KING CRIMSON のレビュー

KING CRIMSON / In the Court of the Crimson King

1969,UK

ロバート・フリップ(G)率いるKING CRIMSONの1969年1stアルバム In the Court of the Crimson King。

衝撃のディストーション・ヴォイスとインストゥルメント・パートの構築されたスリリングな展開がエバーグリーンな魅力を持つロック史に残る名曲#1。
英国的で静謐な側面が魅力的な#2。
グレッグ・レイク(B/Vo)の叙情的なボーカルとメロトロンの洪水でお馴染みの#3。
叙情とアバンギャルドが両立した#4。
神々しいまでのメロディとそれを増幅するメロトロンのシャワーが快感の#5。

イアン・マクドナルド(Key等)がサックスやフルート、メロトロン、ヴィブラフォンとマルチに活躍し、バンドのアイディアを具現化。
ポップ・ミュージックのフィールドにおいて、全ミュージシャンと全リスナーに表現の可能性が無限である事を示したロック界永遠のバイブルです。

Track List

1. 21st Century Schizoid Man/Mirrors
2. I Talk to the Wind
3. Epitaph/March for No Reason/Tomorrow and Tomorrow
4. Moonchild/The Dream/The Illusion
5. Court of the Crimson King/The Return of the Fire Witch/The Dance of the Puppets

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KING CRIMSON / In the Wake of Poseidon

1970,UK

KING CRIMSONの1970年2ndアルバム In the Wake of Poseidon。

マルチ・プレイヤーで音楽的イニシアチブをロバート・フリップ(G)と分け合っていたイアン・マクドナルドが脱退し、新たにメル・コリンズ(Sax/Fl)、キース・ティペット(Pf)、ゴードン・ハスケル(Vo=#3の歌唱)が参加。

前作の延長上の方向性でアルバム・タイトルやヘヴィな#2、メロトロンをフィーチュアした#4など楽曲構成が1stと対を成している所も。
しかし叙情性という部分では、静謐なフォーク#1,#3,#5,#8やメロトロンの洪水サウンドがクリアになった#4のように難解なインプロビゼーションを配し、分かりやすくすっきりした作風で楽曲ごとの焦点が絞り込まれた事が奏功しています。
#6ではポップ・ソングをベースにキースのジャジーなピアノを盛り込み、#7ではホルストの火星をアレンジするなど新機軸も見せています。
メンバーが流動的な状態で制作された事で、収録各楽曲のテイストがバリエーション豊かに拡散してしまっている所を#1,#5.#8の三部作が上手に配置され、アルバムとしての統一感をギリギリでキープしています。

Track List

1. Peace-A Beginning
2. Pictures of a City/42nd at Treadmill
3. Cadence and Cascade
4. In the Wake of Poseidon/Libra's Theme
5. Peace - A Theme
6. Cat Food
7. Devil's Triangle: Merday Morn/Hand of Sceiron/Garden of Worm
8. Peace - An End

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KING CRIMSON / Lizard

1970,UK

KING CRIMSONの1970年3rdアルバム Lizard。

メンバーの相次ぐ脱退でロバート・フリップ(G)とピート・シンフィールド(Word)の2人だけになってしまったKING CRIMSONはメル・コリンズ(Sax/Fl)、ゴードン・ハスケル(Vo/B)、アンディ・マカロク(Dr)を新メンバーに迎えてアルバムを制作。準メンバーのキース・ティペット(Pf)や管楽器奏者ゲスト陣が、整然と構築された楽曲群に彩りを加えています。

アコギのアルペジオをバックに静かな叙情を湛えた歌唱パートとメロトロンによる不穏なリフがリードする混沌パートの対比が印象的な#1。
アンディ・マカロクの小刻みなビートと管楽器のインプロビゼーションがジャジーな#2。
キース・ティペットがアバンギャルドなフレーズを織り込み、他のパートもアドリブ的に好き放題やりつつも、整合感を保持する#3。
フルートが瑞々しい美しさを醸成する静かな歌物小品#4。
YESのジョン・アンダーソンが参加、序盤で美しい詩情に溢れた歌唱を披露した組曲#5。中間部では静かなボレロのリズムに乗ったメロディアスなインスト・パートでエキゾチックなムードを織り交ぜつつ展開。後半は、メロトロンの奏でるダークなメロディを皮切りにブラスセクションのヘヴィなリフをバックに管やピアノの混沌としたフリー・インプロビゼーションも登場。

アルバム通して整理された叙情とカオスなインプロビゼーションが融合し、静謐なヨーロピアン・テイスト薫る1枚となりました。

Track List

1. Cirkus
Including Entry of the Chameleons
2. Indoor Games
3. Happy Family
4. Lady of the Dancing Water
5. Lizard
i)Prince Rupert Awakes
ii)Bolero: The Peacock's Tale
iii)The Battle of Glass Tears
including Dawn Song,Last Skirmish,Peince Rupert's Lament
iv)Big Top

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KING CRIMSON / Islands

1971,UK

英国プログレッシブ・ロック・バンド KING CRIMSONの1971年4thアルバム Islands。

ボズ・バレル(Vo/B)、イアン・ウォレス(Dr)の新メンバーにキース・ティペット(Pf)のグループを加えて制作。

ボズ・バレルの繊細な歌声による東洋的なメロディとキース・ティペットのアバンギャルドな中にも美しいピアノが清楚なムードを醸し出す#1。メル・コリンズ(Sax/Fl)がフルートでは叙情的に、サックスではアバンギャルドに活躍してます。
#1のテーマ・メロディを継承したかのようなサックスのリフがリードする#2はサックスやギターのインプロビゼーションが繰り広げられるインストゥルメンタルで、中盤にはメロトロンが不穏なムードを煽り緊迫感あるバンド・アンサンブルに発展します。
繊細で叙情的なボーカル・パートとヘヴィなリフのパートが対比した#3。
ブルーズ・ロックをベースにしながらもジャジーなオブリガードやPOPなボーカル・ハーモニー、メタリックな不条理リフと様々なフックが公然一体となった#4。
室内管弦楽が美しく叙情を紡ぐ#6の序曲#5。静かで清楚な#6ではトランペットの物悲しくもどこか希望も感じさせるメロディが胸を打ちます。うっすらと切れ込んでくるメロトロンも秀逸。

構築されたアンサンブルよりも個人のインプロビゼーションを重視した楽曲構成でありながら、アルバム全体としては端整で静謐なイメージが残る不思議なアルバムです。これを最後に詩人ピート・シンフィールドが脱退します。

Track List

1. Formentera Lady
2. Sailor's Tale
3. Letters
4. Ladies of the Road
5. Prelude: Song of the Gulls
6. Islands

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KING CRIMSON / Larks’ Tongues in Aspic

1973,UK

KING CRIMSONの1973年5thアルバム Larks’ Tongues in Aspic。

一旦バンドを解散したロバート・フリップ(G)が新生CRIMSON立ち上げにあたり選出したメンバーは、ジョン・ウェットン(B/Vo)、ビル・ブラッフォード(Dr)という既に名の通った実力者に加え、前衛パーカッショニストのジェイミー・ミューア(Per)、デイヴィッド・クロス(Vln)というメンツ。
スタジオでの実験的サウンド・メイキングよりも、ライヴにおける丁々発止のインプロビゼーションを重視したようです。

このスタンスを形にしたのがヘヴィでメタリックな#1。ジェイミー・ミューアのパーカッションに挑発されたメンバーが、即興で次々にプレイを叩き付け合う様が緊張感に溢れております。セッション中、他メンバーの熱いプレイを聴きながら、手応えを感じたロバート・フリップはおそらくニヤッとほくそ笑んでいたのではないでしょうか。
初期CRIMSONの叙情とは違ったコンテンポラリーな感触のメロウなナンバー#2。
デヴィッド・クロスのヴァイオリンが端整な叙情を湛える#3。
この#2,#3そして続く#4は、ジョン・ウェットンの友人で元SUPERTRAMPのリチャード・パーマー=ジェイムズが詩を書いているようです。
泥水のイントロをはじめとするジェイミー・ミューアの様々なアイディアとキャッチーなサビが融合した#4。
理性的なベース・リフに乗って、ヴァイオリンとギターによる不安感を煽るようなフレーズが絡み合い、徐々に盛り上がっていく#5。ジェイミー・ミューアによるハエの飛んでいるような音が鬱陶しさを倍増させております。
5拍子のヘヴィ・メタリックなギター・リフとヴァイオリンの端整なテーマ・メロディが対比して、美しくもダークでメタリックでありながらもオーガニックなうねりを醸成する#6。

後にツアー中に失踪してしまうジェイミー・ミューアのエキセントリックなテンションが、ロバート・フリップの目指すメタリックなサウンドに多大に貢献した中期の代表作です。

Track List

1. Larks' Tongues in Aspic, Pt. 1
2. Book of Saturday
3. Exiles
4. Easy Money
5. Talking Drum
6. Larks' Tongues in Aspic, Pt. 2

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KING CRIMSON / Starless and Bible Black

1974,UK

KING CRIMSONのスタジオ6thアルバム Starless and Bible Black。

ドライブ感満点の疾走パートと変態リズムのボーカル・パートを併せ持つ#1。
ジョン・ウェットン(B)のジェントルな歌唱にメロトロンの叙情が重なる序盤、ジェイミー譲りのパーカッションを聴かせるビル・ブラッフォード(Dr)、ロバート・フリップのメタリックな質感のギターがせめぎ合う#2。
お互いに手の内を探り合うようなインプロビゼーションが途中でブツ切れとなる#3。
ライブ部分のイントロにスタジオ録音のパートが巧く溶け合い、この時期ならではのクールなヨーロピアン叙情を醸し出す#4。
デヴィッド・クロス(Vln)のヴァイオリン、ロバート・フリップのメロトロン、ジョン・ウェットンのベースによる、東洋的なムードを感じさせるメロディの典雅なインスト#5。
妖しくも美しいメロトロン、ファンキーな薫り漂うベース、美しいハーモニーのボーカルというバラバラな要素が混沌の中から徐々に絡み合い出し、ようやくイイ感じになってきたところで突然ブツ切れとなる#6。
リズム・セクションがリードする中、ノイジーなギターと不協和音を奏でるメロトロンにより暗黒風味に着地した#7。
ギターによるメカニカルかつミニマルなリフが執拗に反復されながら、やがてヘヴィに発展する#8。

前作のツアー中にジェイミー・ミューアが失踪し脱退、4人編成に。
完成度の高いスタジオ録音部分である#1と#2及び#4のボーカルイン以降を除いてライブ・レコーディングされた本作は、実験的なインプロビゼーションによるライブ・バンドとしてのミュージシャンシップの高さを見せ付ける衝撃的な内容。

Track List

1. The Great Deceiver
2. Lament
3. We'll Let You Know
4. The Night Watch
5. Trio
6. The Mincer
7. Starless And Bible Black
8. Fracture

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KING CRIMSON / Red

1974,UK

KING CRIMSONのスタジオ7thアルバム Red。

ジョン・ウェットン(B/Vo)中心に他のメンバーがどんどん音量を上げるステージで居場所を失ったデヴィッド・クロスが脱退、残った正式メンバー3人に加え、デヴィッド・クロスを含めイアン・マクドナルドやメル・コリンズなどかつてのメンバーのゲスト参加を仰ぎ制作された70年代KING CRIMSONのラスト・アルバム。

重金属を思わせるギターの上昇フレーズがうねるヘヴィなインスト#1。
ジョン・ウェットンのボーカルをフィーチュアした叙情チューン#2。ゲスト陣のサックスやオーボエが陰影を帯びて良い感じに仕上がってます。
#1のテイストをベースに、キャッチーとも言えるボーカル・パートやサックス・ソロをフィーチュアしたインスト・パートを織り交ぜた#3。
と、アナログA面のここまでをロバート・フリップ(G)はメタル・サイドと表現。

デヴィッド・クロスの軋んだヴァイオリンとサウンドスケープを中心に混沌としたインプロビゼーションを展開する#4。雰囲気モノに終始するギターやヴァイオリンと比べ、よりはっきりとしたフレーズでアンサンブルを牽引するジョン・ウェットンの存在感(と音量)が凄まじい。
そして70年代CRIMSONのラストを飾る#5。メロトロンの寂寥感、叙情的なボーカル・メロディ、哀愁のサックス、屈折した暗黒インスト・パート、暴虐のヘヴィネス・パートと様々なテイストを盛り込んだバンドの最後を飾るにふさわしい集大成的名曲です。

アルバムの発売直前にロバート・フリップが突如解散を宣言。
プログレッシブ・ロックの黎明期から常にシーンをリードしてきたバンドの歴史にひとまず終止符を打つ事に。

Track List

1. Red
2. Fallen Angel
3. One More Red Nightmare
4. Providence
5. Starless

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KING CRIMSON / Discipline

1981,UK/USA

KING CRIMSONのスタジオ8thアルバム Discipline。

バンド解散後、ニュー・ウェイヴやポップス方面での活動でリサーチを重ねたロバート・フリップが、フランク・ザッパやTALKING HEADSなどとのセッションでその特異なキャラクターを発揮していたエイドリアン・ブリュー(G/Vo)、両手のタッピングで幅広い音域をカバーする弦楽器=チャップマン・スティックを操るトニー・レヴィン(B)という2人のアメリカ人を加えてKING CRIMSONを再編。イギリス人の旧メンバーも6角形のパッドでお馴染みの電子ドラム シモンズを導入したビル・ブラッフォード(Dr)、ローランドのギター・シンセサイザーGR-300を使用するロバート・フリップ、と最新機材で武装。ちょっとしたNAMM SHOW(毎年1月にアナハイムで開催される楽器ビジネスショー)状態ともいえるバンドが目指したのは、ロバート・フリップが提唱するディシプリン。
規律とでも解釈すれば良いのか、メカニカルなシーケンス・フレーズや各パートがそれぞれ独自の拍子で進行しズレとシンクロが快感を呼ぶポリリズムなど、鍛錬によるテクニックの追求とと幾何学的な整合感が基本コンセプト。

トニー・レヴィンのスティックによる飄々としたリフ(ヴィブラートが肝)、エイドリアン・ブリューのギターによる象の鳴き声、ロバート・フリップのギター・シンセなど、80年代KING CRIMSONの代表曲となった前衛ポップ・チューン#1。
ギターの高速シーケンス・フレーズ、2本のギターによるポリリズムがもたらすズレとシンクロが知的快感を呼び起こす#2。
東洋的ムードを纏ったメロウなポップ・チューン#3。
ビル・ブラッフォードのドラミングをフィーチュアした#4。
ジャングル・ビートに乗った#5。
ギター・シンセをフィーチュアした#6。
シンプルなリズムをバックに、2本のギターが計算されつくした緻密な絡みでエスニックな薫り漂うメロディを紡ぐ#7。

ディシプリンを標榜しながらも、その整合性の対極にある混沌としたエスニック感覚や飛び道具的なエイドリアン・ブリューをあえて起用したところに、ロバート・フリップの音楽的あるいは商売的なバランス感覚を感じます。

Track List

1. Elephant Talk
2. Frame by Frame
3. Matte Kudasai
4. Indiscipline
5. Thela Hun Ginjeet
6. The Sheltering Sky
7. Discipline

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KING CRIMSON / Beat

1982,UK/USA

再結成KING CRIMSONの2作目にして通算9thアルバム Beat。
メンツはバンド史上初の前作同様ラインナップで、ロバート・フリップ(G)、ビル・ブラッフォード(Dr)エイドリアン・ブリュー(G/Vo)、トニー・レヴィン(B)。

表面のシンプルなビートと裏側の奇数拍子パターンを反復する2本のギターが織り成す表裏一体のポリリズムが不思議な浮遊感をもたらす前作路線の#1。
クリアなカッティング・ギターとアンニュイなムードが印象的なボーカル・ナンバー#2。
無機質にも聴こえるリズム隊とエキゾチックなモードで奏でられるファットでチープなギター・シンセによる緊張感あるパートから、リラックスした南国リゾート風パートへの移行が心地よい#3。
エスニックな有機的ビートを打ち出す方法論が、パーカッションとギターのメカニカルな無機的反復フレーズであるとうパラドックスが面白い#4。
扇情的なサイレン音とエイドリアン・ブリューのボーカル、フリーにランニングするベース、叩きまくるドラム。ジャムの混沌からやがて緻密なアンサンブルに移行するも、変拍子の嵐で容易にその正体を現さないエキセントリックでいながらインテリジェントな#5。
パーカションとクリアなギターのゆったりとしたエスニック感。ギター・シンセのソロをフィーチュアした#6。
5拍子、7拍子など局面で変化するボーカル・ナンバー#7。ノイズをコントロール下に置いたエイドリアンのギター・ソロが唯一無二個性を発揮。
ダークな即興アンサンブルの#8。

アンサンブルに対するプログレッシブな姿勢を一見キャッチーなニュー・ウェイブ風テイストの影で進行させた、普通の音楽リスナーからマニアックなリスナーまで幅広い需要に応えるアルバムです。

Track List

1. Neal and Jack and Me
2. Heartbeat
3. Sartori in Tangier
4. Waiting Man
5. Neurotica
6. Two Hands
7. The Howler
8. Requiem

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KING CRIMSON / Three Of A Perfect Pair

1984,UK/USA

Discipline期KING CRIMSONの最終作にして通算10thアルバム Three Of A Perfect Pair。

7拍子の引っかかりはあるものの全体的には物憂げなニューウェーブ風ボーカル・チューン#1。ギター・シンセの音色パッチ切り替えが、エフェクト風効果をもたらすソロが面白い。
メロウなパートを持つボーカル・チューン#2。
バスドラ4つ打ちとスラップ・ベースのビートにボーカルとパッド系シンセが被さる#3。
東洋的なニュアンスの浮遊感あるバッキング演奏に乗せたボーカル・チューン#4。
パーカッションをバックにサウンドスケープと様々なギターのインプロビゼーション・フレーズを加えた#5。
反復するリズム・パターンをベースにヘヴィなギターのフレーズやノイズがコラージュしたかのような#6。
#6をよりアヴァンにしたかのような混沌のインスト・パートとポップなボーカル・パートが共存する#7。
インプロビゼーションだが、むしろノイズと言っても良い#8。#9のイントロとしての位置付けか?
太陽と戦慄のパート3ということで話題となった#9。メカニカルなギターのシーケンス・フレーズ、軽いカッティング中心のリフ、シモンズの特徴的なサウンドなど、Discipline期KING CRIMSONのエッセンスを名曲のフォーマットに融合した感じ。ここといった山場に欠けるのが惜しい。

ネタは出尽くしたのか、弦楽器のメカニカルな絡みを中心とした緊迫感やポリリズムのトリックなど、この時期特有のテイストが薄い作品。

Track List

1. Three of a Perfect Pair
2. Model Man
3. Sleepless
4. Man with an Open Heart
5. Nuages (That Which Passes, Passes Like Clouds)
6. Industry
7. Dig Me
8. No Warning
9. Larks' Tongues in Aspic (Part III)

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KING CRIMSON / Thrak

1995,UK/USA

90年代に復活したKING CRIMSONのスタジオ11thアルバムThrak。

ロバート・フリップ(G)、エイドリアン・ブリュー(G/Vo)、トニー・レヴィン(B/Stick)、トレイ・ガン(Stick)、ビル・ブラッフォード(Dr)、パット・マステロット(Dr)の6人によるダブル・トリオ編成という驚愕のラインナップ。

左右にパンニングされたダブル・トリオによる演奏で構築の中に混沌を内包した、Red期を彷彿させるメタリックなナンバー#1,#2。
ギター・シンセのストリングスに導かれ、メタリックなリフがリードするキャッチーなボーカル・ナンバー#3。
どこかオリエンタルなムードを漂わせたソフトでメロウな#4。
金属的なSEをバックにしたドラムスのデュオによるインストゥルメンタル#5。
ダブル・トリオが生み出すそれぞれのアクセントが、シンクロしたりズレたりと80年代CRIMSONのポリリズムを踏襲したかのようなヘヴィ・リフがリードする#6。
ダークでミステリアスなボーカル・チューン#7,#12。
キャッチーな中にもスリリングな要素を含むボーカル・チューン#8。
冷たい無機質なSE #9,#11。
まるでスティングのようなムードのアダルトでクールなメランコリック・チューン#10。
ダブル・トリオの混沌インスト・パートをフィーチュアしたファンキーな#13。
太陽と戦慄のアルバム構成をを踏襲した、#1に対する#14~#15による幕引き。

規律・鍛錬・反復・ポリリズムなど、お題目が先走った80年代CRIMSONと比較すると、自由に色々と試しているような作風。
メタリックな#1,#2,#3,#6,14、実験的な#5,#9,#11、キャッチーな歌モノ#4,#10とバラエティに富んだ内容の中に過去の遺産も巧く融合させ、KING CRIMSONの看板に恥じない作品を作り上げたところはさすが。
注目のダブル・トリオは、丁々発止のやり取りが楽しめるライブとは違って、音だけだと何か窮屈な中に混沌だけが残り、あまり機能していない気もしますが・・・

Track List

1. Vrooom
2. Coda: Marine 475
3. Dinosaur
4. Walking On Air
5. B'Boom
6. Thrak
7. Inner Garden I
8. People
9. Radio I
10. One Time
11. Radio II
12. Inner Garden II
13. Sex Sleep Eat Drink Dream
14. Vrooom Vrooom
15. Vrooom Vrooom: Coda

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KING CRIMSON / The Night Watch

1997,UK

Starless And Bible Blackの元ネタとなった1973年11月23日アムステルダムでのライブThe Night Watch。
BBCの放送用音源だったこともあり、長年ブートが出回っていた。

インプロビゼーションのDISC1 #6, DISC2 #1の他、Starless And Bible Blackではイントロのみ採用されたDISC1 #5のボーカル・パート以降の本来の姿が聴けるなど、資料的価値が高い。
後にデヴィッド・クロス(Vln/Key)がバンドを去る原因となったインプロビゼーションでの大音量もここでは適度に保たれており、徐々にクレイジーになっていくDISC2 #4でもノイジーなギターに対抗しヴァイオリンでアグレッシヴにプレイしています。
ロバート・フリップ(G/Mellotron)、ジョン・ウェットン(B/Vo)、ビル・ブラッフォード(Dr)、デヴィッド・クロスという最強メンツで演奏されるDISC2 #6も、ヴァイオリンがもたらす新鮮なフレイバーや抜群の呼吸でインプロビゼーション・パートを仕切るリズム・セクションなども興味深いものがあります。

Track List

Disc 1
1. Easy Money
2. Lament
3. Book of Saturday
4. Fracture
5. The Night Watch
6. Improvisation: Starless and Bible Black

Disc 2
1. Improvisation: Trio
2. Exiles
3. Improvisation: The Fright Watch
4. The Talking Drum
5. Larks' Tongues in Aspic (Part II)
6. 21st Century Schizoid Man

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KING CRIMSON / The Construkction of Light

2000,UK/USA

いくつかのプロジェクトによる実験を経て、ロバート・フリップ(G)、エイドリアン・ブリュー(G/Vo)、トレイ・ガン(B)、パット・マステロット(Dr)の4人編成にて制作されたKING CRIMSONの12thアルバムThe Construkction of Light。

ヘヴィなリフをプレイする左CHと、80年代CRIMSON風なクリーン・トーンのアルペジオの右CHという2本のギターで編み込まれた#1。リフは伝統的なブルーズ・ロックのそれだが、リズムはアクセントをずらしたインダストリアルな薫り漂うヘヴィなもので、本来オーガニックな音楽であるブルーズの対極にあるような精緻なアレンジが英国的というかロバート・フリップ的な皮肉のよう。
こちらも80年代CRIMSONの手法に則った、クリーンな2本のギターによるポリリズム・アンサンブルの#2~#3。
SEを交えたノイジーなリズム、トレイ・ガンが操るスティックのヴィブラートのイントロが印象的な#4。白玉のハーモニーを奏でるメタリックなギターの質感がRed期を彷彿させます。
Fractureの現代版とでも言えそうな#5。精密機械のようなフルピッキングによるシーケンス・フレーズの緊張感とメロウなアルペジオ・パートの起伏を軸に、中間部ではシーケンス・フレーズが歪みを増したトーンで凶暴かつクールに登場。凄みと畏怖すら覚える演奏です。
ブルーズ・ロックのリフをモチーフに、実は周到に計算された荒っぽさを付加した#6。ピアノ音の不思議なソロはギター・シンセと思われます。
1984年のアルバムThree of a Perfect Pairのパート3以来となる、太陽と戦慄パート4を銘打たれた#7~9。メタリックなリフという楽曲の基本はそのままに、メカニカルなシーケンスをディストーション・トーンで演奏しているのが今回の特長。パート3での軽さに対し今回は本体のヘヴィネスの延長上にあり、時代ごとにバンドのサウンド志向を反映しているのが面白い。
#7~9の流れを継承しつつストリングスの装飾でメランコリックにコード進行する#10。

ヘヴィなリズムと時に怜悧で時に重厚なメタリックさで統一されたインスト中心のアルバム。時代のムードを巧みに取り入れながら自らの遺産を再構築、アップデートしていく様は、まさにロバート・フリップの独裁とセンスの賜物と言わざるを得ないでしょう。

Track List

1. ProzaKc Blues
2. The ConstruKction Of Light
3. Into the Frying Pan
4. FraKctured
5. The World's My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum
6. Lark's Tongues In Aspic-Part IV
7. Lark's Tongues In Aspic-Part IV
8. Lark's Tongues In Aspic-Part IV
9. Lark's Tongues In Aspic-Part IV
10. Coda: I Have a Dream
11. Project X: Heaven And Earth

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KING CRIMSON / The Power To Believe

2003,UK/USA

前作同様のメンバーで新コンセプトNuovo Metalの元制作された、KING CRIMSONの13thアルバムThe Power To Believe。

アルバム中に度々登場するフレーズを提示したオープニング#1。
#1から切れ目無く始まり度肝を抜く、ヘヴィ・メタリックなリフがリードする#2。輪唱のようなギター2本の絡みも。ハイハットやスネアの高速連打がマシンっぽくてカッコ良いがパット・マステロット(Dr)の人力なんでしょうか。
クリーンなギター2本のずれるアルペジオをバックにした、80年代CRIMSON風歌モノからファンキーな要素を取り除いたような叙情チューン#3。
清廉・清楚なイントロから一転して、ギター2本が絶妙にズレてフレーズを紡ぐ定番パターンにヘヴィにのたうつトレイ・ガン(B)のウォー・ギター、時折リズム・マシン風なドラムが絡む#4。変拍子を交えた幾何学的なアンサンブルはもはや数学的な美しさ。
サウンドスケープによる#6のイントロ#5。
エフェクトで歪ませたヴォイス、引き摺るようなギター・リフ、野蛮なサウンドで構築されたパターンを叩き出すドラムで構成された#6。CRIMSONにしては普通のリズムをバックにヘヴィなリフが奏されるパートではメタルな躍動感も感じさせます。
パーカッションやカリンバ風音色など無国籍エキゾチックな要素で神秘的なムードを醸成する#7。
時にユニゾン、時にハーモニーで単音反復フレーズを繰り返す2本のギターを軸に、4つ打ちバスドラや冷たい感触のシンセストリングスが煽りを演出しスリリングに展開する#8。
日本語の「しょうがない」という言葉の微妙なニュアンスをタイトルに持つ#9。超ヘヴィなリフで押し捲りつつもサビがキャッチーな歌モノ。
サウンドスケープをバックにワーミー・ペダルを多用したギターのインプロヴァイズが続くミステリアスな#10。
パッド系シンセやシンセ・ストリングスを重ねてたゆたうエンディング・チューン#11。

ヘヴィな中にも叙情や屈折したポップ性を覗かせる、この編成でのラストにして集大成的作品。
本来フィジカルなはずの暴力的なリフも、メカニカルなアンサンブルの中にあってスタイリッシュに聴かせてしまう。
それでいてグルーヴも感じさせるのが彼らの標榜したNuovo Metalなのでしょうか。

Track List

1. The Power To Believe I: A Cappella
2. Level Five
3. Eyes Wide Open
4. Elektrik
5. The Power To Believe II
6. Facts Of Life: Intro
7. Facts Of Life
8. Dangerous Curves
9. Happy With What You Have To Be Happy With
10. The Power To Believe III
11. The Power To Believe IV: Coda

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