ヒュー・サイム のレビュー

RUSH / Permanent Waves

1979,CANADA

カナダの3人組プログレ・ハード・ロック・バンドRUSHの1979年作Permanent Waves。

ポップでありながら変拍子、劇的な場面転換を共存させ得る独自な手法は他の追随を許さず、21世紀の今聴いても充分に刺激的でカッコ良い。

Track List

1. The Spirit of Radio
2. Freewill
3. Jacob's Ladder
4. Entre Nous
5. Different Strings
6. Natural Science
I: Tide Pools
II: Hyperspace
III: Permanent Waves

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RUSH / Moving Pictures

1981,CANADA

RUSHの1981年作Moving Pictures。

#5以外コンパクトなナンバーで占められているが、それぞれ劇的な展開をしっかり持っており、3ピースであることを忘れさせる巧みなアレンジで必要最低限の厚みを出しているのが凄い。
各パートがお互いをカバーしつつも主張もちゃんとしているので、シンプルなのに濃密という相反する要素が両立する奇跡が体現されている。見習うべきバンドはたくさんあると思う。

Track List

1. Tom Sawyer
2. Red Barchetta
3. YYZ
4. Limelight
5. The Camera Eye
6. Witch Hunt
7. Vital Signs

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DREAM THEATER / Octavarium

2005,USA

DREAM THEATERの8thアルバムOctavarium。

前作エンディングのピアノによるF音を冒頭に配したヘヴィな#1は、「アルコール依存症を克服する12ステップ」の6,7ステップ目。ラストでは#8のテーマ・メロディが提示され、コンセプト・アルバムのような体裁も。
切ないピアノに弦楽四重奏が絡む美しくメロウなバラード#2。ここでも#8のテーマがさりげなく挿入されています。
一転してひしゃげた重低音リフから始まる#3。しかし歌唱パートには透明感すら感じさせる静かなメランコリック・パートもあり、その起伏がドラマティック。
伸びやかでキャッチーな#4。
7弦あるいはバリトン・ギターによる重低音リフがリードする#5。全体的にヘヴィでありながら、叙情味を持ったメロディを共存させているDREAM THEATERらしいナンバー。インスト・パートではIRON MAIDEN風(?)3連パートと通常拍子を交互に持ってくる面白いアレンジもまた彼ららしい仕掛け。
開放的なサビメロが、小刻みにのたうつヘヴィな単音リフとのギャップを生んでいる#6。構築度の高いギター・ソロ、テクノ風シンセのシーケンスなど、アレンジのセンスも円熟の境地。
ミステリアスな歌唱パート、テクニカルなソロ・パート、メロディアスな器楽アンサンブルで構成された#7。
と、ここまで比較的コンパクトな楽曲にメロディとアレンジの妙を凝縮したトラックが続き、いよいよ5パートからなる大作#8へ。
PINK FLOYDのShine on You Crazy Diamondを彷彿させる序盤は、ジョーダン・ル-デス(Key)の独壇場。ペダル・スティールのようなポルタメントの効いた音色はContinuum fingerboardという機材を使っている模様。このアナログ・シンセ風トーンにはプログレ・ファンも大喜びでしょう。続く12弦アコギのアルペジオに乗るボーカル・パートはGENESISのようでもあります。
2パートはテーマ・メロディを中心にジェイムズ・ラブリエ(Vo)の歌唱をフィーチュアした優しく開放的なムード。
アナログ・シンセのスケール練習風ソロもGENESIS的。スピードはかなり速いですが。
緊張感を持った3パートは作詞者のマイク・ポートノイ(Dr)のコーラスが登場。はっきり言って下手ですね。
超絶アンサンブルにジャズ風も交えた器楽パートを経て激しい4パートへ。
そして壮大な5パートでは締めくくりに相応しく、歌い上げるボーカルにオーケストラも参加し大団円へ。ラストのピアノ音がアルバム冒頭への回帰を促す、というクラシックな手法も微笑ましいです。

5人で作った8作目のアルバムでタイトルもOctavarium。ヒュー・サイムによるジャケットやブックレットの至るところに8や5にまつわる図形やイラストが配され、コンセプト・アルバム風ではありますが、音楽そのものというよりもアートと連動した曲のキーや色々な仕掛けにテーマを隠したパッケージ・メディアとしてのトータル・コンセプトのようです。
ただ先人達がそうしてきたように、意味ありげな意匠に拘るところも又ファンの知的好奇心をくすぐる、ということをバンド(というかマイク・ポートノイとジョン・ペトルーシ)は良く解ってますね。
前作でヘヴィネスとアグレッションに一応の決着を付けたからか、本作には全体的に開放的ムードが感じられます。良いメロディをコンパクトに追求した結果でしょうか。アルバムのテーマ8=1オクターブ=8音というところに特に#2~#4あたりのメロディ志向が宣言されていると解釈しているんですが。

Track List

1. The Root Of All Evil
2. The Answer Lies Within
3. These Walls
4. I Walk Beside You
5. Panic Attack
6. Never Enough
7. Sacrificed Sons
8. Octavarium

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DREAM THEATER / Systematic Chaos

2007,USA

DREAM THEATERの9thアルバムSystematic Chaos。

アルバム冒頭とラストにPART1とPART2の楽曲を配すると言うKING CRIMSONのような構成の#1。まずはテーマを提示という感じで特にクライマックスは無し。
メランコリックでキャッチーなメロディとヘヴィネスが理想的に融合した#2。
仕事中毒で音数の多い自分達自身を表現したかのようなタイトルの#3。
入り組んだ音使いのリフをベースにラップ調のボーカルを配した#4。インスト・パートはアヴァンギャルドな要素も含めて多様に展開。ジョン・ミュング(B)のパーカッシブなベースがアクセントになっています。
「アルコール依存症を克服する12ステップ」シリーズの8,9ステップとなる#5は、これまでと違って落ち着いたより内省的なムード。
シンセのシーケンス・パターンに乗せた、調子の悪いQUEENのようなコーラス・パートを含んだ#6。
イントロではっきりとしたテーマ・メロディを提示し、アコギのアルペジオから静かに展開していく15分近いエピック・チューン#7。予想通りサビで盛り上がるもののメロディが弱いのが難点。今イチ突き抜けた感が足りないんですよね。インスト・パートのクオリティは高く、スリリングなシンセとギターのソロ及びハーモニーが聴ける。
思索パートから始まる#1の続きである#8。疾走する和風音階のようなリフはなかなか面白いものの、#1のインパクトが弱かっただけに、あえて分断して配置した意図が成功しているとは思えない。

アトランティックからロードランナーに移籍した第一弾。ここ数作は綿密な計算の元、明確なテーマを持つ作品が続いたが、本作はテーマが無いのがテーマのような、とにかく心機一転、思いついたものをそのまま楽曲にしたかのような作風となっている。その結果、随所にDREAM THEATERらしさを感じられる反面、新鮮な驚きに欠けるきらいも。妙なラップや変てこなコーラスが耳に残るようではね・・・・・。前作ではキレ捲くっていたジョーダン・ルーデス(Key)の存在感が薄いのも残念。
自らの音楽性を見事に表現したタイトルが秀逸なだけに惜しい。

Track List

1. In The Presence of Enemies Pt.1
2. Forsaken
3. Constant Motion
4. The Dark Eternal Night
5. Repentance
6. Prophets Of War
7. The Ministry of Lost Souls
8. In The Presence of Enemies Pt.2

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DREAM THEATER / Black Clouds & Silver Linings

2009,USA

DREAM THEATERの2009年10thアルバムBlack Clouds & Silver Linings。

商売上手なRoadrunner移籍第2弾。何とビルボードのアルバム・チャート6位に!市場全体のアルバム・セールスが不振の中、アルバム・オリエンテッドなファンがこぞって購入した結果というのが背景にあるとは思うが、びっくりです。
長尺4曲を含む6曲構成で全体的に非常にメロディアスな印象。短い#2,#3ではキャッチーなDREAM THEATERらしさをコンパクトな楽曲にまとめるとともに、その他の大作ではそれぞれ違った個性でDREAM THEATERのプログレッシブ面を表現してます。
特に終盤。ジョン・ペトルーシ(G)のエモーショナルなフレーズが感動を呼ぶ、マイク・ポートノイ(Dr)が亡き父への想いを込めたスケールの大きな#5、ギターやポルタメントの効いたシンセのアルペジオを中心にプログレッシブに畳み掛ける序盤のインストパート、カッコ良い4拍子+5拍子による疾走パターンとヘヴィネス・パターンの対比でアレンジの冴えを見せるボーカルパートを持つ#6。この2曲は強力です。
とりわけ、メロディ・緊張感・プログレッシブな展開・メタル的なカタルシスを兼ね備えた#6は新たなマイ・アンセムになろうかという出来。

Track List

1. A Nightmare to Remember
2. A Rite of Passage
3. Wither
4. The Shattered Fortress
5. The Best of Times
6. The Count of Tuscany

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DREAM THEATER / A Dramatic Turn of Events

2011,USA

DREAM THEATERの11thアルバムA Dramatic Turn of Events。

バンドの創始者でありプロデューサー、スポークスマンでもあったマイク・ポートノイ脱退のニュースは衝撃的で意外だったが、後任を迎えてアルバム制作もするという報に接してまず感じたのは、「これで、下手なラップ調ボーカルを聴かなくて済む」という、後ろ向きな安堵感だった。

そして、新作発表が近づくにつれ期待感と共に不安感も起こってきた。マイク・ポートノイが一部のリフを書いたりといった事はあったようだが、メロディ面での才能はもう一人のプロデューサーであるジョン・ペトルーシ(G)やジョーダン・ルーデス(Key)が健在なので大丈夫として、曲の構成やコンセプトといった大局的な側面でのパワーダウンは避けられないだろうということ。確かに件の「ド下手ラップ」のように、強権的な手法が裏目に出たケースもあっただろうが、我々の気づかない部分で楽曲やアルバム構成にDREAM THEATERらしいプログレッシブな先取性やカッコ良さをもたらしていたのも実はマイク・ポートノイだったのかも知れない。

という前提で新作A Dramatic Turn of Eventsを聴きこんでみた。
まず感じるのは、手堅くまとめた安定感。
新加入のマイク・マンジーニ(Dr)のプレイ、Images and WordsやScenes from a Memoryを想起させるメロディアスなボーカル・パート、随所に見られるDREAM THEATERらしいテクニカルなアンサンブル、等々。どこにも破綻が無く非常にスムーズにDREAM THEATERの世界が展開されている。

しかし、スムーズすぎるが故にフックが少ない。
ボーカル・パートは確かにメロディアスだがほとんどがマイナー調のみでの展開で、例えば前作収録の名曲The Best of Timesのようなメジャー/マイナーの明暗があまり描かれていない為、メロディの良さがドラマティックに昇華しないのだ。また、インスト・パート以外ではミディアム・テンポが目立ち、リズム的な緩急もあまり感じられない。

これらの結果、手堅くまとまってはいるが意外性に乏しく新しさも感じられないのだ。
しかもまずいのが、#2のローファイ風ブレイク・ビートや#5におけるシャーマンのホーミー風SEなど、既に色んなバンドが取り入れてきた手垢の付いた手法をDREAM THEATERともあろうバンドが導入してしまっている事。
これにはもはや失望をも感じてしまった。

果たしてマイク・ポートノイが健在だとしたら、これらの要素はどうなっていたんだろうか。
DREAM THEATERもかつて70年代の名バンド達がそうだったように、自らが創り出した様式の中にはまり込んでいくことになるのか。

DREAM THEATERの新作ということでどうしてもハードルが高くなってしまうが、決して駄作な訳ではなく、アルバム随一のプログレッシブ・チューン#3のザクザクしたリフからの超絶インスト・パート、#4や#8でのジョン・ペトルーシの構築性とエモーションを兼ね備えたギター・ソロ、メロウなバラード#7でのジャエイムズ・ラブリエ(Vo)の表現力、#8の緊張感から開放される劇的なアレンジなどなど、さすがDREAM THEATERと唸らせるピンポイントでの聴き所が豊富なのは事実。
ただそれだけに、全体的な小ぢんまり感が残念。

Track List

1. On the Backs of Angels
2. Build Me Up, Break Me Down
3. Lost Not Forgotten
4. This is the Life
5. Bridges In The Sky
6. Outcry
7. Far From Heaven
8. Breaking All Illusions
9. Beneath The Surface

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RUSH / Clockwork Angels

2012,CANADA

カナダのプログレッシブ・ロック・バンドRUSHの19thアルバムClockwork Angels。

2010年のタイム・マシーン・ツアーで披露されていた#1,#2を含む、スチームパンクと錬金術に基づいたコンセプト・アルバム。

#4,#6,#9などでストリングス・セクションが付加されているものの、ギミックは最小限。ライブでの再現を想定したであろう、リフを中心に構築されたストレートな楽曲が中心となっている。
ただし、リフの音使いは比較的オールド・スクールでありながら、キャッチーな歌メロを軸に、広がりのあるバッキング・ギター、硬質なベースと重いドラムが一体となり、時折挿入される変拍子も交えてソリッドで開放的な現代的RUSHサウンドに昇華している所が素晴らしい。

思索風味が入った#1、スティックでのカウントからバンド一丸となり怒涛のヘヴィ・パートに突入する#3、エキゾチックなムードを交えた#4やスリリングな#10などのエネルギッシュなファスト・チューン等々、インテリジェンスとエモーションのどちらにも訴えるカッコ良さ。

#9に代表される抜群の抜けの良さを持つアレックス・ライフソン(G)のギター、リフで主導する#6やランニングするフレーズが印象的な#10でのゲディ・リー(B/Vo)のベース、様々なフィルとヘヴィなヒットで楽曲を牽引するニール・パート(Dr)のドラムと、個々のプレイにも思わず耳に残るフックが満載。

時刻で2112を暗示したカヴァー・アートはRUSHの他、近年のDREAM THEATER作品などの仕事でも有名なヒュー・サイム。

Track List

1. Caravan
2. BU2B
3. Clockwork Angels
4. The Anarchist
5. Carnies
6. Halo Effect
7. Seven Cities of Gold
8. The Wreckers
9. Headlong Flight
10. BU2B2
11. Wish Them Well
12. The Garden

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DREAM THEATER / Dream Theater

2013,USA

プログレッシブ・メタルの先駆者DREAM THEATERの12thアルバム、Dream Theater。

自らが切り開いたプログレッシブ・メタルというジャンル自体が既に爛熟し形式化して久しい中、DREAM THEATER自身もあれこれと模索をしつつもSystematic Caosのような自己模倣に陥ることもあった。しかし、ここ数作では妙なてらいを排した自然なスタイルでマイク・ポートノイの脱退という最大のピンチも乗り切り安定した活動を続けている。

マイク・マンジーニ(Dr)加入後2作目にしてバンド初のセルフタイトルということで注目された本アルバムもまたその流れに沿った原点回帰とも呼べる内容。プログレ・メタル云々以前に、むしろハード・ロックと呼称しても良いくらいのオーソドックスなスタイルの胸アツなリフやキャッチーなメロディを軸足にしている。

ミステリアスで大仰という良くあるタイプの序曲#1。
ギター・リフとドラムのタイトな16分ユニゾンが定番過ぎて意外な#2。しかし素直にカッコ良いし、アルバムの実質的なオープニングとしては最高の滑り出し。特にリズムのパターンを変化させてきた2コーラス目の疾走感がメタル王道で痺れる。ギター・ソロも構築度とスリルを兼ね備えたジョン・ペトルーシらしい素晴らしいプレイ。
#3は変拍子を織り交ぜた北米テイスト溢れるRUSHっぽいキャッチーなナンバー。メロウなパートでのジェイムズ・ラブリエの歌唱も2ndあたりのムードが漂う。
インスト#4はハイテク・アンサンブルとシンセやギターのソロが舞い踊る中、デレク・シェレニアンのプレイを彷彿させるダーティなオルガンが良い感じ。
静動のダイナミズム、開放感あるサビなどストレートでメロディアスなヘヴィ・バラード#5。
バスドラがリードするリフが印象的な#6。
彼らにしては短めの6分半に様々な展開を見せる#7。サビが非常にメロディアス。
清涼感あるサビを持つメランコリックなバラード#8。
22分超の大作#9はちょっと散漫な印象も。ロックな各パーツは邪悪なグルーヴに乗った序盤を筆頭にさすがの出来だが、ありきたりで冗長なシンフォック・パートはDREAM THEATERとしてやる必要性をあまり感じないし、組曲としての一体感もイマイチだ。このあたりに、もしかしたらファン目線を持ったプロデューサーだったマイク・ポートノイによる第三者的視点の不在が影響しているのかもしれない。

最初と最後のシンフォ・パートに蛇足感はあるものの、総合的な印象は無条件に感動した初期のムードに似ている。そういう意味でセルフタイトルは充分に納得のいくものだ。

Track List

1. False Awakening Suite
I. Sleep Paralysis
II. Night Terrors
III. "Lucid Dream
2. The Enemy Inside
3. The Looking Glass
4. Enigma Machine
5. The Bigger Picture
6. Behind the Veil
7. Surrender to Reason
8. Along for the Ride
9. Illumination Theory
I. Paradoxe de la Lumière Noire
II. Live, Die, Kill
III. The Embracing Circle
IV. The Pursuit of Truth
V. Surrender, Trust & Passion

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KARMAKANIC / Dot

2016,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドKARMAKANICの5thアルバム Dot。
宇宙において地球は単なる点=ドットでしかない、というのがアルバム・タイトルの意味らしい。

イントロ#1に続き、様々な起伏と展開を盛り込んだ23分超えの大作#2。メロウな歌唱パートを軸に、陰陽硬軟の転換にヨナス・レインゴールド(B)の子供達と思しきイノセントなコーラスやラレ・ラーション(Key)のハイセンスかつテクニカルなソロなども織り交ぜ、各場面をじっくり丁寧に聴かせる半面、長尺曲にありがちな荘厳さや大仰さは皆無でややカタルシスには欠けるのは大団円をPart.2の#6に譲ったからか。
ニルス・エリクソン(Key/Vo)の素朴な歌唱がポップな曲調にマッチした#3。端正なシンセ・ストリングスがキャッチーなフックとなっている北欧の木漏れ日のように爽やかでキャッチーな歌唱パートに対し、インスト・パートはダークな側面も見せながら次々に展開し手練れのソリスト達が円熟のプレイを聴かせる。
親しみやすいメロディでコンパクトに仕上がった、透明感あるコーラスが印象的なポップ・チューン#4。
スケールの大きなバラード#5。
Part.1を引き継ぎドラマティックな決着を付けつつ、アルバム全体に対しても心地よい余韻を残す#6。

アルバム通して明るくソフトなムードの中、産業ロック風な小品と2パートに分けた合計30分近い大作が違和感無く同居。メロディアスでポップな持ち味にベテランらしい渋味を加えたKARMAKANICならではのさじ加減が見事。隙の無い精緻なアレンジで抜群のチーム・ワークを見せる一方で、ヨラン・エドマン(Vo)の伸びやかな歌唱やヨナス・レインゴールドの歌心溢れるフレットレス・ベース、ラレ・ラーションのテクニカルな指捌きなど個人技もトップ・クラス。#2,#6では病気から復帰したアンディ・ティリソン(Key)をハモンドの客演で迎えるなど、プログレ界隈のフレンドシップ構築にも余念が無い。バンドとして着実に成長を見せる高品質作品。
アルバム・カヴァー・アートはヒュー・サイム。

Track List

1. Dot
2. God The Universe And Everything Else No One Really Cares About Part. 1
3. Higher Ground
4. Steer By The Stars
5. Travelling Minds
6. God The Universe And Everything Else No One Really Cares About Part. 2

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DREAM THEATER / Distance Over Time

2019,USA

DREAM THEATERの14thアルバム Distance Over Time。

レーベルをINSIDEOUT MUSICに移籍しての第一弾。
アルバムごとに明確なテーマを持って制作にあたるDREAM THEATERらしく、前作の長編コンセプト・アルバムから一転して今作はトータル60分程度の尺にするというのが一つの意図だった模様。

メロウなアルペジオから畳みかける無慈悲なメタル・リフに場面転換するダークな#1。
ミステリアスな中にも微妙な音遣いでインテリジェンスを感じさせ、サビでは普遍的なメロディで感動を提供する#2。
オールドスクールなリフからスラッシーに移行しつつ、後半のギター・オーケストレーションではベタな泣きが意外な#3。
RUSHを彷彿させるカラっとした北米プログレ・ハードの序盤から、構築美とエモーションが融合したギターソロを含むメロウな後半へ展開する#4。
トライバルで粗暴なムードのリズムが目新しい#5。
バンド一体となって変拍子で押しまくるパートとメロディアスなサビが融合した#6。
どこかオリエンタルなムードのモチーフを執拗に繰り返す超絶変態プログレ・ナンバー#7。かといってゴリゴリ一辺倒ではなくメロディアスなサビや後半のエモーショナルなインスト・パートにキャッチーさを残すのもDREAM THEATERらしい。
ピアノとメロウなギターがリードする静謐な美バラード#8。
何かが起こりそうな序盤から漂う大作ムードはそれなりだが、アルバム総尺60分の縛りからか、展開していく各要素が収束するカタルシスが彼らにしてはイマイチな#9。
第2期DEEP PURPLE風をダウン・チューニングで再現したかのようなパーティ・ナンバー#10。

坂本龍一が所有していた郊外のスタジオにメンバーが集合。半ば合宿のような感じで作曲を進めたとあって、リフの元ネタやアレンジに各メンバーのアイディアが民主的に取り入れられているらしい。前作では2枚組の長編ストーリーをほぼジョン・ペトルーシ(G)一人で書き上げた事を考えると方向性は真逆で、緻密なDREAM THEATERらしさの中に生々しいライブ感がいつになく増量されているのもバンドとしての絆がより深まったことの結果であろう。
アルバムのプロモーションにSNSを積極的に利用し、楽曲の背景を垣間見せる手法もインテリジェントなバンドらしく、より深堀りしたいファンの特性にマッチ。アルバムを引っ提げてのツアーではリリース20周年となるMetropolis PT2 : Scenes from a Memoryのアルバム全曲再現をアナウンスするなど、商売とファン・サービスが見事に融合している点も見逃せない。

Track List

1. Untethered Angel
2. Paralyzed
3. Fall into the Light
4. Barstool Warrior
5. Room 137
6. S2N
7. At Wit's End
8. Out of Reach
9. Pale Blue Dot
10. Viper King

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DREAM THEATER / A View From The Top Of The World

2021,USA

DREAM THEATERの15thアルバム A View From The Top Of The World。

ミステリアスかつヘヴィなリフ、メロウなパート、ギターとシンセによる超絶バトル等、DREAM THEATERのエッセンスを凝縮した#1。
ヘヴィながらメロディアスな歌唱パートとギターとシンセのスリリングなハーモニーをフィーチュアしたインスト・パートを持つ#2。
キャッチーな抒情メロディを軸に快活なパートや構築度の高いギターソロなどを交えドラマティックに聴かせる#3。
メカニカルなモチーフで緊張感を高めていき、メロウなサビで落差を演出する#4。ダーティなオルガン、幽玄なストリングス系など場面を彩る鍵盤群が効果的。
明朗なリフに近年のDREAM THEATERというかジョン・ペトルーシ(G)ではお馴染みのケルト風味を漂わせた北米プログレ・ハードの系譜に連なる#5。
8弦ギター導入が話題の#6。ことさらヘヴィネスを強調せずメロウネスとのバランス感覚が秀逸。
様々なパートを力技で繋ぎ合わせた感が逆に新鮮な20分超えの長尺チューン#7。

前作にともなう日本公演が中止になるなどCOVID-19の世界的影響で活動もままならない中でも彼らの創作意欲は衰え知らず・・、ではあるのだが、各曲が短尺傾向にあった前作では各楽曲の個性が際立っていたが、今作では長尺にシフトしたためか各楽曲内での展開がバラエティに富んでいる分、楽曲毎のフックが多少弱まった印象。
しかしながら、丸みを帯びたトーンにエモーショナル面での円熟味を感じさせつつ、8弦ギター導入や#1に見られる指板上をメカニカルに移動する構築されたフレーズなどに未だ研究熱心さを伺わせるジョン・ペトルーシの現役ギター・ヒーローぶりが眩しいし、充実したインストパートではギターもシンセも弾きまくってます。

Track List

1. The Alien
2. Answering the Call
3. Invisible Monster
4. Sleeping Giant
5. Transcending Time
6. Awaken the Master
7. A View from the Top of the World

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