陰陽座 のレビュー

陰陽座 / 迦陵頻伽

2016,日本

妖怪ヘヴィ・メタル・バンド陰陽座の13thアルバム迦陵頻伽(かりょうびんが)。

思わず「曲順を間違えたかな」と思わせる意表を突いたバラード風のオープニング・チューン#1。黒猫(Vo)のしっとりとした歌唱をフィーチュアしてメロウに聴かせる。
その#1が絶妙のフリとなって満を持した王道HM/HRでオチを付ける#2。#1の余韻の中、ハイハットのカウントがライヴを彷彿とさせるニクい演出がまさに瞬火(B/Vo)ならでは。マンネリを避けつつもメタル・ファンの心理を知り尽くした粋な計らいで早くも聴き手を引きずり込んでいく。
瞬火のヴォーカルや男性陣による咆哮に加え、低音チューニングでヘヴィネスを演出した序盤から黒猫歌唱の伸びやかなサビに至る#3。
和旋律、琴のオブリガードなど和風なエッセンスを加え、ハードながらも超キャッチーな#4。黒猫の瑞々しい歌唱が楽曲の美しさをより印象的にしている。毎回必ず収録されている「化粧品のCMでも使える楽曲」は、本アルバムではこの楽曲だ。
ワーミーペダルを活かしたトリッキーなサビがフックとなったヘヴィ・チューン#5。
黒猫のセクシーでかわいい歌唱が一度聴いたら耳から離れないファンキーかつグルーヴィな#6。
クラブでは無くディスコだった時代のグルーヴを陰陽座のフィルターで再構築。次々に韻を踏むサビが楽しいダンス・チューン#7。4thアルバム鳳翼麟瞳に収録の飛頭蛮(ろくろくび)の後日談とか。
問答無用のカッコ良さに思わずガッツポーズ!黒猫による扇情力抜群のメタル歌唱が感涙すら誘う珠玉の疾走メタル・チューン#8。
瞬火と黒猫の男女ツイン・ヴォーカルをフーチュアした妖しげなプログレ風ファンタジー・チューン#9。
黒猫の歌唱と瞬火のグロウルとの美醜や緩急など、対比する要素を融合したアレンジの妙が効いている#10。
黒猫の艶やかな美声が堪能できるバラード#11。
#8と並ぶ完成度のシンフォニック・メタル#12。瞬火が歌うサビのバックに流れる黒猫の透明感あるスキャットが繊細にして美麗。
ラスト・チューン#13は恒例のポップなパーティ・ソング。仄かに漂う抒情が新鮮。

コンセプト・アルバムの10th、2作同時リリースの11th,12thと、ここ数作はビジネスマン瞬火らしいマーケティング部分での話題も豊富だったが、本作は純粋に音楽のみで勝負。しかし、メタルにハード・ロックにポップに和風にディスコ!と、幅広い音楽性を軽やかに吞み込んで陰陽座として消化及び昇華させる手腕は見事で、全ての楽曲が水準以上の出来栄えとなっている。
変幻自在の表情を見せる黒猫の歌唱、記名性溢れる各々のソロと時に絶妙のハーモニーで楽曲に彩りとフックを持たせる招鬼(G)と狩姦(G)のツイン・ギター。そしてそれらメンバーの個性を適材適所に発揮させつつ自身も活かす敏腕プロデューサーにして全曲の創造主たる瞬火。
”陰陽座”は、もはや”信頼のブランド”と言っても過言ではないだろう。

Track List

1. 迦陵頻伽
2. 鸞
3. 熾天の隻翼
4. 刃
5. 廿弐匹目は毒蝮
6. 御前の瞳に羞いの砂
7. 轆轤首
8. 氷牙忍法帖
9. 人魚の檻
10. 素戔嗚
11. 絡新婦
12. 愛する者よ、死に候え
13. 風人を憐れむ歌

陰陽座 / 迦陵頻伽 のレビューを見る

フォローもよろしくお願いします!

Search

Twitter

Facebook

TOP