ポップ のレビュー

NIRVANA / All of Us

1969,UK

英国のサイケ・ポップ・バンドNIRVANAの1969年2ndアルバムAll of Us。

ブラス・セクションとストリングス・セクションが、甘いボーカル・ラインをタイトル通り色鮮やかにゴージャスに彩る#1。
チェンバロとチェロの端整なバックにティンパニのロールが仰々しさをアクセントで加えた#2。
美しいコーラス、くすんだオルガンとストリングス、チェンバロが気品を加えた#3。
女性コーラスとストリングス、ハープの幽玄な響きが印象的な#4。
ストリングスをアクセントにピアノとパーショションでリズミックに盛り上がるフォーク#5。
リコーダーの素朴な音色のメイン・メロディを中心とした、チェンバロ、アコギ、マンドリン、ストリングス等、アコースティック楽器によるメランコリックなインストゥルメンタル小品#6。
弾むリズムのボーカル・パートが楽しい#7。
妖しいイントロとキャッチーなボーカル・パートが対比した#8。
テナー・サックスと女性コーラスがフックとなったロックン・ロール#9。
ジャジーでアダルトなムードのワルツにメロトロンやチェンバロの厳かな演出が効いた#10。
テープ操作でボーカルのピッチを上げたコミカルな#11。
ランニング・ベースをバックにホンキートンク・ピアノを中心とした演奏が乗った、少々気怠い感じのロックン・ロール#12。

実態はパトリック・キャンベル=リオンズとアレックス・スパイロポロウスのプロジェクトながら、多彩なアレンジと多彩な楽器でカラフルで夢見心地の楽しいサイケ・ポップ・ワールドが展開されています。
ナポレオンが敵兵の死体を並べた通りを行進するPierre Fritel作の絵画をモチーフにしたモノクロでグロテスクなジャケット・アートが衝撃的ですが、音楽はジャケのイメージとは全く正反対の極彩色というこの落差。これも英国的センス・オブ・ユーモアなんでしょうか。

Track List

1. Rainbow Chaser
2. Tiny Goddess
3. The Touchables (All Of Us)
4. Melanie Blue
5. Trapeze
6. The Show Must Go On
7. Girl In The Park
8. Miami Masquerade
9. Frankie The Great
10. You Can Try It
11. Everybody Loves The Clown
12. St. John's Wood Affair

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STACKRIDGE / Stackridge

1971,UK

フォークがベースのポップなプログレ・バンドSTACKRIDGEの1971年1stアルバム。

ヴァイオリン奏者、フルート奏者を含む6人組で全編フックのあるキャッチーなメロディーが目白押し。演奏やヴォーカル・ハーモニーといったテクニック面が巧みな上、多彩な楽器構成を活かした絶妙のアレンジが施されており、幅広い引き出しを感じさせる雑多な音楽性と相まって飽きがこないアルバム構成となっています。それを象徴するのが、トラッドっぽい神秘的なアコギのアルペジオから始まり、ブギー、メキシカン・ロックと怒涛の展開を見せる#3。
フィドルがリードしハーモニウムも加わって田園ムード全開の#4をはじめ、歌モノは楽しいフォーク主体。
チェロやフルート、アコギが奏でる田舎の室内楽といった趣のプログレッシブなインスト曲#5では、弦による重厚なリフがシリアスでヘヴィな質感をも演出するなど、バンドの別の顔を見せるのがおもしろい。
ラストの#9は叙情的な前半とアバンギャルドな中間部、重厚な後半からなる集大成的な14分超の大作で、バンドとしてのポテンシャルを感じさせます。

Track List

1.Grande Piano
2.Percy the Penguin
3.Three Legged Table
4.Dora the Female Explorer
5.Essence of Porphyry
6.Marigold Conjunction
7.West Mall
8.Marzo Plod
9.Slark

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JACKSON HEIGHTS / Ragamuffin’s Fool

1972,UK

元NICEのリー・ジャクソン(B/Vo)が結成したブリティッシュ・ロック・バンドJACKSON HEIGHTSの1972年3rdアルバムRagamuffin’s Fool。

ボーカルとピアノの瑞々しい演奏にメロトロンがうっすらと加わる爽やかな#1。
白玉メロトロンがメランコリックなムードを演出するバラード・タッチの#2。
メジャー・セブンスに乗ったおしゃれな序盤から一転してエレピがジャジーに展開する#3。
澄んだトーンのピアノにアコギのカッティングが絡み、そこにジワジワとが加わるメロトロンがトリ肌の#4。
ジャジーなムードの#5。
ホンキー・トンク風ピアノがリードするリラックスした#6、#8。
メロトロンをバックにエチュードのようなピアノの伴奏がクラシカルで厳かな叙情を呼ぶ#7。
バンジョーとフィドルを使用したカントリー・ナンバー#9。
美しいコーラス・ハーモニーと煌びやかなピアノのオブリガードが印象的な#10。
等々、曲調はバラエティに富んでいながら、サウンドはブライアン・チャットン(Key)の優雅なピアノを中心にしたアレンジにメロディアスな歌メロが乗るスタイルで統一されており、キャッチーなフックを持ちつつもピアノの端整なフレージングがもたらす気品が格調高さすら醸し出す独特のメロディアス・ロックが楽しめます。

Track List

1. Maureen
2. Oh You Beauty
3. As She Starts
4. Be Bop
5. Catch a Thief
6. Ragamuffin's Fool
7. Chorale(Five Bridges Suite)
8. Chips and Chicken
9. Poor Peter
10. Bellyfull of Water

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JACKSON HEIGHTS / Bump ‘n’ Grind

1973,UK

元NICEのリー・ジャクソン(B/Vo)が結成したブリティッシュ・ロック・バンドJACKSON HEIGHTSの1973年4thアルバムBump ‘n’ Grind。

ブライアン・チャットン(Key)の優雅なピアノを中心にしたアレンジは従来通りながら、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス総勢21名のストリング・セクションを導入し、シンフォニックな要素も大幅増量しております。

シンフォニックなストリングスに爽やかなボーカル・メロディが乗った#1。
アコギとピアノがリードしバンジョーやオルガンの隠し味も効いた#2。
ヴァイオリン・ソロが英国的なペーソス感を醸し出す#3。
スリリングなピアノとハープシコードのユニゾン・ソロに加え、キース・エマーソンから借りたモーグのソロまで飛び出すミステリアスなムードのアップテンポな#4。
ストリングスがドラマティックに盛り上げるタイトル・チューン#5。
クラビネットのグルーヴィーなリフに乗った#6。
ハープシコードの端整な響きとくぐもったオルガンをバックに、神々しいコーラスとピアノ・ソロが映える#7。
軽く歪んだピアネットのまろやかなサウンドと半音階を使ったヒネリあるアレンジが印象的な#8。
ホンキートンク風ピアノがリードするロックン・ロール#9。

基本は爽やかでキャッチーなメロディに彩られたポップ・ミュージックなんですが、気品すら漂う真面目で端整なテイストに独特の翳りを少々加えたサウンドが非常に英国らしいムードを発散しています。
効果的に使用された各種鍵盤やマイケル・ジャイルズ(Dr)、イアン・ウォーレス(Dr)の参加といった要素も見逃せません。

Track List

1. I Could Be Your Orchestra
2. Spaghetti Sunshine
3. Long Necked Lady
4. Public Romance
5. Bump and Grind
6. Cumberland County
7. It's a Shame
8. Ladies in the Chorus
9. Whatever Happened to the Conversation

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ABBA / Ring Ring

1973,SWEDEN

スウェーデンのポップ・グループABBAの1stアルバムRing Ring。

当初は1972年にビョルン&ベニー名義で#10(邦題「木枯らしの少女」)をヒットさせていた男性デュオにそれぞれのパートナーの女性シンガーをゲストに迎えたプロジェクトだったようで、オリジナル・リリース時の表記はABBAでは無く、Björn Benny & Agnetha Frida。

ABBAといえば2人の看板女性シンガーが歌うポップスという印象だが、ビョルン(G/Vo)の歌唱パートやABBA流ロックン・ロールの原型といえる#1、#12を始めとしたロックっぽいサウンドの占める比率が高く、後年のABBAの特長である北欧らしい独特の叙情や煌くキャッチーなメロディは控え目の素朴なポップス。
この1stアルバムRing Ringには、70年代中期から80年代初頭にかけて全世界的に大ヒットを連発する洗練されたスーパースターABBAの姿はまだ無い。しかし既にそれなりのキャリアを持っていたアグネッサ(Vo)とフリーダ(Vo)の歌唱は完成されており、アルバムのスマッシュ・ヒットを受けて、この2人の素材を活かす方向で後の楽曲は作られていくことになる。
アグネッサ作曲のバラード#3が収録されていたり、#1や#2で使用したと思しきメロトロンがクレジットされている点も見逃せない。

Track List

1. Ring Ring
2. Another Town, Another Train
3. Disillusion
4. People Need Love
5. I Saw It in the Mirror
6. Nina, Pretty Ballerina
7. Love Isn't Easy (But It Sure Is Hard Enough)
8. Me and Bobby and Bobby's Brother
9. He Is Your Brother
10. She's My Kind of Girl
11. I Am Just a Girl
12. Rock'n Roll Band

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STACKRIDGE / The Man in the Bowler Hat

1973,UK

田園のBEATLESことSTACKRIDGEの1973年3rdアルバムThe Man in the Bowler Hat。

本家BEATLESでお馴染みのジョージ・マーティンがプロデュースし、#2,#4,#7,#10ではオーケストレーションも担当。それもあってか、従来の田園フォーク的な親しみやすいアレンジもより洗練され、洒落たサウンドに進化。しかし、ユーモラスでほのぼのとしたニュアンスも健在。
これら新旧のテイストが高次元で融合した#3では、甘くて切ないサビがもう病みつきになるくらい強力。コーラスが又良い。全員が歌えるバンドならではで、曲によってボーカルをとる人が代わったり、フルートやヴァイオリンの楽しいアレンジも手伝って、いつ聴いても新鮮で飽きがこないですね。
シリアスなオーケストレーションを聴かせる#10では、うなり、軋むヴァイオリンがハード・ロック並みのド迫力をも醸し出してます。インストゥルメンタルにも定評のあった彼らのポテンシャルがジョージ・マーティンによってさらに引き出された感じでしょうか。

Track List

1.Fundamentally Yours
2.Pinafore Days
3.Last Plimsoll
4.To the Sun and the Moon
5.Road to Venezuela
6.Galloping Gaucho
7.Humiliation
8.Dangerous Bacon
9.Indifferent Hedgehog
10.God Speed the Plough

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STACKRIDGE / Extravaganza

1974,UK

前作から大幅にメンバー・チェンジした田舎のBEATLESことSTACKRIDGEの4thアルバムExtravaganza。

レトロなムードのホンキートンク・ピアノのフレーズで幕を開けるポップで楽しい#1。クラリネットのオブリガードが印象的。
ほのぼのムードの中、田舎のダンスパーティ風フィドルのソロを盛り込んだ#3。
イナたくも甘酸っぱいメロディが素敵な#4。
捻りのある展開が耳に残る#5。
アップテンポと朴訥なボーカルの意外性が絶妙にマッチした#6。
グルーヴィなリズムに乗せた70年代クロスオーバー風のインスト#7。リズムのキメでのタイトなアンサンブル、フォークロア風メロディを取り入れての起伏などアレンジも凝っていてカッコ良い。
一時期バンドに在籍していたゴードン・ハスケル作の#8。ブルーズ・ロックをベースにした英国的翳りのあるセンチメンタルなナンバー。サビメロのどこか東洋的なエキゾチックさも非常に印象に残ります。
クールかつ牧歌的なインストゥルメンタル・ナンバー#9。
サックスと木琴によるユニゾンのメイン・メロディ、女性ボーカルのスキャット、スリリングで複雑な展開など、キャッチーかつテクニカルなインスト#10。

#1~#6のアナログA面でのポップで楽しい歌モノと、#7以降のインスト中心のクールでカッコ良い楽曲群の両極端が共存した雑食のSTACKRIDGEらしいアルバム。本作のみ参加のロッド・ボウケット(Key)がインスト曲の作曲から洒落たピアノ演奏まで良い仕事をしています。

Track List

1. Spin Round the Room
2. Grease Paint Smiles
3. The Volunteer
4. Highbury Incident (Rainy July Morning)
5. Benjamin's Giant Onion
6. Happy in the Lord
7. Rufus T. Firefly
8. No One's More Important Than the Earthworm
9. Pocket Billiards
10. Who's That Up There With Bill Stokes?

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SUPERTRAMP / Crime of the Century

1974,UK

英国のロックバンドSUPERTRAMPの1974年3rdアルバム。

2人のソングライター、ロジャー・ホッジスン(Vo/G/Piano)とリチャード・デイヴィス(Vo/Key)による適度なウェット感とPOP感覚を兼ね備えたメロディーにプログレッシブな要素が相まった親しみやすくもヒネったサウンドが特徴。高音中心で少々クセのあるロジャーと中音域中心でストレートなリック、という2人のヴォーカリストのキャラクターもサウンド面での幅を持たせる要因に。#5などでSUPERTRAMPサウンドのカギともいえる”プアマンズ・ローズ”ウ-リッツァーのひしゃげたような独特のトーンも活躍。#3、#4、#6など6~7分台の楽曲を普通に配する所も売れ線狙いとは一線を画すバンドのプレゼンスを主張してます。それと忘れちゃいけないのが、ジョン・アンソニー・ヘリウェルによるサックスやクラリネットが醸しだす何とも言えないペーソス感。物悲しいんですが、暖かみもあり、少々とぼけた風でもあるこの感じ。それに気付いた時にはもう虜です。

Track List

1. School
2. Bloody Well Right
3. Hide in Your Shell
4. Asylum
5. Dreamer
6. Rudy
7. If Everyone Was Listening
8. Crime of the Century

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ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA / Eldorado

1974,UK

オーケストラをロック・バンドに取り込みユニークなサウンドを創出したELECTRIC LIGHT ORCHESTRAの全米16位となった4thアルバムEldorado。

編成はジェフ・リン(G/Moog/Vo)を中心とした4ピースのロック・バンド+チェロ2名、ヴァイオリン1名。
スペイシーなSEとディズニーのようなメルヘンちっくなオープニングからストリングスの下降フレーズが壮大なドラマを予感させる序曲#1で幕を開け、しっとりしたストリングスをバックにした#2のピアノによるゆるやかなイントロ。もうこの部分だけでワクワクしますね。
ブラスのファンファーレをあしらった#3では弦のピチカートが印象的です。
チェロのオブリガードが効いている#4は、ファルセットを上手く使ったサビの歌唱が抜群のメロディと相まって超キャッチー。それでいてヴァースではラフな雰囲気の歌唱も渋く聴かせてます。
#7は英国っぽいペーソスを感じさせる佳曲で、ホンキートンクなピアノ・ソロが良い感じ。
胸キュンで雄大なサビが物語の終焉が近い事を悟らせて胸を熱くさせる#9でクライマックスに。
そしてエキゾチックな終盤に続き、#10では#1のオーバーチュアがリプライズされ圧巻のフィナーレを迎えます。

Track List

1. Eldorado Overture
2. Can't Get It Out Of My Head
3. Boy Blue
4. Laredo Tornado
5. Poor Boy (The Greenwood)
6. Mister Kingdom
7. Nobody's Child
8. Illusions In G Minor
9. Eldorado
10. Eldorado Finale

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SUPERTRAMP / Crisis? What Crisis?

1975,UK

SUPERTRAMPの1975年4th。

タイトな演奏によりコンパクトにまとめられた楽曲の中で、明るさと湿り気が紙一重で同居する絶妙なバランス感覚がドラマを演出しています。その白眉が#6。お馴染みウーリッツァーの8分刻みに乗りマイナーからメジャーに移行する冒頭から、高揚感抜群のハジけるサビに至る展開が独創的です。12弦アコギによる爽やかなカッティングにハーモニカが哀愁をプラスする#2。ヘヴィ・ブルーズ調から突然緩い西海岸風サビに変化する#3。ピアノとストリングスをメインにチェンバロのオブリガードも加えた端正なアレンジが格調高い#4。ウーリッツァーのパーカッシブな伴奏にクラリネットによる場末のペーソス感が胸キュンな#7。ムーディなサックスソロとストリングスによる盛り上がりをバックにロジャーとリックがヴォーカルを分け合うバラード#8。アルペジオに絡むクラリネットが妖しい序盤とキャッチーだが翳りのあるサビがプログレッシブな雰囲気を醸しだすドラマティックな#9。等々、バラエティ豊かでスケール感もアップした名盤です。

Track List

1. Easy Does It
2. Sister Moonshine
3. Ain't Nobody But Me
4. A Soapbox Opera
5. Another Man's Woman
6. Lady
7. Poor Boy
8. Just a Normal Day
9. The Meaning
10. Two of Us

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SUPERTRAMP / Even in the Quietest Moments…

1975,UK

SUPERTRAMPの1977年5thアルバム。

爽やかなアコギとロジャーの透明感ある歌唱が冴える#1や#3(#1が全米20位入り!)。リックの艶のある歌唱をフィーチャーした美しいメロディのキャッチーな#2,#4。そしてようやく屈折感とペーソスを持った#5が登場。ロジャーのセンシティブな歌唱と捻ったアレンジにジョンのサックスがベストマッチ。再びリックの洒落たピアノが主導するバラード#6ときて、ラストのプログレ大作#7。静かなピアノのイントロがフェイドアウトすると、荘厳なストリングスと鐘の音や街の喧騒などのSEを掻き分けてシンセによるメイン・リフが登場。続いてサックスのオブリガードを交えつつストリングスとコーラスに導かれ、ヴォーカルがスタート。深みのあるメロディをなぞる少々シアトリカルなロジャーの歌唱がドラマを盛り上げます。 そして、メインリフとユニゾンで迫るヴォーカルとそれに絡む単音シンセの分散和音フレーズ。まるで中期GENESISのような迫力。コマーシャル性とアーティスティックな側面との微妙なバランスがナイスなサジ加減で次作での世界的大ブレイクを予感させます。

Track List

1. Give a Little Bit
2. Lover Boy
3. Even in the Quietest Moments
4. Downstream
5. Babaji
6. From Now On
7. Fool's Overture

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ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA / Face the Music

1975,UK

ELECTRIC LIGHT ORCHESTRAの1975年5thアルバムFace the Music。

コンセプトアルバムだった前作を踏襲したサウンドで、ストリングス・アンサンブルやクワイヤによるゴージャスな装飾が施されたPOPナンバーが連発。ただ、オーケストラ一辺倒ではなく#5の中間部で聴けるような単音シンセによるオブリガードも効果的に使い出し、ジェフ・リンのクリエイターとしての先見性を伺わせます。「SEをコラージュしてのオープニングから大仰なイントロへと繋がる荘厳な序曲である#1以外は、アルバム通して落ち着いたバラードっぽい楽曲が中心で、ドラマティックだった前作と比べると平坦で地味な印象だが、セールスでは前作を上回る。

小粒ながらも、次作での大ブレイクに向けて地歩を固めつつあったバンドの自信と確信が漲る充実作。ドラムのドタドタしたサウンドがちょっと気になりますが・・

Track List

1. Fire on High
2. Waterfall
3. Evil Woman
4. Nightrider
5. Poker
6. Strange Magic
7. Down Home Town
8. One Summer Dream

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STACKRIDGE / Mr.Mick

1976,UK

STACKRIDGEの1976年5thアルバムMr.Mick。
ミックという人物をテーマにしたコンセプト・アルバム・・・のはずだったんですが、前作から所属していたロケット・レコードの圧力でBEATLESのカヴァー#1をトップに収録させられたり、選曲や曲順に関してもかなりいじられたようです。

ゆったりとしたピアノとコーラスが環境音楽のようなムードを醸し出す中、エキゾチックなサックスのプレイが強烈なアクセントとなった#2。
#2ラストのナレーションから繋がったピアノのリズミカルなリフが印象的な#3。
シンセを中心としたSEからメロトロンの東洋的メロディに移行する#4。
ホンキートンク風ピアノとサックスがのどかなムードを演出する#5。
繊細なボーカルをフィーチャーした前半、ハープシコードや滑らかなクラリネットが上品で落ち着いたムードの後半に分かれる端整なワルツに乗った#6。
雫が滴り落ちるようなアンビエントなピアノが神秘的な冒頭から、メロトロンの洪水の中盤を経て物悲しいサックスで盛り上がるドラマティックな#7。
と、ここで突如軽いムードに英国的捻りを加えた#8が登場。何か違和感あるなー、と思っていたら2000年にバンドがリリースしたオリジナル版では、これが1曲目になってました。
洗練されたピアノの旋律にクラリネットのメイン・フレーズが絡むイントロダクションからペーソス感漂うボーカル・パートに発展する#9。

前作から参加した元AUDIENCEのキース・ゲメル(Sax/Cla)が要所で印象に残る味わい深いプレイを披露。AUDIENCE時代は彼のプレイが楽曲のカラーを決定付けていたくらいですからね。又、元GREENSLADEのデイヴ・ローソン(Key)の参加やヴァイオリン・プレイヤーをゲストで賄うなど、サウンドは益々鍵盤中心のプログレッシブ・ロック寄りになってきましたが、セールスが振るわずバンドは解散してしまいます。

Track List

1. Hold Me Tight
2. Breakfast with Werner Von Braun
3. Steam Radio Song
4. Dump
5. Save a Red Face
6. Slater's Waltz
7. Coniston Water
8. Hey! Good-Looking
9. Fish in a Glass

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ABBA / Arrival

1976,SWEDEN

スウェーデンのポップ・グループABBAの4thアルバムArrival。

爽やかなアップテンポのフォーク・ポップ#1。
イントロからすかさず必殺のサビに移行する、世界的メガ・ヒット・ナンバーとなったABBAの代表曲#2。
ゆったりとしたリズム、ドラマティックな起伏のある美メロディのバラード#3。
弾むようなリズムにケルトっぽいフォークロアの薫り漂うメロディが乗る#4。
ムーディかつシリアスなヴァースからドラマティックなサビへ展開する#5。
ミステリアスでいてコミカルでもある、金に憑かれたものを皮肉るようなナンバー#6。
ヴァースはアップテンポのリズムに対比するゆったりした歌メロ、サビは畳み掛けるような早口で強烈な印象を残す#7
ビョルン(G/Vo)がヴァース、サビは女性陣による歌唱のブギ・ナンバー#8。
緩急と静動で巧みにメリハリをつけたABBA流ロックン・ロール#9。
鳴り響くバグパイプにフリーダとアグネッサのコーラスでメロディを奏でる、郷愁と荘厳が同居するスコットランド民謡風のインストゥルメンタル#10。

フォーク色を残した親しみやすいメロディゆえの取っ掛かりの良さにもかかわらず、何十年聴いても飽きが来ない素晴らしい歌唱に磨きがかかったソングライティングとアレンジ。
初期の素朴さと後期の作りこまれたポップ性の両面をバランス良く有する、バラエティ豊かな楽曲群の各々にABBAらしいフックを常備させた完璧なアルバム。

Track List

1. When I Kissed the Teacher
2. Dancing Queen
3. My Love, My Life
4. Dum Dum Diddle
5. Knowing Me, Knowing You
6. Money, Money, Money
7. That's Me
8. Why Did It Have to Be Me?
9. Tiger
10. Arrival

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ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA / A New World Record

1976,UK

天才ジェフ・リン(G/Vo/Key)率いる英国の7人組ロック・バンドELOの1976年6thアルバムA New World Record。

シンセを大胆に使用したスペイシーなオープニングから重厚なストリングス・セクションが入り、ELO流ウルトラ・ポップに展開する#1。
叙情的なバラード#2。
キャッチーなロックンロールの#3。
ドラマティックかつセンチメンタルなバラード#4。
UH~LAというフレーズが一度聴いたら耳から離れないキャッチーなポップス#5。
ピチカートのオブリガードが印象的な#6。
ギターのリフがリードする#8。
ストリングスが甘い雰囲気を増幅するバラード#9。等々、BEATLES由来のリッチでキャッチーなメロディを持った各曲で自前のストリング・セクションがバッキングにオブリガードにと大活躍すると同時に、モーグ、メロトロン、ウーリッツァー等電子・電気楽器を楽曲のテイストに合わせて組み合わせ、又一段とゴージャスなサウンドを完成させました

Track List

1. Tightrope
2. Telephone Line
3. Rockaria!
4. Mission (A World Record)
5. So Fine
6. Livin' Thing
7. Above the Clouds
8. Do Ya
9. Shangri-La

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ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA / Out of the Blue

1977,UK

ELECTRIC LIGHT ORCHESTRAの1977年7thアルバムOut of the Blue。

コンセプトアルバムのEldorado(1974年)以降着実にヒットを飛ばしてきたELOによる極上のPOPミュージックが楽しめます。
アナログでは2枚組で2枚目のA面(CD#10~#13)4曲は「雨の日のコンチェルト」というメドレーになっています。
ヴァイオリン×1名、チェロ×2名の弦楽器部隊を擁した最後の作品でもあり、さながら従来からのELOサウンドの集大成といった様相。
弦やシンセに加えヴォコーダーなど最新機材も自然に溶け込ませる天才的なジェフ・リン(Vo/G/Key)のセンスにより、ジャングルビートからメキシカン風味に純英国風POPと音楽性も盛りだくさん。
ファルセットを使用したコーラスもELOのカラーとして確立され、アップテンポのキャッチーなナンバーでは出現頻度も高くなってます。
端正でしっとりと、それでいて爽やかな前述のメドレー「雨の日のコンチェルト」をはじめ、煌くウルトラPOPチューン#1や心に染み入るバラード17# など、とにかく珠玉のメロディーがゴージャスなアレンジで楽しめる全17曲。

Track List

1. Turn to Stone
2. It's Over
3. Sweet Talkin' Woman
4. Across the Border
5. Night in the City
6. Starlight
7. Jungle
8. Believe Me Now
9. Steppin' Out
10. Standin' in the Rain
11. Big Wheels
12. Summer and Lightning
13. Mr. Blue Sky
14. Sweet Is the Night
15. Whale
16. Birmingham Blues
17. Wild West Hero

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FOREIGNER / Double Vision

1978,UK,USA

元SPOOKY TOOTHのミック・ジョーンズ(G)と元KING CRIMSONのイアン・マクドナルド(G/Key/Reeds)がオーディションで集めた英米混合メンバーによって結成されたハード・ロックバンドFOREIGNERの2ndアルバムDouble Vision。

軽快なハード・ロック チューン#1。
キャッチーなサビと単音リフ、作曲されたスリリングでメロディアスなギター・ソロが印象的な#2。
ルー・グラム(Vo)の歌唱力が光るバラード#3。
アコギのフォーキーなタッチにシンセのカウンター・フレーズや美しいコーラス・ハーモニーが溶け込んだPOPな#4。
ブルーズ・ロックな意匠にキャッチーなサビで意表をつく#5。
ハードエッジなギター・リフに絡むSAXが個性的なハード・ロック#6。
シンセによるオーケストレーションが醸し出すミステリアスなムード中にも、英国的な翳りを忘れないインストゥルメンタル・ナンバー#7。
イアンのマイルドなサックス・ソロがレイドバックしたムードにぴったりな#8。
ギターの単音リフにかぶさるシンセ・ストリングスが緊張感をもたらすメロディアスなハード・ロック#9。
淡々と抑えたムードを構成する各パートのアレンジが絶妙な哀愁チューン#10。

等々、幅広い曲想とそれを一聴したキャッチーさの中に、奥深い音楽性を忍ばせた職人肌なメロディアス・ハード・ロックが楽しめます。
ストリングス・アレンジにTOTOのデヴィッド・ペイチの名前がクレジットされているのも見逃せません。

Track List

1. Hot Blooded
2. Blue Morning, Blue Day
3. You're All I Am
4. Back Where You Belong
5. Love Has Taken Its Toll
6. Double Vision
7. Tramontane
8. I Have Waited So Long
9. Lonely Children
10. Spellbinder

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カテゴリー: FOREIGNER

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ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA / Discovery

1979,UK

ELECTRIC LIGHT ORCHESTRAの8thアルバムDiscovery。

このアルバムより、正式メンバーだったヴァイオリンとチェロの3人がライブのみのメンバーに降格となり、ジェフ・リン(Vo/G/Key)、ペヴ・ベヴァン(Dr)、リチャード・タンディ(Key)、ケリー・グロウカット(B)の4人編成となりました。
レコーディングでは従来通りルイス・クラークのアレンジ・指揮の下オーケストラも使用されていますが、サウンド的にはストリングス・セクションが若干控え目になり、その分シンセや#4,#6で聴かれるヴォコーダーといった新しい機材が進出。しかし、そこはさすが天才ジェフ・リン。ストリングスと電子楽器を巧みに融合させて極上のポップ・ワールドを展開しています。

シングル・ヒットした#1,#5,#9のように、ディスコ・ビートを上手に取り入れて大衆の耳に広く届ける、時代の空気を敏感に嗅ぎ取ったプロデューサー的手腕も見事。
シンセを多用したエレクトロニック・ポップ風な#4,#7、胸キュン・メロディのバラード#3,#6,#8、など脇を固める楽曲群もBEATLES由来の英国的ポップ・テイスト溢れるメロディの佳曲で占めた高品質ポップ・アルバムです。

Track List

1. Shine a Little Love
2. Confusion
3. Need Her Love
4. The Diary of Horace Wimp
5. Last Train to London
6. Midnight Blue
7. On the Run
8. Wishing
9. Don't Bring Me Down

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JEFFERSON STARSHIP / Freedom At Point Zero

1979,USA

元サイケなJEFFERSON AIRPLANE、後にポップなSTARSHIPとなり大ブレイクするアメリカン・バンド JEFFERSON STARSHIPの1979年作 Freedom At Point Zero。

JEFFERSON STARSHIPとしての5枚目となる本作から、ハイトーンなボーカリスト ミッキー・トーマス(Vo)が参加、爽やかなアメリカン・ハード・ロック路線で大成功を収める。

ハード・ロック然としたギター・リフとボーカルのハイ・トーンでKOされる#1。
爽やか且つキャッチーでギターのメロディが印象的な#2、キャッチーな#3、ドラマティックな8分近い#4・・・何故かこのまま終わるのがちょっと寂しくて永遠に聴き続けたい感じがする#9など、フォークの香り漂うところやエレピ/オルガン/シンセ等キーボードのさりげないアレンジのセンスが良いです。

いわゆる”産業ロック”といわれるサウンドなんでしょうが、そんな一言で済ますには勿体無いくらい素晴らしいです。

Track List

1. Jane
2. Ligtning Rose (Carry the Fire)
3. Things to Come
4. Awakening
5. Girl with the Hungry Eyes
6. Just the Same
7. Rock Music
8. Fading Lady Light
9. Freedom at Point Zero

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FOREIGNER / Head Games

1979,UK,USA

FOREIGNERの1979年3rdアルバムHead Games。

当時FMラジオでオンエアされまくっていた。
ソリッドなリフを持つ#1やメランコリックな#2など。前作からエレクトリック度とハード・ロック度がアップ。

Track List

1. Dirty White Boy
2. Love on the Telephone
3. Women
4. I'll Get Even with You
5. Seventeen
6. Head Games
7. The Modern Day
8. Blinded by Science
9. Do What You Like
10. Rev on the Red Line

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カテゴリー: FOREIGNER

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