ったメロディが乗る#3。キャッチーな中にも深遠さがあり、フレドリック・オーケソン(G)が弾きまくるギター・ソロもカッコ良い。
オルガンやアコギによる静とバンドによる動が対比する#4。ストリングスの荘厳かつエキゾチックなメロディが耳を引くアレンジも秀逸。
メランコリックな美バラード#5。切り返しからギター・ソロに突入する場面転換が見事。
性急なギター・リフにオルガンの奇妙なミニマル・リフなど典型的なOPETH要素てんこ盛りのヘヴィな#6。
えっOPETHと耳を疑う爽やかなストリングスや70年代風フォークの幻想的要素を盛り込んだ#7。
イントロでは何とリュートを使用、以降はジャジーなムードにミカエルのスキャットまで登場する暗黒ワルツ#8。
印象的なドラムとアコギがリードしスケールの大きなバンド・パートへと展開する#9。
アコギがたゆたうアンビエントな序盤からヘヴィなパートを経て、シンプルだが殺傷力抜群の大サビのメロディでリスナーを昇天に導くエピック・チューン#10。

シンフォニックなオケのアレンジはアルバムPale Communion時同様にHATFIELD AND THE NORTHBILL BRUFORDに在籍したデイヴ・スチュワートが行っており万全。デイヴ・スチュワートがOPETHの音楽についてどのように感じているか興味があるところだが。。
ミカエル・オーカーフェルトの70代ロック/フォーク好きは有名だが、Heritage以降の模索を経てようやくそれら懐古趣味にOPETHが従来持つ幽玄さや郷愁を誘う北欧フォークロア風味が融合。全編でメロディが耳に残り、クセになる不条理リフと合わせて何度も聴きたくなるアルバムだ。

Track List

1. Garden of Earthly Delights
2. Dignity
3. Heart in Hand
4. Next of Kin
5. Lovelorn Crime
6. Charlatan
7. "Universal Truth
8. The Garroter
9. Continuum
10. All Things Will Pass

OPETH / In Cauda Venenum のレビューを見る

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