FREQUENCY DRIFT のレビュー

FREQUENCY DRIFT / Over

2014,GERMANY

ドイツのプログレッシブ・ロック・バンドFREQUENCY DRIFTの5thアルバムOverのレビュー。

チェロで幕を開けハープをバックにしたメランコリックなボーカル・パートへ移行、もの悲しいデュクラーなるたて笛の静謐や轟音ギターが唸るヘヴィなインスト・パートを含む#1。
イントロの枯れた味わいのギターによるトレモロから既にメランコリック度満点。清楚なIsa Fallenbacher嬢の歌唱がサビで左右CHに振り分けられで幽玄に迫るロマンティックな#2。
ハープの叙情的なイントロから一転してAgathe Labus嬢の妖艶な歌唱パートへと続く前半部、後半のインスト・パートはハープ、デュクラー、フルートの叙情をフィーチュアした#3。
2人の女性シンガーがそれぞれ好対照な持ち味を出すサビがおもしろい#4。終盤にSEで日本語の鉄道駅構内アナウンスが飛び出してハッとする場面も。
スペイシーなシンセのサウンドスケープ、コンテンポラリーなタッチのボーカル・パート、7拍子のハープ・ソロなどを6分弱に収めた美しいナンバー#5。
Isa Fallenbacher嬢のエンジェリック・ヴォイスがフィーチュアされた耽美なボーカル・パートとフルートがアグレッシブに吹き鳴らされるヘヴィなインスト・パートを対比させた#6。
ハープとボーカルのユニゾンにチェロが加わりメランコリックな陰影を増す#7。
マリンバのシークエンスをアクセントにIsa Fallenbacher嬢のセルフ・ハーモニーが甘美な味わいの#8。
Isa Fallenbacher嬢のクリアな歌声を活かしたキャッチーな歌唱、コルグのWavedrumと思しきパーカッション・ソロ、ハープシコードのクラシカルなソロなど予測不能に展開する#9。
Agathe Labus嬢が歌う静かな中にも官能的なダークネスから、エキゾチックなムードも湛えた不思議なインスト・パートへ移行する#10。
重厚なストリングス・セクション、キャッチーなボーカル・パート、ザクザクしたギターをバックに舞い踊るフルート、7拍子のプログレ然としたシンセ・ソロなどアイディア満載の10分の大作#11。
ハープ、ピアノ、チェロなどで優しく奏でられるバックに切々とした歌唱が乗るもの悲しいバラード#12。

厳かなハープ、クラシカルなストリングス・セクション、浮遊感のあるシンセやエレクトロニカ、メタルの面影を残すギターなどが融合。そこにイノセントなIsa Fallenbacherとジャズの素養があるAgathe Labus(#3、#4、#10)の2人の女性ボーカルが乗り、気品と妖しさ、デジタルな無機質さやアンビエントが渾然一体となったユニークなサウンド。大仰なドラマティックさは無いが、耽美なムードにゴシックの薫りも漂う。
緻密でテクニカルなアンサンブルに支えられたボーカル・パートはメロディアスで取っつき易く、メランコリックな風情にアンニュイな女性ボーカル、エレクトロニカという部分でPAATOSファンにもおすすめ。

Track List

1. Run
2. Once
3. Adrift
4. Them
5. Sagittarius A*
6. Suspended
7. Wave
8. Wander
9. Driven
10. Release
11. Memory
12. Disappeared

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FREQUENCY DRIFT / Last

2016,GERMANY

作曲にも貢献する女性ハーピスト ネリッサ・シュワルツ(Harp/Mellotron)を擁するドイツのプログレ/ポストロック・バンドFREQUENCY DRIFTの6thアルバムLast。

メタル度こそ低いが古き良きゴシック・メタル風な大仰さとダークネスを施したイントロを持つ#1。ハープをバックにしたエンジェル・ヴォイスのボーカルが入ると一転して深遠な世界へ。
甘美な音色のハープ・ソロがアクセントとなり、さらにストリングスやフルートなどメロトロンが大量投入されたゴシック風#2。
中音域での歌唱が妖しいメロディにマッチした#3。枯れたツイン・ギターによるハーモニー・パートの静とサビにおける動の対比が見事。
ハープとボーカルによる清楚なフォーク風デュオ・パートからシンセやメロトロンがハープと美しく絡むインスト・パートに移行する#4。
サビでのアグレッションが鮮烈なコンテンポラリー・タッチのメランコリック・チューン#5。
穏やかな中にメランコリックを滲ませた変拍子絡みのボーカル・パートから、中間部ではヘヴィな轟音パートと枯れたギターやメロトロンによる寂寥感の対比を経て、ハープをバックにしたソプラノ歌唱パートで美の頂点を極める#6。
ダークな中にも濃淡を演出するメロトロンやハープ、ギター、ピアノ等インスト陣のアレンジが際立つ#7。希望的なメロディによるリフレインが唐突に終わるエンディングも意外性に満ちている。
美声を活かした歌唱と情念を立ち上らせたビターな歌唱を使い分け、美醜による場面転換を演出する#8。

「死」や「終り」を暗示するアルバム・タイトル通りの暗いサウンドと、そこに一筋の光を射す女性ボーカルとハープの神秘的な響きでFREQUENCY DRIFTの個性が確立。
前作で可憐な歌声を聴かせたIsa Fallenbacherに代わり、Melanie Mauが参加。前任者と同等レベルの美しいソプラノに加えダークな中音域もこなし、楽曲に彩りを付加している。

前作からコンテンポラリーなポストロック成分を減じた分、深遠な静謐さと神秘性が増量。適材適所で効果的なメロトロンや引っ掛かりを生むさりげない変拍子といったプログレ要素もバランス良く配合し、美しい女性ボーカルを軸としたダークでメランコリックなサウンドでは突出した存在となった。

Track List

1. Traces
2. Diary
3. Merry
4. Shade
5. Treasured
6. Last Photo
7. Hidden
8. Asleep

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FREQUENCY DRIFT / Letters To Maro

2018,GERMANY

幽玄なハープをフィーチュアしたドイツのプログレ/ポストロック・バンドFREQUENCY DRIFTの7thアルバム。

ドリーミーと情念の二面性を歌唱とアレンジで対比させた#1。
伸びやかで優美な歌唱と幽玄なハープのソロが耳を離さない#2。ゴシックなムードの中、エキゾチックな管楽器の音色がアクセントに。
コンテンポラリーなポップ性にハープや7拍子がもたらす幻想性や多層美声コーラスの清涼感を併せ持った本アルバムのベスト・トラック#3。
トリッキーなリズムで起伏を演出した#4。
抑えた美声から少々ラフな歌い回しまで様々な表情を見せる#5。
シンセによるシンフォニックなサウンドスケープ、ウィスパーなコーラスにゆったりとしたメロディが乗る#6。
オペラ風というかクラシカルというか、とにかく荘厳なメロディが強烈なフックとなった#7。中盤の弦をフィーチュアした幻想的なインスト・パートから一転してなだれ込む怒涛の終盤の数字のカウントアップがドラマティックな高揚感をもたらす。
ミュージカル風パートや格調高い美メロなど変幻自在の歌唱がバックのサウンドスケープにマッチした芸術度の高い#8。
性急なマリンバのリフがリード、静と動のアレンジに合わせたエモーショナルな歌唱が魅力的な#9。
印象的なメロディを軸に静謐から激情まで幅広く描き出す展開に引き込まれる#10。
神秘的な中に清涼感を含むサウンドスケープでアルバムを締めくくるインスト・チューン#11。

前作までどこか浮いた印象のあった中途半端にヘヴィなギターを大幅に削除したことが奏功。バンドの突出した個性であるハープを主軸にシンセやメロトロン、弦のサウンドで醸し出すダークでメランコリックなムードが増量している。
またもや交代となった看板女性シンガー。今作のIrini Alexia(Vo)はエンジェリック度は低いながらも前任者達の美声を継承しながら、ミュージカル風歌唱によるシアトリカルなアプローチがバンド・サウンドとの親和性が高く作品の世界観に深みを加えている。
起承転結が巧みなアレンジの向上と併せてドラマティック度が大幅にアップ。女性ボーカル メランコリック路線のトップに躍り出た。

Track List

1. Dear Maro (6:22)
2. Underground (5:02)
3. Electricity (4:52)
4. Deprivation (3:35)
5. Neon (6:09)
6. Izanami (5:09)
7. Nine (6:10)
8. Escalator (4:26)
9. Sleep Paralysis (6:03)
10. Who's Master? (9:16)
11. Ghosts When It Rains (3:05)

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