ゴシック のレビュー

ALL ABOUT EVE / All About Eve

1987,UK

紅一点のジュリアンヌ・リーガン(Vo)を擁する英国の4人組ロックバンドALL ABOUT EVEの1987年1stアルバムALL ABOUT EVE。

元YARDBIRDSのポール・サミュエル・スミスがプロデュースしてます。サイケ、フォークなどを幅広く包含しつつもキャッチーなメロディを有した音楽性は非常にポピュラリティのあるものです。
その多彩なバックグラウンドの源泉となっているのがティム・ブリッチェノ(G)。ソングライティングは勿論、モジュレーション系エフェクトをうっすらと掛けた独特のエレキによるカッティング、トラッドの影響も感じさせるアコギのアルペジオ、など曲調に合わせた引き出しの多いプレイでサウンドの土台を支えています。そこにジュリアンヌの憂いを秘めた美声による歌唱が乗ることで、冷ややかな湿り気を帯びたALL ABOUT EVE独特の個性が確立されています。

軽快な中にもサビが胸キュンなロックン・ロール#1。
ヴァイオリンをゲストに迎えエキゾチックなムードを醸し出すフォーク#2。
ゴシックなムードの序盤と開放感あるサビの起伏が堪らない#3。
アコギのミステリアスなアルペジオが美しいマイナーな叙情フォーク#4。
メロディックなゴシック・チューン#5。
モーダルな旋律が独特のムードの#6。サビのコーラス・ハーモニーが美しいエピック・チューン#7。
霧のようなストリングスをバックにジュリアンヌがモーダルな響きの歌唱を聴かせる#8。叙情POPな#9。
ピアノとストリングスが翳りを醸成する#10。
アコギがリードしリコーダーが美しく絡むトラッドっぽい雰囲気の#11。
アコギのコード・カッティングをストリングスとコーラスによるオブラートが包み込み幻想的なムードを湛えた#12。
ゴシックな質感を持つロックな#13。
叙情的にラストを締めくくる#14。

等々、陰影を帯びたフック満載の展開でプログレッシブに迫る全14曲。

Track List

1.Flowers in Our Hair
2.Gypsy Dance
3.In the Clouds
4.Martha's Harbour
5.Every Angel
6.Like Emily
7.Shelter from the Rain
8.She Moves Through the Fair
9.Wild Hearted Woman
10.Never Promise (Anyone Forever)
11.Apple Tree Man
12.What Kind of Fool
13.In the Meadow
14.Lady Moonlight

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ALL ABOUT EVE / Scarlet and Other Stories

1989,UK

歌姫ジュリアンヌ・リーガン擁する英国のロック・バンドALL ABOUT EVEの1989年2ndアルバムScarlet and Other Stories。

ティム・ブリッチェノ(G)がタイトル曲#4や#6でのアコギによるブルージーなアプローチ、メロディック叙情チューン#2,#8でのエレキによるメロディアスなプレイ等々、幅広いスタイルで才能を発揮しています。
そしてそれらの集大成が不滅のメランコリック・ゴシック・エピック・チューン#5。時代を超越した名曲です。メロディアスでいて風変わりなメロディ、ストリングスの冷ややかな質感、ジュリアンヌも繊細なコーラスのオーバーダブとか、かなりがんばってます。

ニュー・ウェイブやゴシック・ロックにカテゴライズされがちなALL ABOUT EVEですが、ジュリアンヌの少し鼻にかかった可憐な歌唱とトラッドやサイケのルーツを感じさせる楽曲の存在でプログレ・ファンにも評価が高い1枚です。

Track List

1. Road to Your Soul
2. Dream Now
3. Gold and Silver
4. Scarlet
5. December
6. Blind Lemon Sam
7. More Than the Blues
8. Tuesday's Child
9. Pieces of Our Heart
10. Hard Spaniard
11. Empty Dancehall
12. Only One Reason
13. Pearl Fisherman

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ALL ABOUT EVE / Touched by Jesus

1991,UK

英国の4人組ロックバンドALL ABOUT EVEの1991年3rdアルバムTouched by Jesus。

ジュリアンヌ・リーガン(Vo)と恋仲だったソングライターのティム・ブリッチェノ(G)が恋の破局とともに傑作2ndアルバム”Scarlet and Other Stories”を最後に脱退。バンドは存続を危ぶまれましたが、オーストラリアのサイケ・バンドTHE CHURCHのマーティ・ウィルソン・パイパー(G)がTHE CHURCHとの掛け持ちでALL ABOUT EVEに加入、早速ソングライティングにも関わり新風を送り込みました。
仄かなトラッド風味や湿っぽい叙情味など前作まで存在した要素が大きく減退し、軽やかなポップ・フィーリングがアルバム全体を覆っています。この辺りにはレコード会社からのプレッシャーもあったのかも知れませんが、ジュリアンヌの憂いを含んだ歌声に意外とフィットしていると思いますね。

「あなたのギターの調べと一緒の時しか歌わないなんて言ったのは嘘をついただけ」なんていう強烈な歌詞を含むティムとの日々を揶揄した#2、あれこれと口を挟むレコード会社を批判した#4など題材もファンタジー的なものから現実をテーマにしたものに変化してきています。
そんな中、ゴシックなムードを感じさせる#1や#9、しっとりとした#7や#11等のメランコリックなナンバー、ゲストのヴァイオリンをフィーチャーしたエキゾチックな#10など従来のALL ABOUT EVEらしいテイストの楽曲も存在し、バランス良い仕上がりになっています。
又、#3、#11にはPINK FLOYDのデヴィッド・ギルモア(G)がゲスト参加しております。

Track List

1. Strange Way
2. Farewell Mr. Sorrow
3. Wishing the Hours Away
4. Touched by Jesus
5. Dreamer
6. Share It with Me
7. Rhythm of Life
8. Mystery We Are
9. Hide Child
10. Ravens
11. Are You Lonely

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ALL ABOUT EVE / Ultraviolet

1992,UK

前作”Touched by Jesus”がセールス的に振るわず、レコード会社をフォノグラムからMCAに移籍。プロデュースもバンドのセルフ・プロデュースとなり、勝負を掛けたALL ABOUT EVEの1992年4thアルバムUltraviolet。

サイレンのようなSEがリードするジュリアンヌ・リーガン(Vo)のウィスパー歌唱が衝撃の#1。
モジュレーションを掛けたギターのアルペジオがもたらす浮遊感にウィスパー歌唱が絶妙のマッチングを見せるゴシックなムードの#4。
サビが神秘的な美しさを持つ、沈み込むような#6。
ジュリアンヌがシタールやメロトロンもプレイし、モーダルで独特なムードを醸成する#7。
静と動を行き来し、動のパートでは英国ハード・ロック風ダイナミズムも感じさせる#8。
とても英国的な翳りを湛えた8分超の大作#11。
等、バラエティに富みつつも全体のイメージはアンニュイなムードで統一。
そしてそんな中にもALL ABOUT EVEらしいキャッチーなメロディとフックがキラリと光り、深みを増した音楽性により時代を超越した普遍的な魅力を持ったアルバムに仕上がりました。
しかし、ビデオ・クリップではジュリアンヌが濃い目のメイクに露出度の高いドレスを着用するなど、かなりのイメージ・チェンジと作風の違いで初期からのファンは戸惑ったのか、セールスも芳しく無くバンドは解散してしまいます。

Track List

1. Phased
2. Yesterday Goodbye
3. Mine
4. Freeze
5. The Things He Told Her
6. Infrared
7. I Don't Know
8. Dream Butcher
9 Some Finer Day
10. Blindfolded Visionary
11. Outshine the Sun

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GATHERING / Souvenirs

2003,NETHERLANDS

オランダのゴシック/トリップ/アンビエント・バンドTHE GATHERINGの7thアルバムSouvenirs。

少ない音数で荒涼としたムードを演出するピアノ、無機質なドラムのビートに、アネク・ヴァン・ガースバーゲン(Vo)によるますます表現力を増したボーカルが乗る#1。
歪んだトーンでの16分単音刻みやノイズなど、フレーズというよりはもはやパーツと化したギターが印象的な暗鬱チューン#2。
中低域が中心だった前2曲から打って変わり、アネクのレンジの広く優しい歌唱が楽しめる#3。レネ・ルッテン(G)の寂寥感を感じさせる枯れたトーンのアルペジオが良い感じです。
アネクのロングトーン中心の伸びやかな美声をフューチュアした#4。ここまでのダークなムードから一転して、清涼感が感じられるフォーク・タッチのオーガニックなナンバー。
枯れたアルペジオと印象的なリフレインがリードするダークでクールな中にも、ボーカル・メロディに温かみの感じられるタイトル・チューン#5。
オクターブ違いの歌唱をダブルトラックでユニゾンしたボーカル・パートが、何となくオリエントっぽいエキゾチックなメロディにマッチして不思議なムードを醸し出す#6。
全体的にはアンビエントな空気ではあるが、エモーショナルなサビに往年のゴシック・メタルの薫り漂う#7。
浮遊するシンセと深い残響効果のギターが妖しいトリップ感を演出する#8。
シンプルなギターやピアノ以外に、ゴースト・ノイズや様々なサウンドスケープをコラージュした#9。
スペイシーなイントロに続いて、ノルウェーのバンドULVERのTrickster Gとアネクがデュエットを聴かせるダークな#10。

長らく在籍したCentury Mediaを離れ、自己のレーベルPsychonaut Recordsからのリリースとなっています。
作風は、前作”If Then Else”でのややゴシック・メタルに回帰しつつ管弦楽を取り入れたオーガニックな作風から一転、改めてアンビエント方面の追求を目指したテイストに。先行シングル”Black Light District”に引き続いて、プロデューサーにSONIC YOUTHなどを手がけたZlaya Hadzichを迎えて制作した事が大いに影響しているようです。

Track List

1. These Good People
2. Even The Spirits Are Afraid
3. Broken Glass
4. You Learn About It
5. Souvenirs
6. We Just Stopped Breathing
7. Monsters
8. Golden Ground
9. Jelena
10. A Life All Mine

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GATHERING / Sleepy Buildings

2003,NETHERLANDS

2003年8月オランダでのセミ・アコースティック・ライブを収録した2004年作Sleepy Buildings。

デビュー作からIf Then ElseまでのCENTURY MEDIA期作品からの楽曲をセミ・アコ・アレンジで演奏。いわゆる契約消化作だろう。シンプルな演奏だからこそ光るメロディ・センスとアネク・ヴァン・ガースバーゲン(Vo)の珠玉の歌唱が楽しめます。

Track List

1. Locked Away
2. Saturnine
3. Amity
4. The Mirror Waters
5. Red Is a Slow Colour
6. Sleepy Buildings
7. Travel
8. Shrink
9. In Motion #2
10. Stonegarden
11. My Electricity
12. Eléanor
13. Marooned
14. Like Fountains

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GATHERING / Home

2006,NETHERLANDS

THE GATHERINGの2006年8thアルバムHome。

アネク・ヴァン・ガースバーゲン(Vo)在籍ラスト・アルバム。ゴシック・メタルからアンビエント方面へ徐々にサウンドを変化させてきた彼らの到達点。
思えばアネクの歌は時代を問わず最高だった。Mandylionに始まるゴシックの頃は女帝のような威厳と格調に満ちた歌いっぷりで。そしてこのHomeを含む近作では母性をも感じさせる慈愛に満ちた優しくなめらかなテイストも漂わせて。
表現力では当代No.1だと思います、個人的に。#3,#4,#7あたりを聴いてるとうっとりします。 全体のサウンドもゴシック期から持っていたクールな物悲しさをエレクトロニックな装飾を使用してシンプルに、それでいてより深く表現できており、アネクの今の歌唱とも相性抜群。なお、アネクは新バンドAGUA DE ANNIQUEを結成。

Track List

1. Shortest Day
2. In Between
3. Alone
4. Walking Hour
5. Fatigue
6. Noise Severe
7. Forgotten
8. Solace
9. Your Troubles Are Over
10. Box
11. Quiet One
12. Home
13. Forgotten (Reprise)

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EDEN HOUSE / Smoke and Mirrors

2009,UK

Stephen Carey (ADORATION) とTony Pettitt (FIELDS OF THE NEPHILIM)による女性ボーカル・ゴシック・ロック ユニットEDEN HOUSEの2009年1stアルバムSmoke and Mirrors。

フィーチャーされた4人の女性シンガーにジュリアンヌ・リーガン(ex.ALL ABOUT EVE)が含まれている事からも推察される通り、ALL ABOUT EVEの2ndあたりのムードを狙ったものだろう。それも特にゴシックな名曲Decemberの世界。ただALL ABOUT EVEのそれが、トラッド、フォーク、サイケ、ニューウェーブ等々雑多な音楽性のバックボーンから醸成された独特なものであるのに対し、THE EDEN HOUSEの場合は初めからゴシックに絞り込んだ物であるというところが大きな違い。狙いが明確な反面、耽美なムード偏重の弊害も。概ねどの曲も必殺のサビを持つ一方で、そこに至るまでの歌メロやアレンジに起伏が少なく、重厚なサウンドとは反対に音楽としては浅い印象。
しかし、#2だけは別格。ジュリアンヌのウィスパー気味のヴォイスを重ねた妖しくも美しいハーモニーやヴァイオリンの幽玄な響きで、まさにゴシックな世界を構築。より耽美になったDecemberという風情でかなり楽しめます。

Track List

1. To Believe in Something
2. All My Love
3. Gods Pride
4. Reach Out
5. Trashed Treasure
6. Iron in the Soul
7. Fire for You
8. Beauty of Science
9. Dark Half
10. Sin

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PRISCILLA HERNANDEZ / The Underliving

2011,SPAIN

スペインのシンガー・ソングライター兼イラストレーター プリシラ・エルナンデスの2ndアルバムThe Underliving。

音楽性、イラスト、そして自身のコスプレまで全てがファンタジックでゴシック。
神話や伝説などの文学作品、ホラーやファンタジー映画、そしてスタジオジブリ作品からの影響を自らの作品に投影。
ストリングスにハープやイリアン・パイプ系のオーガニックな楽器から、シンセやデジタル・シーケンスのビートも一つの世界観の中で巧みに融合。
音楽に限って言えば、アンビエントな質感とウィスパーから情念ヴォイスまで様々な声を多層で重ねた音像はダークなエンヤといったところ。

繊細で美しくも妖しいベストトラックの#1を筆頭に、シンセを使用してニュー・ウェーブ風なゴシック感を漂わせる#3、軽快なビートに一瞬明るい表情を見せるメロディが切ない#4、風のSEが不気味な#10、心が洗われるかのような聖なるムードを持つ#11、などファンタジーに浸れる秀作が目白押し。

Track List

1. In the Mist
2. The Underliving
3. Feel the Thrill
4. Through the Long Way
5. Don't be Sad
6. In my Mind's Eye
7. Off the Lane
8. Storm
9. The Aftermath
10. The Wind Song
11. Ode to the Silence
12. Northern Lights
13. Morning Light
14. At the Dream's Door
15. One Last Hope

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GATHERING / Disclosure

2012,NETHERLANDS

オランダのアンビエント/ゴシック・ロック・バンドGATHERINGの10thアルバム Disclosure。
ノルウェー人女性シンガー シリェ・ヴェルヘラント(Vo)加入後2作目。

躍動感あるアップテンポのリズムをバックに、語りかけるような中音域から絹のような高温ファルセットまでを自在に操り、メランコリックなメロディを流麗に紡ぎ出す#1。
インダストリアル風リズムに導かれ、ウィスパーな女性ボーカルと男性ボーカルのデュオで進行するGATHERINGでは珍しいパターンのヴァースからシリェ・ヴェルヘラント単独に移行しヨーロピアンな叙情を感じさせるサビを迎えるキャッチーな#2。トランペットによる哀愁のソロを挟んでムードはさらに一変、ウィスパー歌唱とトランペットが切々と迫る静かなパートに。キャッチーさと展開の妙を盛り込んだ傑作です。
A音でチューニングしているかのようなストリングスの清楚なムードを突如突き破り、妖しいブラスのフレーズが登場し一気に無国籍なフレーバーが広がる#3。スローテンポな中、滑らかで優しい歌唱が神秘的にフィーチュアされています。
ストリングス、ルネ・ルッテン(G)によるテルミンとお馴染みの枯れたアルペジオ、フランク・ブーイエン(Key)のシンセなどからなるアンビエントな空間にシリェ・ヴェルヘラントの美声がたゆたうバラードの前半。そして中盤からは左右にパンニングされたマンドリン風なシンセのシーケンス・フレーズが寂寥感と同時にトリップ感を生み出す10分超の#4。時折挿入されるトランペットがペーソス感を増量。
ローファイなエフェクトを掛けたアンニュイな歌唱のヴァースから、サビではバックの盛り上がりと共に透明感あるソプラノに変化する#5。音像こそ違えど、展開や醸し出すムードはゴシック・メタル期のそれに通ずるものも。
ピアノなどによるシンプルなバックに、リラックスしたシリェ・ヴェルヘラントの歌唱をフィーチュアした#6。
淡々としたリズム・パターンに清廉なコーラスを中心に進行する前半から、トライバルな肉弾ビートをバックにテルミンなどによるノイズが渦巻く中、テーマ・メロディを延々リフレインするトリップ/トランス系の#7。
#5のメロディを透明感あるソプラノでリプライズする#8。霧のようなパッド系シンセやストリングス、クリーンなエレキのアルペジオ等、インスト陣も繊細でヘヴィな印象の#5と対照的な面を見せています。

一部ゲストの女性シンガーを起用(シリェ・ヴェルヘラントが作詞していない2曲)したりと様子見感もあった前作から一転、ツアーなどでその実力を充分に把握できたからか、今作はシリェ・ヴェルヘラントの個性を前面に打ち出し、フェミニンな魅力に溢れる新機軸GATHERINGを完成。
もはや完全にオリジナルなサウンドを確立したバンマス ルネ・ルッテンが引き続きプロデュースも行い、バンドの状態を反映した充実した作品を届けてくれました。

Track List

1. Paper Waves
2. Meltdown
3. Paralyzed
4. Heroes For Ghosts
5. Gemini I
6. Missing Seasons
7. I Can See Four Miles
8. Gemini II

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OPIUM CARTEL / Ardor

2013,NORWAY/SWEDEN

北欧の21世紀プログレを代表するバンド WHITE WILLOWWOBBLERANGLAGARDのメンバーによるプロジェクトOPIUM CARTELの2ndアルバムArdor。

男性ボーカルと可憐な女性ボーカルが時にユニゾン、時にパートを分け合う#1。エレクトロニックなビートにズ太いシンセも交え、ダークでゴシックな世界観が広がる。
ニューウェイブやニューロマンティックを想起させる男性ボーカルがメインのポップ・チューン#2。柔らかいパッド系シンセとエスニックなシーケンス・フレーズを繰り返すマリンバのような音色が印象的。
悲しげなアコギのアルペジオとくすんだフルートをバックに哀愁ボーカルの第一人者ティム・ボウネスが歌う暗黒フォーク#3。
エスニックというかどことなく土着的なムードがするサビのメロディが耳に残る#4。
かわいらしいグロッケンと2本のアコギによる繊細なバックに儚げな女性ボーカルが乗るドリーミーなフォーク・パートと男性ボーカルがリードを取る幽玄な暗黒パートからなる#5。中間部にはメロトロンも。
ボーカル・パートが珍しく終始明るいムードの一方、漆黒のフルートが妖しく舞うインスト・パートとの対比が見事な#6。
女性ボーカルがイコライジングを施した序盤からノーマルに移行するエフェクトが効果的な演出となっている#7。厚いパッド系シンセや滑らかなアナログ・シンセのソロなど、細かい譜割りよりも白玉が目立つアレンジが異色。メロトロンやヴィンテージの香り漂うオルガンが良い感じの空気感を醸成。
アコギとエレキのアルペジオからなる叙情バッキングにウィスパー気味の女性ボーカルが乗るメランコリックな#8。発振させたグラスハープのようなシンセ、滑らかなベースなどが優しく包み込み、暗くも温かみのある北欧ならではの味わい。
イントロのピアノのリフレインをボーカル・パートのバックではグロッケンなどで繰り返し一貫性を持たせつつ、曇天のようなストリングス系シンセ、プログレッシブな様相を呈する7拍子のインスト・パートでの狂おしいサックスなど、器楽系では予想のつかない展開を見せる11分超プログレ・チューン#9。

タイトルのArdor=熱情に反して決して熱くならないクールで幽玄なムードは北欧ならではのもの。
ポップなのに仄暗く、アナログとデジタル的エレクトロニカが融合した独特のサウンド。
男性ボーカルにはゴシックやニューウェイブの薫りも漂い、70年代以降の様々なジャンルの音楽の要素が見え隠れした21世紀的なスタイル。

Track List

1. Kissing Moon
2. When We Dream
3. Then Came the Last Days of May
4. Northern Rains
5. Silence Instead
6. White Wolf
7. The Waiting Ground
8. Revenant
9. Mariner, Come In

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EDEN HOUSE / Half Life

2013,UK

英国のゴシック・ロック・バンドADORATIONのスティーヴン・キャリー(G/Key)を中心としたゴシック・ロック・プロジェクトTHE EDEN HOUSEの2ndアルバムHalf Life。

モニカ・リチャーズ(Vo)をはじめとする数名の女性シンガーを楽曲に応じて起用。フィル・マンザネラ(G)が#1~3に参加している。

エキゾチックでモーダルなメロディのギターとシンプルなベースのリフをバックに、ウィスパー気味のモニカの歌声がセクシーかつクールに響く#1。サビではサウンドに広がりを出しウィスパー・ヴォイスのハーモニーが聴き手を幻惑。
ジョーダン・レイン(Vo)、ローラ・ベネット(Vo)がコーラス毎にリードわ分け合いサビでクールなハーモニーを聴かせる#2。硬のジョーダン、軟のローラ、正反対の声質を持つ2人の歌唱が互いを補完しつつ融合。
タテ乗りリズムに冷たいシンセ・ストリングス白玉のサビでファルセットを交えた可憐な歌唱に萌える、ローラが1人で歌う#3。
時にハスキーになるクイーニー・モイ(Vo)の切ない歌唱が映える、メランコリック・チューン#4。
ローラが又もや絹のような絶品ファルセットを聴かせる#5。
中音域が特徴的なジョーダンの声質を活かしたミステリアスな#6。ヴァイオリンが荘厳なムードを付加している。
ジョーダン、ローラに、メイアン=ノエル・ペティット(Vo)も加わり、魅惑の多層コーラスが躍動感と緊張感あるリズムに乗る#7。
ANATHEMAのリー・ダグラス(Vo)が客演、シンフォニックな展開も見せる#8。
コケティッシュな声質のフェニックス・J(Vo)が歌うアンニュイな#9。

全編で統一された冷徹でモノトーンな感触、適度にウェットな空間処理。
これらが醸し出す王道ゴシック・サウンドのバックボーンにより、歌い手が変わっても散漫にならずムードが一貫している。
効果的に挿入されるヴァイオリンのさりげない気品も良い。
1stアルバムで話題をさらったジュリアンヌ・リーガンの不参加は残念だが、どのシンガーも素晴らしく、これを機に追っかけてみたくなる魅力を持っている。

Track List

1. Bad Men
2. Indifference
3. Wasted On Me
4. Hunger
5. The Empty Space
6. Butterflies
7. The Tempest
8. City Of Goodbyes
9. First Light

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MIDAS FALL / The Menagerie Inside

2015,UK

英国のポスト・ロック/ゴシック・ロック・バンドMIDAS FALLの3rdアルバムThe Menagerie Inside。

耽美なピアノとシューゲイズなギターに支えられた女性ボーカルを軸に、若干エロクトロニカの要素を加えた冷ややかな質感のゴシック・ロックを展開。
印象的ではあるがシンプルなピアノに対して、アルペジオ、ロングトーン、ミニマルなシーケンス、トレモロ・ピッキングに空間系エフェクトを組み合わせたスペイシーなギターが、八面六臂の活躍でアルバムThe Menagerie Insideの全編を支配。特にトレモロ・ピッキングの出現箇所が楽曲のハイライトとリンクするという独自の様式美が確立されており、聴き手はそのトリップ感溢れるエモーショナルな音像にただただ身を委ねることになる。

フロントを張りながらレコーディングやミキシングのエンジニアとしても活躍するエリザベス・ヒートン(Vo)のメランコリックな歌唱は、#3の浮遊するスキャト、#5のアンニュイな多声コーラスなど、ジュリアンヌ・リーガンを想起させる部分もありALL ABOUT EVEのファンにもおすすめ。
#2のフォーキーな序盤、ストリングスを交えたアコースティックな#4、くすんだ明るさを持つ#9など、楽曲のテイストにもALL ABOUT EVEに通ずるものがある。

Track List

1. Push
2. Afterthought
3. Circus Performer
4. Counting Colours
5. Low
6. The Morning Asked and I Said No
7. Half a Mile Outside
8. Tramadol Baby
9. A Song Built From Scraps of Paper
10. Holes

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