陰陽座 のレビュー

陰陽座 / 鳳翼麟瞳

2003,JAPAN

男女ボーカルを擁し妖怪ヘヴィ・メタルを標榜する陰陽座の2003年4thアルバム鳳翼麟瞳。

自らもマニアとしてヘヴィ・メタル・ファンの心理に応えたリーダー瞬火(B/Vo)の粋な計らいによる#1~#2のドラマティックな構成で、オープニングからリスナーのハートをがっちり鷲掴み。
ゴリゴリの疾走チューン#3。
キー=Aでボーカルは黒猫(Vo)のみというフォーマットがお約束の忍法帖シリーズ#4。
ムーディな瞬火/叙情的な黒猫の歌唱が交差し、招鬼(G)のギター・ソロが冴えるドラマティックな9分超の和風プログレッシブ・チューン#5。
オールドスクールなリフとサビの黒猫のスクリームがカッコ良い#6。
ヘヴィなシャッフルに乗った#7。
メタル・ファンならガッツポーズしそうなカッコ良いオープニングから叙情パートも盛り込みつつ展開するメロディアスな#8。
三柴 理がピアノで客演し黒猫のしっとりとしたボーカルが堪らない#9。
お約束ラストのパーティ・チューン#10。

一分の隙も無いアルバム構成で、オーソドックスかつメロディアスなHR/HMをベースに和風・妖怪という切り口で自らのアイデンティティを示しつつ、ありきたりには終わらないプログレッシブなスパイスも効かせた傑作です。

Track List

1. 焔ノ鳥
2. 鳳翼天翔
3. 麒麟
4. 妖花忍法帖
5. 鵺
6. 叢原火
7. 飛頭蛮
8. 面影
9. 星の宿り
10. 舞いあがる

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陰陽座 / 夢幻泡影

2004,JAPAN

妖怪ヘヴィ・メタルを標榜する陰陽座の5thアルバム夢幻泡影。

ムーディなイントロ#1からスピーディなメタル・チューン#2へ繋がる王道パターンで、又もやリスナーの心を鷲掴みのアルバム冒頭。もうこれだけで傑作の予感がビンビン伝わってきますね。
その#2は練られたメロディや展開もさることながら、サビでの黒猫(Vo)、瞬火(B/Vo)による歌詞を微妙に違えた演出が面白いです。
さらに、#2のエンディングからクロスフェードして畳み掛ける、IRON MAIDENのような単音ハーモニー・リフを持つ#3。黒猫の威厳をも感じさせるハリのある歌声とサビのファルセットが堪りません。
カッコ良くグイグイくる序盤から一呼吸置き、キャッチーに仕上げた#4は狩姦(G)作曲のナンバー。
瞬火と招鬼(G)によるデス声合戦と和風メロディのギター・ソロがカッコ良い#5。挿入された狂言風パートも馴染んでいるし、これは陰陽座でしかできない楽曲ですね。
続く招鬼作の#6も黒猫の演歌風ボーカルが印象的。コブシ回しが完璧で、疾走する和風リフとの相性も抜群。中間部の展開も見事なプログレッシブ和風メタルの傑作です。
COVERDALE PAGEのTake Me For A Little Whileをまんまパクったクリーンなギターのアルペジオがご愛嬌な#7は、黒猫の透明感あるハイトーンが蕩ける様に美しいポップなバラード。
忍法帖シリーズ#8はシンプルなリフをベースにしながらも、7拍子の不条理リフをバックにした台詞パートから黒猫の透き通る歌唱をフィーチャーした広がりのあるプログレッシブ・パートに展開する部分が、昇天しそうな程ドラマティック。
童謡のような懐かしさと優しさを感じさせるメロディーに、しっとりとしたボーカルが映える黒猫作のバラード#9。
そして締めはお約束パーティ・ソング#10。瞬火のソウルフルな歌唱と黒猫のチャーミングな歌唱が絶品です。

王道ヘヴィ・メタル、和風な装い、プログレッシブな展開、美メロが渾然一体となりながら、メタル然としたカッコ良さをあくまでも軸に据えた陰陽座の面目躍如たる大傑作です。

Track List

1. 夢幻
2. 邪魅の抱擁
3. 睡
4. 鼓動
5. 舞頚
6. 輪入道
7. 煙々羅
8. 涅槃忍法帖
9. 夢虫
10. 河童をどり

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陰陽座 / 臥龍點睛

2005,JAPAN

妖怪ヘヴィ・メタルを標榜する陰陽座の6thアルバム臥龍點睛。

瞬火(B/Vo)のボーカルで始まるオーソドックスなハード・ロック#1。
招鬼(G)と狩姦(G)によるハーモナイズ・ソロをフィーチュアした#2。
オールド・スクールなリフがリードする#3。
と、序盤のここまでがアレンジ、プロダクション共々アッサリし過ぎでいつものドラマ性に欠けますね。バスドラのビーターのアタック音が妙に浮いてる感じでどうも気になります。

TVアニメの主題歌にもなった、黒猫(Vo)の瑞々しい歌唱が染み渡るメロディアスでカッコ良いハード・ロック#4。
クリーン・ギターのアルペジオに瞬火と黒猫のツイン・ボーカルで物語を紡ぐ#5。
ブルータルなリフと男性陣によるデス・ヴォイスでゴリゴリ押し捲り、サビでは黒猫の伸びやかな歌唱でアクセントを付ける#6。
イントロがBON JOVIのRun Awayみたいなコード進行の#7。瞬火と可憐な黒猫の歌唱がムード歌謡のような陰陽座ならではのテイストを醸し出しています。
と中盤戦は徐々に持ち直し、黒猫が作曲したメロディック・スピード・メタル・チューン#8でひとつの頂点を極めます。メタル・クイーン然としたサビの黒猫の熱唱と、斗羅(Dr)のツーバスなど典型的スピード・メタルの楽曲展開及びアレンジがカッコ良すぎる、本アルバム最初のハイライト。

#9~#11は源義経の悲劇を描いた組曲。
義経が兄・頼朝の為にとその天才的な才能を奮い、戦勝を重ねる姿を描いた勇壮な#9。徐々に義経の存在が疎ましくなり、彼を排除しようとする頼朝の策謀をお馴染み和風リフを軸にプログレッシブでダークなムードで表現したドラマティックな13分超の大作#10。自然な場面転換、必然性のある台詞パートなど、陰陽座のプログレッシブ・チューンの最高傑作と言っても良いでしょう。そして、義経と生き別れた静御前の哀切を黒猫が艶やかな歌声で紡ぐバラード#11。
#12は黒猫のチャーミングな歌唱が萌え萌えな、お約束のパーティ・ソング。

前年秋にシングルとして3ヶ月連続でリリースされた壮大なスケールの歴史絵巻#9,#10,#11が本作の最大のハイライトであることは間違いないが、先にシングルで全部揃えた者の立場からすると12曲中3曲が既に聴き馴染みの楽曲というのは少々ガッカリ。この組曲やTV主題歌の存在もあってアルバムとしてはどこかチグハグな印象(特に序盤が低調)。#4や#8のような傑作があるだけに惜しい。

Track List

1. 靂
2. 龍の雲を得る如し
3. 彷徨える
4. 甲賀忍法帖
5. 不知火
6. 鬼ころし
7. 月花
8. 蛟龍の巫女
9. 組曲「義経」 悪忌判官
10. 組曲「義経」 夢魔炎上
11. 組曲「義経」 来世邂逅
12. 我が屍を越えてゆけ

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陰陽座 / 魔王戴天

2007,JAPAN

全国ツアーやベスト盤で話題を提供しつつも、スタジオ盤となると2年ぶりとなる陰陽座の2007年7thアルバム魔王戴天。

オープニングに続く疾走系#2で早くもブリテュッシュ由来の古典的アレンジに和風テイストを織り込む独自の王道パターンで聞き手をKO。
キャッチーな#3、ヘヴィな#4とたたみかけて忍法帖シリーズの#5では斬新なアレンジと安全地帯(古ッ!)のようなサビで意表を突いて来る。
そして妖怪プログレッシブな#7の巧みな変拍子アレンジ、黒猫がしっとり艶やかに歌い上げる胸キュン・バラード#9と続き、最後は瞬火がポジティブなメッセージ・ソング#10を伸びやかに披露して大団円。というアルバム構成も完璧。前作のモヤモヤを3倍返しで吹き飛ばす快作だ。

Track List

1. 序曲
2. 魔王
3. 黒衣の天女
4. 不倶戴天
5. 覇道忍法帖
6. ひょうすべ
7. 大頚
8. 骸
9. 接吻
10. 生きることとみつけたり

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陰陽座 / 魑魅魍魎

2008,JAPAN

陰陽座の2008年8thアルバム魑魅魍魎。

瞬火が毎回、自らのマニアっぷりを隠そうともせずに施す1~2曲目の流れ、というメタル・ファンのハートを鷲づかみにする仕掛けが今回は無し。
Gソロで盛り上げといての尻切れトンボのようなエンディングは一体?
スクラッチ・ノイズとピッキング・ハーモニクスを絡めたバッキングがカッコ良い#3。#4でのサビ・メロにうっすら合わせたハーモニーの練り具合、等ピンポイントではナイスな要素が点在しつつもそれを楽曲単位に昇華できないもどかしい展開の序盤戦。
が、陰陽座らしい和風なおどろおどろしさの#6あたりから様相は一変。#7の舞い上がるような黒猫によるサビメロも、陰陽座カラー満点。
続くクライマックスの#10は、黒猫による美と瞬火による妖しいムードという序盤の対比、ムーディなツイン・ギターからアップテンポに移行する中盤の展開、
そして黒猫による台詞を合図に突入するヘヴィな終盤と、一分の隙も無く物語が紡がれたまさに妖怪ヘヴィ・メタルな秀作。
中盤以降だけなら陰陽座の最高傑作ですよ。

Track List

1. 酒呑童子
2. 蘭
3. がしゃ髑髏
4. 野衾忍法帖
5. 紅葉
6. 青坊主
7. 魃
8. しょうけら
9. 鬼一口
10. 道成寺蛇ノ獄
11. 鎮魂の歌
12. にょろにょろ

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陰陽座 / 金剛九尾

2009,JAPAN

陰陽座の2009年9thアルバム金剛九尾。

斗羅(Dr)がバンドを脱退し、本名の河塚篤史でサポート・ドラマーとして参加。作曲は全て瞬火(B/Vo)のペンによるもの。

注目されたオープニング#1は意表を突いて、ライト感覚なサビを持つキャッチーな楽曲。サビで瞬火から黒猫(Vo)にボーカルがスイッチする瞬間の爽快感が、そう来るとは予想しつつも新鮮です。
続く#2は陰陽座らしいオールド・スクールなリフがリードするメロディアスなハード・ロック。
招鬼(G)と狩姦(G)による細かいフレーズのハーモニーで幕を開け、黒猫の滑らかな歌唱が乗るメタル・チューン#3。
サビでの黒猫のロング・トーンが瑞々しいメロウな#4。
キー=A、ボーカルは黒猫のみ、というフォーマットがお馴染みの忍法帖シリーズ#5。
瞬火の歌唱が映える#6。
と、ここまでは陰陽座スタンダード路線。
本アルバムのハイライトはここから。
対になったハードな#7とシズル感溢れる黒猫の歌唱が涙を誘うバラード#8で軽くジャブを入れて、組曲#9~11に突入。
メロディアスでキャッチーなサビで黒猫の表現力を改めて証明する#9。
変拍子を交えたプログレッシブでドラマティックな楽曲構成に瞬火の才能が光る9分超の大作#10。
和風なメタル・リフとギター・ソロで陰陽座の個性を発揮した#11。
そしていつも通りパーティ・ソングの#12で締め。全体的にリバーブが深めにかけられたプロダクションはメタルな攻撃性を殺いでいる反面、今回収録されたいつにも増してキャッチーでメロディアス路線な楽曲にはフィットしていますね。
そしてそれが黒猫の歌唱を引き立てるとともに、彼女をこの狭いフォーマットの中に閉じ込めておくのが惜しい、という気持ちにもさせるんですよね・・・ 。

Track List

1. 貘
2. 蒼き独眼
3. 十六夜の雨
4. 小袖の手
5. 孔雀忍法帖
6. 挽歌
7. 相剋
8. 慟哭
9. 組曲「九尾」~玉藻前
10. 組曲「九尾」~照魔鏡
11. 組曲「九尾」~殺生石
12. 喰らいあう

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陰陽座 / 鬼子母神

2011,JAPAN

妖怪ヘヴィ・メタルを標榜する陰陽座の10thアルバム鬼子母神。

瞬火(B/Vo)書き下ろしの戯曲「絶界の鬼子母神」をベースにしたコンセプト・アルバム。
初期から組曲を手掛けてきた陰陽座というか瞬火からすると意外だが、コンセプト・アルバムというスタイルは10作目にして初の試み。

従来のアルバムではお約束とも言えたキー=Aで歌は黒猫(Vo)単独の「忍法帖」シリーズやラストを締める黒猫の萌え声パーティ・ソングなどの楽曲を排除、毎回 瞬火が担当するカヴァー・アートの題字を書道家の武田双雲に依頼、さらに別売りで戯曲「絶界の鬼子母神」を書籍出版するという異例づくしの展開でバンドの意気込みが伝わってきます。

内容も期待に違わぬ素晴らしい出来。
物語のオープニングに打ってつけのアップテンポなハード・ロック#1~#2、巧みな拍子チェンジを交えたインテリジェントな展開を見せる至高のプログレッシヴ・メタル#8、#1と同様のピアノのテーマから怒涛の王道疾走メタルに移行し黒猫のメタル・クイーン歌唱が乗るメタル・ファンならガッツポーズ必至の#12といったメタル・チューンを軸に、#6,#11といった瑞々しい叙情バラードや、キャッチーな#7、黒猫のこぶしが効きまくった演歌スタイル歌唱とファンキーなグルーヴを融合させ物語の肝となる村の異様な風習の狂気を描く#5など、キャラの立った楽曲が揃い聴き手のイマジネーションを刺激します。

余韻を残さず突如終わるエンディングも逆にドラマティックさを演出、プロデューサー瞬火の仕掛けたワナにハマりっ放しの61分超大作。
パッケージ・メディアの売上が右肩下がりで、頼みの「サクッとダウンロード」でもカバーしきれない状態の音楽業界にあって、音楽を”作品”として聴かせようという真摯な姿勢が伝わってくる良い作品ですね。

Track List

1. 組曲「鬼子母神」~啾啾
2. 組曲「鬼子母神」~徨
3. 組曲「鬼子母神」~産衣
4. 組曲「鬼子母神」~膾
5. 組曲「鬼子母神」~鬼拵ノ唄
6. 組曲「鬼子母神」~月光
7. 組曲「鬼子母神」~柘榴と呪縛
8. 組曲「鬼子母神」~鬼子母人
9. 組曲「鬼子母神」~怨讐の果て
10. 組曲「鬼子母神」~径
11. 組曲「鬼子母神」~紅涙
12. 組曲「鬼子母神」~鬼哭

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陰陽座 / 雷神創世

2014,日本

妖怪ヘヴィ・メタル・バンド陰陽座の12thアルバム雷神創世。

ドラムのビートが雷鳴のように轟くアルバムのイントロダクション的なオープニング#1。瞬火(B/Vo)メインの歌唱に黒猫(Vo)がハーモニーで加わっていく瞬火らしい演出が冴える。
黒猫のファルセットも交えた堂々たる歌いっぷりがメタル・クイーン然とした、ツーバス連打が牽引するメタル・チューン#2。
オールドスクールなハード・ロック寄りのリフを持つ#3。
スラッシーなリフ、瞬火のデス・ヴォイスとギタリスト達の掛け声で押し捲る、陰陽座男子チームのみによる硬質なメタル・チューン#4。
黒猫のコブシが絶品の演歌調歌唱をフィーチュアした#5。
黒猫の歌唱とキー=A(アルバム全曲ドロップDチューニングの為かここではキー=G)というフォーマットに則った忍法帖シリーズ#6。
ユーモラスな歌詞とそれに合わせたチャーミングな黒猫の歌唱が楽しめる招鬼(G)作曲のファンキーな#7。
シンガーとしても進境著しい瞬火の男っぽい歌唱と黒猫のクリアな歌声を対比させたメロディアスなハード・ロック#8。
メロウなパートでのファルセットを交えた透き通った美声、ロックなパートでのメタル・クイーン歌唱、不穏なパートでのおどろおどろしさ等、展開に合せて様々な表情を見せる黒猫の歌唱が素晴らしい12分超のエピック・チューン#9。
雅な和琴をイントロに配し、黒猫がしっとりとした美声を聴かせるバラード#10。
稲妻のようなツインリードのリフがフックとなり、静から動へ徐々に展開する起伏が見事なメタル・チューン#11。
メンバーの出身地愛媛弁で瞬火が歌う陰陽座定番のパーティ・ソング#12。

ドラマティックなオープニング、疾走メタル・チューン、復活した忍法帖シリーズ、黒猫のバラエティ豊かな表現力、そして締めのお祭りと陰陽座の定番パターンをハイクオリティ且つ抜群の安定感で綴る雷神創世。
メンバーの個性を各楽曲の随所に打ち出したプロデュース能力に加え、コンセプト・アルバムの次に2作品同時リリースという驚きのマーケティング戦略。
瞬火の才気はまだまだ尽きることが無いようだ。

Track List

1. 雷神(らいじん)
2. 天獄の厳霊(てんごくのいかづち)
3. 千早振る(ちはやぶる)
4. 人首丸(ひとかべまる)
5. 夜歩き骨牡丹(よあるきかわらぼたん)
6. 神鳴忍法帖(かんなりにんぽうちょう)
7. 天狗笑い(てんぐわらい)
8. 青天の三日月 Rising Mix(せいてんのみかづき)
9. 累(かさね)
10. 蜩(ひぐらし)
11. 而して動くこと雷霆の如し(しこうしてうごくことらいていのごとし)
12. 雷舞(らいぶ)

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陰陽座 / 風神界逅

2014,日本

妖怪ヘヴィ・メタル・バンド陰陽座の11thアルバム風神界逅。

クリーンなギターのカッティングとメロトロン・フルートの静かなイントロから、壮大で爽やかなシンフォニック・パートに発展する陰陽座としては珍しいタイプのオープニング・チューン#1。
#1からの入り方がメタル王道のカッコ良さを持つ疾走チューン#2。狩姦(G)による構築度の高いクラシカルなリックがカッコ良い。
#2とテンポやキーが同じで一瞬「続き?」と錯覚するも、ハード・ロック寄りなリフとキャッチーなサビに個性を持たせた#3。
瞬火(B)がシャウトするゴリゴリなヘヴィ・メタルに、黒猫(Vo)の和風コブシ歌唱で陰陽座らしいフックを加えた#4。
黒猫のフェミニンな歌声をフィーチュアしたバラード#5。
ブリティッシュ・ハード・ロックの古式に則ったツイン・リード・リフが牽引する、タイトルを具現化したスピード・チューン#6。
単音とハーモニクスを多用したリフに80年代アメリカンHR/HMの薫り漂う、瞬火の歌唱パートも含んだ忍法帖シリーズとしては異色の#7。
ムーディな序盤から3拍子へ変化し、さらに5拍子のパートも交えての複雑な展開をメロディアスにさらりと聴かせる、陰陽座らしいプログレッシブ・バラード#8。
メイン・ストリームでも充分通用するであろう、狩姦作曲のメロディアスなポップ・チューン#9。
シンセストリングスをバックに黒猫の美麗ソプラノが堪能できる、日本的な雅を感じさせるメロディも秀逸な黒猫作曲の雄大なバラード#10。
疾走チューンでありながら、黒猫、瞬火ともにメタル度を抑えたマイルドな歌唱で叙情を印象付けるドラマティックでメロディアスなメタル・ナンバー#11。瞬火歌唱パートに、1オクターブ上でユニゾンする黒猫の歌唱がうっすらとミックスされて神秘的な透明感を演出する手法は陰陽座ならでは。
黒猫の伸びやかでキュートな歌唱をフィーチュアした明るいポップ・ナンバー#12。

同時リリースの雷神創世が剛だとすると、本作風神界逅は柔か。
全曲レギュラー・チューニングによる煌びやかさは、時に疾風の如くあるいは爽やかな風のように、風をモチーフにした楽曲との相性が良く、瞬火のプロデュース能力の高さを改めて証明。
少々キャッチーながらそこは勿論妖怪ヘヴィ・メタルの範疇の話であり、メタル・ファンならガッツ・ポーズ間違いなしの#2、#11など楽曲群は珠玉揃い。
楽曲ダウンロード全盛の時代にあって、瞬火自ら手掛けるアートワークへのこだわりやクレジットでのちょっとした遊び心には、次もCDを買ってみたいと思わせる吸引力がある。
サウンド・プロダクションやギタリスト2人のプレイも、数作前と比較すると格段に向上している。

Track List

1. 風神(ふうじん)
2. 神風(かみかぜ)
3. 然れど偽りの送り火(されどいつわりのおくりび)
4. 一目連(いちもくれん)
5. 蛇蠱(へびみこ)
6. 飆(つむじかぜ)
7. 無風忍法帖(むふうにんぽうちょう)
8. 八百比丘尼(やおびくに)
9. 眼指(まなざし)
10. 雲は龍に舞い、風は鳳に歌う(くもはりゅうにまい、かぜはとりにうたう)
11. 故に其の疾きこと風の如く(ゆえにそのはやきことかぜのごとく)
12. 春爛漫に式の舞う也(はるらんまんにしきのまうなり)

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陰陽座 / 迦陵頻伽

2016,日本

妖怪ヘヴィ・メタル・バンド陰陽座の13thアルバム迦陵頻伽(かりょうびんが)。

思わず「曲順を間違えたかな」と思わせる意表を突いたバラード風のオープニング・チューン#1。黒猫(Vo)のしっとりとした歌唱をフィーチュアしてメロウに聴かせる。
その#1が絶妙のフリとなって満を持した王道HM/HRでオチを付ける#2。#1の余韻の中、ハイハットのカウントがライヴを彷彿とさせるニクい演出がまさに瞬火(B/Vo)ならでは。マンネリを避けつつもメタル・ファンの心理を知り尽くした粋な計らいで早くも聴き手を引きずり込んでいく。
瞬火のヴォーカルや男性陣による咆哮に加え、低音チューニングでヘヴィネスを演出した序盤から黒猫歌唱の伸びやかなサビに至る#3。
和旋律、琴のオブリガードなど和風なエッセンスを加え、ハードながらも超キャッチーな#4。黒猫の瑞々しい歌唱が楽曲の美しさをより印象的にしている。毎回必ず収録されている「化粧品のCMでも使える楽曲」は、本アルバムではこの楽曲だ。
ワーミーペダルを活かしたトリッキーなサビがフックとなったヘヴィ・チューン#5。
黒猫のセクシーでかわいい歌唱が一度聴いたら耳から離れないファンキーかつグルーヴィな#6。
クラブでは無くディスコだった時代のグルーヴを陰陽座のフィルターで再構築。次々に韻を踏むサビが楽しいダンス・チューン#7。4thアルバム鳳翼麟瞳に収録の飛頭蛮(ろくろくび)の後日談とか。
問答無用のカッコ良さに思わずガッツポーズ!黒猫による扇情力抜群のメタル歌唱が感涙すら誘う珠玉の疾走メタル・チューン#8。
瞬火と黒猫の男女ツイン・ヴォーカルをフーチュアした妖しげなプログレ風ファンタジー・チューン#9。
黒猫の歌唱と瞬火のグロウルとの美醜や緩急など、対比する要素を融合したアレンジの妙が効いている#10。
黒猫の艶やかな美声が堪能できるバラード#11。
#8と並ぶ完成度のシンフォニック・メタル#12。瞬火が歌うサビのバックに流れる黒猫の透明感あるスキャットが繊細にして美麗。
ラスト・チューン#13は恒例のポップなパーティ・ソング。仄かに漂う抒情が新鮮。

コンセプト・アルバムの10th、2作同時リリースの11th,12thと、ここ数作はビジネスマン瞬火らしいマーケティング部分での話題も豊富だったが、本作は純粋に音楽のみで勝負。しかし、メタルにハード・ロックにポップに和風にディスコ!と、幅広い音楽性を軽やかに吞み込んで陰陽座として消化及び昇華させる手腕は見事で、全ての楽曲が水準以上の出来栄えとなっている。
変幻自在の表情を見せる黒猫の歌唱、記名性溢れる各々のソロと時に絶妙のハーモニーで楽曲に彩りとフックを持たせる招鬼(G)と狩姦(G)のツイン・ギター。そしてそれらメンバーの個性を適材適所に発揮させつつ自身も活かす敏腕プロデューサーにして全曲の創造主たる瞬火。
”陰陽座”は、もはや”信頼のブランド”と言っても過言ではないだろう。

Track List

1. 迦陵頻伽
2. 鸞
3. 熾天の隻翼
4. 刃
5. 廿弐匹目は毒蝮
6. 御前の瞳に羞いの砂
7. 轆轤首
8. 氷牙忍法帖
9. 人魚の檻
10. 素戔嗚
11. 絡新婦
12. 愛する者よ、死に候え
13. 風人を憐れむ歌

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