KARMAKANIC のレビュー

KARMAKANIC / Who’s the Boss in the Factory?

2008,SWEDEN

FLOWER KINGS等で活躍するベーシスト ヨナス・レインゴールド(B)率いるプログレッシブ・ロック・バンド KARMAKANICの2008年3rdアルバムWho’s the Boss in the Factory?。

便利屋ヨラン・エドマン(Vo)、ラレ・ラーション(Key)、ゾルタン・チョース(Dr)、クリステル・ヨンソン(G)を核に、ロイネ・ストルト(G)、テオ・トラヴィス(Sax)等ヨナス参加プロジェクトの人脈から豪華ゲストも参加。

メロトロンを使用した7拍子のファンタジックなリフに時折叙情を織り交ぜた初期FLOWER KINGS風イントロ。もう既にここでハートを鷲づかみにされてしまう#1。抑えたトーンではジャジーに、歪みを加えた場面ではテクニカルにと、柔軟に且つスムーズなプレイを聴かせるクリステル・ヨンソン、ズ太いシンセのソロやカラフルなバッキングにセンスの良さを感じさせるラレ・ラーション、とインスト陣の見せ場もたっぷりな19分超大作。
軽快な7拍子に乗せたポップな歌モノ#2。
ピアノとフレットレスベースによるムーディな序盤から一転、キャッチーな中にもヒネリを効かせたボーカル・メロディがやはりFLOWER KINGSっぽい#3。美しいコーラス、個性的な音使いのシンセ・ソロとピアノ・ソロ、叙情的なテーマ・メロディからピアノとベースが絡み合うクライマックス、とインストゥルメンタル・パートもドラマティック。
哀愁のサビメロを際立たせるテオ・トラヴィスのサックスが良い感じの#4。サックスのメロディが変化したのをきっかけに、インストゥルメンタル・パートに突入。ヨナスの甘いフレットレスベースを皮切りに、ロイネ・ストルトのワウを掛けた粘っこい歌うギター、テオ・トラヴィスのサックス、と職人達の味わい深いプレイが楽しめます。
雫のようにしっとりと煌びやかなピアノによるインスト#5。
#5のムードを継承しつつ、アコーディオンによるヨーロッパ風な哀愁も加えて叙情的に仕上がった#6。

どうしてもインスト陣に耳が向きがちですが、昔、イングヴェイ・マルムスティーンとの仕事では無理やりハイトーンを要求させられて苦しそうだったヨラン・エドマンの歌唱も、ナチュラルに強弱と陰影を使い分けて楽曲のドラマ性演出に大貢献。見直しました。
さすが便利屋、HR/HMからファンタジックなプログレまで幅広く仕事をこなします。
ジャケット・アートから受ける硬質なテクニカル路線との先入観とは全く違い、あくまでもメロディと歌が主役なメロディアス&シンフォニックなコンテンポラリー・プログレの良作です。FLOWER KINGSより若干翳りが増量されているところが個人的には好み。

Track List

1. Send a Message From the Heart
2. Let in Hollywood
3. Who's the Boss in the Factory?
4. Two Blocks from the Edge
5. Eternally Pt.1
6. Fternally Pt.2

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KARMAKANIC / In A Perfect World

2011,SWEDEN

THE FLOWER KINGS/AGENTS OF MERCYのヨナス・レインゴールド(B)、AGENTS OF MERCYのラレ・ラーション(Key)が在籍するスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドKARMAKANICの4thアルバム In A Perfect World。本作よりニルス・エリクソン(Key/Vo)が加入し6人編成となりました。

YESの構築性とGENESISの叙情性を併せ持った、ドラマティックでスケールの大きな14分超のプログレ大作#1。
ヨラン・エドマン(Vo)の声質がマッチした往年の北欧メタルを彷彿させる透明感あるハード・ポップの#2。
ヨナスのこれまでの人生を描いたと言う#3。エッジの立ったギターのバッキングがハード・ロック風でいながら、マイルドなフレットレス・ベースのソロやウーリッツアーっぽいエレピ、メロトロンなどがアクセントとなり、8分超の楽曲中に様々な表情を見せる叙情プログレッシブ・ハード。
カリプソにヘヴィな7拍子リフ、ラップ風ボーカルが合体、メンバーのミュージシャン・シップの高さを証明する変態ポップ・チューン#4。
メロウな冒頭や美しいピアノのパートと、オブリガードの上昇フレーズが心地良いエネルギッシュなサビを対比させた#5。、超絶テクニックと音使いに冴えを見せるシンセに、ベースやギターのソロをたっぷりフィーチュアしたインスト・パートも曲もムードに巧く溶け込んでいます。
ファンキーなリズムに乗ってのダークなテイストの中にあって、ピアノのアルペジオをバックにしたシンセ・ソロが清涼感を運ぶ#6。
アコギをバックにした叙情ブルーズが、シンフォニックなシンセ・ストリングスのオーケストレーションを経て、メランコリックなピアノ・ソロに移行し、ラストは#1のメイン・テーマのリフレインでアルバムを締めくくる#7。

様々な要素を余裕のテクニックと音楽的素養で消化し、KARMAKANICテイストに昇華したメロディアスな傑作。
彼らとAGENTS OF MERCYがあれば、もうFLOWER KINGSは要らない、と極論したくなるほどFLOWER KINGS周辺が充実してますよ。

Track List

1. 1969
2. Turn It Up
3. The World Is Caving In
4. Can't Take It With You
5. There's Nothing Wrong With The World
6. Bite The Grit
7. When Fear Came To Town

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KARMAKANIC / Dot

2016,SWEDEN

スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドKARMAKANICの5thアルバム Dot。
宇宙において地球は単なる点=ドットでしかない、というのがアルバム・タイトルの意味らしい。

イントロ#1に続き、様々な起伏と展開を盛り込んだ23分超えの大作#2。メロウな歌唱パートを軸に、陰陽硬軟の転換にヨナス・レインゴールド(B)の子供達と思しきイノセントなコーラスやラレ・ラーション(Key)のハイセンスかつテクニカルなソロなども織り交ぜ、各場面をじっくり丁寧に聴かせる半面、長尺曲にありがちな荘厳さや大仰さは皆無でややカタルシスには欠けるのは大団円をPart.2の#6に譲ったからか。
ニルス・エリクソン(Key/Vo)の素朴な歌唱がポップな曲調にマッチした#3。端正なシンセ・ストリングスがキャッチーなフックとなっている北欧の木漏れ日のように爽やかでキャッチーな歌唱パートに対し、インスト・パートはダークな側面も見せながら次々に展開し手練れのソリスト達が円熟のプレイを聴かせる。
親しみやすいメロディでコンパクトに仕上がった、透明感あるコーラスが印象的なポップ・チューン#4。
スケールの大きなバラード#5。
Part.1を引き継ぎドラマティックな決着を付けつつ、アルバム全体に対しても心地よい余韻を残す#6。

アルバム通して明るくソフトなムードの中、産業ロック風な小品と2パートに分けた合計30分近い大作が違和感無く同居。メロディアスでポップな持ち味にベテランらしい渋味を加えたKARMAKANICならではのさじ加減が見事。隙の無い精緻なアレンジで抜群のチーム・ワークを見せる一方で、ヨラン・エドマン(Vo)の伸びやかな歌唱やヨナス・レインゴールドの歌心溢れるフレットレス・ベース、ラレ・ラーションのテクニカルな指捌きなど個人技もトップ・クラス。#2,#6では病気から復帰したアンディ・ティリソン(Key)をハモンドの客演で迎えるなど、プログレ界隈のフレンドシップ構築にも余念が無い。バンドとして着実に成長を見せる高品質作品。
アルバム・カヴァー・アートはヒュー・サイム。

Track List

1. Dot
2. God The Universe And Everything Else No One Really Cares About Part. 1
3. Higher Ground
4. Steer By The Stars
5. Travelling Minds
6. God The Universe And Everything Else No One Really Cares About Part. 2

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