MOON SAFARI

MOON SAFARI

2003年に結成されたスウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドMOON SAFARI。
FLOWER KINGSのトマス・ボディンとの共同プロデュースによる1stアルバムで2005年にデビュー。
50年代~60年代アメリカン・ポップスを源流とする、BEACH BOYSなどからの影響も伺える多層コーラスを軸にしたメロディアスな歌メロと、一聴しただけでは気付かない変拍子などのプログレ心をくすぐる実は複雑なアレンジを融合させた21世紀型プログレ。

例えばASIAなどの80年代プログレ・バンドが往年のプログレの大仰な要素をポップな意匠で簡略化して市民権を得たのとは違い、それとは意識させずに何か引っ掛かりを生むプログレ由来の変拍子やめくるめく展開を親しみやすいメロディーの背景に溶け込ませる非凡なセンスとテクニカルな器楽要素がMOON SAFARIの持ち味である。
しかし意外にも使用楽器はシンプルで、鍵盤もピアノやオルガン、メロトロン、ヴィンテージ・シンセとオーソドックスで音色の魔術師のようなトマス・ボディンの芸風とは真逆なのが面白い。

2013年にフェス出演で初来日し、同郷のFLOWER KINGSと同じ舞台に立った。

MOON SAFARI のレビュー

MOON SAFARI / A Doorway To Summer

2005,SWEDEN

スウェーデンのポップなプログレッシブ・ロック・バンド MOON SAFARIの1stアルバム A Doorway To Summer。

プロデューサーは同郷のプログレッシブ・ロック・バンド FLOWER KINGSの鍵盤奏者トマス・ボーディン。

オープニングのピアノとアコギに絡むハーモニカが甘酸っぱい印象の#1。メロトロンやまろやかなシンセもオーガニックなサウンドに溶け合ってロマンティックなムードを醸成。終盤の転調7拍子インスト・パートでは一転してテクニカルなシンセ・ソロも聴かせ、プログレな出自も垣間見せます。
5拍子をここまでポップかつキャッチーに演奏してしまうのか!と驚愕のフォーク風プログレ・ナンバー#2。このあたりはFLOWER KINGSの影響もかなり受けている模様。シンセとギターの一糸乱れぬユニゾン・パートなど器楽的な聴き所も満載。
キャッチーな歌メロを中心としたバラード・ナンバー#3。インスト・パートではいくつものテーマ・メロディを様々に変奏し、楽曲の印象度を高める老獪なアレンジが秀逸。
長尺24分超の#4では5拍子をそれと感じさせない自然なアレンジ力と起伏に富んだ構成力も見せつつ、透明感あるアコギやヴィンテージ・シンセの滑らかなトーン、メロトロン・フルートなど音色選びのセンスも感じさせます。
歌うようにメロディアスなピアノの独奏を冒頭に配した、メロウな#5。

親しみやすい普遍的な良質メロディ、コーラスやシンプルな楽器音による暖かみのあるサウンド、確かな演奏技術、これらが高次元で融合したシンフォニック・ロックを展開。聴き終わった後にポジティブな印象を残す爽やかなアルバム。

Track List

1. Doorway
2. Dance Across the Ocean
3. A Sun of Your Own
4. We Spin the World
5. Beyond the Door

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MOON SAFARI / Blomljud

2008,SWEDEN

爽やかなシンフォニック・プログ・バンドMOON SAFARIの2ndアルバム Blomljud。

アカペラ・コーラスで幕を開けるDISC1 #1。
#1を引き継ぐ15分超の大作DISC1 #2。爽やかなボーカル、ピアノやアコギの清涼感を、変拍子を含む起伏あるアレンジに自然に溶け込ませる脅威の力量を早くも見せ付けます。
ダーティなオルガンが唸る序盤のシリアスでヘヴィなタッチから一転、雄大で爽やかなシンフォニック・ロックに展開するインストゥルメンタル・チューンDISC1 #4。
シタールの味付けが効いたフォーク・タッチのDISC1 #5。
ピアノのフレーズからダークネスを湛えたパートを経てスライド・ギターが舞うシンフォニックなイントロへ移行。ピアノにメロトロンやアコギが加わるボーカル・パートを中心に、透明感あるインスト・パートが感動的なメロディを紡ぐドラマティックなハイライト・チューンDISC1 #6。
カントリーっぽいギターから始まる軽快なDISC2 #1。瑞々しいサウンドに自然な7拍子、天駆けるギター・ソロやジャジィなコード進行の洒落たコーラス・パートなど豊富なアイディアで構成。
北欧のダンス・チューンといった趣の、3連に乗るエキゾチックなメイン・メロディが印象的なDISC2 #2。
重層コーラスを中心にしたキャッチーさの中に、ハッとする転調など非凡なセンスを盛り込んだDISC2 #3。
メロディアスなボーカル・パート、スリリングなインスト・パートを配した、31分超の長尺チューンDISC2 #4。
雨の雫のような美しいピアノのアルペジオをメロトロンが優しく包むDISC2 #5。

既に完成された1stと同路線ながら、溢れる才能を抑えきれないかの如く、メロディとフックが次々に繰り出される様に圧倒される、更に磨きがかかった独自のキャッチーなプログレッシブ・ロック。

Track List

DISC1
1. Constant Bloom
2. Methuselah's Children
3. In the Countryside
4. Moonwalk
5. Bluebells
6. The Ghost of Flowers Past

DISC2
1. Yasgur's Farm
2. Lady of the Woodlands
3. A Tale of Three and Tree
4. Other Half of the Sky
5. To Sail Beyond the Sunset

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MOON SAFARI / Lover’s End

2010,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドMOON SAFARIの3rdアルバムLover’s End。

煌くピアノとどこかセンチメンタルなハーモニカに導かれて一点の曇りも無い爽快なボーカル・メロディが登場するオープニング・ナンバー#1。ちょっとくすんだトーンのメロトロン・フルート(?)が良い感じです。

序曲風の#1のエンディングから溌剌と劇的に幕を開ける#2。FLOWER KINGSを彷彿させるシンフォニックな冒頭、YESのような疾走感あるインスト・パートを内包した14分近くの大作ながら、適度な起伏と数々の素晴らしいフックの存在が長尺である事を一切感じさせません。コーラスのメロディを引き継いでアナログ・シンセ~ギター・ソロと続く中間部は何度聴いてもトリ肌の快感。
重層的なコーラスとピアノによる透明感あるバラード#3。
素直な美メロを奏でるピアノがリードする#4。ここでもボーカル・メロディの反復からインプロヴァイズに移行するシンセ・ソロ、という楽曲のメロディを印象付ける素晴らしいアレンジが施されています。
キャッチーなボーカル・パートにプログレ由来の変拍子シンセ・パートが自然に溶け込んだ、ウルトラ・ポップ・ナンバー#5。
冒頭のメロトロンとシンセによる変拍子インスト・パートがGENESISを彷彿させるアルバム中最もプログレ的な#6。ギターとシンセのユニソン・フレーズを中心に展開していく中間部はシンフォニック・プログレ・ファンなら大興奮間違い無し。
重層コーラスをフィーチュアした#7。北欧フォークロア風なメロディを奏でる3拍子+2拍子のシンセ・パートが印象的。
甘酸っぱい余韻を残し、再び最初からのリプレイを誘う#8。

親しみやすい明るくキャッチーなメロディと、FLOWER KINGSから屈折パートやダークな部分などを取り除いた結果残った希望溢れる桃源郷サウンドで綴る爽快なプログ・ポップ。

ピアノ、オルガン、アコギ、NORDのアナログ風・シンセ、メロトロンなどを必要以上に重ねないシンプルなサウンドでボーカル・ハーモニーを引き立てつつ、インスト・パートでは自然な変拍子やプログレ然とした節回しのシンセ・ソロが耳を楽しませてくれる職人的なアレンジも見事。これでメンバー全員が昼間は別の職業に就いているパート・タイム・ミュージシャンだとは・・・。

Track List

1. Lover's End Pt. I
2. A Kid Called Panic
3. Southern Belle
4. The World's Best Dreamers
5. New York City Summergirl
6. Heartland
7. Crossed the Rubicon
8. Lover's End Pt. II

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MOON SAFARI / The Gettysburg Address

2012,SWEDEN

スウェーデンのポップなプログレッシブ・ロックバンド MOON SAFARIのライブ盤 The Gettysburg Address。
2011年5月20日Rosfestでの模様を収録したCD2枚組。
ブレイクした3rdアルバムを中心に1st,2ndからも選曲され、現時点でのベスト・アルバム的なラインナップ。

MOON SAFARIについてはオフィシャルサイトも(2012年2月現在は)適当な感じでなかなか情報が入ってこないため、スタジオ・プロジェクトのような印象を持っていましたが、そこそこライブ活動も行っているようで、収録されている演奏もコーラス・ワークから伸びやかなボーカル、複雑なアンサンブルも完璧!
特にスタジオ盤ではシンセとユニゾンでメインのメロディを奏でる場面の多いギターが、ミックスの関係で良く聴こえ、想像以上に随所でキーボード的なパッセージを弾いている事が判明。サーカスのようなテクニックを使う訳では無いですが、相当大変ですよこれは。

また、改めて感じたのが、MOON SAFARIが使用している楽器音の種類が意外な程少ないと言うこと。
素晴らしいメロディとアレンジに耳を奪われてカラフルな印象を持ってましたが、エレキ、アコギ、ピアノ、アナログ風単音シンセ、メロトロン、オルガン、ベース、ドラム、とシンプルなものばかり。まぁ勿論、メロトロンやシンセ系はライブではMIDIのサンプル音源使用でしょうが。
これでここまでバラエティに富んだ楽曲を構築できるとは驚きです。

まさにライブを見据えたかのような楽器構成なので本作でも再現性はバッチリ。個人的に21世紀のNo.1キャッチー&プログレ・チューンと感じている#7で聴かせる一糸乱れぬ完璧なアンサンブルには惚れ惚れしますね。且つ、キャッチーにまとめるセンス・・・・。
素晴らしすぎます。

今後も今まで同様の楽器構成で行くのか、それとも新機軸を打ち出してくるのか?
4thアルバムが待ち遠しいです。

Track List

DISC.1
1. Moonwalk
2. Lovers End Pt.1
3. A Kid Called Panic
4.Yasgurs Farm
5. The Worlds Best Dreamers
6. Dance Across The Ocean

DISC.2
7. Heartland
8. New York City Summergirl
9. Other Half Of The Sky
10. Doorway

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MOON SAFARI / Lover’s End Pt.III Skellefteå Serenade

2012,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロック・バンドMOON SAFARIのEP Lover’s End Pt.III Skellefteå Serenade。
アルバムLOVER’S END収録のパート1、パート2の続編にして完結編。

パート1、パート2の爽やかで甘酸っぱいムードはそのままに、珍しく少々ダークなパートや思いっきりエモーショナルなギターを付加。
お馴染みのテーマ・メロディの変奏でニヤリとさせ、壮大なスケール感、より巧みになった場面転換で駆け抜ける24分。
四季の移ろいを想起させる起伏に満ちた瑞々しい表現力は益々磨きがかかり、一人ひとりのキャラが個性的な多層コーラスも絶好調。
7分中盤のダークなムードからメジャーに移行する開放感。雫のようなピアノからの爽やかで疾走感あるボーカル・パート。
11分中盤からはお待ちかねアナログ・シンセのリフがリードするプログレ・パート。畳み掛ける展開の中、構築度の高い天駆けるギター・ソロ、そしてシンセのリフにギターがユニゾンで加わる部分のスリル。
19分中盤からはいよいよ名残惜しさを増幅する壮大なラス前の大盛り上がり。
ディレイが掛かったギター・ソロが泣きまくり。特に21分06秒からのスライドでポジションをハイに移動する部分が絶品。まるで涙を拭うかのようなタメが、胸を締め付けるセンチメンタルなメロディと相まって最高の感動をもたらします。

もはや完璧。
もしiPhoneに3曲しか入れてはいけないという法律ができたとしても確実に入れます。名曲。

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MOON SAFARI / Himlabacken vol.1

2013,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド MOON SAFARIの4thアルバムHimlabacken vol.1。

トレードマークのコーラス・ワークを活かしたコンパクトながら壮大でファンタジックな序曲#1。
MOON SAFARIがおそらく最も得意とするタイプの、変拍子入り爽快でキャッチーな実質オープニング・チューン#2。構築度の高いテクニカルなギター・ソロがカッコ良い。
QUEENのようなオペラティックなコーラス、何故かキダ・タローのプロポーズ大作戦のテーマを想起してしまったヒネリのあるパート、ダークなパートでのシンセやピアノの合いの手オブリガード、そして序盤は静かな4拍子で提示されたサビをドライブ感と高揚感溢れるアップテンポ3連のパートでリプライズする#3。フック満載で展開していく各パートや伏線からの解決がパーフェクト。エンディングをあっさり終わらせる潔さも何か清々しい感じ。
ヘヴィなリフと曇天のようなメロトロンがダークなムードを醸す序盤と対比するかのように歌唱パートはバラードのように甘い#4。スライド・ギターとELOのようなコーラスが感傷的なアクセントになっている。
静かな序盤からサビで一気にシンフォニックな広がりを見せるバラード#5。
ギター1本だけで歌う#6。幼い息子に対する父親の優しい目線が感じられるほのぼのとした小曲。
仄かに北欧フォークロアをまぶしたモチーフをキラキラしたピアノ、ギター、シンセなどで次々に提示する長めのイントロが既に名曲の#7。クラシカルなコード進行のサビやプログレ然とした器楽パートなどをコンパクトに内包させるアレンジも巧み。
じわじわと盛り上げるドラマティックな#8。3分半からはギターとシンセの絡むインスト・パートと爽やかに疾走する歌唱パートを配置。終盤のマイナー調パートが美しくも透明感があり、余韻を持たせてアルバムを締めくくります。

すっきりキャッチーなプログレを確立した前作やEPの流れを継続してファンの期待に応えつつ、往年のプログレを彷彿させる展開しまくり(ただしパーツはキャッチー)の#3で驚きをも提供。MOON SAFARIの代表曲となるであろう#3はアナログの時代ならA面ラストとかに配置するべき勝負曲のはずだが、あえてアルバム序盤のこのポジションに置くということは、他の曲にも自信があるからだろう。
まだまだアイディアには枯渇しないようだ。vol.1ということで続編にも期待大です。

Track List

1. Kids
2. Too Young To Say Goodbye
3. Mega Moon
4. Barfly
5. Red White Blues
6. My Little Man
7. Diamonds
8. Sugar Band

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