KINO のレビュー

KINO / Picture

2005,UK

IT BITESのジョン・ベック(Key)、MARILLIONのピート・トレワヴァス(B)、ARENAのジョン・ミッチェル(G/Vo)らによるプログレッシブ・ロック・バンドKINOの1stアルバム Picture。

スリリングなアップテンポのハード・ポップ#1。中間部のファンタジックでかわいらしいパートや各所のフック、まるでリード・シンセとも言っていいくらい独自のメロディを紡ぎながらアレンジの一部として出過ぎないキーボードなど、匠の技を結集し9分超をドラマティックに構築。
4音パターンのアルペジオ・シーケンスがにリードし、広がりのあるサウンドでシンフォニックに盛り上がる#2。ここでも右CHのシンセが大活躍。
マリンバ風のパーカッシブなシンセでクールにキメた#3。テーマ・メロディと美しいサビが非常に印象に残ります。
沈痛でメランコリックな序盤から壮大なスケールに展開する#4。
多層的なシンセとオルガンが有機的に絡み合ったシンフォニックなパートとハード・エッジなギターによるヘヴィなパートが起伏を生む#5。
ピアノやボーカルとシンセのユニゾンなどで繰り返すテーマ・メロディが美しすぎるバラード#6。
3拍子で進行する落ち着いたムードの#7、7拍子に乗せたキャッチーな#8、とアルバム構成にもアクセントが。
ギターのアルペジオとパッド系シンセによる繊細な前半、トリッキーなリズムを使用した中間部、印象的なリフレインを繰り返す後半とプログレッシブに構成された#9。
モーダルなメロディが独特の神秘的なムードを醸成する小品の#10。

2人のジョンは後にIT BITESを再結成することになるので、そのプロトタイプという見方もできますね。IT BITESでは意図的にフランシス・ダナリーに似せた歌唱を聴かせるジョン・ミッチェルもここでは自然体。

ジョン・ベックのカラフルなシンセは往年程の派手さは無いものの、相変わらずの音色センスとボーカル・メロディを引き立てる印象的なラインで地味ながらアレンジに溶け込ませているところが凄い。2000年代で80年代風キラキラ・シンセ音をここまでセンス良く使うのは彼ならではの技ですね。ジェフ・ダウンズあたりも見習って欲しいですね。

ボーカルやサウンド面でのアクの強さこそIT BITESに譲りますが、アメリカ人には到底作れない端整で胸を打つメロディで満たされた各楽曲はさすがベテラン達から成るバンドらしい英国の味そのものです。

Track List

1. Losers Day Parade
2. Letting Go
3. Telling You
4. Swimming In Women
5. People
6. All You See
7. Perfect Tense
8. Room For Two
9. Holding On
10. Picture

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KINO / Radio Voltaire

2018,UK

フランシス・ダナリーに代えてジョン・ミッチェル(G/Vo)をフロントに据えた再結成IT BITESのプロトタイプとなった2004年結成プロジェクトKINOの2ndアルバムRadio Voltaire。

内省的なムードがジョン・ミッチェル個人プロジェクトLONELY ROBOTに近いメロウな#1。ダイナミックかつテクニカルなドラムを聴かせるのはFROST等でのジョン・ミッチェルのバンド・メイトであるクレイグ・ブランデル(Dr)。
ダークだがどこかユーモラスなギター・リフとピッチ・ベンドやポルタメントを駆使したジョン・ベック(Key)らしいカラフルなシンセが印象的な#2。
ジョン・ミッチェルの切々とした歌唱をフィーチュアした美バラード#3。
アンニュイなサビのコーラスに英国的ペーソスを含むキャッチーなバンド・チューン#4。
シンセのシーケンスがリードするモダン・ポップ・チューン#5。
爽やかで繊細なアコギ・バラード#6。
古き良きテイストの歌唱パートと対比するシンフォニックな中間インスト部を持つ#7。
ピアノとサウンドスケープをバックに配したバラード小品#8。
5拍子に乗せた奇妙なメロディからカッコ良い怒涛のサビに移行するプログレ・ポップ#9。
深みのあるメロディが染みるバラード#10。メロトロン風シンセの浮遊感やインスト・パートの壮大なオーケストレーションも良い。
神秘性を持った静寂の序盤から分厚い音像のインスト部に展開する#11。

テクニカルなモダン・プログに90年代風カラフルなシンセをコーティングしたIT BITESタイプでありながら、全体的にリラックスしたテイストで刺々しい緊張感は皆無。シリアスで緻密なIT BITES、モダンかつスタイリッシュなFROST、スペイシーで抒情的なジョン・ミッチェル個人プロジェクトLONELY ROBOTと意識的に差別化を図りKINO=プログ・ポップ・バンドとしての独自テイストを演出。

ジョン・ベックはゲスト扱いのため、今作ではユニークなサウンドの一端にその面影が浮かぶ程度でアレンジなどは予めジョン・ミッチェルがほぼほぼ作りこんでいたのではないかと思われる。
メンバー各人が色々と掛け持ちで忙しい人達なのでパーマネントな活動は難しそうだが、次があれば個人的にはジョン・ベックに昔のようなトンがったシンセ・サウンド及びプレイを期待したい。

Track List

1. Radio Voltaire
2. The Dead Club
3. Idlewild
4. I Don't Know Why
5. I Won't Break So Easily Any More
6. Temple Tudor
7. Out of Time
8. Warmth of the Sun
9. Grey Shapes on Concrete Fields
10. Keep the Faith
11. The Silent Fighter Pilot

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